雪ノ下雪乃は素直になりたい。   作:コウT

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ちょっと最後の方でキャラ崩壊となっている部分ありますので嫌いな方はスルーしてください。
ストーリー上の都合でキャラ崩壊しています。


今回も温かい目でお読み頂ければ幸いです、
よろしくお願いします。


その動画に出会ってしまった。

 

 

「ただいま」

 

 おかえりなんて言葉が返って来るはずがないのにいつも言ってしまう。部屋に入り、電気をつけると朝と変わらない風景。これから夕飯を作って食べて、お風呂に入って明日の支度をして寝る。

 傍から見ればつまらない生活だけど学校終わった後はいつもこんな感じ。たまに姉さんが来て、騒がしくなるけどその程度。

 そもそも由比ヶ浜さんみたいに友達と電話したり、テレビとかも見ないのでやることがない。せいぜいパソコンを起動して、動画サイトをいじる程度だ。

 

「はあ……」

 

 私以外誰もいないからため息の音も余計に響く。原因はわかってる、比企谷君と私の事。

 比企谷八幡という人は色々と捻くれた考えで他人を安易に信用しようとはしない。それは私も同じで最初はお互い信用してなかった。けど今は違う。彼のことを信じる人が周りには沢山いて、彼もまたその人達のことを信じようとしている。彼の言ってた本物が今みたいな時間ならそれを壊すようなことは絶対にしたくない。

 でもそれを我慢できるほど私達は我慢強くないだろう。先にその均衡を破るのは私か由比ヶ浜さんか一色さんか。いやそれ以外にも彼のことを慕っている人はいるはずだ、なんかもう考えれば考えるほど頭が痛くなる。

 もうやめよう、やめよう。考えても仕方ない。ソファーに座ると、目の前のテーブルに置いてあるノートパソコンを開く。いつも通り動画を見て癒されよう。気分を切り替えないことには何もできない。

 開いたパソコンの画面でさっそく動画サイトを開く。ここも彼に教えてもらった有名な動画サイトで素人が作ったような動画からちゃんとしたクリエイターが手掛けたクオリティ高い動画と多種多様にあるが、いつも通り私は「子猫大全集」というタイトルの動画を開く。私にとって今はこうすることが一番気楽な時間だ。

 だって彼のことを考えている時間は頭が痛くなるし、それに不安で押しつぶされそうになるから。

 

 

× × ×

 

 

「お兄ちゃん! パソコンが開かない!」

「はあ? 間違えてケーブル抜いたんじゃないのか?」

「違うって! いいからきてよ!」

「わかったわかった……」

 

 

 小町に腕を引っ張られ、そのまま小町の部屋に入る。相変わらず整理整頓されてるな、この部屋。しかしどうにも机周りにぬいぐるみがたくさん置いてあるのは少しグッときたぞ、グッとね。

 まあそれは置いといてパソコン、パソコン……あ?

 

「ちゃんと起動してんじゃん。何が駄目なんだ?」

「いやだからYOU○UBEみたいのに開かないの!」

 

 ネットかよ。たまにいるよなーネット開かないことをパソコン開かないっていうやつ。流石に外では恥ずかしいから間違えないでね。

 

「てか再起動はしたのか?」

「再起動?」

 

 もういい、お前がパソコンに疎いのがわかった。慣れた手つきでさっさと再起動させると画面がパッと暗くなり、すぐにまた光り始めた。

 

「ほれ。これでもう1回開いてみ」

「……あ! 開いた! さすがお兄ちゃん!」

「いやほぼ何もしてないから。つかこれぐらい自分でできるようになれ」

「でも妹が困ってたら助けるでしょ? ね?」

 

 ウインクしながらそういうのやめろ。否定しにくいだろ、否定する気は元からないけど。

 

「そーいえば最近どうなのー?」

「どうなのって?」

「いや雪乃さんとか結衣さんとかいろはさんとかと何かあったかなーって」

「何もねえよ。毎回何かあると期待すんな」

 

