灰の大狼は騎士と会う   作:鹿島修一

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教えてくれ、私はあと何回回せば良い。あと何回あの礼装とサーヴァントを出し続ければ良いんだ?
ガチャは欲しい物を何も出してはくれない!
教えてくれ、ウーンエイ!?

つ金額指定林檎のカード。

私は、私は買わないっ!(買えないっ!)

なんて茶番を友達とやりました。


ある日の日常

それは夏休みの時だった。

休みを利用して戻ってきた立花とマシュの姿がカルデアにはある。

 

立花は思った、授業参観の日からマシュはあの3人の所に良くいる事を。

それが気になった、気になって気になって仕方が無かったのが原因である。

 

「小太郎」

「はい、なんでしょう主人殿?」

 

武器が綺麗に並べられた自室に突然主人殿が押し入って来たのを認めてから、直ぐに手入れをしていた武器をしまい込み座れるスペースを作った。

序でにお茶と和菓子も出した。

 

ズズーッとお茶を飲み干した立花は無言で正座から胡座に変えると、真剣な表情を見せる。何かあったのではと勘繰ったがどうやら違う様だった。

 

「頼みがあるんだけど」

「僕に、ですか。僕1人で出来ることはその、偵察や奇襲くらいな物ですが」

「マシュの様子を気付かれずに見て来て欲しいの」

「マシュ殿の。あの、主人殿が直接見て来た方が良いのではないですか?」

「ううん。私がいない時の様子が知りたいの」

 

その言葉に本当に何かあったのでは無いかと悩む物の、これと言って難しい内容の物では無い。

 

「分かりました。マシュ殿の様子を見て、紙に書き留めて主人殿にお渡しします」

「ありがとう、小太郎」

「いえ、僕に出来る事なら何でも言ってください」

 

そう言って小さく微笑む小太郎を見ながら、任せたからねーと手を振りながら部屋を出て行く主人を見送ってから自分も部屋を出る。

 

風魔小太郎、参ります。

 

そう呟いた彼は廊下から瞬く間に消えていった。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「いや、見てないな」

「そうですか。お引き止め申し訳ありません」

「あ、いや構わないよ」

 

部屋を飛び出してから早速マシュ殿の所へ向かおうとして、失態を犯した。

僕はマシュ殿の現在地を知らない事が一番の問題だった、如何に忍者と言えども場所が分からなければどうしようも無い。匂いでも良いのだが、カルデアは様々な匂いが蔓延している為特定の個人を探し出す事は残念ながら出来ない。

 

必然、導いた答えは人に尋ねる事である。

僕がマシュ殿の居場所を探している事も別段珍しいと言う訳では無く、カルデアスタッフ達は様々なサーヴァントから誰が何処にいるかを尋ねられる事が多々ある為驚く事でも無い。

 

これで3人目、誰も見た人はいないと言う。

どうした物かと思った所で廊下の奥な見覚えのあるアロハ姿のランサーを見つける。

意外と様々な所を歩き回る彼ならば分かるかも知れない。

 

「クー・フーリン殿。少し、良いでしょうか?」

「ん、小太郎じゃねえか。どうしたよ?」

 

振り向いた彼は僕の事を見るなり不思議そうにする、実際僕は余り他の者達との交流は余りしていない。そんな僕が尋ねた事を不思議に思っているのだろう。

 

「マシュ殿を見なかったでしょうか?」

「ああ、嬢ちゃんなら植物の所で見たぜ。マスターからの頼まれ事か?」

 

そう聞かれると、答えたら良いのか悩む。忍者としては無論許される事ではないが、彼は嫌にそこら辺敏感だ。変な隠し事は無理がありそうだ。

 

「はい。主人殿からの任務で、少しマシュ殿に用事があります」

「そうかい。んじゃ、俺は行くぜ」

 

去って行くアロハ姿の背中を見ながら、彼は今日も訓練だろうと思う。僕も正面から戦えれば、主人殿の役に立つ事が出来るだろうか。

ーーー出来る訳ないか。

僕は風魔小太郎、忍者が正面からの立ち会いなど何を世迷言を言っているのか。

アサシンにしか出来ない事もある、それが答えで。僕は忍者である。

 

 

植物の所。植物園の事だろう、確かスタッフのりらくぜーしょん?なる物を目的とした空間であった筈。

余り行った事が無い、そもそも訓練室なども余り活用した事は無いので意外と僕はカルデアと言う所に疎いのかも知れない。

普段使うのは食堂に自室、後は何かあったか?

