灰の大狼は騎士と会う   作:鹿島修一

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お久しぶりデース。
何時も見てくれて感謝デース。
キャラ崩壊起こしててごめんなサーイ、ゴーさん空気ですまない。
でもさ、ゴーさんの口調とか考えれないです。キアランも私の考えたくーるびゅーてぃで補完しているだけであって正直私の頭の中ではこんなキアランで大丈夫なのかと悩んだ末の口調ですので。
ゴーさんファンの方は本当にすまない。




その後のお話し 学園編(前編)

藤村立花は今、授業を受けていた。

 

なんの変哲も無い日本の高校である学び舎で教科書を開きノートに文字を書き込む姿は年相応の学生らしさを感じさせるが。

 

(なんでいるのぉーー!?)

 

本人は心の中で冷や汗を垂らしながら絶叫していた。

 

教室の後方、普段は何も置いてない最後尾の更に後ろには美男子と称される男性が2人スーツ姿で真剣な眼差しを立花に向け。見るも美しい象牙の髪を束ねた美女がこれまたスーツで佇んでいた。

 

これには周りの女子生徒も動揺を隠せずにヒソヒソと後ろの美男子2人を視界に収めながら会話を繰り広げている、そして男子生徒は何時もより二割り増しにキリリッと顔を整えて真剣に授業に取り組んでいた。

果てには後ろで立っている保護者達も動揺を隠せていない。一番酷いのは途中で抜け出した母親がバッチリと化粧を施して来たのを見た男子生徒と女子生徒の絶望があった事だ。

 

そして立花の隣に座るマシュは仕切りに飛んでくる立花からのアイコンタクトに答えながら、何故あの3人が此処にいるのかと激しく疑問を抱いていた。

 

 

 

何を隠そう、授業参観である。

 

 

(これを、乗り越えたその先ーーー私は死ぬかも知れないっ!)

 

そして立花はこの後の休み時間が来る事を拒否したかった。

 

 

そもそもの原因は3日前にまで遡る。

 

 

 

日本への帰郷を果たした立花はマシュと共に学校に通い始めて半年が経った時にそれは訪れた。

 

サーヴァントの中には致命的にまで歪んでいる様な輩はいない事もありこれもマスターの為だとカルデアに留まっている者、やる事は成したとカルデアを退去した者達がいる。

そしてカルデアに留まった者達は半年の間も契約主である立花の事を見ていない事で一目見たいと愚痴を零し始めた時に奴はやって来た。

 

そう、レオナルド・ダ・ヴィンチである。

 

何処からとも無く取り出した私立〇〇学園 授業参観のお知らせと書かれたプリントだった。

 

勿論の事何の事だと頭に疑問符を浮かべるサーヴァント達に丁寧に語ったのもこのレオナルドである。要は君達の知らないマスターの姿を見る事の出来るチャンスが来たぞと言ったのである。

 

そしてそれに名乗りを挙げたのは過半数にも渡るサーヴァントの数々である。

 

そんな中でどうしようも無かったのが童話作家の某アンデルセンである。彼は日本をブラリと歩きたいと言う気持ちで立候補の為除外。

 

これにはアンデルセンも怒り始め何やら長い言葉を並べていたが誰も聞き入れる事は無かった。

 

 

 

そして急遽始まった授業参観グランプリinカルデアを勝ち残ったのはアルトリウス、シフ(人間)、キアランの三名であった。

聖剣やら固有結界やらが飛び交う中で乗り気で無かったキアランが突如本気を出した事により、対人特化及び暗殺の魔の手がサーヴァント達に襲い掛かり。

聖剣ブッパしたガウェインを後ろからブスリ、ガウェインの聖剣によりエミヤもリタイア。

我らが東方の大英雄アーラシュは何時もの癖で開幕星になり、道連れに強力なサーヴァント三名を星にした事で開幕から荒れまくるグランプリであった。

 

 

これには東方の大英雄も唖然としている。後に彼はこう語る。

 

「俺は最初からステラなんて撃つつもりは無かった。マスターを楽させようとしたら気が付いたら出ていた」

 

彼は何処まで言っても善を成す英雄。今日も彼は何処かでマスターの負担を減らしているのである。

 

そして星になった3人のサーヴァントはこう語る。

 

「星の聖剣を持つ私が星の一撃を貰うとは思わなかったです」

「私は悲しい」

「申し訳ございません、王よ」

 

