今回で、眷属全員が判明でしょうかね。。
「最後は俺か。オリアクス侯爵家の次期当主、アステリオ・オリアクスだ」
比較的まともに生き残った椅子を使い、若手悪魔の中でも優秀な
そんな状態で6人は互いに軽く自己紹介をしていた。最後のオリアクスが自己紹介を終え、話は雑談へと向かう。
「大王、大公、現魔王輩出家ときて我がオリアクス侯爵家。場違いに感じるのは俺だけか?」
「実力が有ったからこそ、俺たちと肩を並べている。胸を張れ、お前は強い」
「前まで『スプーン曲げ』と呼ばれていたとは思えませんしね」
ディアドラの発した一単語に、「ぐっ」と声を漏らすアステリオ。
その様を見て、この場が同情する者と不思議そうな表情をする者の2つにきっぱり分かれる。
その後者側の一人ーーグレモリー眷属の唯一の兵士、兵頭一誠が自身の主にその意を聞く。
「部長、『スプーン曲げ』ってあだ名ですか?」
「おそらくね。私はあまり詳しくないのだけれど」
彼女もその意を知らなかった。そこで、リアスは親友であるソーナに目を向ける。ソーナは目をそらし、アステリオに困惑した様な表情を見せた。
どうやら話してもいいか、迷っているらしい。彼はそれを見つめ、片手で額を抑える。
「リアス嬢、俺から話させてもらう」
「俺は故オロバス家の『歪曲の魔力』が何らかの影響で持ち合わせている。だが、どうも俺には魔術の才というものが欠けていた様でな」
「せいぜい出来たことが『スプーン曲げ』って訳なんだ。つまり、そのあだ名は『宝の持ち腐れ』を意味する蔑称ということさ」
アステリオが独白しているところに、テトは彼の右膝の上に座ってしゃしゃり出る。その目つきは普段の飄々としたものよりも幾分か鋭さを持っており、美少女センサーの反応を感知した一誠が目を合わせた瞬間、身体を少し震わせる。
テトの帽子が視界を遮っているため、アステリオにはテトがどんな目をしているかは分からないが、取り敢えず膝上からの撤去を目的に、地につけているつま先を支点に両膝を上げる。彼の膝の上に胡座をかいているテトも一緒に上がり、膝を机にぶつけ声を上げることになった。
「おわっ、とぁい!?ーーりょ、両膝が……」
「場を弁えろ、テト」
「はいはい、わかったよー」と言い捨て、トコトコと元いた場所へ戻っていくテト。その姿を悪魔総勢は違和感を感じたかの様に凝視する。
「何故でしょうか。彼女の姿を見た瞬間、僅かに頭痛がしたのですが」
「……気のせいではないか?あと、あいつは男だ」
「シークヴァイラ、こいつの眷属は何かとおかしいところがある。今はそれだけを覚えておけ」
心当たりがあり過ぎる現象にアステリオは目を伏せながら誤魔化す。ジーッと睨んで来るシークヴァイラを見て、事情を知っているサイラオーグがアステリオを支援することで、彼に関する話題は終わりを迎える。
その支援に、アステリオの眷属の一部が反応するが、自覚があるようで何より。と彼らの王はスルーする。
「ーーえっ!男なのかよ!?」
「イッセー君、声が大きいよ」
「だって、あの子間違いなく美少女で……まさかギャスパーと同類!?」
「い、イッセー先輩……僕の名前を大きな声で呼ばないでぇ」
兵藤一誠の驚きに満ちた声も頑張ってスルーしたのだった。正しくは、ギャスパーと呼ばれたリアスの眷属が女であるという、より大きい驚きに塗りつぶされていた。
「ん、女だと思ってた。あの子変装の才能あるよ」(恋)
「しかし、使い道の分からない情報ですね」(クラムベリー)
「恋殿からの忠言なのですぞ。有益なものに決まってるのです!」 (音々音)
「お前はテトとチェスでもしてろ。正直、面倒だ」(◼︎◼︎)
「ズバッと言い過ぎではないか、って俺に八つ当たりするな、音々音ー!」(凶真)
「うるさい、この無精髭!飛び膝蹴りしてやるのです!」(音々音)
「貴様のそれは飛び膝蹴りではなく、ライダーキックではないかーーッ!!」(凶真)
「チェス盤なら有る……て、こりゃ聞いてないか」(テト)
もうやだ何このカオス。現実をもスルーしかねないアステリオの両肩に置かれる二つの手。ソーナとサイラオーグの手だ。
「頑張れ」「頑張ってください」
「お前ら、少しは俺の身になってはくれないのか?」
慈悲などない。だって、悪魔だもん。
その頃、円卓から少々離れた場所では、無言の争いが繰り広げられていたりする。
「 、 !」
「 、 !?」
鎖によって背中合わせの状態で縛られているめぐみんとステイルを見て、「これ、どうすればいいのよ」と愚痴を漏らす耶倶矢。その言葉に縛っている張本人、夕弦は首を振るだけ。
「残念。まず、アステリオがお二人のことを忘れている様です」
「えー……ちょっと待ってて。アステリオとクラムベリーに聞いて来る」
夕弦の発言に、耶倶矢は何度か表情を変えた。最初は流石にそれはないでしょ、と信憑性の薄さに眉をひそめ、次にアステリオの方を見て、あの状況だと忘れるかも、と軽く頭を縦に振る。片割れとは違って、感情が顔によく現れている。そして、他人に気遣いが出来るいい子だ。
「……すまない、少し席を外させてもらう。ーーお前ら、来い!」
周囲に意を伝えると、彼は眷属全員に聞こえる程度に声を荒げ、部屋の外へと向かう。その声に反応してか、アステリオの眷属は彼を一斉に見る。焦り、安堵、面倒、呆れと様々な表情を浮かべながらも、彼の後を追い、部屋を出る。
「間に合わなかった……飛び火しないといいなー」
行動は遅過ぎたことを悔やんでもしょうがないと、耶倶矢は皆に続いて外に出る。この時、カオスは消え去った。
「今度、あいつに胃薬でもプレゼントした方がいいかもな?」
「それはそれで、彼の心労が増えそうですが」
アステリオが歯を食いしばる様に顔を歪めながら去ったのを見届けた二人の思考は「相変わらず苦労しているな」という言葉で統一していた。
・ナイト
東 ■■
マテリアル2『東のアズマ』