「……というわけなの」
「そ、そうか……」
かなり省略された気がするが、とにかくそういう事だ。
スクールアイドルの素晴らしさを世界中に発信するために、μ'sはニューヨークでライブをする事になった。
……本当にどこまで行くんだ、こいつら。次はドームライブでもやるんじゃなかろうか。
「八幡君!ニューヨークですよ!ニューヨーク!」
「落ち着け。口調が変わってる。あと俺はプロデューサーじゃない」
「ニューヨークってどんな所なの!?」
「行った事ないからありきたりな説明しかできんから、とりあえずググれ。てか、本当にすげえな」
「あはは……なんかよく実感湧かないや。海外行った事ないし……」
「それで、いつから行くんだ?」
「えっと……3日後だよ」
「そっか。まあ、あれだ……知らない場所を一人でうろちょろすんなよ」
「はぁ……」
「どした?」
「えっとね?……いつか八幡君と二人っきりでニューヨークに行けたらなぁって……」
「……まあ、いつかな。30年後くらいに」
「長いっ!!それずっと先の話じゃん!あっ、でも……それって、ずっと一緒にいようって意味だよね。も、もうっ、八幡君ったら~」
「……おーい。戻ってこーい」
にへらと笑っている彼女の姿が簡単に想像できてしまい、ついこちらも頬が緩んでしまう…………可愛すぎかよ。
「あっ、ごめんごめん。やっぱり八幡君もニューヨークに行けたらいいのになぁ。よしっ……当たれーーーーーーーーーーーーー!!!!」
「っ!!……び、びっくりしたぁ……」
心臓止まるかと思ったぞ。どこのキラ・ヤマトだよ……。
「うんっ!これでオーケー♪」
「何がだよ……フリーダムがストライクしちゃったのか?」
「ちょっと何言ってるのかわかんないんですけど……」
「何がわかんねえんだよ……って今のは俺もよくわからんかった。それで、何で叫んだんだ?気が触れたのか?」
「違うよ!八幡君が商店街のくじ引きでニューヨーク旅行が当たりますようにってお願いしたんだよ」
「…………」
「あははっ、とりあえず言ってみたかっただけだよ。あ~すっきりしたぁ~」
俺は、電話越しに聞こえる「お姉ちゃん、うるさい!」とか「アンタ何やってんの!」等の文句に苦笑しながら、そんな彼女の無邪気さに頬を緩めた……それでこの話は終わりだと思ってた。
*******
翌日、小町の買い物に付き合わされた帰りに、母ちゃんがもらってきた福引きの券を消化するべく、商店街へと足を運んでいた。まさか、本当に福引きをする事になるとは……。
とはいえ、そんな大した景品など期待していないので、さっさと終わらせようと、俺はガラポンをテキトーに回した。
そして、数秒経って出てきたのは金色の玉だ。いきなりかよ。あと何回だっけ?
もう一度回そうとすると、けたたましいベルの音と、拍手の音が高らかに鳴り響いた。
「大当たり~~!!!」
「?」
何事かと首を傾げると、小町が抱きついてきた。
「お、お、お兄ちゃん!すごいよ!ニューヨークだよ!奇跡だよ!」
「……はぁ?」
俺はその時、現実を正しく理解するのに、しばらくの時間を要した。
こうして、比企谷家のニューヨーク旅行が決定した。
あいつ……前世でどれだけの徳を積んだんだよ。奇跡すぎるだろうが。いや、これは俺の運も含まれているのだろうか……まあ、どっちでも結果は変わらないんだけど。
とりあえず……連絡しとくか。