捻くれた少年と純粋な少女   作:ローリング・ビートル

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第74話

 修学旅行から帰った翌日。俺は秋葉原を訪れていた。えっ、修学旅行最終日?何事もなく終わりましたが何か?

 とりあえず、ちょうど日曜日だったので、さっさとお土産を渡そうと思い、穂むらを訪ねることにしたのだ。

 穂乃果は昼間から暇らしく、その流れで何故か勉強を見ることになったのが唯一の誤算だが……。

 店の扉を開けると、高坂母がつまみ食いをしていた。

 

「っ……あら~比企谷君、いらっしゃい」

「……ど、どうも」

 

 すぐに営業スマイルを作れるあたりは流石というべきか。でも口元にあんこ付いてますよ~。 

 

「穂乃果なら自分の部屋にいるから……大丈夫、今日は聞き耳たてたりしないわ」

「…………」

 

 それを言われたところでどうしろと……しかも、厨房の辺りからまたドス黒い気配が……。

 とりあえず気づかないふりをしておき、「お邪魔します」と呟きながら靴を脱ぐ。

 すると、今度は居間の方から声が聞こえてきた。

 

「こんにちはー比企谷さん」

「……おう」

 

 目を向けると、パーカーにトレーナーというラフな格好で柔軟体操をしている雪穂がいた。

 彼女はチラリとこちらを見てから、口を開く。

 

「お姉ちゃん、二階で漫画読んでダラダラしてると思うので、比企谷さんからも何か言ってやってくださいよ」

「い、一応、善処する……」

 

 わざわざテレビを見ながらストレッチとか……この美意識の高さ、二階で漫画を読んでいるであろう穂乃果に見習わせてやりたい。いや、待て。仮にもスクールアイドル全国一を狙うグループのリーダーだぞ?きっとダラダラしているように見せかけて、こっそりダンスの練習とか……。

 俺は穂乃果の部屋の扉をノックした。

 

「は~い、どうぞ~」

「俺だけど……」

「ええっ!?は、八幡君!?ちょ、ちょっと待っ、あ痛っ!!?」

 

 何やらでかい物音が……てか、何だ今のリアクション、俺が来る時間を間違えてるかのような……。

 とりあえずドアを開けてみる、とそこには……

 

「あっ……」

「…………」

 

 まず目に入ったのは床に派手にずっこけた穂乃果。

 続いて俺を驚愕させたのが、床に脱ぎ散らかされた制服、出しっぱなしの漫画、落書きだらけのノート等々……高坂妹の言葉以上にだらけていた。

 彼女は頬を赤くしながら、気まずそうに口を開く。

 

「は、八幡君……おはよう」

「お早くねえよ。もう昼なんだが……」

 

 俺の言葉に、穂乃果は「うぐっ」と声を詰まらせたが、すぐに呑気な笑顔を見せた。

 

「あはは、八幡君早すぎだよぉ。2時からって言ったじゃん」

「いや、お前からのメールには12時って書いてあるんだが……」

 

 再び彼女は「うぐっ」と声を詰まらせた。しかし、また呑気な笑顔を見せる。めげないな、こいつ。

 

「あはは、八幡君、修学旅行どうだった?」

「いや、その誤魔化し方無理あんだろ……せめて起き上がってから言えよ」

 

 仮に約束二時間前だとしてもだらけすぎだろ。俺と変われよ。

 ……しかし、何故だろうか。

 こいつの顔を見たら、ついほっとしてしまった。

 俺は笑いが漏れるのを堪えるように口元に手を当てた。

 すると、起き上がった彼女は子犬みたいに、たったかと駆け寄ってきた。

 

「八幡君、お土産はなぁにっ?」

「…………」

 

 こいつのあまりにいつも通りな様子もそれはそれで複雑なのだが……

 

「……とりあえず、部屋片づけるぞ」

「はい」


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