ライブ当日。会場であるUTX学園屋上は、ざわざわと賑わっていて、これから始まるライブへの期待が滲み出ていた。
校舎に設置されている巨大モニターでも、二組のライブを生中継で放送するということもあり、モニター前には意外と人混みができていて、中々会場に入れなかった。
座席に腰を下ろし、ほっと一息つくと、辺りをキョロキョロ見ていた戸塚が呟く。
「す、すごいね、八幡……この前よりも人が多いよ」
「あ、ああ……」
隣に座っている小町も、同じように辺りを見回して、「はえー」とか「ほえー」とか感心している。
「うわぁ……こんなに人気なんだね。お兄ちゃん、色々と大変だけど頑張ってね」
「何がだよ……」
「けーちゃん、だいじょうぶ?」
「うんっ、へーきだよ!はやくみゅーずみたい!」
「お兄さん……な、なんか女子多くないですか?」
「落ち着け、お前既に顔赤いぞ」
今回は、川崎姉弟も一緒にライブを観ることになった。大志ははやくも緊張気味なのが、思春期発揮しすぎてヤバい。
「なあ、八幡……我の心配は?」
「あー、お疲れ」
忘れていたが、ちゃっかり材木座も来ている。どっちでもいいけど……なんて思いながらも、女子比率が高すぎるので、ぶっちゃけ少し心強い。おい、マジか。材木座が心強いとか……。
「あっ、比企谷さんだ!」
「っ?」
突然大きな声で呼ばれ、肩をびくつかせながら振り向くと、そこにいたのは高坂妹と高坂母だった。さらに……
「ほら、お父さん。この子がこの前ウチに来てくれた比企谷君よ」
「…………」
「ど、どうも……」
腹の底から湧き上がる緊張感。な、何だ、この感じ……とにかく、怖い……目つきがやばいというか、何というか……人の事は言えないけど。
「ほら、お父さん。そんな目で見ないの。まったく……ごめんねえ、この人ったら、これまで浮いた話の一つもなかった娘に、初めての彼氏ができたんじゃないかと気が気じゃなくて……」
「は、はあ……」
殺意の波動をビシビシ感じるのですが……。
すると、その背後からも刺すような視線を感じた。
目をやると、見覚えのある女子がそこにいた。確かあれは……絢瀬さんの妹だったような……。
「亜里沙、何でそんなに隠れてるの?」
「えっ!あ、その……えっと……」
「…………」
高坂一家の陰から出てきた絢瀬妹と目が合う。
すると、彼女は顔を真っ赤にして、ぴょんっと跳ね上がった。
「おっふ」
「亜里沙!?な、何そのリアクション!?」
「…………」
どっかで見たことあるリアクションなんだが……まあいい。誰にでもそういう日はある。
何だかんだ賑やかに過ごしている内に、開演まで刻一刻と時間は進んでいた。