 そんなに期待するほど何かあるならもっと有意義な人生になってるぞ、俺。

 

「いやさー小町も4月から奉仕部の一員だからもし何かあるなら今のうちに知っとこうと思いまして……」

 

 そう言ってえへへと笑う小町から少し一色と同じあざとさを感じる。

 まさか本当に……いや合格するとは思ってはいたが無事総武に合格するとはな。さすがは俺の妹だ。と、同時に俺は妹に近づく輩を成敗するべく警戒をいつも以上に強めないといけない。変な虫がついたら即取り払うからな、安心してくれ」

 

「いやさすがにそれはやめて。色々と嫌だ」

「え? 何が?」

 

 幻滅したような顔で俺を見る小町。何か言ったか? 俺。

 

「ところで奉仕部は春休み活動ないの?」

「あーなんかやるとかは言ってたけど詳しいことは聞いてないな。聞く前に一色に拉致られたから」

「最近お兄ちゃんいつもいろはさんの手伝いばっかだよねー。ひょっとして一番乗りはいろはさんか……」

 

 なんか最後の方だけ声が小さくなり、聞き取れなかった。どした?

 

「まあとにかく何か奉仕部で活動やるようなら言ってよ! 小町も行きたいし」

「ああ、俺の代わりに行ってきてくれ」

「お兄ちゃんも行くんだよ! もうすぐ受験勉強で部活も引退なんだからちゃんと参加しなよ!」

「はいはい……」

 

 引退ねぇ……させてくれるのかな? 

 

 

× × ×

 

 

 いつの間にか動画を見始めて二時間。夢中の余り、時間の経過を忘れてしまった。毎回のことなのだが一度夢中になると没頭してしまうのが私の悪い所。姉さんにも前に言われたことあったから早く直さないといけないとは思ってるのだけど……。

 さて早く夕食作らないと。私は動画サイトを閉じようとしたが、ふと動画一覧にある動画タイトルの文字が目に入り、思わず手の動きを止めてしまう。

 動画のタイトル「恋愛成就」ただそれだけのタイトル。こういった類の動画ははっきり言って信じないし、そもそも何の根拠もなしに恋愛成就について語られても信憑性がないと思ってたから見たことはない。

 

「……本当……なのかしら」

 

 いつもの私ならこんなのを見ようとはしない。でももし……もしこれで少しでもあの二人より先に進み、比企谷君に私の想いが届くのなら……。気付いたらその動画をクリックしていた。

 

『皆さん、こんばんは! さて……さっそくですがこの動画を見ているということは恋に悩んでいる!……ということでお間違いないですかね? 確かに恋というのは思うようにいかず、日頃悩んでいますよね。でも! ご安心ください、この動画はそういった悩める方々の為に私の経験から少しでも皆さんのお力になればと助言させて頂く動画です』

 

 思わずため息をついてしまいそうになるくらい馬鹿馬鹿しい出だしだ。同年代の人とかはこういうのを好きそうだけど最初に見て思ったのはこの胡散臭い感じだ。そもそもこの動画に出ている男性。彼は自分の経験からと言ったが、そもそもその過去の経験が動画の説明文等を見ても、どこにも載っていない。どうやらこんなもの見るだけ無駄だったようだ。私は動画を閉じようとする。

 

『まずこれ見ている人に言いたいのは、皆さん本当に相手に自分の事を理解してもらおうと努力してますかね?』

 

 再び手の動きが止まる。何故知らない人に言われた言葉で一瞬動揺しかけてしまったのか。私は別に……努力してないわけじゃ……。

 

『自分が努力しているつもりじゃ駄目なんですよ。確実に相手を伝えるためには、言葉だけでなく、行動もしないと駄目なんです!』

 

 駄目だ、早く消さないと。これ以上私を責めないでほしい。行動してないって……そんなの私が一番わかってるのだから。もう見るのはやめよう。

 

