さて、どうしたものか。
予想外の人物がいて、こちらに手を振っている。
これが中学時代なら両手に花と小躍りして喜んだかもしれない。何なら、俺はどちらを選べばいいんだ、とか身の程知らずの勘違いをするまである。
しかし、今は違う。
あの光景にはトラブルの匂いしかしない。
てか何だよ、二人してめっちゃいい笑顔して……。
周りから冷たい視線を向けられるのは俺なので、自重して欲しいんですが。
「ア、アイツ……あんな美少女二人から……」
「爆発しろ、爆発しろ、爆発しろ」
「何なんだよ、ボッチのくせに……仲間じゃなかったのかよ!」
背筋に冷たいものを感じる……ちょっと待て。だから何でお前は俺がボッチだって知ってんだよ。しかも仲間と思ってたのかよ。しかもボッチ仲間とか……ボッチなのか友達いるのか……これもうわかんねえな……。
溜め息を吐くと、いつの間にか穂乃果が目の前に立っていた。
「八幡君、どうかしたの?」
「いや、別に。それよか、何で綺羅さんが?」
素直な疑問をぶつけると、穂乃果が答える前に綺羅さんが口を開いた。
「あら、せっかくのデートにお邪魔だったかしら」
「…………」
「えぇっ!?」
からかうような声音に、穂乃果があたふたと慌て始める。
「そ、そんな、デ、デ、デートなんて……ちが「いや、全然そういうのじゃなくて」むむっ!」
何故か足を踏まれる。いや、デートじゃないのは事実でろうが。
「あらあら、相変わらず仲は良いようね……いきなり見せつけてくれるわね」
おい。この人、心の声を隠しきれてないんだが。
すると、俺の視線に気づいたのか、綺羅さんは優雅な笑みを見せた。色々と手遅れだが。
「まあそんなに警戒しなくてもいいわ。さっきたまたま高坂さんに会って話してただけだから。三人一緒にメロンパンを食べたら大人しく退散するわ」
「そ、そうですか……」
むしろ、そこまではついてくるのかよ。マジか。
本当に何が目的なんだか……まさか……。
『あらあら。比企谷君ったら、高校二年にもなって女の子のエスコートすらできないなんて……お可愛いこと』
とか馬鹿にする目的が……ってんなわけねえか。そもそも彼女は俺には1ミリの興味もないだろう。
とにかく、よくわからないがあまり聞かないほうがいいだろう。この人はこの人で色々拗らせて純情な感情が空回りしてるっぽいし。
「よしっ、じゃあ行こっか!」
穂乃果の言葉を合図に、俺達はゆっくり歩き出した。
頬を撫でる風は少し秋めいていて、それがほんの少しだけ物哀しく感じられた。
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よしっ、これで『デート』がどんなものか研究できるわ!待っててね、あんじゅ!英玲奈!