雪ノ下雪乃は素直になりたい。   作:コウT

25 / 27
続きです。

久々の更新になります。文化祭編ももうすぐ終わりなので
この物語ももうすぐ終わります。

最後までお読み頂けたら、幸いです。

よろしくお願いします。



初めからわかっていたのなら、仕方ない。

「は、八幡。そ、そんなに見つめないでよ!恥ずかしいから・・・・・・」

「おぉ・・・・・・・」

 

 思わず感嘆の声が漏れた。

 何故なら俺の目の前にはは天使( 戸塚)がいるのだから。恐らくこの中の誰よりも可愛い君が―そこにいるから。

 

「そもそも何で僕がこんなのを着なきゃいけないんだよ・・・・・・調理だけだったはずなのに」

「い、いや仕方ないかもしれないだろう。人手が足らなかったんだ、うんそうだ」

 

 誰か知らんが心の底からの感謝の意を与える。戸塚のメイド服姿をこの目に収めることができたのは文化祭始まってから最もうれしいニュースだ。

 クラスのメイド喫茶にはかなりの反響で現在整理券配布まで行っている始末。ちなみに戸塚以外にも海老名さんや川崎、あの三浦でさえも着ているのだからかなりの傑作物。もちろん本人の前で笑ったりしたら、後が怖いので黙っている。いや似合ってますよ? 本当に(ちなみに本人はこんな恥ずかしいの着てられるか!と怒っていたらしいが葉山に説得され、渋々着ている模様)。

 とりあえずクラスの方は俺がいなくてもまわってるっぽいし、片づけだけは手伝うと言ってるから、大丈夫か。それじゃあ戸塚にさっそくオムライスを作ってもらい、きゅんきゅんしてもらわないとな♪

 

「比企谷、少しいいか?」

 

そんな天国にも舞い上がる気持ちで戸塚の元へ向かおうとしたところを邪魔してきたのは顔を見るとあの胸糞( 高杉) 悪いを連想させるあの爽やか野郎( 葉山)

ちなみに戸部は後ろで必死にオムライスを作っている。さっきから調理場で「まじで俺、パネェでしょ!?」と、周囲に自慢しているようだ。いやお前ケチャップかけてるだけだろ。しかもお前がかけるのかよ。

 と、まあそれは置いといて目の前の葉山の問いに答えてあげることにする。

 

「断る、俺はこれから戸塚に」

「高杉の事なんだが」

「おい無視かよ」

「今のところどういう処置を取ろうと思ってるんだ?」

 

 もう完全無視ですか、そうですか。別にいいけどな。

 

「今のところ何も。ただこのまま看過するつもりはない」

「だけど全校生徒にはすでにあいつが雪ノ下さんに告白する事が知れ渡っている。もしこのまま見逃せば」

「見逃すつもりはないが・・・・・・どこまでやっていいものかどうかわからなくてな」

 

 きっと以前の俺ならこんな事を言わなかっただろう。依頼をこなすためなら、平気で人を巻き込むし、利用する。その方法を取っていた。

 けれど今、そんなことをすれば雪ノ下は悲しむ。そんな顔を見たくはない。

 きっとそうすれば、俺達はもう戻れない。もう昔じゃないのだから。もうあの時とは違うから。

 

「俺もなんかいいアイディアはないか考えたんだが・・・・・・思い浮かばないな」

「正攻法じゃ駄目だ。相手の意表をつく方法がないとな」

「・・・・・・なあ比企谷。こういうのはどうだ?」

「あ?」

「耳を貸せ」

 

 葉山は近づいてきて、ぼそっと耳に小さい声で伝えてきた。やめろよ、ドキドキしちゃうだろ。海老名さんがすぐ横で幸せそうに見てるから。

 

「・・・・・・本気か?」

「俺が嘘を言うと思うか?」

「むしろ偽りしか感じねえよ、お前からは」

 

 それほどまで葉山のプランは呆れた内容だった。

 

「で、どうする?やるなら急いで、仕上げないと時間が無いぞ」

「・・・・・・最後のプランってことで考える」

「そうか」

 

