「もうっ!だからノックしてって言ってるじゃん!」
「したわよ~。そしたら返事がないんだもん」
「そうだよ。ていうか、普通に考えてあんなシーンに遭遇するなんて思わないじゃん」
「ね~」
「ね~」
「むむむ……」
「…………」
高坂一家(父を除く)が睨み合う中、俺は一人頭を抱えていた。
…………めっちゃ恥ずかしい!!
マジかよ、どこから見られてたんだ……恥ずかしすぎて聞けねえ!!
「二人共、どこから見てたの?」
「「大好きのところから」」
「ほぼ全部じゃん!」
「…………」
聞いちゃったよ……てか、そこから見てたのかよ。むしろ、何故俺達は気づかなかったのか……。
「と、とにかく!二人共出てってよっ、八幡君も恥ずかしそうじゃん!」
「はいはい」
「お姉ちゃん、後で詳しく聞かせてねー」
「言わないよっ!」
パタンと襖が閉じられ、再び二人きりになる。
思ったほどの気まずさはなく、それ以上に胸の奥から何かが沸き上がってくる高揚感とか、頬が緩みそうになるのを抑えるので精一杯だった。
穂乃果はしばらく襖の方を向いていたが、やがてこちらに向き直り、上目遣いで見つめてきた。
「えっと……その、いきなりごめんね?」
「いや、謝らなくていい。何つーか……本気で嬉しかったし……」
「そっか……ふふっ、私も嬉しかったよ……ありがとう」
その言葉に、再び手を重ね、お互いの存在を確かめ合う。
これまでと接触とは違い、お互いがお互いの気持ちを知っているので、そこに焦りや迷いはない。ただ、今はこうしていたいていう真っ直ぐな想いだけだ。
「八幡君……」
彼女が手を握り返し、その手の感触がさらに強く伝わってくる。
そして、そのままそっと口を開いた。
「えっと……もう一回言って欲しいな」
「……何を?」
「……イジワル」
俺の返事に、彼女はぷくっと頬を膨らませ、ジトっと見つめてきた。さすがに誤魔化すことはできないらしい。
もう一度言うために、深呼吸してから気持ちを整えた。やばい。わかりきっていたことかもしれないが、穂乃果が可愛い……あれ?こいつ、こんなに可愛かったか?可愛すぎてキラやばな上に何て言うかやばい。
「…………だ」
「聞こえないよ~」
穂乃果はさらに顔を近づけ、目を潤ませている。いや、お前も大概イジワルじゃねえか。
俺は穂乃果の手に込める力を強め、今度こそはと口を開いた。
「……俺は……お前の事が、好きなんだけど……」
何とか言い終えると、彼女は返事を俺の耳に直接吹き込んできた。
「うん、私も大好きっ♪」
「っ!!……ちょっとは加減しろっての」
「や~だっ。ようやく言えたんだもん。あ~、緊張してたからお腹空いちゃった。八幡君もおやつ食べよ?」
「あ、ああ……」
いきなりいつも通りな台詞を吐く穂乃果に、ふらりと肩の力が抜けていくが、まあこれがこいつらしいところなんだろう。
とりあえず……今日俺達は両想いだということを知った。
「食い終わったら勉強するぞ」
「えっ……」