一応見取り図は全部覚えてはいるが、その殆どが自分が使った事が無い場所である。

いけない、忍者として自分の護る所くらい把握できてなくては。少し平和に怠け過ぎたのだろう。

これはイケない。任務が終わった後はコッソリと全ての施設を把握しなくては。

 

そう思いながら僕は植物園へと向かった。

 

 

 

中は整い過ぎた森と言えば良いです。

管理された土に草木達、日光が無いのに何故育つのか疑問に思う事があるけど魔術には疎いから分からない。

そういった物なのだろう、便利になった物だ。

 

しかし、この広い空間の何処にいるかは大体の予測がついた。一番中央に気配が3つ存在している。

3人、マシュ殿以外は誰なのか気になるが直感が高い人じゃないと良いのですがと気配を消して歩き出すのだが、直ぐに後悔した。

 

 

(主人殿、聞いてませんよ。キアラン殿もいるのは)

 

実際に見つけて見れば、3人では無くて4人だったと言う事実と。自分よりも気配遮断の上手い人物がいるとは思ってもいなかった為に冷や汗が頬を伝う。実際、キアランの姿を認めた瞬間すごい速さで後退していき今は科学の力である双眼鏡を手に持っている。残念な事にそれでも油断ならない。

弓兵相手の警戒が凄く高いのだ、あの人達は。恐らく生前知り合いに余程の弓兵が居たと推測する。

アサシンとしては自分よりも上位のサーヴァントであり、三騎士相手に普通に不意を打てる相手にどうした物かと策を巡らせる。

 

巡らせてみても何も思い付かないから此処で待機していよう。下手に動いた方が不味いのだ。

懐から取り出したメモにペンを走らせて行きながら、双眼鏡で観察する。

 

 

覗く先には大きな狼、シフ殿に寄り掛かってリラックス・・・あれは寝てますね。なマシュ殿の姿が見える。

うん、どうやらシフ殿も眠っているらしく、目を閉じて身体を丸めている姿が観察出来る。

その隣で会話をしているのはアルトリウス殿とキアラン殿であり、2人は現代の衣服を着用している様子。

 

アルトリウス殿のアレはなんて言う服だったか。

上下統一された色であり上着にはちゃっくが付いていて、両サイドには縦一本の黒い線が通っている。確か運動などで使う物だった筈だ、一度主人殿が来ているのをみた事がある。

 

キアラン殿は紺色のズボンに上には黒い巻き物をしている。ぽんちょだったと思う、いけない。やはり知識として知っていてもちゃんと見なくては分からない、今一度学び直さないと。

 

 

ーーーと、メモに2人の服装を書いてしまいました。

では無くてマシュ殿を見ないと、見てなくても良いでしょうか?

 

正直寝ているだけですので、その、これと言って書く事もありません。

これは、僕の感想でも書いた方が良いのでしょうか。悩んだ末、寝ていた一言では主人殿に顔向けが出来ないので、その様子を書いて見ましょう。

 

とても気持ち良さそうな寝顔をしていますね、マシュ殿自身が元から儚そうな雰囲気を出しているだけに今の姿はとても幻想的でしょう。一緒に眠るシフ殿の姿も相まって余計にそう見えてしまいます。

 

それと服装ですが、何時もの白衣ですね。

アレでは婦長殿に殺菌されないか少しだけ心配があります、婦長殿はシフ殿とアルトリウス殿を見るや何時も消毒液片手に走って行きますので、その中にマシュ殿が混ざると思うと不安です。

