捻くれた少年と純粋な少女   作:ローリング・ビートル

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第103話

 彼女と遊園地デート。

 あまりにもリア充なイベントすぎて、青春ポイントが限界突破しそうだが……正直舐めてました。

 

「八幡君、次はあれ乗ろーよ!!」

「あ、ああ……」

 

 いかん……こいつのハイテンションっぷりを甘く見ていた。初っぱなからジェットコースター、フリーフォール、ジェットコースターとかやばすぎだろ。三半規管強すぎだろ。

 とりあえず、さりげなく落ち着いた乗り物の方へ誘導しようとすると、彼女は俺の顔を覗き込んできた。

 

「八幡君、大丈夫?」

「え?あ、ああ。まあ、あれだ。序盤から少し飛ばしすぎただけだ」

「あはは、ごめんね? 久々のデートだから、つい……」

「気にすんなよ……はしゃいでるのはこっちも一緒だし……」

「え?今、何て……」

「よし、次は……甘い物食べに行くか」

「あっ、八幡君!ふふっ、やっぱり疲れてるじゃん!」

「バッカ、お前……腹が減ってたら戦はできないんだよ」

「あははっ、じゃあそういうことにして、何か食べよっか♪」

 

 そう言って彼女は俺の手を握りしめ、すたすた歩き出した。

 

 *******

 

 結局、そろそろお昼時ということもあり、昼飯にしようという話になった。

 少しの時間並ぶ羽目になったが、穂乃果と話していると、あっという間に自分達の順番になった。

 注文した品を待っている間、何となく思ったことを聞いてみた。

 

「そういや、何でここがよかったんだ?」

 

 俺の質問に、彼女は恥ずかしそうに目を伏せ、髪を指先で弄び始めた。

 そして、ぽそぽそと静かに口を開く。

 

「う~ん……夢だったから、かな?」

「……夢?」

「えっと、中学の頃にクラスの皆でクリスマスにはどこでデートしたいかって話してて……その時は何となく遊園地って言ったんだけど、八幡君と付き合い始めてから、行きたいって気持ちが強くなっちゃって……」

 

 黙ってこくりと頷くと、彼女はぐっとサムズアップしてみせた。

 

「だから私の中学時代からの夢!」

「なんか随分テキトーな夢だな……」

「ふふっ、でもいいの!そういうわけで私の夢を叶えてくれた八幡君には……はい♪」

 

 彼女は運ばれてきたハンバーグをさっと切り分け、その一つをフォークで突き刺してから、こちらに向けてきた。

 

「……いや、普通に恥ずかしいんだけど」

「は、早く食べてよ!私だって恥ずかしいんだから……」

「…………」

 

 確かにと思い、ハンバーグにかぶりつく。

 だが、周りに人がいることや、何人かがチラチラこっちを見ていることや、とりあえず幸せな気持ちやらで、ぶっちゃけ味はあまりわからなかった。

 

 *******

 

 昼食を終えてからは、またアトラクション巡りをしつつ、買い物したり、パレードを見たりなど、あっという間に時間は過ぎていった。

 そして、最後に観覧車に乗ることにした。

 

「わぁ……八幡君の家、あっちの方かな?」

「いや、逆だ逆。お前、泊まったことあんだろうが」

「あはは……また泊まりに、行きたいなぁ」

「……い、いやらしい事考えてるんじゃないだろうな?」

「違うよっ、ていうかそれ女子のセリフじゃん!私のセリフじゃん!まったくもう……ふふっ」

 

 冗談を言い合ったりしている内に、次第に頂上が近づいてくる。

 

「…………」

「…………」

 

 どちらも自然と黙り、互いの息遣いがやけに大きく聞こえ始めた。

 そして、それを合図に、彼女は俺の隣に移動して、手をそっと握りしめてきた。

 やわらかな温もりを通して、彼女が何を俺に求めているのかがわかった。

 

「……いいのか?」

「聞かないでよ。八幡君のバーカ」

「わ、悪い……」

 

 そんな言葉のやりとりの間も、ゴンドラは上昇していく。それと同時に、どくん……どくん……と胸が高鳴っていった。

 

「穂乃果……」

「…………」

 

 彼女はこちらに顔を向け、ゆっくり目を閉じる。

 それだけで俺の目線は、彼女の薄紅色の唇に集中した。

 外に目をやると、雪がはらはら舞い降りてきて、何だか夢の中にいるみたいだった。

 見下ろす街並みも、何だかこれまでと違う。

 彼女の肩に手を置くと、少し強張ったが、すぐに力が抜けていくのを感じた。

 外の景色は止まることなく流れていく。

 二つの影はゆっくり近づいていく。

 溶け合うようにそれが重なった時……ゴンドラは頂上に達していた。

 

「……ねえ、八幡君」

「……どした?」

「もう一周、しない?」

「…………ああ」

 

 


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