軒並み協力してくる騎士達が落ちた事で勝負が一気に分からなくなったのである。

 

そして勝者の1人はこう語る。

 

「私が出た意味は無いのではないだろうか。キアランとシフが気が付けば全員倒していた、私も戦いたかった」

 

色々と怒涛の展開にこれで良いのかと悩んでいたアルトリウスは出遅れ、ある一言によってキアランがやる気を出した為に気が付いたら本当に終わっていた訳である。

 

そして見事(?)に勝利を果たした3人は古参のカルデアスタッフ達による日本国での常識を教え込まれた。

 

そしてその3人に教えていたカルデアスタッフ達は皆涙を流した。

 

「話を理解してくれるサーヴァントで良かった!」

 

これの一言に尽きる。

中には面倒やら、知らないやら、我がルールなどと言い出す面々が数人いる為に素直に聞いてくれるサーヴァントと言うだけで彼等は救われたのだ。なんだかんだ言ってキアランさんも仮面が駄目と言われてかなり渋っていたが、アルトリウスとシフのお陰で仮面は諦めてくれた。

控えていた胃痛薬に手を伸ばす事なく終えた授業の後にスタッフ達は手を取り合い、真面目なサーヴァントって最高だぜっ!と硬い握手を交わしたのである。

 

 

 

後日。

 

「では、行ってくる」

「帰ったらマスターの事を教えてくれよな」

 

サーヴァントと職員に見送られて彼等は日本へと旅立った。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

日本の空港に辿り着き、電車に乗ってのどかな街に辿り着いた一行は地図を片手に持ちながらあっちでも無いこっちでも無いと道に迷いながらも無事に学校、ではなくて藤丸と表札が彫られた一軒家の前である。

 

現在、時刻は午前9時。

既に家の中には立花とマシュの姿は無く、母君だけが家の中に居るであろう事はレオナルドの調べによって分かっている。

今日この日は買い物も無く家にいるのだと。

 

「キアラン。私は大丈夫だろうか?」

「俺の頭に耳は無いだろうか?」

 

スーツ姿の2人が何処と無く不安そうにキアランの方を見る。

 

「問題はない。堂々としている事だ」

「了解した」

「なら安心だ」

 

ピンポーン。何もない事再確認したキアランが徐に手を伸ばすと一般的なチャイムが鳴り。キアランの後ろでは「なんだっ!?」やら、「思い出せアルトリウス」なんて会話が飛び出して来る。

 

「はい、何方様でしょう・・・か?」

 

そして出て来た立花の母親は固まった。

目の前にいるのは美形の3人組であり、髪色と容姿で直ぐに外国人だと分かる。

 

「此方は藤丸立花殿とマシュが滞在する家で合ってるだろうか?」

 

その言葉に立花の母親が頭を捻り。

ポクポクポク、チーンと彼女の頭の中で理解が追いついた瞬間であった。

 

そしてーーー。

 

「もう、キリエライトさんたら!来るなら先に連絡くれても良かったのに!ごめんなさい、準備は出来て無いけど家の中に入って入って!」

「ーーーーはっ?」

 

盛大な勘違いを起こしていた。

彼女の連想した事はこうだ。マシュちゃんの髪色は白っぽい色をしている外人さんである。目の前の3人は銀髪と灰色と象牙の美しい髪をした美形外国人さん達である。

導きだされる答えは、マシュちゃんの御家族一行である。そして今日は授業参観日、心配した御家族達が見に来てくれたのだろう。

なんて優しいのだろうと。

 

まあ確かに髪の色は似てなくも無いが、勘違いなのだ。

 

ルンルン気分で家の中に戻って行く彼女の言葉に従って玄関の中に入った3人は、苦い顔でお互いに顔を見合わせていた。

 

「これは、どう言う事なのだ?」

「俺には分からん。キリエライト、マシュの事か?」

「馬鹿なのか貴様等?」

 

そしてキアランは心の中でマシュに謝り、無事に3人揃ってキリエライトに成りましたとさ。

 

 

ーーーーーーー

 

 

「そちらがシフさんで、アルトリウスさん、キアランさん」

 

3人は頷きながらテーブルの上に出されたお茶を繁々と見詰めていた。

 

「なんでも家の娘が大変お世話になったとかで。何か粗相とかしてませんでしたか?昔から少しだけ楽観的と言いますか、そんな感じでしたので」

「いや。立花殿は元気があって良い子だと思ったのだが」

「またまた、キリエライトさんの家のマシュちゃんも素直で良い子だと思いますよ?」

「むっ、それなら良いのだが」

 

そして何故か会話が成り立っていたのである。

 

(彼奴はなんであそこ迄自然に話せている?)

