捻くれた少年と純粋な少女   作:ローリング・ビートル

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第91話

 とある休日。俺は電車に揺られながら、いつもの景色を眺めていた。最早すっかり見慣れてしまったので大して面白味はないのだが、それでも秋葉原の街が近づくにつれ、自然と胸が高鳴ってしまう。

 

「ふむ、八幡よ。我のもう一つの居場所が近づいてきておる」

 

 そういやあいつ……ちゃんと起きれたのだろうか。

 

「ヒッキー!ほら、あれスカイツリーだよ!めっちゃ高くない!?」

 

 彼女の顔を思い浮かべると、同時にあの夜触れた温もりが鮮明に甦り、心が奮える。

 

「由比ヶ浜さん。あれはスカイツリーじゃなくて東京タワーよ」

 

 ……いや、落ち着け。今日はライブ当日だから、恋人としては応援に集中を……

 

「さーちゃん、みて!あのたてものすっごいおーきいよ!」

「け、けーちゃん!静かにしなきゃダメでしょ?」

 

 ……どうしてこうなったのだろうか。こんな大所帯で移動とか俺らしく……

 

「八幡、どうかしたの?元気なさそうだね」

「いや、全然平気」

 

 今元気出た!たまには団体行動大事だよね!!

 まあとにかく、今日はもう紹介の必要すらないこのメンバーと共に秋葉原へ向かっている。どうやら穂乃果が何人かに連絡して、それが広がったようだ。俺よりこのメンバーとコミュニケーション取れてるんじゃなかろうか……。

 俺が一人でうんうん頷いていると、小町が肩をつついてきた。

 

「お兄ちゃん、お兄ちゃん。安心していいよ。ちゃんと穂乃果さんと二人きりになる時間は作るから」

「……いや、別に……てか、ライブ終わった後にそんな時間あるのかよ」

「穂乃果さん、大丈夫って言ってたよ?お兄ちゃんが聞いてこないって不満そうにしてた」

「……いい景色だな」

「誤魔化さないの。まったくもう、まだ照れが残ってるなんて……」

「ほっとけ」

 

 いや、これでも結構考えた末での選択肢なんだよ?あとお兄ちゃん、結構踏み込ん……ではないかもしれないけど、前よりは積極的になったんだよ?

 とはいえ、それを口に出すのは恥ずかしいので、俺は窓の外に目を向けたまま、彼女の笑顔を頭の中に思い浮かべた。

 

 *******

 

「よしっ!皆、気合いいれていくよっ!」

「穂乃果ちゃん、気合い入ってるにゃ♪」

「ふふっ、ええ顔しとるやん」

「そ、そうかなあ?えへへ」

 

 やっぱり見てくれる人がいるっていいなあ……よし、今日も全力を出しきろう……ん?

 私は腰回りに違和感を感じる。あれ?何だろう、これ……ことりちゃん、サイズ間違えたかな?

 ……いや、気のせいだよね!緊張してるだけかも。

 私はもう一度気合いを入れ、ライブ前最後の準備に取りかかった。


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