戦国BASARAの佐助を、AOGの至高の一人として突っ込んでみた!   作:水城大地

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一先ず、前回の最後の一幕からの続きになります。


パンドラへの処遇と、モモンガさんのお食事事情を含めた事を相談してみた

その場は、何とも言い難い沈黙に包まれていた。

 

原因は、それこそ己の失態を悔いるような姿で、床の上に正座して叱咤を待つように俯くパンドラズ・アクターだ。

今回の事は、正直言ってこの場にいた全員のうっかりだと言えるだろう。

彼らが、ほんの数時間前までいた【ユグドラシル】の中では、飲食によるバフ付けは当たり前であり、それはオーバーロードのモモンガに対しても有効な手段だったのだ。

実際に食べる訳ではなく、あくまでもバフ付けの一環として口に運べば消えるものだったから、こうしてオーバーロードの姿が現実になった際に、物理的に飲食不能な状況になるとは考えていなかったとも言えるだろう。

そう考えると、この件でパンドラズ・アクターを責めるのは筋違いだ。

彼からすれば、三人とも普通にモモンガも飲食可能なような対応をしていたのだから、何らかのアイテム効果なり魔法なりで対策済みだと考えていた可能性が高いだろう。

 

だからこそ、全員のお茶の支度をしたのだろうから。

 

そう考えるなら、ここでパンドラズ・アクターを叱るのはおかしいだろう。

しかし、だ。

そう佐助たちが考えていたとしても、パンドラズ・アクター本人が納得しなければ意味がない。

失態を犯したと、床に座ってしまっている彼に対して、【こちらのミスだ】と告げたとしても、素直に頷かない気がするのだ。

彼は、被造物として創造主であるモモンガに対して、多大なる忠誠心を捧げている。

だから、今回のようなミスをすると【全て、己の創造主であるモモンガの意を汲めない、自分が悪いのだ】と、そう言い出しそうだからだ。

とは言え、ここでこのままにする訳にはいかないだろう。

 

もし、パンドラズ・アクターだけじゃなく、今は離れてしまったナザリックのNPCがこの状態なのだとしたら、それこそ佐助たちは精神的にストレスを溜めてしまいそうな環境だからだ。

 

そうならない為にも、佐助たちは先ずはパンドラズ・アクターへの対応を間違えないようにした上で、これからはゆっくりと彼の意識を変えていけばいいだろう。

もちろん、設定として成立していてどうする事も出来ない部分もあるかもしれない事を視野に入れ、ある程度まではこちらが譲る必要があるかもしれないが。

一先ず、今考える事はパンドラズ・アクターへの対応だろう。

モモンガたちも、似たような事を考えているのかどうか判らないが、一先ずこの場には沈黙が下りていて誰も会話をする者がいない。

そこで、佐助が選んだのはまず集団伝言(マスメッセージ)でモモンガとウルベルトに連絡を取る事だった。

 

『モモンガの大将、ウルベルトの旦那。

ちょっと俺様からの提案なんだけど、聞いてくれるかい?』

 

そう集団伝言(マスメッセージ)告げた途端、速攻で食い付いたのはモモンガだ。

 

『佐助さん、この状況をどうにかする方法を思い付いたんですか!』

 

多分、モモンガとしてはパンドラズ・アクターだけに非が無い以上、彼を叱責するのは筋違いだと思っているのだろう。

だからこそ、素早くそれに同意するように返事を返す。

 

『そうなんだよ、モモンガの大将。

多分、このままお咎めなしだと、パンドラの方が気に病んじゃうと思うんだよね。』

 

そこに突っ込んできたのは、ウルベルトだ。

彼としても、今のパンドラズ・アクターの様子は、見ていられなかったのだろう。

 

『あー……そんな感じを漂わせていますね、今のパンドラは。

モモンガさんに対して、失態を働いたって感じで可哀想なくらいに悲壮感たっぷり漂わせていますし。

それで、どんな方法を考えたんです?』

 

そう水を向けるウルベルトに、佐助はあっさりと同意した。

どうやら、この場に居る三人とも今のパンドラズ・アクターの様子は、そう見えていたと言う事なのだろう。

 

『やっぱり、ウルベルトの旦那もそう感じたんだ。

俺様からの提案は、パンドラには罰の代わりにモモンガの大将に飲食可能になるようなアイテムを探させて、それで駄目ならアイテムを作らせるって案はどうだろうってもんさ。

モモンガの大将の為に、パンドラが考える最高のアイテムを用意する事が償いだと言う事にして、ここでの探し物を率先して動いて貰うって形を取れば、本人も納得しないかなって思って。』

