「新しいファン?」
「ああ、同じクラスの奴の妹なんだが……」
「本当に!?嬉しいなぁ♪」
「それで今度のライブ……」
「うん!よかったら来て欲しいなっ!」
「そっか。伝えとくわ……じゃあ、また今度」
「あっ、八幡君……」
「どした?」
「……むぅ……やっぱりこのタイミングじゃ無理かぁ」
「?」
「な、何でもないよっ。それじゃあ、またね」
*******
数日後、今日は待ちに待ったライブ当日!
私達は、秋葉原のライブハウスの控え室で準備を終え、本番までの時間をそれぞれ過ごしていた。
緊張はあるけど、それ以上にライブがしたくてたまらない。新曲を歌うの楽しみだなぁ♪それに……
「穂乃果ちゃん、楽しそうだね」
「あっ、花陽ちゃん!あったりまえだよ!!皆も来てくれるし」
「えっ?本当に!?比企谷君も来るの?」
「え、絵里ちゃんっ、近いよ!まだ誰の名前も言ってないよ!」
「エリチ、ステイ!」
「チカッ!……ってやめてよ、希!ポケモンやペットみたいじゃない!」
「はい、静かに。そろそろミーティング始めますよ」
「よしっ!」
すると、コンコンとドアがノックされた。もしかして……
「どうぞ」
「失礼しま~す」
海未ちゃんが返事をすると、小町ちゃんがゆっくりとドアを開けながら入ってきた。そして、その背後には……
「ほら、お兄ちゃん。何照れてんの。声ぐらいかけないと」
「いや、ちょっと……」
小町ちゃんに引っ張り出され、少しクセのある髪の毛と猫背が目印の八幡が入ってきた。
……八幡君がいる。
胸が高鳴り、体中からふつふつとやる気がみなぎっていくのを感じる。でも……
「こ、こんにちは……小町ちゃん……は、八幡君」
「…………おう」
どうしよう……また顔が熱くなってきた。胸もドキドキするし……いや、ライブ前だから集中しないと!
私はスクールアイドルとして鍛えた笑顔を向け、改めて挨拶した。
「今日は来てくれてありがとう!頑張るからよろしきゅ……」
『…………』
噛んだ!噛んじゃったよ!
すると、周りからクスクスと笑いが漏れた。
「ふふっ、穂乃果ちゃん。落ち着いて」
「焦りすぎにゃ~」
「焦らんでも誰も逃げんよ」
「穂乃果さん、可愛いですね~」
「そ、そ、それより穂乃果……今……今今、は、八幡君って……」
「も、もう!笑わないでよ~!」
うぅ……恥ずかしい……。
でも、緊張みたいなのはなくなったかも。あ、そうだ!
「そういえば、八幡君のクラスの……」
「ああ。……おい、何で隠れてんだよ」
「でも……」
「さーちゃん!」
「ほら、けーちゃんも言ってんだろ」
「う、うん……」
あれ?女の人の声が聞こえたような……。
首を傾げると、比企谷君の足元から、ひょっこりと小さな女の子が現れた。
その子は(多分、けーちゃんっていうのかな?)満面の笑みを私達に向けてきた。
「あっ!みゅーずだ~」
その可愛すぎる笑顔に皆の頬が緩む。か、可愛い!可愛すぎるよ!!
「あっ、けーちゃん!」
そして、けーちゃんに続いて入ってきたのは……え?
「あっ、その……こんにちは」
予想外だった。
そういえばクラスメートって聞いただけで、それ以外の事は知らなかった。
……八幡君が言ってたクラスメートは、まさかの美人さんだった。