捻くれた少年と純粋な少女   作:ローリング・ビートル

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第107話

「幕張!?」

 

 俺は驚きと共に、その単語を口にした。決して昔の漫画の話をしているわけではない。

 そんな俺のリアクションに満足したのか、俺を呼び出した平塚先生は鷹揚に頷いた。

 

「ああ。私も細かい事情はよくわからんが、今のラブライブの動員力に最も見合う会場が幕張の会場だったらしい」

「はあ……まあ、人気でてますからね」

 

 実際、μ'sの動画再生数もかなり跳ね上がっていて、ファンも増え続けていた。

 それに、廊下を歩いていると、時々スクールアイドルの話をしている生徒と遭遇することもある。

 しかし、穂乃果が……μ'sがそんな大勢の前でライブか……。

 嬉しくもあり、彼女が遠くに行ってしまうかのような寂しさが……って、今はそれより……

 

「あの、俺は何で呼び出されたんですか?」

 

 まさか「君の彼女が幕張でライブをするぞ。おめでとう」と言うためじゃないだろう。まあ、何となく予想はできているが……。

 その後の平塚先生からの話は、実際俺の予想通りだった。

 

 *******

 

「ラブライブ会場でボランティア~!?」

 

 真っ先に嫌そうな声を上げたのは一色。まあ、気持ちはわからんでもない。俺もμ'sが出ていなかったら、謹んでお断りしていただろう。

 

「ヒッキー、よかったね」

 

 色々と事情を知ってる由比ヶ浜が、こっそり耳打ちしてくる。

 ……確かにそのとおりすぎて言い返せなかった。

 

「比企谷君、他に連絡事項はないかしら?」

 

 雪ノ下から促され、ひとまず会議を終えることにした。

 

「じゃあ、ボランティアに関しては、生徒会と奉仕部は基本参加だが、どうしても無理な奴は言ってくれ。それと、募集のプリントは今日中に作っとくから……」

 

 口を動かしながらも頭の片隅では、彼女の最高の晴れ舞台に陰ながら参加できる喜びが溢れていた。

 

 *******

 

「えっ?八幡君、スタッフになったの!?」

「ああ。まあ、スタッフっつっても無給のボランティアだけどな」

「あはは、八幡君らしいお言葉……でも、そっかぁ。八幡君とμ'sの最後のステージを作れるんだね」

「……そういう事になるな」

「ふふっ、さらにやる気湧いてきちゃった♪」

「あんま気張りすぎて、ケガすんなよ」

「うんっ、八幡君もね」

「お、おう……」

「どうかしたの?」

「いや、なんかこういう体育会系みたいなノリは初めてなんでな……」

「…………がんばろうね!!」

「おい。何だ、その色々言いたいことあるけど、とりあえず黙っておこうみたいな間は」

「ファイトだよ!」

「あ、ああ。ありがとう……まあ、明日から他のボランティア集めなきゃいけないんだけどな」

「ふふっ、八幡君の腕の見せ所だね」

「……………………任せとけ」

「だいぶ溜めたね」

 

 実際中々人が集まらなくて困ったのだが、それは明日からの話。

 


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