「じゃあまたね、結衣ちゃん!」
「うんっ、穂乃果ちゃん達もスクールアイドル活動頑張ってね!」
最初のぎこちなさはどこへやら、あっという間に打ち解けた二人。そういやこの二人、どことなく雰囲気が似ているかもしれない……アホっぽいところとか。
「比企谷君はどっちが好みなん?」
「……い、いや、さりげなく何聞いてんですか」
つーか、いきなり耳元で囁くのやめてくれよ……思いきり息がかかって、変な気分になっちゃうだろうが……。
「そうよ、希。いきなり何言ってるのよ」
絢瀬さんが、クールに東條さんを窘める。さすがは生徒会長。
「「どっちが」じゃなくて、「誰が」でしょ?その言い方だと私が入ってないみたいじゃない」
やはりこの生徒会長の思考回路はどこかまちがっている。そう思わざるを得ない指摘に、俺はただ黙ることしかできなかった。
まあ、少し気が紛れたから、よしとするか。
*******
私は比企谷君達と別れ、再び校内を回り始めた。
今日は新しい友達もできたし、来てよかった!結衣ちゃん、いい人だなぁ♪ただ一つ気がかりなのは……
「もし、あの人が比企谷君と恋仲だったらどうしよう……」
「……希ちゃん?」
勝手に色々付け加えている希ちゃんに、しらっとした目を向けると、何故か手をわしわしさせた。
「はぁ~、結衣ちゃんの豊かな胸にわしわししたかったな~」
「あはは……」
その様子に、反射的に胸を隠してしまう……だってあれ、恐いんだもん……。
「穂乃果ちゃん、そんなに落ち込まんでええよ。まだ成長する余地はあるから」
「誰も落ち込んでなんかないよ!」
た、確かに結衣ちゃんは大きかったけど!
あれ、そういえば絵里ちゃんは?
「そうね。まあ、確かに大きかったわね……大丈夫。少し私の方が……自信を持つのよ、エリーチカ」
「「…………」」
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そろそろ文化祭も終わりに近づいた頃、実行委員の人達が、やけに慌ただしく動いていた。
「なんか急がしそうやねぇ」
「そうね。何かイベントでもあるのかしら」
「今から体育館でライブみたいやけど……」
「じゃあ、ライブ観て帰ろうよ!」
「そうね、せっかくだし」
「ウチもさんせー♪」
そして、体育館に向かおうとすると、校舎に向かって誰かが走る姿が見えた。
あれは……比企谷君?
どうしたんだろう?
この時、私は何を考えていたのかわからない。
ただ、帰る前に声をかけたかっただけかもしれない。
もしかしたら、嫌な予感がしてたのかもしれない
「穂乃果?」
「どうかしたん?」
「ごめんっ、二人共先行ってて!」
何かに引き寄せられるように、私は校舎へ向かい、走り始めていた。