彼女と遊園地デート。
あまりにもリア充なイベントすぎて、青春ポイントが限界突破しそうだが……正直舐めてました。
「八幡君、次はあれ乗ろーよ!!」
「あ、ああ……」
いかん……こいつのハイテンションっぷりを甘く見ていた。初っぱなからジェットコースター、フリーフォール、ジェットコースターとかやばすぎだろ。三半規管強すぎだろ。
とりあえず、さりげなく落ち着いた乗り物の方へ誘導しようとすると、彼女は俺の顔を覗き込んできた。
「八幡君、大丈夫?」
「え?あ、ああ。まあ、あれだ。序盤から少し飛ばしすぎただけだ」
「あはは、ごめんね? 久々のデートだから、つい……」
「気にすんなよ……はしゃいでるのはこっちも一緒だし……」
「え?今、何て……」
「よし、次は……甘い物食べに行くか」
「あっ、八幡君!ふふっ、やっぱり疲れてるじゃん!」
「バッカ、お前……腹が減ってたら戦はできないんだよ」
「あははっ、じゃあそういうことにして、何か食べよっか♪」
そう言って彼女は俺の手を握りしめ、すたすた歩き出した。
*******
結局、そろそろお昼時ということもあり、昼飯にしようという話になった。
少しの時間並ぶ羽目になったが、穂乃果と話していると、あっという間に自分達の順番になった。
注文した品を待っている間、何となく思ったことを聞いてみた。
「そういや、何でここがよかったんだ?」
俺の質問に、彼女は恥ずかしそうに目を伏せ、髪を指先で弄び始めた。
そして、ぽそぽそと静かに口を開く。
「う~ん……夢だったから、かな?」
「……夢?」
「えっと、中学の頃にクラスの皆でクリスマスにはどこでデートしたいかって話してて……その時は何となく遊園地って言ったんだけど、八幡君と付き合い始めてから、行きたいって気持ちが強くなっちゃって……」
黙ってこくりと頷くと、彼女はぐっとサムズアップしてみせた。
「だから私の中学時代からの夢!」
「なんか随分テキトーな夢だな……」
「ふふっ、でもいいの!そういうわけで私の夢を叶えてくれた八幡君には……はい♪」
彼女は運ばれてきたハンバーグをさっと切り分け、その一つをフォークで突き刺してから、こちらに向けてきた。
「……いや、普通に恥ずかしいんだけど」
「は、早く食べてよ!私だって恥ずかしいんだから……」
「…………」
確かにと思い、ハンバーグにかぶりつく。
だが、周りに人がいることや、何人かがチラチラこっちを見ていることや、とりあえず幸せな気持ちやらで、ぶっちゃけ味はあまりわからなかった。
*******
昼食を終えてからは、またアトラクション巡りをしつつ、買い物したり、パレードを見たりなど、あっという間に時間は過ぎていった。
そして、最後に観覧車に乗ることにした。
「わぁ……八幡君の家、あっちの方かな?」
「いや、逆だ逆。お前、泊まったことあんだろうが」
「あはは……また泊まりに、行きたいなぁ」
「……い、いやらしい事考えてるんじゃないだろうな?」
「違うよっ、ていうかそれ女子のセリフじゃん!私のセリフじゃん!まったくもう……ふふっ」
冗談を言い合ったりしている内に、次第に頂上が近づいてくる。
「…………」
「…………」
どちらも自然と黙り、互いの息遣いがやけに大きく聞こえ始めた。
そして、それを合図に、彼女は俺の隣に移動して、手をそっと握りしめてきた。
やわらかな温もりを通して、彼女が何を俺に求めているのかがわかった。
「……いいのか?」
「聞かないでよ。八幡君のバーカ」
「わ、悪い……」
そんな言葉のやりとりの間も、ゴンドラは上昇していく。それと同時に、どくん……どくん……と胸が高鳴っていった。
「穂乃果……」
「…………」
彼女はこちらに顔を向け、ゆっくり目を閉じる。
それだけで俺の目線は、彼女の薄紅色の唇に集中した。
外に目をやると、雪がはらはら舞い降りてきて、何だか夢の中にいるみたいだった。
見下ろす街並みも、何だかこれまでと違う。
彼女の肩に手を置くと、少し強張ったが、すぐに力が抜けていくのを感じた。
外の景色は止まることなく流れていく。
二つの影はゆっくり近づいていく。
溶け合うようにそれが重なった時……ゴンドラは頂上に達していた。
「……ねえ、八幡君」
「……どした?」
「もう一周、しない?」
「…………ああ」