 

 

あ、キアラン殿がマシュの頭を撫でました。

僕の所からでは顔が見えませんが、優しい手つきをしているのは分かります。それも一瞬だけでしたね、それ以降は特に触れる様な事はしていません。

 

 

ふと、僕は一体何時まで様子を見ていれば良いのか気になった。主人殿からは期限などは聞かされて無く、様子を見て来て欲しいとだけしか言われていない。

 

しかし此れから数時間となると流石に気付かれてしまいそうである、特に2人が歩き始めたらお終いだ。自分は無闇に動く事が出来ず待機するだけ、近寄って来たら気づくだろうし、迂闊に動けば気付かれる。

僕はどうすれば?

 

もっと詳細をもっとと頭の中の主人殿が騒ぎ立てる。僕の幻聴だが、主人殿なら言い兼ねない。そんなもしもの要望に応えてこそである。

この際気付かれたら正直に言ってしまおう、貴方達の事を見てましたと。勿論主人殿の名前は出しませんが。

 

「我が風魔の技術、見せてあげます」

 

一体誰に向かってそんな事を言っているのか、一言告げると小太郎はメモにスッと何時の間にか持ち替えた鉛筆を走らせた。

忍者ならば手先は器用な物、柔らな動きで双眼鏡を覗きながら鉛筆を走らせて行く。

 

さら、サラリと描き終えた物は僅か数分で出来たとは思えない出来であり。

マシュの目元まで作り込んだ物である、メモだった為かシフは少し小さくなり顔だけしか描かれていない。

 

 

「これ以上は無粋という物」

 

主人殿へと報告するだけの書き留めも出来上がり、それにこれ以上の成果は無いだろうと踏んで主人殿への報告をする為に引き上げる。

 

 

 

そうして小太郎が引き上げて行くと同時に、キアランはたった今まで小太郎が潜んでいた所を見るや否や、口を開いた。

 

「行ったか」

 

流石に距離が離れ過ぎていたのか、小太郎も気付かなかった様だ。果たしてその後はどうなるか?

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

主人殿に書き留めを渡してから、自室に戻って来た小太郎は布の巻かれた刀剣の手入れを始めた。

至る所に武器が置かれている事から察するに一度に手入れする数も相当な物なのだろう。

軽い手入れでも数が多ければ時間が掛かってしまう、終わった頃には夜になっていた。

 

 

「そろそろ見回りに」

「何処に行く?」

 

夜に行うアサシン合同の見回りに行く前に室内に入ってくる人影が1人。

その姿に唖然とする。

御丁寧に靴も脱いでいた。

 

「説明してもらおうか」

 

こじんまりとした主人殿が僕の隣に強制的に並び、キアラン殿の手には僕が書いたマシュ殿の絵が存在する。

 

何処で、何時気付かれた?

そんな疑問を他所に、主人殿をどうにかしなくてはと働かせる。説教は自分だけで良いのだ。

 

「ごめん、小太郎・・・」

「主人殿、お逃げください」

 

その場で静かに、主人殿を庇う様に背中に隠して前に出る。

 

「逃げれるのか?」

 

確かにキアランを抜ける事は不可能、ですが僕にも手段はあります。

 

「主人殿、後ろの掛け軸の裏から隠し扉で逃げれます」

「えっ、待って私そんなの初耳」

「はい。逃げ道が無いと落ち着かなくて、ロマン殿には許可を頂いてましたので御心配は無用です」

 

まさか掛け軸の裏に逃げ道があるとは、流石のキアランも予想が出来なかったのか動こうとすると小太郎が更に前に出る。

 

「行ってください、我が主人」

「普通に謝れば良いんじゃーーー」

「お願いです主人!」

 

その尋常じゃない声にやられて、何時の間にか立花もシリアスに切り替わる。

 

「でも、小太郎がーーーっ!?」

 

因みにキアランは頭が痛くなって来たのか既に退散する用意をしていた。

小さく、なんだコレと呟いた。時々あるんですよ、こういうの。

 

