捻くれた少年と純粋な少女   作:ローリング・ビートル

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第71話

 修学旅行当日。穂乃果には言わなかったが、奉仕部には重大な依頼が舞い込んでいた。

 そう、それは戸部の告白の手伝いである。そして……。

 まあ、とにかく修学旅行を手放しで楽しめる立場ではないということだ。

 ……だが断る。

 いや、何を断るんだって話だが。第一断られるのは戸部だし。

 まあ、要するにあれだ。

 穂乃果にああ言われたからには、ちゃんとした土産話の一つや二つは持って帰りたいってことだ。

 俺は穂乃果との約束を守るべく、一人頭を悩ませた結果、たったひとつの冴えたやり方を思いついた。

 ……できればやりたくはないのだが。

 

「八幡、どうしたの?」

「……いや、何でもねえよ。それよか自由行動の日、どこ行くんだっけ」

「あはは、八幡ったら聞いてなかったの?僕達の班はね……」

 

 *******

 

 昼休み。

 生徒会の仕事をしながら、私は堪らなくなって、海未ちゃんに話しかけた。

 

「海未ちゃ~ん、京都行こ?」

「いきなり何を行っているのですか、そんなコンビニに行くみたいに……」

 

 海未ちゃんの当たり前な返事に、その隣にいたことりちゃんが「ふふっ」と笑う。

 

「きっと誰かさんに会いたいんだよ。ねっ?」

「はぁ……まったく穂乃果は……こうまで変わるとは……」

「ち、違うもん……」

 

 自分から言い出したことだけど、こう言われると恥ずかしくなってしまう。で、でも、京都に行ってみたいのは本当だよ?

 

「まあ仕方ないわね。海未とことりは別の世界線で……」

「エリチ、メタネタはあかんよ」

「はい」

「絵里ちゃん?」

 

 絵里ちゃんが何か難しいことを言いながら、私の机の前にプリントを並べた。

 

「これ……」

「新曲のダンスのフォーメーションよ。何通りか考えておいたから目を通しておいて。放課後皆で話し合いましょう」

「あ、うんっ。ありがと♪」

「助かります、絵里」

「さすが絵里ちゃん♪」

「久々に賢いエリチやね、本当に」

「久々じゃないチカいつも賢いチカ」

『…………』

「どうしたの、皆。さっ、昼休みも残り少ないんだから、早く片付けるわよ」

 

 絵里ちゃん……なんか変わったな。たまに変になるけど。私ももっと頑張らないと。

 ……八幡君、もう京都に着いたかな。楽しんでるかな。

 窓の外に目を向けると、空は雲一つなくて、京都にいるはずの八幡君の事も、あまり遠く感じなかった。

 

 *******

 

「ヒッキー、もうすぐ京都だよ!とべっちの依頼の事もあるけど楽しみだね」

「……ああ、まったくだ。ようやく着いたか」

「え?……なんかヒッキーらしくない。いつもはだるそうなのに。なんかあった?」

「いつも通りだよ。お、京都タワーだ。興奮してきたな」

「やっぱりいつも通りじゃない!」

 

 

 


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