灰の大狼は騎士と会う   作:鹿島修一

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兎に角短い。
前話からの繋がりは無いです、あの後の事を知りたい人は言ってくれれば書きます。

想像してニヤつくも良いですし、早く書けよと言ってくれても構いません。
但し書く場合は文章が更におかしくなる、と思います。

でもハッピーエンドには変わりないです。


そして狼達は笑う

灰の降り積もった最初の場所を1人、歩く人がいた。

 

兜を捨て去って、希望に満ちた顔をしながらゆっくりと来た道を歩いて行く彼女の心の中は分からない。

灰を被って銀の髪が霞んだ色合いをしていて、それを気にせずに骨で出来た道を引き返した。

 

「誰もいない、誰も知らない」

 

口からポツリと飛び出した言葉は寂しい物ではあったけど、其処に悲壮感は無かった。

彼女は未来の1つを知っている。

 

火が消えた遥か未来で生きる為に戦う1人の少女と少女を護る盾の騎士を。

 

この時代で火を継いでも何も無いのかも知れない、それでも遥か未来はきっと幸せな時代があると思えばこれから起こる事にも恐怖は無い。

 

 

思えば、希望を夢見て旅立ったのだった。

自分にはその希望が無いのだけどと小さく苦笑して大王の眠る場所に戻って来た。

 

「そうだね、未来には道がある」

 

さっきまで燃えていた大王に思う所はある。感謝を伝えたい、アルトリウスやシフから聞いた。

今、私達人間が辛い思いをしているのは分かっているし巻き込まれた私も何故かと疑問に思ったものだが。

 

先人たる神々の王は私達にも希望を抱いていた、決して人間の事を考えずに行動していた訳では無いと知ると、やはり太陽を信仰していて良かったと思わせてくれた。

 

以前と同じ様にソウルを溜め込んだ身体を一瞥して、願ってみる。

 

もしかしたら未来は辛いのかも知れない、でもどうか心を折らないで欲しいと願う。

私の時代でその業を終える事は出来ない、ならその未来へ、その次の王となる人がきっとどうにかしてくれるのかも知れない。

 

こんな呪いを残す事を人々はどう思うのか、いっそのこと此処で火を消してくれと言うのかも知れない。

 

でも、未来に希望を託す事は決して悪い事では無いと知っている。

 

 

火が燃え移り、身体から力が抜けていくの他人の様に思いながら漸く休める事に安堵してしまう。

 

私の隣には誰もいない、あの夜に全てを失った。いや、何れは失くす事が早くなっただけか。

それに見合うだけの成果と希望を知れた。

 

偉大な騎士は安らかな眠りについた、人間は未来へと帰った。

そして友は、安心して墓に寄り添って眠りにつける。

 

後は私が役目を果たせばこの時代の全ては終わって未来に繋がる、その後の事はそうだな、何れ出てくる王の器を持った人に任せるとしよう。

 

 

身体を燃料にしてソウルが燃え上がる、時代を照らし続ける事は無いのだろう、だが眠りにつける。

 

 

ーーーじゃあ、お休み。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

懐かしい匂いに気が付いてゆっくりと目が開いた、太陽の光が眩しくて目を閉じると誰かが笑って背中を撫でた。

優しく暖かさに溢れた掌は、ゴツゴツとした金属に覆われていて懐かしい。

 

頭を撫でた手は、優しく滑り、暖かい柔らかな小さい掌だった。

 

 

「お疲れ様、待っていたぞシフ」

「もう少しゆっくりしていても良かったものを。いや、お疲れ様だな」

「もう、休んで良かったのか?」

 

そう疑問を問い掛けると、驚いた様にする様な感覚がして。やはり笑われた。

何がおかしいのだと、思ってしまうが今だけはこんな時間が恋しい。

 

「誰もシフが休む事に文句を言わないさ」

「本当か?」

「文句を言う奴は私が、私達がどうにかしてやる」

 

そうか、慣れた眩しさに今度はちゃんと目を開いた。

懐かしい木々の匂いに木漏れ日、何時迄も其処にいたいと思える王の庭に俺は丸くなっていた。

 

そして目の前には、何時も通りの鎧を纏ったアルトリウスの姿と。寄り添う様に立つキアランの姿が視界に入って、思わず目からは熱い雫が溢れた。

 

「泣くな馬鹿者め」

「今度はそうだな、ずっと一緒にいられる」

「そうか、ただいま」

「「おかえり」」

 

