これに関しては私がいると思っているから書いた物です、ダクソは1〜3までシリーズ通してやってますし、黒騎士装備などの概要も把握しています。
それでも私はいると思っていたので書いてます。
黒騎士がいる事に我慢出来ない人は報告下さい。修正致します。
Q.ダクソ部分のストーリーは一体何で出来ているか。
A.私のフロム脳と妄想で補完されています。
毎回毎回、誤字の報告本当に感謝です
闇の眷属達には一つだけ伝えられることがある。
曰く、群青のマントをした騎士には気をつけろ。
大剣と大盾を持った神族を見たら逃げろ。
何を馬鹿なと私は笑い飛ばした。
私達が1人で活動するなど殆ど無く、たった1人の騎士相手に尻尾巻いて逃げろなんて。馬鹿にしていると思われても仕方が無い。
そして私は後悔した。
夜の帳が下りた暗い街道を歩く馬車を見て、私達は口元を歪めた。こんな夜更けは危ないと知らされている筈だろうに、時々こういう馬鹿が居るからやりやすい。
後ろの仲間達に獲物を見つけた事を伝えると誰もがその顔を醜く歪める。それを醜いと思いはしない、私だって歪んでいる事だろう。
「ああ、生き返る様だ」
地に倒れた人間を見下ろして恍惚とした表情を浮かべる。やはり何をするにしてもこの人間性を奪い取る瞬間が一番気持ちの良いものだ。
こう、飢えを癒してくれた様。自分が暖かな闇の抱擁を受けた時の様。
兎に角言葉に出来ない位に気持ちの良いものだ。
私達がその瞬間を味わいながら立ち尽くしていると、狼の遠吠えが聞こえた。其処まで近い訳では無いが、遠いという距離でも無い。
「ーーーチッ」
その遠吠えが煩くて折角の瞬間が台無しだ。憂さ晴らしにこの狼でも殺してみようか。そう考えた時には遠くから何かが走って来るのが見えた。
狼と騎士。
狼はその体躯に似た大剣を口に咥えている、隣を走る騎士は群青のマントをなびかせた純銀の騎士。
「見ろよあの騎士、狼に剣を咥えさせてやがる!」
馬鹿にする様に指を指した隣の仲間の声に釣られて私達も嗤う、何ともおかしな奴だと。態々狼に剣を持たせるなんて馬鹿な奴だと、頭の端では群青のマントの騎士がチラついたが。まさかこんな馬鹿がその騎士である筈も無いと結論付けて剣を構えた。
狼なんて戦力には数えない、それなら一対四。
優勢なのは私達だ。
騎士より先に狼が前に飛び出したのを見て、私はあの飼い主にこの狼の死に様でも見せてやろうとした。
そして私の目の前に狼がいた。
「ーーーはっ?」
ほんの一瞬、その提案を仲間にしようと顔を横に背けた瞬間に視界に狼が入り。
私は地面に崩れ落ちた。
私の思考は埋め尽くされる。今、一体何をされたのか?
脚を見れば右足は完全に無くなっていて、左足はギリギリくっ付いているだけだ。肉も骨も断たれていた。
ピチャリ、顔に何か液体が降りかかって顔を擦ると。それは見慣れた赤い液体、血だった。
隣の仲間、私と同じ様に両脚を切断されて地面に横たわった姿を見て狼を探す。
そいつは次の獲物を見つけたのか、仲間の1人に大剣を押し付けていた。それを仲間の1人が剣と盾で踏ん張り、脚の止まった狼をもう1人が刺し殺そうとしている。
ブォン、風を切る音が耳を叩いて。
狼が相手にしていた仲間の1人の身体が、半分に割れた。
もう1人は腕が一本取れただけ。
そいつは私達を見るなり一目散に近くの森へと駆け出した。森に入れば狼の剣は木が邪魔してくれると考えたのか必死に走る。
「私を忘れてないか?」
そいつは、上から降ってきた騎士に両断されて森の手前で力尽きた。
その騎士が振り返るとマントが翻り、見えない筈の眼光が私を射抜いた。
騎士に寄り添う様に狼が横を歩いて、その騎士は私の前に来ると大剣を振り下ろす。
此奴だ、此奴だったんだ。
良く仲間達が言っていた騎士、群青マントの騎士。ダークレイスの狩人。闇払いの騎士。
そして忌々しい大王の四騎士が1人、アルトリウスーー。
ーーーーーーーー
俺が城の裏庭にいない間に四十を超える夜が過ぎた。
俺はオーンスタインの言葉と共にアルトリウスと共に仕事に就いた。
どうやらアルトリウスは城にいない間は各地を渡り歩きダークレイス達を牽制している様だ、その仕事に俺も共に行く事を許された。
曰く、今の俺なら其処ら辺のダークレイスには負ける事は無いとの事だ。本当にそうだろうか?
