捻くれた少年と純粋な少女   作:ローリング・ビートル

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第44話

「じゃあまたね、結衣ちゃん!」

「うんっ、穂乃果ちゃん達もスクールアイドル活動頑張ってね!」

 

 最初のぎこちなさはどこへやら、あっという間に打ち解けた二人。そういやこの二人、どことなく雰囲気が似ているかもしれない……アホっぽいところとか。

 

「比企谷君はどっちが好みなん?」

「……い、いや、さりげなく何聞いてんですか」

 

 つーか、いきなり耳元で囁くのやめてくれよ……思いきり息がかかって、変な気分になっちゃうだろうが……。

 

「そうよ、希。いきなり何言ってるのよ」

 

 絢瀬さんが、クールに東條さんを窘める。さすがは生徒会長。

 

「「どっちが」じゃなくて、「誰が」でしょ?その言い方だと私が入ってないみたいじゃない」

 

 やはりこの生徒会長の思考回路はどこかまちがっている。そう思わざるを得ない指摘に、俺はただ黙ることしかできなかった。

 まあ、少し気が紛れたから、よしとするか。

 

 *******

 

 私は比企谷君達と別れ、再び校内を回り始めた。

 今日は新しい友達もできたし、来てよかった!結衣ちゃん、いい人だなぁ♪ただ一つ気がかりなのは……

「もし、あの人が比企谷君と恋仲だったらどうしよう……」

「……希ちゃん?」

 

 勝手に色々付け加えている希ちゃんに、しらっとした目を向けると、何故か手をわしわしさせた。

 

「はぁ~、結衣ちゃんの豊かな胸にわしわししたかったな~」

「あはは……」

 

 その様子に、反射的に胸を隠してしまう……だってあれ、恐いんだもん……。

 

「穂乃果ちゃん、そんなに落ち込まんでええよ。まだ成長する余地はあるから」

「誰も落ち込んでなんかないよ!」

 

 た、確かに結衣ちゃんは大きかったけど!

 あれ、そういえば絵里ちゃんは?

 

「そうね。まあ、確かに大きかったわね……大丈夫。少し私の方が……自信を持つのよ、エリーチカ」

「「…………」」

 

 *******

 

 そろそろ文化祭も終わりに近づいた頃、実行委員の人達が、やけに慌ただしく動いていた。

 

「なんか急がしそうやねぇ」

「そうね。何かイベントでもあるのかしら」

「今から体育館でライブみたいやけど……」

「じゃあ、ライブ観て帰ろうよ!」

「そうね、せっかくだし」

「ウチもさんせー♪」

 

 そして、体育館に向かおうとすると、校舎に向かって誰かが走る姿が見えた。

 あれは……比企谷君?

 どうしたんだろう?

 この時、私は何を考えていたのかわからない。

 ただ、帰る前に声をかけたかっただけかもしれない。

 もしかしたら、嫌な予感がしてたのかもしれない 

 

「穂乃果?」

「どうかしたん?」

「ごめんっ、二人共先行ってて!」

 

 何かに引き寄せられるように、私は校舎へ向かい、走り始めていた。


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