転生青年は行くのさ、ハイスクールD×D!   作:倉木遊佐

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敢えて言わせてもらおう。

登場キャラは2007〜2017年アニメと結構特定が難しいと思われます。
誰か当ててみてくだちい(黒髭


スタートラインの一歩前

「何だ、これ?」

 

 絶賛ネットサーフィン中の彼は、何故か小説サイトの右端にある広告に目をひかれた。

 

『今だけチャンス!?異世界が現実に!』

 

「うえっ、嘘くせー」

 

 彼は無視して、新着の作品を探そうとマウスを動かして、

 

「……あっ」

 

 間違えてスクロールではなく左クリックをする。

 どうやら広告を押した模様、ウイルス混入だけはしないでくれよ、と彼は内心思う。

 小説投稿サイトからポップアップで紹介ページへと飛ぶ様を見て、何が気に触れたのか、彼はすこし覗くことにした。

 マウスでスクロールしながら出てきたウィンドウを流し見していく。

 そこに書かれていた内容は相変わらず嘘くさいもので、このサイトでキャラクター作成をすれば、どこぞの異世界にそのキャラに憑依もとい転生できるというものだった。

 彼は嘘くさいと顔をしかめたが、何ともまあ、キャラ作成のレパートリーが存外に多い。

 最新のソフト採用でパーツ選択制ではなく、日本語入力で大方のイメージを創り上げる。ソフトの中に人工知能でも入っているのか?とふと口をこぼす彼。

 念のため、ウイルス対策ソフトを起動させておき、彼はキャラ作成のボタンを押した。

 ページが真っ黒になり数秒したら、質問と入力フォームが出てくる。

 

『性別を入力してください』

 

「え、これだけで日本語入力かよ」

 

 女か男の二択しかないだろうに、まさか鍋釜有りなのか?

 少しばかし気にしながらも無難に『男』と入力する。

 

『容姿を入力してください』

 

「ここは自分の理想を込めて、細かい情報を打ち込むとしよう」

 

 だが、イケメン過ぎるのも困るとよく聞く。さて、どうしたものか。さんざん悩んだ彼が導き出した結果は、『黒髪で、軍服の似合う青年。容姿は中の上』。

 もうすこし打ち込みたかったようだが、字数制限に引っかかってしまった模様。

 

「字数制限あるなら書いとけよ……次は特典か」

 

 特典を決めるのは構わないが、先にどんな世界に転生するかにもよるだろうに。そんなことを考える程に彼は今、キャラクターメイキングにのめりこんでいた。

 容姿の時とは違い、特に考えることもなく、『ランダム』と打ち込み、直ぐにバックスペースキーを押す。

 

「ランダムだとハズレの可能性があるし、オススメにしておこう」

 

 代わりに『オススメ』と打ち込み、次のページへと移す。

 次に出てきた彼への質問は……

 

『welcome to the world ‼︎』

 

「えっ」

 

 質問ではなく、英文が出てきたのに驚きを返した瞬間、部屋の電気が消え、彼の視界は真っ暗になる。

 

 この停電も一瞬の静寂の後に復旧し、パソコンと照明は部屋には()()()()()にも関わらず、再び稼働し始めるのだった。

 

 

 

 

 

「やあ、アステリオ君。起きた?愛しの僕が起こしに来てあげたよ!」

「……やめてくれ、テト。誰もお前のことを愛しいと思ってはいない」

 

 憎しき太陽の光を浴び、虚脱感を感じながら黒を基調とした寝間着を着た青年ーーアステリオ・オリアクスは目を覚ました。

 首の骨を鳴らすついでに、どこか無機質さを感じさせる赤い瞳を右側に向ければ、エメラルド色の髪をもつ美少女(美少年?)が窓のカーテンを開いていた。

「モーセっ!」と呟いていることから、どのように開いたのか察したアスタリオは起床早々にため息をついた。

 

「む、朝から早速ため息かい。まあ、いいさ。ところで今日は僕、女の子なんだけど」

「性転換する気分だったのか。いや、元より性別は無いな」

「……やっぱ軽く流すんだ」

 

 女の子だから何だ、と内心毒づきつつ、彼はベッドから起き上がり、普段着に着替えるべくクローゼットへと足を向ける。

 

「……何だ、テト」

 

 ベッドから数歩歩くと、どうやって移動したのか、彼女がアステリオの前に立っていた。

 

「……」

「……」

 

 アステリオとテトの身長差は約20センチ。アステリオは意図せずとも彼女の顔を見下げる形になる。

 催促したげな彼の瞳が彼女の大きな眼を捉えた。左右の瞳は緑、青と異なっていて、さらに瞳孔は特徴的で左が黄のダイヤ、右が緑のスペード。

 

「……」

「……うん♪」

 

 目を合わせてから三秒もせずに彼女は両目を閉じて満足そうに頷く。

 

「グレモリー公爵から会合への招待状が来てたよ。若手の有力悪魔が勢揃いだってさ」

「分かった」

「じゃ、僕は先に朝御パンを食べさせて貰うよー」

 

 そう言って、彼女はスキップじみた走り方で部屋を出て行く。

 それを見届けた彼はクローゼットを開き、

 そこに頭を突っ込んだ。

 

「ダメだダメだ、耐えろ俺の理性。あいつは男、女の子じゃない。あいつは男の娘…じゃない!」

 

 彼にも色々あるのだろう。

 性転換する度に女の子らしさを身につけていく彼女にも問題はあるのだが、葛藤を封じ込めている彼も彼だ。

 そんな状態も二十秒もすれば収まり、彼は時々胸を押さえながら普段着ーーイタリア軍服に近しい装飾がされた黒服を着る。

 

「ふん……少々唾液が飛んだか」

 

 左上腕あたりについた水滴を見つけ、ハンカチで拭き取りながら部屋を出るアステリオ。

 その表情には今さっきの取り乱した様子のかけらも残っていない。

 

(テトが朝御パンと言ったからには、朝食はパンなのだろう。下手すれば恋が食べきってしまう。急ぐとしよう)

 

 彼はそんなことを考えると、歩くスピードを少し早めて廊下を歩いていった。

 

 

 

「(もきゅ、もきゅっ)……ん。まだ足りない」

「……」

「残念。お二人のパンはお亡くなりになられました」

「具体的に言えば、無限の胃袋によってね」

「そ、そんな……酷いですよ恋さん!」

「ふん、寝坊するやつが悪いのです。ささっ、恋殿。お代わりはまだあるのです」

「まぁーだ余っているではないかぁ!音々音!」

 

「……やはりか」

「リーダー、これ」

「あぁ、先にとっておいてくれたか。ありがとう」

「別に構わない」

「む、テトはどこいった?あいつ、起こしに来た時はまだ食べてなかったはずだが」

「巻き込まれたくないからと朝食片手にクラムベリーと遊戯室でチェスをしにいったぞ」

 

 カオスを極めたこの状況下でも、アステリオの覆面が剥がれることはない。何せこれが彼の日常なのだから。




キング
アステリオ・オリアクス
オリアクス侯爵家の長男。断絶したオロバス君主家の隔世遺伝により歪曲の魔力をもつ。また、一族の特徴でもある占星術を微弱だが使える。
なお転生の影響か、一族の特殊体質とも呼べる『欲望の無さ』が少々欠けている。
蔑称『スプーン曲げのアステリオ』
特典:歪曲の魔眼→歪曲の魔力(空の境界)、世界軸交錯の感知


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