「助けてよ、八幡くぅ~ん!!!」
「……どうした?」
ハロウィンライブが終わった日の夜、いきなり電話をかけてきたかと思えば、まさかのSOS。しかし、いくら「助けてよ、ドラえも~ん!」みたいなSOSを出されても、こちとら四次元ポケットは持っていない。
まあ、それでも自分の彼女だ。最善は尽くそう。
「……なんかあったのか?」
「太っちゃった!」
「…………」
俺にはどうにもできなさそうだ。
「そうか。そういや今日のパレードの衣装なんだが……」
「スルーしないでよっ。ピンチなんだよ~」
「ピンチはほーら……」
「チャ~ンスだと~♪……って話を逸らしてる場合じゃないよ!本当にピンチなんだよ~」
電話越しに泣きついてくる穂乃果の声を聞きながら、俺は彼女に感じていた違和感について、ようやくそれが何なのかがわかった。
そう。彼女は少し太……ふくよかになっていたのだ。
「……そうか。なるほどな」
「何一人で納得してるの!?とにかく助けてよ~!」
「……いや、ダイエットするしかないだろ」
「ううぅ……そうだよね。八幡君、明日から一緒に頑張ろうね」
「おい、さりげなく巻き込むな。こちとら最近運動始めてから体重減ったんだよ」
「ウソっ!?八幡君の裏切り者~!!」
むしろお前があれだけのトレーニングをこなしていながら、体重が増加することのほうが不思議なんだが。
……いや、待て。
よくよく思い返してみると、あちこちにフラグは立っていた気がする。あの日食べたアレとか、この前食べたアレとか……確かに食ってる時は心底可愛かったけれど、本当に止めておいたほうがよかったのかもしれない。
だとすれば、俺にも責任はあるだろう。
「ふぅ……でも仕方ないよね。私の体だし。私自身がやらなくちゃ……」
「……穂乃果」
「ん?なぁに?」
「……一緒に運動するか」
「えっ……」
穂乃果は驚いたような声を漏らした。
「まあ、あれだ。俺にも責任がないわけじゃ……「ちょっ、ちょっと待って!一緒に運動って、その……私達にはまだ早いんじゃないかな!?あはは……」おい」
まあ、この子ったらいつの間にかこんな耳年増になっちゃって!そんなんじゃタイトル変わっちゃうでしょ!
俺は一瞬だけあんなことやこんなことを想像してから、話を続けた。
「まあ、その……俺もできる範囲でお前に合わせて運動は増やすし、今度の休み……そっちに行くから一緒にジョギングでもするか」
「…………」
「穂乃果、どうかしたか?」
「ありがとうっ、八幡君!!」
「っ!」
びっくりしたぁ……。
「やっぱり八幡君は優しいね!大好き!」
「そ、そうか……」
いきなりそう言われると、ものすごい照れるからやめて欲しいんだが……まあ、悪くないですね、これは。
こそばゆい気持ちになっていると、穂乃果が躊躇いがちに話しかけてきた。
「でも、本当に大丈夫?最近忙しいのに……」
「別に構わん。少し運動量が増えるだけだし。それに、今のメニューも慣れてきたから、そろそろ増やそうと思ってたところだしな」
「八幡君……」
正直、強がりである。だが、それを悟られぬように平静を装った。
上手くいっただろうかと、彼女の様子を窺っていると、すぐに元気な声が届いた。
「私、頑張るね!!」
こうして、二人三脚(?)のダイエットが始まった。