 まさかこいつの力を借りる日が来るとは思わなかったので思わず苦笑する。それに反応するように葉山も笑みを浮かべる。だからそういうのやめろよ。さっきから鼻血を流しているクラスメイトの女子が出血多量で死にそうだから。

 とりあえずこれで対策方法は一つできたがこれだけじゃ駄目だ。というよりこの方法は少なくとも、成功しないものだと思ってるし、俺個人としては本当にやりたくない。なので文化祭終了までに何らかの手を打たなければならない。

 葉山に別れを告げた俺は教室を出て、まずは三年のクラスを見回る。恐らくあいつは準備室で待機等はしない。きっと今もアピール活動をしているはずだ。味方を少しでも多く増やすことがあいつにとっては有利なはずだから。

 その予想は的中して、E組にそいつはいた。

 

「高杉。今いいか?」

「・・・・・・わかった」

 

 ちょうど女子とトークタイム中なので思いっきり邪魔したようだった。ざまぁ! というより仕事しろよ。去年の委員長の方がまだ仕事していたぞ。

 俺達は廊下に移動して、さっそく聞くことにした。

 

「何であんな事を言った?」

「雪ノ下さんと付き合うためなら何でも利用するに決まってるだろう。味方は増やしたいからな」

「だから周囲を味方につけたっていう訳か」

「お前みたいに一人じゃないからな」

 

 自慢しているつもりなのだろうか。友達とやらは多い方が有利というわけでもあるまい。

 

「なあ高杉。雪ノ下に一度振られてるんだろ?なのになんで諦めない?俺なら一度振られたら、潔く諦めるけどな」

「・・・・・・馬鹿か、お前は。彼女は気付かなかっただけなんだよ。だから俺と付き合った後に後悔する。俺と振ったことを。他の馬鹿みたいな女と違って、清楚で知的で。まさに理想の彼女で」

「ち、ちょっとタンマ・・・・・・くくくっははははは!」

 

 そこまで言ったところで俺は吹き出してしまった。なんだこいつは。最近のラノベでもこんなに頭がハッピーセットな奴はきっといないだろう。

雪ノ下が知的で可憐・・・・・・・笑わずにはいられなかった。どう見れば、そう見えるんだろうか。短い期間だったが雪ノ下とSNS上でのやり取りをしていたというならば、少しは雪ノ下の事を知っているとでも思っていたが大きな間違いだった。

 

「な、何がおかしいんだよ!」

「いや悪いな。あーっ笑った。そういやあいつってそういうイメージだったよな」

 

 久々にこんなに笑ったのかもしれない。そうか、雪ノ下って俺達以外から見たら、こんなイメージなのか。

 俺の知っている雪ノ下雪乃っていう女の子は不器用で、本音を言うのが恥ずかしくて、でも努力家で、笑うと可愛い女の子で―多分俺が世界で唯一好きって言える人。

 そういえばどうして俺達ってこんな関係なんだっけ? 信用してほしかったからか。素直になれようになりたかったからか。

 だから今だって雪ノ下はきっと信じてくれていると思う。なら俺は素直に答えよう。俺の最愛の人に近づこうとするこいつに正直に言ってやろう。

 

「悪いが高杉。雪ノ下はお前の事を好きにならないし、お前と付き合わない」

「はあ!?」

「一応だけど俺の彼女だからな。さすがに彼女が困っているのに何もしないっていうのは彼氏としておかしいだろ」

 

 多分この会話をあとで思い出したら、多分恥ずかしさの余り、壁に頭を何度も打ちつけているだろう。それくらい今の俺は何だか空気に酔っている。

 

「なあ高杉。お前今まで何人の女振った?」

 

 ふいに俺の口からそんな言葉が出てきた。

 

「は?いきなり何言って」

「きっとお前みたいなイケメンは色んな女から告白されてきたんだろうなぁ。だからお前は自分に合う女の子じゃないと満足できないんだろ?自分の中で理想と認められる奴じゃないと好きになれないんだろ」