オーンスタインには負け続き、今だに黄金の鎧に傷を付けることも出来ないでいる。しかし最初の頃と比べると成長した、構えすらせずに片手で槍を持つオーンスタインは今や両手で槍を持って構える。
果たしてそうだろうか、アルトリウスが赴くダークレイスに俺が勝てるとは思えなかったが。せめて何か出来ればと共に城を後にしたのだが、ダークレイス達は拍子抜けも良い所だった。
まさか俺ですら4人を相手に出来るなんて思いもしなかったが、確かにこれは厄介だと感じれた。
ダークレイス達は質は悪いが、数が多い。
中には駆け引きも技量も俺より上手い者もいた、だがアルトリウスに勝てる事は無かった。
そう考えると俺は確かにアルトリウスに少しは楽をさせてやれたのだと思うと嬉しくて堪らない。
アルトリウスは城の中で大王に報告している頃だろう。
俺は久し振りに裏庭の日の当たる所で丸くなっていた。外は確かに色んな事が知れたが、やはり裏庭が一番落ち着く。太陽を感じれると言うか、此処が俺の居場所だと感じられる一つの場所だった。
「どうやら怪我はしていない様だな」
唐突に言葉と共に俺の背中に手が触れる。
何時もキアランは気配も無く突然現れるから心臓に悪い。今や慣れたものだが、それでも驚いて瞼が開くのは仕方ない事だ。
「アルトリウスが戻っていたからな、来てみれば変わりなさそうで安心した」
丸くなる俺の身体に身を預けて座り込むキアランを見ると寂しく思う事が一つある。俺が城に来てから一年と少しが経った頃だろうか、身体が成長を始めると俺はキアランに抱えられる事が無くなった。
人間サイズの彼女だと少しばかり俺が大きくなり過ぎてしまった事だろう、キアランが身を預けられる程に大きいがアルトリウスとかと比べるとまだ小さいのだ。
しかし、もうキアランが俺を抱える事が無いと知ると寂しくてならない。今だけでも身体が小さくならないかと思わない事は無い。
身体が大きくなると剣も振りやすくなったが、何か一つ失った気分だ。昔は成長する事に急いでいたが、こうなると成長を急ぎ過ぎるのもいけない事だと思わないでも無い。
顔をキアランに擦り付けると、彼女は優しく俺の首元に手を当てる。それに身を任せて地面に顔を着ける。
思い返せばこうやって触れて貰えるのも久し振りだった。
軽く一ヶ月近く経っている事を考えると今はこうしてゆるりと過ごすのも良いものだ。
「・・・アルトリウスでは無いな」
キアランが呟くと懐の仮面を取り出して俺から少しだけ離れる、それを残念に感じながら何事かと耳を澄ませると鎧の音が耳に入って来る。
ああ、この鎧の音はオーンスタインか。今日は千客万来だなと思いながらオーンスタインの方に顔を向ける。
「・・・すまん。邪魔してしまったか?」
「そうでもない」
嘘だ、キアランが小さく舌打ちするのを俺は聞いたぞ。
兎に角オーンスタインはキアランがいる事に気が付かなかったのだろう、顔を出すなら俺とキアランを見てから曖昧な表情を作る。
鎧を着ていても兜を付けない彼の表情はとても読み易い。彼はアルトリウス程に表情に感情が出やすい、だから部下の前だと兜を付けるのだけども。
そんな少しだけ居心地の悪くなった裏庭にもう1人訪れる者がいた。
態々着替えて来たのか絢爛な服装に身を包んだアルトリウスが訪れた。
「うん? 2人ともどうしたんだ?」
そしてこの状況を見て一言それだけを言うとマイペースに俺の隣に寄り掛かかる様に腰を下ろした。
またそんな服で座る。そう思うよりも先にオーンスタインとキアランが更になんとも言えない表情に変わるのが分かる。キアランは顔が見えないが雰囲気がそうだ。
「キアランは座らないのか?」
「いや、私は別にーーー」
「座れ。キアラン」
もうどうでも良さそうにオーンスタインが言うとドカリとアルトリウスの対面に座り込む。
「アーサーのペースに合わせるのも面倒になった。座れ」
「私のペースとはなんだ?」
「気にしなくて良いぞ」
キアランも観念したのか俺に寄り掛かかる様にして座り込む。対面にオーンスタイン、左にアルトリウス、俺を背もたれにするキアランがいる。
「シフ。グウィン様から褒美を貰っているぞ」
「わふ!」
一体何処に隠し持っていたのか取り出された肉が俺の顔の前をプランと揺れて、思わず肉を口に入れてしまった。
その時俺に衝撃走る。
これほど上手い肉を食った事があるだろうか?
