修学旅行当日。穂乃果には言わなかったが、奉仕部には重大な依頼が舞い込んでいた。
そう、それは戸部の告白の手伝いである。そして……。
まあ、とにかく修学旅行を手放しで楽しめる立場ではないということだ。
……だが断る。
いや、何を断るんだって話だが。第一断られるのは戸部だし。
まあ、要するにあれだ。
穂乃果にああ言われたからには、ちゃんとした土産話の一つや二つは持って帰りたいってことだ。
俺は穂乃果との約束を守るべく、一人頭を悩ませた結果、たったひとつの冴えたやり方を思いついた。
……できればやりたくはないのだが。
「八幡、どうしたの?」
「……いや、何でもねえよ。それよか自由行動の日、どこ行くんだっけ」
「あはは、八幡ったら聞いてなかったの?僕達の班はね……」
*******
昼休み。
生徒会の仕事をしながら、私は堪らなくなって、海未ちゃんに話しかけた。
「海未ちゃ~ん、京都行こ?」
「いきなり何を行っているのですか、そんなコンビニに行くみたいに……」
海未ちゃんの当たり前な返事に、その隣にいたことりちゃんが「ふふっ」と笑う。
「きっと誰かさんに会いたいんだよ。ねっ?」
「はぁ……まったく穂乃果は……こうまで変わるとは……」
「ち、違うもん……」
自分から言い出したことだけど、こう言われると恥ずかしくなってしまう。で、でも、京都に行ってみたいのは本当だよ?
「まあ仕方ないわね。海未とことりは別の世界線で……」
「エリチ、メタネタはあかんよ」
「はい」
「絵里ちゃん?」
絵里ちゃんが何か難しいことを言いながら、私の机の前にプリントを並べた。
「これ……」
「新曲のダンスのフォーメーションよ。何通りか考えておいたから目を通しておいて。放課後皆で話し合いましょう」
「あ、うんっ。ありがと♪」
「助かります、絵里」
「さすが絵里ちゃん♪」
「久々に賢いエリチやね、本当に」
「久々じゃないチカいつも賢いチカ」
『…………』
「どうしたの、皆。さっ、昼休みも残り少ないんだから、早く片付けるわよ」
絵里ちゃん……なんか変わったな。たまに変になるけど。私ももっと頑張らないと。
……八幡君、もう京都に着いたかな。楽しんでるかな。
窓の外に目を向けると、空は雲一つなくて、京都にいるはずの八幡君の事も、あまり遠く感じなかった。
*******
「ヒッキー、もうすぐ京都だよ!とべっちの依頼の事もあるけど楽しみだね」
「……ああ、まったくだ。ようやく着いたか」
「え?……なんかヒッキーらしくない。いつもはだるそうなのに。なんかあった?」
「いつも通りだよ。お、京都タワーだ。興奮してきたな」
「やっぱりいつも通りじゃない!」