捻くれた少年と純粋な少女   作:ローリング・ビートル

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第66話

 陽も傾いていたので、今日はもう解散することにした。

 この時間帯になると風がだいぶ肌寒くなるあたり、もう季節はすっかり秋なんだろう。もうしばらくしたら修学旅行があるし、確かラブライブの地区大会決勝もそのぐらいの時期だったはずだ。

 ……観に行けるといいんだが。

 なんて柄にもないことを考えていると、穂乃果がぴょこんと俺の真正面に立った。

 

「八幡君、今日は付き合ってくれてありがとう」

「まあ、そもそも約束してたしな。別に礼を言われる事じゃない」

「でも、ありがとう……だよ」

「……そっか」

 

 自然と笑みが零れそうになり、視線を逸らす。再び風が頬を撫でてくれるのが、少しありがたかった。

 すると、穂乃果はこちらに一歩踏み込んできた。

 

「八幡君」

「……どうかしたか?」

 

 彼女と目を合わせると、その瞳にはさっきとは違う何かを秘めている気がした。

 そして、躊躇うように数秒目を伏せてから、また目を合わせ、そっと言葉を紡ぐ。

 

「私ね……変わりたいと思ってる……うーん、違うかな、変えたいと思ってる、かな?あはは、自分でも何て言えばいいかよくわからないんだけどね」

「……そうか」

 

 変わりたい……変えたい……。

 彼女が抱える思いの形は、俺とどこか似ていた。

 俺は黙って彼女の言葉の続きを待った。

 

「だから……見ててくれる?」

「……別に構わん。どうせ暇だし……それに……」

「それに?」

「……いや、何でもない」

「え~?何なの、教えてよ~!」

「あっ、電車来たわ」

「ここからじゃ絶対に間に合わないよね!?ごまかし方がテキトーすぎるよ!」

「まあ、あれだ……こっちにも色々あんだよ」

「ふ~ん、まあいいけど。八幡君がイジワルなのは知ってるし」

「……そりゃ話が早くて助かる。じゃあそろそろ行くわ」

「うん、またね!」

 

 俺は穂乃果に背を向けた。

 距離が離れていく間、背中に視線を感じたのはきっと気のせいではないのだろう。

 改札を通過してから何となく振り返ると、彼女はまだこっちを見ていた。

 俺が振り返ったのが予想外だったのか、肩を跳ねさせてから、また手をブンブン振ってくる。

 それに対し俺は小さく手を振り、階段を上がった。

 

 *******

 

 それから数日後……

 

「八幡く~ん……」

「どした?」

「つまんないよぉ~……」

「面白味のない人間で悪かったな」

「ち、違うよぉ!そういう意味じゃなくて!」

「ああ……まあ、確かに修学旅行先で台風ってのは運が悪かったな」

「ホントだよ~……はぁ……あっ、そういえば結衣ちゃんが言ってたよ。八幡君が失格になったって……」

「まだ人間失格の烙印を押されるほどじゃないと思うんだが……」

「だから違うよっ。体育祭で反則したんでしょ?」

「まあな」

「褒めてないよー、でも見たかったなぁ。八幡君の頑張ってるところ」

「いや、別に頑張っては……」

「ふふっ、八幡君はそういうの見せたがらないもんね」

「……そ、それより二年生不在のライブのほうは上手くいったのか?」

「うんっ、大成功だよ!凛ちゃんもドレス似合ってたし。あっ、そうそう……八幡君、今度私千葉に行くね」

「イベントでもあるのか?」

「うん。その……この前のイベントがきっかけで、μ'sの皆がドレスのモデルをやることになっちゃって……それで、撮影場所が千葉なんだよ」

「そっか。まあ、頑張れ」

「うん。だから八幡君も来てくれないかな?」

「……いや、ライブじゃないんだろ?俺が行っても……」

「それが……えっとね、実は…………」

「…………は?」


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