俺が生徒会に入り、奉仕部を辞めたわけだが、奉仕部のメンバーとよく顔を合わせる。その理由は……
「あっ、ヒッキー。やっはろー」
「こんにちは」
「……おう。今日も来てたのか」
「せんぱーい、遅いですよー」
「いや、お前らが早すぎるだけだろ……」
誤解される前に言っておくが、別に奉仕部メンバーが生徒会に入ったわけではない。ちょくちょく顔を出して、色々手伝ってくれているだけだ。
さらに、奉仕部には新しいメンバーが加入した。一人は一色で、もう一人は……
「…………」
「何だよ……相模」
「別に……」
そう、もう一人の新メンバーとは、あの相模である。もう一度言う。あの相模である。
大事なことでもないのに二回言ってしまったが、驚いたのは確かだ。WANDSのボーカルが代わった時くらいの驚きだろうか。
生徒会の他のメンバーも、色々と濃い助っ人達に何ともいえない表情を見せていた。言いたい事があれば言っていいんだよ!
そんな中、副会長が俺の肩をこっそり叩き、話しかけてきた。
「会長……そろそろ平塚先生から頼まれたイベントの会議始めようか」
「……そうだな」
とりあえず……こんな感じで、新生徒会は賑やかなスタートを迎えていた。
そんな感慨に耽っていると、ポケットで携帯が震え出す。多分……いや、間違いなく穂乃果だろう。
確認してみると、やはりあいつからだった。さて、用件は……
『明後日デートしよ♪』
「…………」
「比企谷君、いきなりにやけるのは止めなさい」
*******
というわけで俺は今、小町コーデの服に身を包み、秋葉原の駅前にいる。
あいつとは何度か出かけたことがあるので忘れそうになるが、これはれっきとした初デートである。てか、これって俺から誘うべきだったのでは……いや、今考えるのはよそう。
「八幡く~ん!」
聞き慣れた声に顔を上げると、普段とは少し雰囲気の違う穂乃果が見えた。彼女は寝坊したのだろうか、少し慌てた表情で息を弾ませている。
「はぁ、はぁ、よしっ、ギリギリセーわわっ!」
「っ!」
到着するなりこけそうになる彼女を慌てて支える。
すると、思いきり抱きしめる形になり、甘い香りが弾け、鼻腔をくすぐった。
「だ、大丈夫か?」
「うん、平気……ありがと」
「…………」
「…………」
自然とそのまま見つめ合う。正直、周りに人がいなければ、勢いでもっと強く抱きしめていたかもしれない。
やがて、腕に甘い体温や柔らかさが馴染んだ頃に、彼女の方から口を開いた。
「えと……じゃあ行こっか」
「……ああ」
穂乃果が腕の中から離れ、歩き出してからも、しばらくその体温は腕に絡みついていた。