『でもご安心ください。今、それに気付けばまだ間に合います。これから行動することによってあなたは好きな人と結ばれる可能性が少しずつあがってきますから。これはその為の動画ですから』

 

 ……もう手遅れだった。私にはもう動画の中で語る男の言葉しか入ってこない。

 

 

× × ×

 

 

「はあ……」

「あ、おはよ、ヒッキー。どうしたの? ため息吐いて」

「どうもこうもお前。今日から何が始まるかわかってんのか?」

「何って学校じゃん? 寝ぼけてるの?」

 

 お前にそんな風に言われるとはな……。長期休みが終わってしまったことの恐ろしさを知らないからそんな風に言えるのだろう。きっと引きこもってた俺とは違い、毎日クラスメイトと遊んだりしていたお前はさぞ学校が始まるのを楽しみにしていたのかもしれない。

 まあ最も引きこもりって言えるほど引きこもりじゃなかったけどね、春休み。奉仕部の活動自体は平塚先生からの連絡がないので、のんびり過ごせると思ったが残念! 生徒会の陰謀により、またも無償労働させられてしまった……。そろそろ労基いくぞ、おい。まあ企業じゃないので相手してもらえないが。

 そんなこんなで春休みは一色と一緒に書類整理したり、入学式の準備したり、買い物に行ったり、映画見に行ったり……後半あいつに無理矢理連れられたようなもんだがな。

 さらに今、隣で話している由比ヶ浜も春休みしつこく誘ってきたので一日だけ遊びに付き合うことにしたが、まあこの子疲れを知らないのなんの。

 そんなこんなで春休みは二人に連れまわされたが、雪ノ下からは唯一連絡が来てない。いや来なくていいんだけどさ。ただ、あまりにも二人から連絡来過ぎるので少し気になってしまった。

 

「ほら。早くいくよ」

「わかったから手、引っ張んな」

 

 もうすでに周りの同級生らしき人が何人か見てるから! ここ通学路だから!

 

「どーせクラス替え見て、その後始業式だろ? ならのんびりでいいだろ」

「そうだけどクラスに誰がいるとか気になるじゃん」

「いや全然」

 

 ボッチなのを忘れてしまったのか。まあ俺は戸塚がいればいいけどね、何でも。

 とりあえず校門が見えてきたので、そのまま校内に入ろうとすると後ろから声が聞こえてきた。

 

 

「ひっきがっやくーん」

 

 

 はあ……新学期早々魔王討伐イベントは勘弁してほしいぜ。さすがにそれはきつい。

 

「ねえー何で無視するの?」

 

 振り返るな、振り返ってはいけない。振り返ったらゲームオーバーだ。

 

「ひ、ひひひひ、ヒッキー」

「おい、何振り返ってんだ。新学期早々雪ノ下さんに絡まれるのは面倒だ。早く行くぞ」

「ち、違うの!」

 

 は? 何が違うんだ? てかどうしてお前はそんな驚いた表情してるんだ。

 

「何が違うんだよ」

「え、え、えええーと」

 

 パニックになってるのか由比ヶ浜は口をあけながら、目を見開いている。

 仕方ない、早々に相手するか。そう思って振り返ると、

 

 

「あ、やっと振り返ってくれた。おはよ、比企谷君」

 

 すまない、まだ夢の中のようだ。もう一度目を擦る……変わらない。

 

「えーと……すいません、どちら様ですか?」

「えぇ!? しばらく見ない間に忘れちゃったの!? もう比企谷君はしょうがないなー」

 

 

 そう言って今まで見たことのないような笑みをこちらに向けて……。

 

 

 

 

雪ノ下雪乃は口を開いた。

 

 

「また今日からよろしくね! 比企谷君!」

 

 

 

 




はい、ようやく物語スタートです。
この物語はゆきのんが素直になっていくまでのお話で
今後のお話でこのようなキャラ崩壊シーンが何度かありますので
ご了承お願いします。

ちなみに何でキャラ崩壊したのかは次のお話で。

では

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