そう言って笑う2人は手を取り合ってから歩き出した、何処へと行くのかは分からないけどそれに続いて行こうとアルトリウスの隣を歩く。

 

城の中へと続く扉は、今の自分には通る事が出来ない。サイズに違いがあり過ぎたのだろう、仕方が無く出来る様になった人型へと変わり2人に続いて潜り抜ける。

 

ーーーそこは別の世界だった。

 

 

廊下に続くはずの扉は聖堂へと続き、其処には槍を持って立つ、黄金の獅子が待ち構えていた。

 

「久しぶりだな」

「本当に」

 

2人がオーンスタインの前で膝を着くのに続いて自分も膝を着く。

 

「・・・やらなくては駄目か?」

「勿論だとも」

 

そんな会話が懐かしくて再び涙腺を刺激するも、顔には笑顔があった。

 

「ーーー我等が王からの言葉を、変わりに伝えよう。3人とも良くぞやり遂げた、だが休んでいる暇は無い。人理を揺るがす行いが遥か未来で起きている、暫しの休息の後、呼ばれた者から新たな任に着けーーーとの事だ。堅苦しいのは終わりだ、お前達ーーー良く眠らぬ黄金都市に再び戻った。誰でも無い俺が、四騎士筆頭オーンスタインが労いの言葉をかけよう。お疲れ様。そして、再び顔を見れた事を、嬉しく思う。そのあれだ、おかえり」

 

「「「我等大王に使えし騎士、再び戻った事を此処に。そして、ただいま」」」

「伝える事は伝えたぞ、なんだ貴様等っ!?早く立て!」

 

何時までたっても立たない俺たちに怒るオーンスタインは、やはり懐かしくも変わりない姿を見せてくれた。

きっと兜の中では恥ずかしがっているに違いない、なんせそう言う人格では無い。

 

「行こうか、オーンスタイン」

「待て、俺は別にーーー」

 

アルトリウスが彼の手を取り、半ば無理矢理歩き出す。それを阻止しようとオーンスタインも脚に力を込めるが。

 

「王から暫しの休息をと言われたろう。諦める事だ」

 

キアランの言葉で轟沈する。

抵抗する事が無くなったオーンスタインはアルトリウスの腕を振り払い、不機嫌そうに自分で歩けると言うと、素直に着いてくる。

 

 

何処へと行こうと言うのか。

 

そんなの決まっている、何時も太陽が見守ってくれた場所。何時も安らぎを得られた場所。

 

楽しく仲間達と語り合った王の見つめる庭に、彼等は歩き出した。

 

其処には既に王の姿も無く、何時も騒がしかった騎士達の声も聞こえない聖堂だけども。

今この瞬間だけは、彼等は安らかな時間を過ごしているのだと確信が出来ていた。

 

そう、みんな声が弾んでいたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「呼び出せますかね、先輩」

 

隣に立つマシュが不安そうに聞いてくるのを、私は確信を持って必ず来ると答える。

あの日、背中を預けあった狼と騎士の背中を思い出しながらサークルの上に1つの剣を置く。

 

折られて輝きを失ってしまった剣の柄はそれでも重さを感じさせて、何処か脈動するものを感じさせた。

 

 

「来て、お願い」

 

 

 

その言葉でサークルが輝き、誰かがその呼び声に応えた。

 

 

「ーーー一番乗りは俺か。サーヴァント ガーディアン。呼び声に応えて参上した。俺の牙と剣をマスターに預けよう。それより、友を呼んではくれないだろうか?」

 

 

その後、彼等は笑い合って手を取り合うことが出来た。

狼は少女に静かな癒しを与えて、少女は狼に新たな安らぎを与えた。

 

 

 

 

「私は何故また人間の身体なのか?」

「・・・私に聞かれても困る」

 

騎士と刃は、そうだな。

 

狼や獅子、少女達を交えて、今も楽しく笑っている事だろう。

 

 

 

 

 

これはそう、誰も知る事の無かった時代の英雄達が。

 

 

ーーー再び平和を謳歌する物語だ。

 

 

 

 

 





一応本編的な物は完結ですかね。
この後も少しだけカルデアに召喚されてからこんな平和な事があったよ的な事は書きます。

新宿までは書かないし、ソロモンが終わって平和になったよ的な事になります。
新宿入れるとほのぼの出来ないので申し訳ないです、新宿アヴェンジャーとシフの絡みを見たいと言う人も申し訳ない。
いや、私も書きたいんですけどね。

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