「いい天気ね、二人はデートでもしてたのかしら?」
「「…………」」
いや、次の話に飛んだからってリセットできねえよ。髪に葉っぱ付いたまんまだし。何より、一体いつからいたのだろうか?
穂乃果に目を向けると、顔を真っ赤にして、あうあうと取り乱していた。多分、憧れのスクールアイドルに膝枕を見られたからだろう。
……なら今は俺が話すしかないか。
「あの……いつからいたんですか?」
「公園に入った時から……いえ、たまたま通りかかったのよ」
「…………」
いや、自分で全部言っちゃってるじゃん。この人、意外とポンコツか。
ついついしらっとした目を向けると、綺羅さんは気まずそうな表情で口を開いた。
「えーと、ほら、あれよ。何となく公園に来てみたらあなた達がいて、高坂さんが比企谷君を膝枕して、それから高坂さん自身も眠っちゃって、比企谷君の××が崩壊寸前になって……」
「…………」
穂乃果がジト目を向けてくる。ちょっと待て。俺は無罪だ。いや、あながち的外れではないかもしれんが、それより今一番の疑問は……
「……いきなり変な事言わんでくださいよ。つーか、何で茂みから見てたんですか?」
俺の言葉に、綺羅さんはピタッと固まった……これ、絶対に疚しいことあるやつだ。俺知ってる。
すると、彼女はこほんと咳払いをしてから、手遅れだと思うがシリアスな雰囲気を身に纏い、クールに話し始めた。
「ほら、ラブライブの地区予選の決勝に向けて曲作りをしないといけないじゃない?それで曲の題材を探していたら、偶然あなた達の……イチャイチャに遭遇したのよ。それでつい……」
「……そうですか」
「なるほど!そうだったんですね!」
立ち直った穂乃果はあっさり信じてしまっているが、多分ウソだろう。何というか……表情から声色、何から何まで胡散臭い。間違いなくただの好奇心だろうが、別にそこをつついたところで誰も得はしない。むしろ残念な空気にしかならないので黙っておこう。
そんな俺の優しさには気づかずに、綺羅さんは優雅な微笑みを俺達に向けた。
「ふふっ、とても勉強になったわ。それじゃあ私はもう行くから、ゆっくりデートを楽しんでね。それと高坂さん」
「は、はい!」
「ラブライブ地区予選もそうだけど、今度のハロウィンライブ、楽しみにしてるわ」
「はいっ、頑張ります!!」
穂乃果の瞳はキラキラ輝いていて、そこには純粋な尊敬の念が籠められていた。マジか。この子が将来悪い大人に騙されないようにしっかり見守らなくちゃ!
結局、何事もなかったように(本人はそう思っている)綺羅ツバサは、完璧な立ち振舞いで俺達の前から去っていった……髪の毛に葉っぱをつけたまま。
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「はぁ……まったく、とんでもないものを見てしまったわ」
「……頼めばキスシーンとか見せてくれるかしら?」