いいや、無い。この先これ程までに極上の肉など口にする事などあるだろうかと思うと、一口でガブリといってしまった事に後悔がある。
これなら干し肉の味も試したくもなって来る、しかし肉は既に俺の胃袋の中。
どうしようも無いと思う。だが褒美なら今後も何かあればあるのでは無いかと思うとやる気が出て来る。
「そうか、上手いか。私からグウィン様に言っておこう」
尻尾がベチベチとキアランの顔を叩くとその尻尾を叩かれる。特に痛くは無かったが喜び過ぎたかと尻尾が地面に垂れる。
喜ぶと無意識の内に尻尾が揺れてしまうのは治せなかった。
「さて、聞かせて貰おう」
「何をだ?」
「シフの活躍を」
「どうしてだ、オーンスタインはそんな事気にしないだろ?」
ほう、オーンスタインは他人の戦果は余り気にしないのか。確かにそうなら俺が活躍したのか確かめるのはおかしいな。
もしや変に期待でもされていたのだろうか。それなら無様な格好を見せずに良かった。
「何を言うか。俺がシフを鍛えたのだ、言わば弟子の様なものだ。気になるだろう」
「待て、私もシフには気配の消し方を教えた。シフは私の弟子だ」
「少し待ってくれ。いつの間にシフにそんな事を教えていたんだ?」
・・・成る程。俺は2人の弟子だったのか。
何やら熱心に色々と教えてくれていたのは俺の事を弟子だと思っていたのか。だが待って欲しい、キアランはまだしもオーンスタインは俺では無くて城の騎士達を鍛えてやんなくて良いのだろうか?
確かに役には立ったし俺の成長にも繋がったから感謝はしている。だが狼だぞ?
事実、槍持ちのダークレイス相手にオーンスタインを比べると対処は出来た。オーンスタインに劣る者に俺は負けたく無かったのもあるが、槍の距離、槍への対処を教えてくれたのはオーンスタインだ。
キアランの教えも役に立った。夜だと俺の様な狼が気配を断つとダークレイス相手に奇襲なんかはやり易かったのも覚えている。
ん? もう2人とも俺の師匠で良いのでは無いか?
「ええい、この話は終わりだ!アーサー、シフはどうだった!?」
「う、うむ。頼むからそんな気迫で迫らないでくれないか」
地面に手を付いてグッとアルトリウスの方に身体を向けるオーンスタインを宥めながら。アルトリウスが一つ咳払いをすると語り始めた。
「シフは、そうだな。気配の断ち方が上手かった、夜の闇に紛れてダークレイスの後方から音も無く近寄るとそのまま3人の内の2人を確実に行動出来ない様にしたんだ。あれは見事な物だったな、私では気配なんて消せないからな」
アルトリウスがそう語ると心なしかキアランの撫でる速さが変わった。仮面越しで表情までは分からないのだが、自慢気にしている事だろう。
逆にオーンスタインなんて俺の方に厳しい目線を送って来る。まて、待つんだ。俺が教わったのは槍使いの対処だけだ、後は模擬戦で積んだ経験くらいだろう。
「他には!?」
これではオーンスタインと言うよりキアランの弟子の様な話しを聞かされたオーンスタイン。ぐぬぬ・・・とでも言いそうな顔でアルトリウスに他の話しを聞かせる様に急かす。
「いや、無いな」
「・・・・・」
いや、本当に止めてくれ。今すぐに黄金の兜を被るんだオーンスタイン、でないとその視線で俺が死んでしまう。
今にも射殺さんばかりの視線をしている、納得出来ないと。何処まで負けず嫌いなのだオーンスタインは。
別に俺の活躍くらいで大袈裟なと呆れ顔でオーンスタインを眺める事が俺には出来ない、何故なら目を合わせると大変な事になりそうだからだ。
「・・・いや、思い出したぞ。活躍では無いが、シフは槍を持ったダークレイスを執拗に狙っていたが何かあったのか?」
あ、アルトリウスがとんでも無い事を言ってしまった。
槍持ちを優先して襲ったのは別に槍持ちが気に入らないとか、憂さ晴らしでは無くてだな。ただ対処がしやすくて狙っていたと言うか。
1人で言い訳を並べていると、俺はとんでも無い事に気が付いてしまった。
オーンスタインの右手が座った隣辺りに何か探す様に彷徨っていた事にだ、これは槍が近くにあったら危なかった。