「さっきから何が言いたいんだよ、お前は!」

「・・・・・・そうやって簡単に人の想いを握りつぶせるのは羨ましいと思っただけだ。気にするな」

 

 そう言って、俺は振り返って、歩き出した。

 高杉は俺を見ながら、意味わからなそうに困惑した表情を浮かべている。そりゃあお前にはわからねえよな。自分なんかを好きになってくれた人がいるんだって思ったことなんてきっとないんだろう。そんな人がいるのに自分には好きな人がいるから、その気持ちに答えられなった時の罪悪感をきっと味わった事なんてないんだろうな。

 

× × ×

 

 

「おにーいちゃん。だらけすぎだよ。文化祭だよ?高校生の一大イベントなんだよ?」

「どんなイベントだろうがさすがに三回目ともなれば、飽きるもんなんだよ」

 

 ちなみに一年目はほぼ不参加で、二年目の去年はまああんな感じでしたよね。

 午後三時。文化祭終了まであと一時間。この時間は特に見る者が無くなって、来場者もぽつぽつと帰り始め、生徒達も片づけをちらほら始める時間だ。多分未だに盛り上がっているのは飲食店関係の呼び込んでる奴らだろう。多分作り過ぎた料理などを処分したいのだが規則上値下げは禁止だし、翌日販売することも駄目だ。なので今日売り切らないと自分達で処理することになる。

 とはいえ、この時間なので食べたいっていうよりむしろ眠くなってくる時間だ。俺も部室で一休みしようと思い、特別棟へと向かっていたのだが途中で最愛の妹、小町との遭遇イベントで、今は二人で文化祭を回っている。今日戸塚のメイド姿見れる+妹と手を握り合いながら、手を握り合いながら!文化祭を回るとか明日大雪か俺、死ぬんじゃね?

 

「というか小町は友達とかと回らなくていいのか?」

「・・・・・・小町、友達がいないの」

 

 そう言って、落ち込んだ表情をみせた。

 え?いや待て待て待て。小町に友達がいない・・・・・・まさか。

 

「もしかして俺の・・・・・・せいか?」

 

 これは中学の時なんだが中学時代の俺はまさに暗黒魔境時代とも言える日々を過ごしてきたので俺の名を知らないと流行に遅れていると言われたレべル。

 で、そんなある日だったんだけど小町が泣きながら家に帰ってきた日があったんだ。血相変えて、慰めようと小町の元に行くと、

「ははは・・・・・・友達にもう話しかけないでって言われちゃった」

 と、小町は無理して笑っていた。

 原因はもちろん俺だ。比企谷なんて名字は同じだから、きっと小町も他人のフリで突き通せない部分があったんだろう。その日以上に俺は自分の行いを悔やんだ日はない。自分のせいで妹にあんな表情をさせてしまったことを本当に後悔している。

 小町が入学してからは特に問題は起こしていないがもし上級生経由で一年生達に俺の噂が流れてきたとしたら・・・・・・。

 

「・・・・・・その、すまん」

「なーんてね!」

「へ?」

 

 パァっと先程の表情とは打って変わって、明るく笑みを見せ始めた。

 

「お兄ちゃん、小町を誰だと思ってるの?友達の一人や二人くらいいるに決まってるじゃん。今の時間みんな部活の出し物とかで回れないから、代わりにお兄ちゃんと回ることにしたんだ」

「・・・・・・」

 

 ちょっとでも隙を見せるとすぐこれだ。可愛げのあるようでない奴だよ。

 

「てか何でさっきから手を握ってるんだ?」

「こうした方がお兄ちゃん嬉しいでしょ?」

 

 さすがだよ。しゃあねえ、許してやるよ。俺が喜ぶポイントを上手く漬け込んでくるとはやりおる・・・・・・。

 

「で、どこ行くんだ?もうやってそうなところなんてないぞ」

「ん?そうだなー。じゃあそこでいいや」

 

