捻くれた少年と純粋な少女   作:ローリング・ビートル

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第105話

 新年が始まり、そろそろ学校も始まろうかという頃、俺は彼女からの電話の内容に驚いていた。

 

「……活動を、終える……か」

「……うん。皆で決めたよ」

「そっか……」

「うんっ、だから……最後まで応援よろしく!」

「い、いきなり叫ぶなっての……まあ、言われなくても応援するが……」

「ふふっ、ありがと♪」

「まあ、とにかく……残りのライブ、一回も見逃せねえな」

「そうだよ~。だから、ぜっったいに観に来てね!」

「へいへい」

 

 何だかんだで一年近く聴き続けたμ'sが活動を終えるというのは寂しいものがあるが、彼女達が悩んで出した結論なら、俺が言うことなど何もない。

 後で沢山μ'sの楽曲を聴こうと考えていると、穂乃果が「あの……」と話を切り出した。

 

「どした?」

「話は変わるんだけど、この前……ウチで今年初めてキスしたでしょ?」

「あ、ああ……いきなり何だよ?」

「実はあの時……お母さんと雪穂に見られてたみたい……」

「…………マジか」

「マジだよ」

 

 恥ずかしいというだけじゃ言い表せない感情が、腹の底から湧き上がってくる。彼女の母親と妹にキスを見られるとか……俺だったらしばらく顔を合わせられんかもしれん。

 

「あ~もう、恥ずかしかったんだよ!すっごいからかわれたし!」

「いきなり襲いかかってくるからだろ」

「お、襲う!?人聞きの悪いこと言わないでよ!八幡君のエッチ!」

「悪い悪い……てか、その……」

「あっ、お父さんには見られてないから大丈夫だよ」

「そ、そうか……」

 

 彼女の言葉に、ほっと胸を撫で下ろす。よかった……まあ、見られてたら無事に千葉に帰って来れてないかもしれないんだけどね。

 窓の外に目を向けると、今晩は星空がやけに綺麗な事に気づく。彼女のいる街からも見えているのだろうか。

 柄にもない思考に頭をかきながら、つい気になって聞いてしまう。

 

「……なあ、穂乃果」

「なぁに?」

「そっち、星空見えてるか?」

「星空?……あっ、本当だ!すっごく綺麗……」

「…………」

「…………」

 

 どうやら向こうも見えていたらしい。俺達は少しの間、お互いの息遣いをBGMに、冬の星空を眺め続けた。

 そして、流れ星が一瞬通りすぎてから、今度は彼女から口を開く。

 

「ねえ、八幡君……」

「どした?」

「今度は八幡君の話、聞かせて?」

「…………」

 

 正直、俺には彼女ほどバラエティーに富んだエピソードはない。ぶっちゃけ、彼女と会ったり、電話したりする以外は、勉強・運動・バイト・読書くらいだ。

 だが、彼女が望むなら詳しく話してやろうと思い、大げさな前ふりも、気取った装飾もない日常話を始めた。

 そうして、冬休み最後の冬は更けていった。

 

 


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