 

なので、そのまま佐助は思い付いた事を口にする。

実際、佐助の提案はこの場の対応としては一番問題が無いものだった。

これならば、パンドラズ・アクターは自分の得意分野として最大限の力を発揮し、モモンガの為に最高の物を用意するだろう。

 

『それはいいな。

確かに、これだけ広いクローゼットルームの中から一つだけアイテムを探すのも大変だし、【探せなかったら代案でアイテムを作れ】って言うのが良い。

それなら、パンドラもモモンガさんの為に最高のモノを用意してくれるだろうし、モモンガさんが飲食可能になれば、俺達も気兼ねなく食事とかできるからな。』

 

最後に自分の本音を交えつつ、ウルベルトは佐助の意見に同意してくれた。

ここで反対されたら、代わりの事を考える方が面倒だったので、ウルベルトから反対されなかったことに安堵しつつ、佐助は次の事を伝える。

 

『ウルベルトの旦那は賛成って事で。

モモンガの大将は、この提案に異論があるかい?

もしなければ、モモンガの大将からパンドラに言い渡してやって欲しいんだよ。

多分、それがパンドラに対して一番いい対応だと思うんだよね。』

 

これは、とても大事なことだった。

佐助から言い渡しても良いが、パンドラズ・アクターの気持ちを考えるなら、やはりモモンガが伝えた方がいい。

パンドラズ・アクターが、失態を犯した相手がモモンガである以上、その沙汰もモモンガから与えられるべきだと、佐助は思ったのだ。

この意見も、ウルベルトは反対じゃないらしい。

 

『分かりました、佐助さん、ウルベルトさん。

確かに、俺が言う方がパンドラも納得してくれると思います。

それじゃ、一旦伝言(メッセージ)は切りますね。』

 

佐助とウルベルトの言葉に、安心したような気配を漂わせながらモモンガが同意し、そして伝言(メッセージ)は切れた。

そして、モモンガはパンドラズ・アクターの前に立つと、おもむろに口を開く。

 

「あー……今回の事は、勘違いさせる言動をしていた俺たちも悪かったし、お前がそこまで気に病む必要はないさ。

そう告げても、多分お前は納得しないだろうから、一つ罰を与える事にしようか。

罰の内容は、この後に行う情報整理が終わった後、俺が飲食出来る状態になる様なアイテムを、この部屋にある大量のアイテムの中から探してくる事だ。

もし、俺が使えるアイテムがなければ、お前がその手で俺が使用出来るものを作ってくれてもいい。

俺のために、お前なら最高のアイテムを探してくれるだろう?」

 

「お前なら出来るよな?」と、言わんばかりのモモンガの言葉に、パンドラズ・アクターは承諾の意を示すように深々と頭を下げた。

それを見て、やはりNPCは創造主である自分達に対して、強すぎる位の忠誠心を捧げているのだろうと、佐助は思う。

だからこそ、パンドラズ・アクターからすれば失態に近い事をした自分に対して、こんな風に失態を挽回する機会を与えられ、ますますそれを強くしたのかもしれないと、漠然と感じていた。

まぁ、反発されるよりは悪くないと思いつつ、佐助は次の事を提案する。

 

「あのさ、ウルベルトの旦那。

今回は、モモンガの大将に人化の魔法を掛けてやって欲しいんだけど。

そうすりゃ、大将も一緒にお茶が出来るだろう?

やっぱり、こういうのはみんなで楽しむもんだと、俺様は思う訳よ。

今だけなら、俺様たちでモモンガの大将を守る事くらいは出来る余裕は十分あるし、問題ないと思うんだよね。」

 

そう提案すると、ウルベルトは笑いながら頷いた。

彼としても、このままだとモモンガだけが仲間外れになる今の状況を、放置するつもりはなかったのだろう。

多分、佐助が提案しなくても、彼の方から言い出していた可能性はかなり高い。

 

「確かに、佐助さんの言う通りですよね。

この世界の情報は、まだ全く得ていない状態ですが、俺と佐助さん、そしてパンドラがモモンガさんの側にいる以上、早々遅れを取るつもりはありませんし。

なので、モモンガさんが食事を取れる状況を作る方が優先ですよ。

そもそも、一人だけ食べられずにお預けって、それこそどんな罰ゲームですかって言いたくなりますしね。」

 