 と、小町の見ている先にあるのは一年生の出し物で、教室の前に『ザ・占いベストテン!』とでかでかと書かれた看板がある。

 説明書きを見ると色んな種類の占いをやっているらしくて、誕生日、手相、水晶、星座。予言なんてものもあった。

 今から他のとこいこうにもどうせもうすぐ終わりだし、文化祭が終われば、俺達実行委員は色々と話し合いがある。つまりゆっくりできるのはあと数十分というわけだ。

 

「で、どれやるんだ?」

「うーん・・・・・・せっかくだしこれにしようよ!」

 

 と、小町が希望したのは予言。やっぱ気になるよなぁ、それ。

 係の生徒に案内されて、奥の席へと案内される。カーテンで周りが覆われ、机の上に火のついたロウソクが置かれているだけ。なんとなく雰囲気は出ている。

 

「それじゃあまずこちらの紙にこれからみたい未来について、書いてください」

 

 占い師の恰好をした生徒は紙とペンを差し出してきた。その時ふと後ろの方に、

『絶対当たる!未来視』

『ノストラダムスの予言の全て』

 等と書かれた本が積まれているのがみえた。もう隠す気がないのだろうか、普通に本の表紙も見えている。つかノストラムスはスケールでかすぎだろ。そんなこと聞きたい奴いんの?

 小町はちゃっちゃっと書いて、渡していたので俺も適当に明日についてと書いて、渡した。

 何で明日について書いたのかはわからないけどふと思いついたのがそれだったし、何より知ることに対して、何も恐怖もなかったから。

 紙を渡すと占い師の生徒は紙を重ねて・・・・・・ロウソクの火につけ始めた。いきなりの事に俺達はぽかーんとしている。いや何してんの?まじで。火事起こしたら、本当にシャレにならないよ?

 しかしすぐに水が入ったバケツを別の生徒が持ってきて、その中に紙を入れる。

 

「お待たせしました。ではまずそちらの女性の方から」

 

 こほんと咳払いして、占い師は口を開いた。

 

「一年後ですがあなたは生徒会長として、波瀾万丈の毎日を送ることになり、きっと楽しいだけでなく、辛い日々もあると思います。でも優しい男性があなたを支えている姿が見えるのできっと良い未来が待ってるでしょう」

「本当に!?お兄ちゃん!私、生徒会長だって」

 

 本当にあり得そうな未来でどういえばいいかわからなかった。ま、まあさすがに生徒がやる占いだし・・・・・・いやそんなのはどうでもいい。

 

「おい男性ってどういうことだ」

 

 目の前の占い師を目を細めて、睨むとひっという声と共に怯えていた。

 

「い、いや私の予言ではそう見えましたので」

「根拠は?」

「そ、それは」

「はい、ストーップ。お兄ちゃん、夢を壊すようなことはNGだよ?」

 

 止められてしまったのでここまでのようだ。俺が卒業した後に小町に近寄る害虫がいるとは・・・・・・かくなる上は留年も辞さない。

 

「で、では次にそちらの男性の方なんですけど・・・・・・」

 

 そんなことを思っている間に占い師がおどおどしながら、俺の結果発表を始めようとしてくれていた。

 しかしどうにも困っている様子だった。

 

「その・・・・・・すいません。わかりませんでした」

 

 と、頭を下げられた。

 

「え?」

「未来が見えないってそんなことあるの?」

「は、はい」

 

 申し訳なさそうに占い師は答えた。

 

「まあわかんねえなら、しゃあねえよ。さてそれじゃあいくか」

「うん!」

「すいませんでした・・・・・・」

「いいよ、別に。あ、それと火の扱いだけど念の為明日からは実行委員会で発行した許可証をわかるところに出しといてくれ」

 

 そう言って、腕につけてある腕章を見せると、「は、はい!」と返事をする。権力には適わないようだ。

 教室を出ると残り時間三十分。文化祭初日は間もなく終了を迎える。

 

× × ×

 