(俺に言われても困るのだが)

 

シフとキアランはマシュの親としての演技など出来る事はなく、仕方がなくアルトリウスに会話を任せているのだ。いや、アルトリウスはそもそも演技などしていないのだけども。ただ普段から思っているマシュの事やらを口に出しているだけであり、演技など皆無である。

 

「あら、お茶は口に合いませんでしたか?」

「うむ、私は紅茶の方が好きだな」

「ごめんなさいね、家には紅茶とか無くて」

 

(馬鹿か彼奴は!?)

 

楽しそうに談笑する2人をハラハラと見ながら、心の中ではそれとなく酷い言われようのアルトリウス。彼は至って平常運転である。

そして立花の母親なだけあってとても寛大な心の持ち主である彼女はアルトリウスの無礼な言葉さえ微笑んで受け流していた。

 

立花が人を惹きつけて尚且つ寛大な心の持ち主であるならば、その寛大な心はきっと彼女から受け継いだ物なのだろうとさえ感じれた。

あはは、と笑う立花の母親。藤丸優香を見ているとああ、確かにあの娘の母親だと思う事がある。

容姿は似ているがそんな所では無くて、在り方と言えば良いのだろうか。

何故か一緒の空間にいて緊張などしないのだ。

 

圧迫感も無く、しかして卑屈そうな感覚も無い。平坦である、ただ普通であるだけの彼女はそれでも他の者達にも安心を与えていた。

 

それは特別な事では無くて、ただの一般人なら当たり前だ。人間らしいのが母娘共通であった。

 

 

「あら? もうこんな時間ね、そろそろ行きましょうか」

 

時計を見ればそろそろ授業参観とされる時間が近づいて来ており、優香は少しだけ待っていてくださいと告げるとリビングから退出していった。

 

「良き母親ではないか」

「無駄に疲れさせるな、馬鹿者め」

「酷くないか、キアラン」

「事実を言っただけだ」

 

 

優香の居なくなった空間にコトリとグラスが置かれる音が響いて、小さくふぅーと息を吐き出す音が聞こえる。

その音にキアランとアルトリウスが首を動かすと、目を閉じて安らいだ顔のシフがいた。

 

「どうしたんだシフ?」

 

なぜ其処まで安らいでいるのか、疑問に思ったアルトリウスが尋ねると眠そうな顔でシフは口を開いた。

 

「・・・太陽が、気持ちいぃ」

 

フスーと空気が漏れる音がシフの口から漏れ出して、アルトリウスが笑うのとは対照にキアランは呆れた顔で手を顔に当てた。

そうだった、此奴らはそんな所も似ているのだったと。

 

実はシフ、途中から話なんて聞いて無かったのだ。

窓の木漏れ日が背中に当たり徐々に顔が蕩けて行くのを抑えながら真剣な顔を繕い、優香が居なくなった瞬間に顔が蕩けた。

それは偉大なる太陽の誘惑を耐えながら粗相をしてはならぬと苦悶の表情で後に語ったそうだ。

太陽には勝てなかったと。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

あの後いい笑顔でリビングに戻ってきた優香が見たのは太陽を背に浴びて気持ち良さそうに安らぐシフを笑顔で眺める2人の姿だった。

3人から話は聞いている、シフさんはアルトリウスさんとキアランさんの間に産まれた子では無くて拾った子だったのだと。

しかし、シフを笑顔で眺める2人の姿を見て恥ずかしながら涙を見せた優香は後にこう語る。

 

まるで理想の家族の様だったと。

実はかなり話を脚色した物であり、その実真実に近い内容なのではあるが。シフは狼なのである、だけどそれを知る人間は残念な事に此処にはいなかった。

 

 

そして気を取り直して家を出て学校へと向かう4人、学校へと辿り着いた3人はその学び舎の姿に驚愕した。

 

「優香殿、アレが学び舎であっているだろうか?」

「はい、マシュちゃんが通う学校ですよ」

 

