転生青年は行くのさ、ハイスクールD×D!   作:倉木遊佐

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伏せ字にするところを無理矢理作る始末よう。
……早急に当ててくださると、こちらが執筆関連で助かります。ヽ( ̄д ̄;)ノ


胃酸で溶けゆく精神力

「久しぶりだな、ソーナ嬢。人間界の高校生活はどうだ?」

「ええ、お久しぶりですアステリオさん。リアス共々、充実した毎日を過ごしていますよ」

 

魔王領ルシファードに到着し、会合の場へと向かうアステリオ一行は現魔王レヴィアタンの妹、ソーナ・シトリーとその眷属達に遭遇した。学生服を着ている彼女にアステリオは社交辞令ばりの挨拶を交わす。それを聞き、ソーナも同レベルの返事を返す。

その冷静沈着ぶりに彼は声を漏らした。

 

「相変わらずだな。君は」

「そちらこそ。今も昔も、眷属には振り回されている様で」

「……起こす?」

「すまないな、恋。……クラムベリー、念のためにこいつらの声を聞こえない様にしてくれ」

 

何気なく出てきた皮肉に、肌色多めに改造された中華民族衣装を纏う少女が、背中に背負う二人ーー言うまでもなく僧侶コンビだーーを軽く持ち上げアステリオに問うた。

その提案に乗るアステリオだったが、再び口喧嘩されては堪らない。音の操作に長けた『兵士(ポーン)』である少女を呼び、口封じならぬ声封じを依頼する。

 

「面倒ですが、構いません。彼らの口論は騒がしく私もうんざりしてましたし」

 

と肩を竦める彼女。その動作だけで、バラの匂いが微かに放たれる。それに対して、うっとおしい限りだ、と感じるのは、この場でアステリオただ一人だけである。

彼が反応を示さないことに気づいたのかじっと見つめてくる彼女を視界から外し、アステリオは再び前を向く。目前に顔を真っ赤にしてクラムベリーを見つめる少年が現れた。

 

「目を逸らせ、少年。棘に刺されても知らんぞ」

「匙……?」

「ーーっ、はい、何も見ていません会長!」

 

その発言は見たと言っているのと変わらないのだが。無事、少年の心が取り戻されたのを見届けた後、アステリオは未だ仄かに香りを放つ少女を睨む。具体的には派手に露出された絶対領域を。

 

「いい加減隠せ」

「ふふ、昔はよく覗いていたというのに。残念です」

「女性として、その露出は看過できないのです!」

「音々音、お前と恋にも言えることであるのは分かっているよな?」

 

妖艶な雰囲気をさらりと回避して、自身に同意して苦言を呈した少女にこれまた苦言を呈す。この三人の露出具合は男子の目の毒である。更に、彼女らのどちらもがアステリオ特製の軍服を着用した姿を確認していないことが、彼のストレスをステージアップさせていた。軍服は最も賞賛されるべき服装なのだ。

 

閑話休題(吸ってー、吐いてー、吸ってー、吐いてー)

 

精神の安定化に成功したアステリオは、恋の背中で口パクで口論し合う僧侶達を意識の死角に追いやり、再三前を向く。

 

「見苦しいところをお見せした。謝罪しよう」

「いえ……こちらが謝りたいほどです」

 

どちらも気苦労が絶えない様だ。

お互いに溜息を吐いた後に、ソーナが「そういえば」と何かを思い出したのか、ついさっき女性の太ももを激視していた少年を自身の隣に呼び出す。

 

「この子はうちの新人です。お見知りおきを」

「『兵士(ポーン)』の匙元士郎と申します!」

「ほう、見たことない顔かと思ったが、新人か。威勢が良いのはいいことだ」

 

彼女の新人紹介を受け、アステリオはそんなことを宣い、次いで「俺はアステリオ・オリアクス。オリアクス侯爵家の次期当主だ」と自己紹介する。

 

「ソーナ嬢とは二年ほどの微妙なつき合いでな。是非とも、今後会うことがあれば気安く声を掛けてくれ」

「ソーナちゃんの新人君。これは彼なりの冗談だから軽く流してあげてね」

「うおっ!?そ、そうですか」

 

自身を上級悪魔と見做さない発言に、テトが唖然としている匙に目と鼻の先まで近づいて訂正する。

顔をまたしても赤らめる匙だったが、残念ながら今のテトは男のコである。

そのことを匙に伝えてみると、「げ、リアス先輩の僧侶と同じかよ……」と彼は口を漏らす。

こいつと似たような奴がいるのなら一度会って見たいもんだな、と考えるアステリオだが、もうじきその夢は叶うことだろう。

 

「そちらは、僧侶が増えたようですね。神父服とは、何処かの聖職者を拉致したのですか?」

「あぁ、安心してくれ。神父なのは見かけだけで、中身はタバコ中毒の未成年。神も、こいつなら見逃してくれること間違いなしだ」

「み、未成年ですか。身長が2m近くあるのに……」

 

こんなことも「更に個性的な眷属が増えましたね」で片付けられる案件である。いつか「オリアクス家の眷属?あー、あの個性的な方達のことか」となっても可笑しくはない。その『いつか』は、アステリオが胃潰瘍を発症する日と言って過言ではない。

 

そんな会話を展開しながら、アステリオ一行とソーナ一行は会場前にたどり着いた。

何やら上が騒がしいが、あまり気にすることなくエレベーターに乗り、会場である階まで上がる。

 

「アステリオ、騒音に近づいている様に感じるのだが」

「奇遇だな。俺もそんな気がしている」

 

ゆったりと上昇していくエレベーターの中で、アステリオの兵士、科学者の凶真は明らかに聞こえる物音をBGMに彼へそう声を投げかけた。時折起こる大きな揺れにうんざりしながら、アステリオも同意の意を示す。

目的地に到着する寸前、一際大きな揺れと轟音が発生する。搭乗者全員が内心頬をひきつらせる中、ポーンと間抜けな音を鳴らしてエレベーターの扉が開いた。

真っ先に目に入るのは、盛大に破壊された会場の扉と散らばった料理の数々。恋が「もったいない……」と触覚の様に延びた二本のアホ毛を萎れさせながら呟く。あぁ、確かに勿体無い。散乱している料理を全て合わせたところで、彼女の腹が満たされるとは思えないが。

普段から無機質じみている瞳を細め、アステリオは目の焦点を足元からあげる。

そこには、目元がキツめなメガネ美少女とその眷属が歩き去り、それを活動的そうな黒髪の青年と紅髪の美少女を中心とした複数のグループが見送っている光景があった。

その横で眷属らしき数人に介抱されている、身体中にタトゥーを刻んでいる男を視界に入れない様にしていた彼に、キツ目の少女を見送っていた男が気づいた。

 

「これは久しぶりだな、オリアクス」

「あぁ、久しいな。で、サイラオーグ。これは何だ?」

「アガレス家とグラシャラボラス家の対立とだけ言おう」

「なるほど、察した。今さっき出て行ったのがアガレス次期当主ーーシークヴァイラ嬢か」

 

面倒くせぇ事案に巻き込まれずに済んだ様だ、とため息混じりに思うアステリオ。

後に、家柄の差の件で胃をキリキリ痛めることになるアステリオだった。


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