ピッと、鋭い鉤爪の指を立てながらそう言うウルベルトに、床に正座していたパンドラズ・アクターも頷いて同意する。

三人が同意している様子に、モモンガも反論が浮かばなかったのだろう。

ここで反論すると、仲間の事を信用していないと言われかねないし、あくまでもモモンガの事を気遣っての提案だった事から、抗い難かったのかも知れないが。

何処と無く、苦笑を浮かべている雰囲気を漂わせながら、モモンガは肩を竦めた。

 

「……もう、三人からそんな風に言われたら、断れないじゃないですか。

解りましたよ、素直にその提案を受けることにします。

それじゃ、ウルベルトさんお願いしても良いですか?」

 

モモンガの同意が出たことで、ウルベルトは素早く魔法をモモンガに使うと、その姿を人に変えた。

瞬く間に、魔法の効果によってモモンガは穏和そうな黒髪黒目の青年に姿を変えている。

その姿を見て、ウルベルトはにっこりと笑って見せると、アイテムボックスから鏡を取り出して、それをモモンガに差し出した。

 

「はい、モモンガさん。

どうやら、こちらでこの魔法を使う場合、【ユグドラシル】の頃に姿を指定していないと、どうも【リアル】の姿になるみたいですね。

以前、オフ会でお会いした時の年齢なのは、多分、俺がモモンガさんの人間の姿と言われてイメージ出来たのが、その時の姿だったからかもしれませんが。」

 

モモンガが受け取った鏡に映るのは、黒髪で黒い瞳の二十代前半の青年だった。

この姿は、確かにウルベルトが言った通り、四年ほど前に最後に行った【アインズ・ウール・ゴウン】のメンバーでのオフ会の際の、優しげな青年だったモモンガの姿をベースに、死霊系魔術師の衣装を着せたような状態になっていると言っていいだろう。

魔法による再現率は素晴らしく、知り合いが顔を合わせれば十人が十人【モモンガだ】と認識出来る姿に、その様子を見守っていたパンドラズ・アクターなどは「これがリアルのモモンガ様……」などと呟いている。

 

一つだけ、今の姿に問題があるとすれば、それはモモンガの服の前面が全開だった為に、腹部の結構きわどい所まで丸見えだと言う所だろうか。

 

流石に、それは拙いだろうと佐助が必死に目で合図を送れば、すぐに気付いたモモンガが服の前を閉じていく。

どこか慌てている様子は、自分がうっかり服の前を開けたままだった事を恥じているのだと、すぐに察する事が出来た。

その様子を見るだけで、アンデッド化した事でモモンガに付与されていた精神鎮静化も、一時的なものだとしても消えているのがすぐに判る。

これで食事などを取れるようになれば、アンデッド化による様々なストレス発散手段がなくなっていたモモンガも、少しは楽になるんじゃないかと佐助は考えていた。

横に座るウルベルトも、似たような事を考えていたのか服を直すモモンガを見て、どことなく安心した要は表情をしている。

だが、そう言うウルベルトだって種族が悪魔化している事で、精神面などに何らかの変化が起きている筈だ。

佐助自身、前世の記憶も追加される分そこまで酷いものじゃないが、微妙に狐族としての影響が出ていないとは言い切れない状況なのだから。

 

この辺りに関しては、やはりきちんとそれぞれの状況を話し合い、どうするのか対応も含めて相談する必要があるだろう。

 

それは、一先ず横に置いておくとして、だ。

これでモモンガの食事関連の問題は、この場においては解決したと考えていいだろう。

何故、この場においてと制限を付けるのかと言えば、単純に魔法を使用した人間化の場合、制限時間の問題が発生するからだ。

ウルベルトが、今回使用した魔法は第八階位のものであり、この魔法の効果が発生している時間は一時間ほどしかない。

つまり、だ。

あくまでも短時間しか効果が無い魔法では、今後の活動を考えると色々と問題があって使えないと言う判断を下しているのだろう。

 

この世界が、人間種と異形種が混在しているような、そんな【ユグドラシル】と同じような世界なのか、それとも

異形種が中心になっている世界なのか、または人間種が中心となっている世界なのかで、それこそどう対応するべきなのかが変わってくるだろう。

最初に上げたような世界なら、それこそ俺様たち全員はこのままの姿で普通に旅が出来るだろう。

二つ目の異形種が中心の世界でなら、むしろこのままで行動する方が多分面倒が無い。

もちろん、そんな世界情勢の中でも転移した場所が人間種の国の中だったら、警戒して人間の姿を取る方が良いかもしれないが。

 

問題は、三つ目に上げた人間種が中心の世界だった場合、だろうか。

 