「此処は死地に非ず!早く行け、主人っ!」

 

突き離す様に言われた言葉に立花は咄嗟に駆け出してーーーー。

 

「ッアー!?イッタイ!アシガアァァ!?」

 

転がっていた短刀を踏みつけて倒れた。

 

「あっ、主人殿ーっ!?」

 

直ぐに小太郎が助け起こすと、頬に手が置かれる。

 

「ふふっ、小太郎、私ーーー」

「我が主人・・どうか、ご無事でっ・・・」

 

立花を抱えた小太郎は掛け軸の抜け道を通り医務室へ駆け出し、キアランは退散していく。

なんか阿呆らしくなったのだ。

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「ふっ、容易い!」

「流石です、主人殿。演技だけで切り抜けれるとは思ってませんでした」

「実は演技だけって訳でも無いんだよね」

 

あんな茶番で何故切り抜けれたのか。

立花の足の裏からは血など一滴も垂れていない、短刀の腹を上手く踏んだ事で刃には触れてすらいない。

それをキアランなら気づけるはず、いや気づいていたのだ。なら何故か?

 

カルデアでは必須なスキルが無いのだ。

そのスキルとはーーーー。

 

「いやー、キアランにネタの耐性が無くて良かった」

 

ネタ、悪く言えば悪ふざけにはとんと弱いのである。

お陰で抜け出す事が出来た。

 

「小太郎も良く演技なんて出来たね?」

「はい。時には死に真似も重要ですから」

 

そんな言葉には反応せず立花は自室に戻ろうとした、したのだ。

 

出会ってしまった。

赤い軍服、拳銃が光る。

 

「裸足で出歩くとは何と不衛生な。今直ぐに医務室まで来なさい」

 

ガシリと服の襟を背後から掴まれて、嫌な汗が噴き出てくる。

 

「異常な発汗現象。今直ぐに治療が必要かもしれません、急ぎ医務室まで連れて行きます」

「いや、私は別に病気とかじゃ無いよ、本当だよ?」

 

そんな言葉で婦長が止まるだろうか、断じて否。

隣の小太郎を見ると、ちゃんと靴を履いていた。それでロックから外れたのだ。

 

「た、助けて小太郎!」

「どうかご無事で、我が主人よ」

 

諦めた、カルデアには逆らっては駄目な時がある。

それが今だっただけだ。

 

 

 

その後医務室の中では「殺菌っ!」が行われたとさ。

 

翌日には起こしに来たマシュの手にある絵を見せられ、問い詰められ、散々な目に遭いましたとさ。

 

後に立花は気づいた、マシュの言う通り隠れる必要なんて無かったのだと。

 

 

 

 

 

 

 




何時も誤字報告をくれる方々本当にありがとうございます。
何時も見て下さった人達もありがとうございます。

これ以上のオマケも蛇足と言うかグダるので本当に終わりです、こんな私の文章に評価を付けてくれて感謝しています。

書き始めたキッカケは私がダクソ1が好きでシフ、アルトリウス、キアランの3人が特に好きだったからです。
どうにかこの3人を幸せに、死後でも良いからと考えていた時にFGOならいけるんじゃないか?
なんて完全に思い付きで実行に移しました、いざ書き始めるとアレ、設定キツくねなんて思いながらご都合主義or独自設定だからと震えてました(笑)
実は感想見るのも毎回怖くて怖くて、返信出来てなかったりで申し訳ないですね。

曖昧で終わりますが、これもアリかなと思います。
その後マシュとシフ達がどんな事になるのか、高校での文化祭もシフ達サーヴァントいたら楽しそうだなと考えました。ただ、私が書くとどうしても視点が全てシフ達や好きなキャラに集まってしまうので書きません。
他のサーヴァントとの絡みを期待してた人もいますが、これが私の限界です。
最後なのに前書きがくだらない事でごめんね!

※ 因みに最後が小太郎なのは私がFGOで好きなキャラです。
聖杯突っ込みました。余り活躍してくれませんが。


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