捻くれた少年と純粋な少女   作:ローリング・ビートル

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第106話

「バレンタインデー?」

「うん、バレンタインデー。穂乃果ちゃんはどうするのかなって」

 

 ことりちゃんからの質問に首をかしげると、すぐにその意味に気づいた。

 

「八幡君からは「ラブライブに向けての練習で忙しいだろうから、別にいい」って言われちゃったからなぁ……」

「そっかぁ」

「何だか想像できますね」

 

 海未ちゃんも、うんうん頷きながら隣に腰を下ろしてきた。

 ちなみに、バレンタインデーの話を八幡君としたのは、昨日の夜だ。何となく想像していた通りだった。あの時の声……優しかったなぁ。

 

「穂乃果ちゃ~ん?」

「これは……昨晩の会話を思い出してる顔ですね……」

 

 *******

 

「八幡君、今度のバレンタインデーなんだけど……」

「ああ、別にいい」

「はやっ!?はやいよ、八幡君!確かに手作りは心配かもしれないけど!」

「いや、それは心配だが、そうじゃねえよ」

「そっか……あれ?今なんかちょっとひどかったような……」

「ま、まあ、その……もうすぐラブライブ決勝だからな。あまり負担はかけさせたくないっつーかな……」

「八幡君……」

「それよか、最近そっちはどうなんだ?」

「ふふっ、今日は海未ちゃんがね~……」

 

 *******

 

「穂乃果!」

「わっ、びっくりしたぁ……」

「びっくりしたのはこっちです!海未ちゃんがね~の続きはなんですか?言いなさい!」

「人の頭の中見ないでよ~!海未ちゃんのエスパー!」

「いいから言いなさい!」

「二人共~、そろそろ休憩終わりだよ~!」

 

 私は、再び練習に向かいながら、八幡君に心の中でお礼を言った。

 

 *******

 

 それからしばらくして、練習から家に帰ると、お母さんがニヤニヤしていた。

 

「な、なあに、お母さん……こわいよ?」

「こわいとは何よ、失礼ね。せっかくアンタへのプレゼント預かってるのに」

「プレゼント?」

 

 誰からだろう?私の誕生日はまだ先なんだけど……。

 

「愛しのカレからよ」

「そっかぁ、八幡君からかぁ……って、えええええ!?」

 

 は、八幡君から!?

 

「送られてきたのっ!?」

「えっ、ちょっと前に直接来たわよ。これアンタにって……」

 

 今から走れば間に合うかなっ?

 そう考えたところで、ポケットの中でケータイが震えだした。

 こんな時に誰から……八幡君!?

 八幡君がメールをくれたようだ。

 慌てて開くと、そこには一言だけ書かれていた。

 

『手紙見ろ』

 

 手紙?

 一旦自分の部屋に戻り、プレゼントのラッピングを開け、中を確認すると、そこにはお菓子の入った箱と可愛らしい封筒があった。

 そっと手紙を確認すると、そこにも一言だけ……

 

『無理しすぎないで頑張れ』

 

 その言葉を読むと、自然と笑みが零れた。

 八幡君が何度も書き直した姿が、何故か自然と頭に浮かび、温かい気持ちになった。

 

「……ありがと……大好き」

 

 しばらく私は、自分の胸の高鳴りと共に、何度もその手紙を読み返した。

 

 

 




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