 もう見回るものもないので今度こそ部室へ戻ろうと小町に提案したが、

「あと一か所」

 と、言われたので付き合うことにした。まあ妹がそれほどお兄ちゃんと一緒にいたいことを望んでいるなら、仕方があるまい。

 小町に連れられ、次の教室へと行くと思いきや、階段をどんどん登って行き、気付けば学校の一番上―屋上に来ていた。

 ちょうど一年前だった。あの時の俺のステージは今と違う空気があった。青い空の下であんなやり方しかできなかった。今だったら、もっと違う方法であいつを助けることができたのだろうか。葉山とあいつの取り巻きと協力して、自分自身も傷つかないやり方があったのかもしれない。

 でもきっとあの時の俺はそういうことしかできなかった。あの時の精一杯の自己表現であいつとコミュニケーションを取るにはああするのが一番だったから。俺が思ってくれた通りにあの場にいた全員が動いてくれたから。

 

 誰も傷つかない世界。

 

 そんなものなんてきっとないのかもしれない。傷ついて、傷ついて―得るものがある。

 それを何て呼ぶのかはまだわからない。いやわかっているんだろうけどそこだけ俺の頭の中にシャッターがかけられたように見えなくなっている。

 

「へえー屋上ってこんなふうなんだ」

 

小町はフェンスの網から覗き込むように街並みを見つめている。ここから見る景色は二度目。街並みは一緒。でも見る景色は何か変わっている。そんな気がした。

 

「にしてもさっきの占い何でわからなかったんだろうね」

「何がだ?」

「お兄ちゃんの未来だよ。私の未来はわかったのにお兄ちゃんがわからないっておかしいよね」

「そんなこともあるんだろ。むしろそういう演出かもしれないし」

 

 ふいにそう答えていた。

 本音はわからなくて、ちょっとだけ安心していた。恐怖がないって思ってた。思っていたのにわかりませんでしたと言われた瞬間に、安堵している自分がいた。

 

「ねえお兄ちゃん」

「何だ?」

「聞きたいんだけどさ、いろはさんと結衣さんならどっちが好き?」

「・・・・・・唐突になんだ」

「いいから答えてよ」

 

 小町に一歩ずつこちらに近づいてきて、俺の目の前で止まると顔を覗いてくるように見つめてくる。

 

「答えらんねえよ」

「じゃあ雪乃さんと結衣さん」

「お前はいつからそんな悪女になったんだ?」

「雪乃さんかー」

 

 小町はいたずらっぽく笑った。

 初めからわかってるくせに何を聞いてるんだ、こいつは。

 ふと震えを感じた。ポケットにあるスマホからなので取り出すと着信が一件。相手はちょうど話題に出たばっかの女子。

 

「小町、雪ノ下から呼び出しだ。そろそろ」

「じゃあさーじゃあさー」

 

 小町はぴょんとジャンプして、ちょうど一メートルくらいの距離を作って、俺の方を向く。

 

 

 

「小町と雪乃さん、どっちが好き?」

 

 

 

 

 笑みを浮かべる妹。それを見て、呆然とする兄。

 傍から見れば、兄妹に見えないだろう。俺だって、本当に目の前にいるこんなにも可愛い女の子が俺の妹だなんて信じられない。

 

「究極の選択だな」

「どっちも絶世の美女だからね」

 

 悪魔みたいな事を考える子だよ、こいつは。

 その悪魔が口を開いて、話を続ける。

 

「私ね、何でお兄ちゃんの未来が見えなかったのかわかる気がする」

「なら教えてくれ」

「だーめ。だって、お兄ちゃんはもう知ってるはずでしょ」

 

 妹には隠し事ができないと聞くが本当のようだった。

 小町はそう言って、再びこちらに近づいて、正面から抱き着いて、

 

 

 

「お兄ちゃん。負けんなよ」

「任せろ。俺は負け戦には挑まない」

 

 

 そう、負け戦には。

 だから今回の戦いは勝つことしか見えていないのだ。どういう結果になるかなんて考えるな。どうすれば高杉の告白を阻止できるかなんてもう面倒だ。

 

 

 雪ノ下雪乃は素直で、俺の事を信じてくれている女の子。

 

 

 午後四時。文化祭一日目が幕を閉じた。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。