「ほう、シフはそんなに槍使いが好きだったか。そんなに好きなら今すぐにでも俺が相手をしてやるが?」
いや安全でも無かった。目が、眼光が鋭過ぎる。
「冗談だ。少なくとも失敗が無いと言う事は俺の教えも無駄では無かったと言う事だ。大きな怪我も無くて良かったな」
顔を背けながらそんな事を言う物だから何だと思ったがオーンスタイの目線と俺の目線が交差する、その目には何処か優しさが篭っていた。
ああ、何だかんだ言いながら彼も心配してくれていたのか。短いとは言え槍と剣を交わした仲だからそうなのか、元来彼の性格故なのかは分からない。
「オン!」
一吠えすれば、彼は仕方無さそうに俺の頭に手を当てる。
ああ、微笑ましい限りだ。狼になって、弱かった時は直ぐに死ぬだろうと絶望すらしていたが。
そんな俺を此処に連れて来てくれたのはアルトリウスで、俺を面倒見てくれたのは3人で、種族すら違うと言うのに。
そう思うと心なしか涙目が出そうになって来た、この身は狼であり悲しさで涙など出ないと言うのに。
「どうしたんだ?」
手を差し伸べてくれるアルトリウスの手に舌を這わせて、親愛を表現する。なに、涙など流さなくても良いでは無いか。
友がいて、優しき人がいて、太陽の様な人がいる。
この小さな幸せはまだまだ、それこそ俺が死ぬまでずっと続くのだから。
ーーーーーーーーー
執務室に蝋燭が灯り、机に大王が肘をついていた。
「大王様、報告が」
「どうした?」
誰もいない執務室の中にスッと現れた人影が跪くと、王は微動だにせずに言葉を返すだけだった。
現れたのは王の刃、その内の1人でありキアランの部下。王の刃は全員が人間と同サイズであり、隠密、諜報、暗殺に特化した部隊であり。その素顔を知る者は城の中にも数少ない。
「ここ最近、人の中で闇の魔術を使う者が増えております」
「・・・まことか?」
何処か大王の雰囲気が変わり、執務室の空気が悪くなる。
それでも王の刃の1人は気にする事も無く、懐からメモを取り出して大王に差し出す。
「使用者はウーラシールの魔術師であり、使用者も国内の魔術師限定ですが。今後どうなるかはーーー」
「そうか、下がってよいぞ」
「はっ!」
王の刃は暗闇に紛れる様に消えると、音も無く扉が一度開かれるも其処から出て来る人影は無い。
大王は手元のメモを一字一句逃さずに読み切り、グシャリと紙切れが握り潰された。
大王の表情が変わり、気が付けばバチバチと小さな雷が走っていく。
ボシュン、紙切れが掌の中で跡形も無く灰に変わり、重くなった口が開いた。
「・・・馬鹿者どもがっ!」
小さく、噛み締める様に吐かれた罵倒の言葉を聞く者は1人もおらず、ただ空気に消えていく。
ガタリと小さく音をたてる椅子から立ち上がった大王は静かに窓から覗く月を見上げ。窓の下、裏庭に視線を当てた。
其処には今は政務も仕事も忘れた、愛しき我が子の様な4人が一つの薪を囲んで酒を飲み交わしている。
それを見ると拳に力が篭る。
「こうなったのも、ワシの所為か」
遥か昔、闇のソウルを持つ人が現れた時確信した。小さくとも我々と同じ様に強くなると、同時に属性が我々と反対であるとも。
だが、それでもワシは人の幸せを祈った。
あの時代、人達を纏める者がいない事に恐れてワシが纏め上げた。強力過ぎる力は同胞すらも滅ぼす故、せめて纏められる者が居なければと感じた。
だから光を与えてもう一つの幸せの形を与えた。
本来の不死では無く定命ではあるが、確かに今の人々は笑顔を顔に浮かべる。醜悪な物では無い、ワシから見ても太陽の様な顔だ。
だが、だが。そんな中に急に闇の強大な力が出て来ればどうなる?
適応出来ずに深淵に引きずり込まれた人はどうなる?
人同士でソウルの喰らい合いが始まればどうなる?
そして、我等神族はどうなる?
だからこそ、この問題を長く抱え過ぎたワシの所為かと後悔すらある。
この問題の一因は、確かにワシなのだから。
ああ、でも。ワシはワシらしく在ろう。何時も頭上に輝く太陽であろう。
後悔もある、許せない事もあるだろう。
だが、全て飲み込もう。
何故なら、俺は神族の長にして太陽なのだから。
誰にも平等であろう。