なんと整っているのだろうか。学び舎と想像して出てきたのは魔術師達が詰めるウーラシールの様な所だったが、外見からは明るい印象を受ける物だった。

かなり大きな施設であり、成る程、未来の学び舎は素晴らしい物なのだと感涙すらも禁じ得ぬ。

実際に見てみるとその感動も中々心に響いてくる。

 

これは授業も気になると、入り口を探す。

 

「よし、立花殿とマシュのいる所に行こうか」

 

勝手に歩き出そうとする3人を止めた優香は慌てて入り口近くに設けられたテントの様な所を指差した。

 

「学校に入る時はあそこのテントで受付するんです。防犯の為にですよ」

「そうなのか」

「はい、先生方にもキリエライトさん達の顔を覚えて貰った方が良いですから」

 

防犯、そんな事にも気を使う物なのか。

マシュがいれば余程の事が無い限りは犯人も殴殺出来るのでは無いかと物騒な事を考えるアルトリウスの頭は中々に残念な事になっている。

これでも一応日本の事はスタッフから聞かされているのだ、ただ即席だとこれがアルトリウスの限界である。

 

「すまない。此処が受付であっているだろうか?」

「あ、はい。授業を見に来た親御さんですか?」

「その通りだ」

「では此方に通っているお子様の所に名前をお書き下さい」

「ーーーー?」

 

急に鉛筆を渡されてその様な事を言われたアルトリウスは固まった。

お子様?そもそもこの名前が書かれている紙は何なのだろうかと動きが止まった事を訝しむ教師が疑問を浮かべる。

私は一体何処に名前を書けばと悩む、悩んだ所に横から助け船が入ってくる。

いや、言っている意味は分かるがお子様?

 

「相坂先生」

「藤丸さん、お久しぶりです。どうかしましたか?」

「アルトリウスさんはマシュちゃんの家族の人なんですよ」

「そうだったんですか!?えっと、アルトリウスさん。此処のスペースに名前をお願いします」

 

マシュの名前を聞いた教師が驚きの声を上げて、急いでマシュの名前が書かれた横のスペースにサインを促して、冷や汗が垂れる。

 

「これで良いだろうか?」

「えっとーーー」

 

確かに名前を書いて貰ったのだがそれを見た教師が固まる、サインを貰ったのは良いのだが、読めない。

少なくとも日本語では無いし英語でも無さそうなその字は、途轍も無く上手いのは理解できるが読み方が分からない。

仕方が無くその文体の上に日本語でルビを振ろうとした所で綺麗な白い手が伸びた。

 

その手はアルトリウスから鉛筆を掠め取ると、アルトリウスが名前を書いた所の近くに書き慣れない片仮名でアルトリウスの名前を書き込んだ。

 

「これで良いのか?」

「はいーーー」

 

スマイルで顔を上げた相坂教師は止まった。

その瞬間、教師相坂の頭の中に嫁の顔が浮かび上がる。

目の前に佇むスーツに身を包んだ美しい女性の顔を直視すると、何故か淡い青春の記憶が呼び起こされる。

何故か胸がドキドキする、まさかこれが浮気の前兆?

 

そんな事が出来る筈が無いーーーっ!

 

「すいません、秋田先生。体調が悪いので変わって下さい」

「はっ、おい、急に・・・って、おいっ!?」

 

隣に座る教師に任せて相坂は走って校舎の中へと消えた。

 

「なんだ、体調不良か。余計な心配せずに済んだな」

 

体調管理も出来んのかと不満を零すキアランは直ぐにアルトリウスの横に戻り。優香の案内で校舎の中へと入って行くのであった。

 

なんやかんや、ドキドキ初めての授業参観は始まるのであった。

因みにドキドキするのは3人では無くて、立花とマシュである。

 

 

 

 

 

 

その後、ある女性の名前を叫ぶ男の絶叫が聞こえた。

 

確実に余談だが教師相坂は家に帰ると全力で嫁に土下座をかまし。

なんやかんやあって2人は熱い夜を過ごしたらしい。

 

サーヴァントの美貌に打ち勝ったお前は確実に嫁を愛している、自信を持つんだ。

 




平穏な3人は良いなぁ。
私はこんな世界を妄想していたんだよ。
救われない世界じゃなくてさ、終わった後のIFで良いから幸せになって欲しかったんだ。

その為だけにコレを書いた。

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