この場合、確実に異形種である今の姿をこの世界の人間たち見せるのは、はっきり言って得策じゃないだろう。

特に、モモンガはアンデッドの中でも、骨だけのスケルトン種である。

この世界の常識が判らない以上、アンデッドと言うだけで忌み嫌われる事態になろうものなら、それこそウルベルトやパンドラズ・アクターが黙っていないだろう。

佐助だって、自分の全てを捧げる主君と認めるモモンガにそんな対応をされたら、怒り狂う自覚はあった。

もちろん、モモンガが気にしなくても済むように、裏に隠れてだが。

 

《モモンガの大将に、何かしようとする方が間違いなんだよね。

そう言う輩が出る前に、露払いして憂いを無くすのも俺様の役目だと思うし。

でも、まぁ……優しいモモンガの大将は、俺様が傷付く事こそ嫌いそうだし、出来れば穏便に済ませたいかな?

その辺りも踏まえると、やっぱり人に化けるのが一番なんだよねぇ……》

 

つらつら、頭の中でそんな事を考えつつ、佐助はパンドラズ・アクターが改めて紅茶を用意して来るのを待っていた。

先程の騒動によって、すっかり冷めてしまったお茶を改めて淹れに行ってくれているのである。

今度こそ飲めると、期待しまくっているモモンガの姿を見つつ、佐助はこの場で先程の考えを提案しておくことにした。

 

「俺様、一つ提案したいんだけどさ。

もし、俺様達が転移させられた場所が、人間中心の国だったり世界だったりしたら、俺様達は多少面倒でも人間の姿に擬態しておいた方が良い気がするんだよね。

この世界の住人の力が、俺様達と比較してどれ位の位置にあるのか判らないし、実際に外に出るのはある程度の情報収集を済ませてからの話だけど、その為にも決めておく必要がある事とか一杯あると思うんだよ。

魔法とか使って、人間の姿に偽装するのは正直いって面倒かもしれないけど、危険を避けると言う意味では有効な手だと思うし。

だからさ、パンドラも含めて全員の人間の外装、決めちゃわない?」

 

軽いノリで提案する佐助の言葉に、ウルベルトは面倒くさそうに片手を振った。

 

「でも、俺の魔法じゃ短い時間しか人間の姿になっていられないだろ?

モモンガさんは飲食可能にする意味でも、パンドラが人間化のアイテムを用意するだろうとは予想が付くさ。

そのアイテムを俺達も使うと想定して、この状況下で全員分揃えられるのか?」

 

幾ら、パンドラズ・アクターの部屋に眠っているアイテムが予想以上に多かったと言っても、それでも数に限りあるのは間違いない。

作り出すにしても、素材の大半は分断されたナザリックの方にある為、作れるアイテムだって限度があるのだ。

そのウルベルトからの指摘に、佐助はにっこりと笑ってみせる。

 

「実際に、アイテムが必要になるのはモモンガの大将とウルベルトの旦那だけだからね。

俺様の場合、【天狐】の特殊技術の一つに【擬態】があるから、そっちで人間の姿に化ければ自分で解除しない限り解けないから問題なしだよ。

パンドラは、言わずと知れた【二重の影】だらかね。

どんな感じの人間になるのか、ある程度指示して上げれば二重の影の能力で姿を変える事は可能だし。

必要なアイテムの数が二つくらいなら、それこそ何とかなるんじゃないかな。」

 

自分の特殊技術と、パンドラズ・アクターの種族特性を上げてやれば、納得したのかウルベルトからそれ以上特に何かを言うつもりはないらしい。

多分、ウルベルト的には魔法で姿を変えるのは色々違和感が伴うものなのだろう。

その点、アイテムを使用して変化する場合、一時的に種族属性を封印するなどレベルダウンを代価に支払う必要はあるが、アイテムを外してそれを解除しない限り姿を維持できるというメリットがある。

 

その便利さを取るか、それとも自分のレベルを取るかと言う選択になるが、外の世界の情報が一切手に入っていない現状では、まだどちらがいいとも判断できない状況だった。

 

「それに関しては、考える必要はあるとは思いますけど、それよりも優先するべきは外の情報でしょうね。

今の状況では、自分たちがこの世界でどれだけの力を持っているのか、全く判っていません。

そんな状況下で、レベルが下がる選択肢は出来るだけ避けるべきだと言う気持ちの方が、俺としては強くあるのですが、佐助さんのいう事も否定できません。

このままの姿で出歩けるのなら、それに越したことはないでしょうが……偽装も兼ねてパンドラや俺達の人間の姿を決めておくと言うのは悪くないでしょう。

俺たち以外に、この世界に【ユグドラシルのプレイヤー】が来ていた場合、俺達三人とパンドラだけでは対応できない可能性もありますからね。」

 

