捻くれた少年と純粋な少女   作:ローリング・ビートル

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第112話

「……というわけなの」

「そ、そうか……」

 

 かなり省略された気がするが、とにかくそういう事だ。

 スクールアイドルの素晴らしさを世界中に発信するために、μ'sはニューヨークでライブをする事になった。

 ……本当にどこまで行くんだ、こいつら。次はドームライブでもやるんじゃなかろうか。

 

「八幡君!ニューヨークですよ!ニューヨーク!」

「落ち着け。口調が変わってる。あと俺はプロデューサーじゃない」

「ニューヨークってどんな所なの!?」

「行った事ないからありきたりな説明しかできんから、とりあえずググれ。てか、本当にすげえな」

「あはは……なんかよく実感湧かないや。海外行った事ないし……」

「それで、いつから行くんだ?」

「えっと……3日後だよ」

「そっか。まあ、あれだ……知らない場所を一人でうろちょろすんなよ」

「はぁ……」

「どした?」

「えっとね?……いつか八幡君と二人っきりでニューヨークに行けたらなぁって……」

「……まあ、いつかな。30年後くらいに」

「長いっ!!それずっと先の話じゃん!あっ、でも……それって、ずっと一緒にいようって意味だよね。も、もうっ、八幡君ったら~」

「……おーい。戻ってこーい」

 

 にへらと笑っている彼女の姿が簡単に想像できてしまい、ついこちらも頬が緩んでしまう…………可愛すぎかよ。

 

「あっ、ごめんごめん。やっぱり八幡君もニューヨークに行けたらいいのになぁ。よしっ……当たれーーーーーーーーーーーーー!!!!」

「っ!!……び、びっくりしたぁ……」

 

 心臓止まるかと思ったぞ。どこのキラ・ヤマトだよ……。

 

「うんっ!これでオーケー♪」

「何がだよ……フリーダムがストライクしちゃったのか?」

「ちょっと何言ってるのかわかんないんですけど……」

「何がわかんねえんだよ……って今のは俺もよくわからんかった。それで、何で叫んだんだ?気が触れたのか?」

「違うよ!八幡君が商店街のくじ引きでニューヨーク旅行が当たりますようにってお願いしたんだよ」

「…………」

「あははっ、とりあえず言ってみたかっただけだよ。あ~すっきりしたぁ~」

 

 俺は、電話越しに聞こえる「お姉ちゃん、うるさい!」とか「アンタ何やってんの!」等の文句に苦笑しながら、そんな彼女の無邪気さに頬を緩めた……それでこの話は終わりだと思ってた。

 

 *******

 

 翌日、小町の買い物に付き合わされた帰りに、母ちゃんがもらってきた福引きの券を消化するべく、商店街へと足を運んでいた。まさか、本当に福引きをする事になるとは……。

 とはいえ、そんな大した景品など期待していないので、さっさと終わらせようと、俺はガラポンをテキトーに回した。

 そして、数秒経って出てきたのは金色の玉だ。いきなりかよ。あと何回だっけ?

 もう一度回そうとすると、けたたましいベルの音と、拍手の音が高らかに鳴り響いた。

 

「大当たり~~!!!」

「?」

 

 何事かと首を傾げると、小町が抱きついてきた。

 

「お、お、お兄ちゃん!すごいよ!ニューヨークだよ!奇跡だよ!」

「……はぁ?」

 

 俺はその時、現実を正しく理解するのに、しばらくの時間を要した。

 こうして、比企谷家のニューヨーク旅行が決定した。

 あいつ……前世でどれだけの徳を積んだんだよ。奇跡すぎるだろうが。いや、これは俺の運も含まれているのだろうか……まあ、どっちでも結果は変わらないんだけど。

 とりあえず……連絡しとくか。


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