ウルベルトと佐助のやり取りを聞いていたモモンガが、そう言いながら首を竦めるのを見て、ウルベルトも納得したように頷いた。

確かに、レベルダウンは余り望ましくないが、現状では擬態の手段は必要だと考えるべきだろう。

モモンガが指摘した通り、【ユグドラシルのプレイヤー】が自分たち以外にも同じように転移させられてきていた場合、今のままの姿では問題が起きる可能性が無い訳じゃない。

 

「まぁ、モモンガさんの言う指摘ももっともだよな。

何と言っても、俺たちは悪名高きギルド【アインズ・ウール・ゴウン】のギルドメンバーだし。

その中でも、俺は【アインズ・ウール・ゴウン最強の魔法詠唱者】だし、佐助さんは【アインズ・ウール・ゴウンでも戦士系トップスリーの忍ばない忍】で、モモンガさんに至っては【アインズ・ウール・ゴウンの非公式魔王】だからなぁ。

こちらにその意思が無くても、勘繰られるのは間違いないだろうな、うん。

そう言う意味では、この世界の情報を得てある程度安全が確認されるまでは、俺たちはこの姿を晒さない方向で考えるべきかもしれない。」

 

モグモグと、フィナンシェを手に取って食べながら、ウルベルトはモモンガの意見に同意した。

これで、ナザリック地下大墳墓と一緒に転移してきていたのなら、もう少しだけウルベルトも強気の意見を発していたかもしれないが、現状ではナザリックは自分たちと共に存在していない。

宝物殿の中に収められていたアイテムの中でも、特に貴重で高火力のアイテムや装備が手元にあるとは言え、それでも守りの面で考えるなら片手落ちの状態だ。

そんな拠点が不安定な状況で、流石に無理をするつもりにはなれないのだろう。

最初に、この話を提案した佐助としても、彼らが納得して自重してくれる上に自分の提案を前向きに考えてくれるのが割と嬉しかったので文句はなかった。

 

「お待たせいたしました、皆様方。

新しくお茶の準備をさせていただくにあたり、紅茶だけではなく珈琲もご用意いたしました。

どちらも、先程用意したものとほぼ似たようなバフ効果を持ったものを選択しておりますので、気兼ねなくお好みの物をおっしゃってくださいませ。」

 

そこに、ワゴンを押しながら戻って来たパンドラズ・アクターが声を掛けてきた。

予想よりも時間を掛けてきたのは、色々と好みを考えて用意して来たからだったようだ。

特に、今まで飲食が出来なかったモモンガの事を考えて、色々と試せるように用意してきたのだろう。

ワゴンの上には、飲み物だけではなく軽食も追加されていた。

 

「皆様、茶菓子だけではなくサンドイッチとスープもご用意させていただきました。

ここから先の事を考えると、軽いお食事もされた方が宜しいかと思いましたので。

サンドイッチは、二種類の具を用意させていただきました。

卵とハム、レタスを挟んだシンプルなものと、ローストチキンとチーズ、レタスを挟んだものになります。

また、スープはベーコンや根野菜を刻んで煮込んだ具沢山のミネストローネと、玉ねぎとジャガイモをたっぷりと使ったポタージュの二種類になります。

スープに関しては、どちらも以前作り置きしたものに手を加えた程度の手抜きの物なので、本来は皆様方に提供するのは躊躇われるのですが、状況的に下手に時間を掛けてお待たせする方が問題だと判断いたしました。

もし、お気に召さないとおっしゃるのでしたら、こちらは下げさせていただきますが……どうなさいますか?」

 

不安げな様子で問うパンドラズ・アクターに、三人とも苦笑を浮かべた。

この状況下で、一から手間をかけて作った食事を希望するつもりはない。

そもそも、【リアル】の食事環境を考えれば、作り置きでもきちんとした食材を使って作られた料理に文句を言うつもりなど、この場にいる誰にもなかった。

むしろ、先程から僅かに漂うスープの美味しそうな匂いが食欲を刺激して、早く食べさせて欲しいと言いたいところなのだ。

ここで食べないと言う選択肢など、佐助にもモモンガにもウルベルトにも、最初から存在していなかった。

 

 




という訳で、モモンガさんは現時点では食事可能になりました。

更に今後も食事が可能な状況なるよう、調整する事も決まりました。
実はまだ続きもかけているのですが、長くなったので分割します。
続きは、申し越しだけ話を進めた上で明日あたりに投稿できると良いなぁと考えています。

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