戦国BASARAの佐助を、AOGの至高の一人として突っ込んでみた!   作:水城大地

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佐助さんによる、ウルベルトさんへの説教と、ナザリックへの帰還の話。





終了、約一時間から三十分前まで

自宅に戻ると、意識がないウルベルトを闇婆沙羅の中から引き摺り出し、そのままベッドに転がした。

佐助の住んでいる部屋は、元々それほど広くはない。

故に、ベッドに寝転がすくらいしか、他に場所が無かったのだ。

ウルベルトをベッドの上に転がしておいて、佐助が向かったのは自室の押し入れだった。

そこには、以前同じ部署だった先輩から貰った、ゲーム用の端末機が予備としておいてある。

転勤に伴い、これらの娯楽系の端末が使える環境じゃなくなったため、佐助に格安で譲ってくれたのだ。

もちろん、今は自分で新しいものを購入して使っているが、この予備端末だって十分に使えるように定期的にメンテナンスしているので、短時間ならウルベルトに貸し与えて使用させるのも問題ないだろう。

それでも、念の為に端末機の環境を整えていたら、背後で呻き声が聞こえてきた。

漸く、ウルベルトの意識が戻ったらしい。

背後に感じる気配は、どことなく状況が判らなくて戸惑っている様子だった。

 

「……ばんわー、ウルベルトの旦那。

気分はどうだい?」

 

佐助が振り返る事なく声を掛けると、佐助の存在に今更のように気付いて驚いたらしい。

ぎょっとしているのを感じ、苦笑しつつ佐助は振り返った。

 

「あのさ、あんな粗末で使えない道具と、技量不足のテロリスト共とあの場所に行って、本気でテロが成功すると思ってたのかい、ウルベルトの旦那。

だとしたら、余程阿呆が過ぎるでしょうに。

あそこの会社は、さぁ……襲撃して来ようとするテロリストを、一切残らず殲滅部隊を差し向けて殺処分にする事で有名な所だって、聞いた事が無かったのかい?

もし、知っててそれでも行動しようとしたなら、それこそ蛮勇が過ぎるっての。

言っておくけど、あの場に居たあんた以外のテロリスト共は、俺様がこの手で処分する羽目になったんだからね。」

 

はぁっと、佐助が大きな溜息を吐いて見せれば、言われた内容にギョッとした様にウルベルトは佐助を見る。

だが、佐助の方にはまだまだ言いたい事があったので、それを無視すると言葉を続けた。

 

「……あのさぁ、俺様がこういう仕事についているってことは、ウルベルトの旦那だって知ってただろう?

だからこそ、俺様の事をあんたはたっちの旦那の次に嫌ってた訳だし。

まぁ……俺様だって、自分の仕事を褒められたもんだとは思ってないさ。

それでも、俺様には他に生きていく手段が与えられなかった。

だから、今更それに関してどうこう言われても、どうする事も出来やしない。

俺様自身、それもしょうがないって受け入れているから、それは別に構わないさ。

今更、こんな終わりが見えてる世界でどうこう言ったって、実際にはどうする事も出来ない事んざ、それこそ幾らだってある話だからね。

それよりも、さぁ……俺様としては、ウルベルトの旦那に言いたい事があって、わざわざこんな手間を掛けてるんだよね。

一体、何だと思う?」

 

一瞬で間合いを詰め、グイッとウルベルトの胸倉を掴み上げると、ニィッと口の端を上げるように笑う。

そして、腹から地を這う様な低い声を響かせつつ、ウルベルトに問い掛けた。

 

「あんたさぁ……今夜が何の日か、随分前からモモンガの大将からメールを貰ってたよな?

それで、何で糞みたいな幼稚な作戦で絶対に失敗するのが確定している、今日のテロリスト共の襲撃に参加してる訳?

もしかして、作戦内容知らされずに人員として動員されただけ?

それが図星なら、旦那はあのテロリスト共に良い様に利用されてただけだろうね。

まぁ……それでも構わないとかいうなら、旦那の人生だし俺様が口を挟むこっちゃないんだろうけど、ね……」

 

調整が完成した端末を、グッとウルベルトの胸元に押し付け、掴んでいた手を放すとそのままベッドの上に突き倒す。

 

「今の俺様が、あんたに言いたい事はただ一つ。

今夜くらい、モモンガの大将への不義理を詫びに行けや、あぁ?

その為に、俺様が色々と骨を折って手間かけてあそこから助けてやったんだからな。

ゲーム配信終了してシャットアウトされる時間まで、モモンガの大将に付き合ってナザリックで過ごすっていう義理さえ果たしたら、そこから先は旦那の好きにすればいいさ。

俺様だって、あんたがまたテロリストに戻ろうがどうしようが、止め立てしたりしやしない。

その代わりに、モモンガの大将の前では一切の不満は言いっこなしにしてくれ。

どんな不条理だろうと……昔から、敗者は勝者に従うもんだ。

あんたは、あの場で俺様に指一本触れられずに一撃で倒されたんだから、これ位の事は聞いてくれても構わないだろう?」

 

威圧するようにそう告げる佐助は、文字通り背後に般若を背負っていると言われてもおかしくない程の迫力だったと、後日ウルベルトがモモンガ相手に話す事になるのだが……それは横に置くとして、だ。

佐助の雰囲気に飲まれたウルベルトは、素直にその言葉に頷いていた。

真っ直ぐ、自分の事を見据えて告げる佐助の目の奥に暗く燃える怒りの炎が恐ろしくて、自分の怒りすら抑え込まれてしまった結果ともいう。

とにかく、ウルベルトが大人しく従う姿勢を見せた事で、漸くそれを引っ込めた佐助の指示の下、急いで端末を操作しながら【ユグドラシル】内に残っている自分のデータを呼び出した。

 

「へぇ……旦那は【ユグドラシル】を引退しても、データそのものを消してなかったんだね。

しかも、しっかりアップデートまで済んでいるじゃないか。

……もしかして、本当は旦那もログインするつもりはあったって事でいいのかい?」

 

きっちり、アップデート済みだったウルベルトのデータを見た佐助が、予想外だと思わずそう漏らせば、バツが悪そうに横を向くウルベルト。

そして、小さく観念したように呟いた。

 

「……悪かったな。

俺も、テロの実行日を一日間違えてたんだよ……」

 

モモンガに対して、最後のけじめとして会いに行く意思はあったのだと、そう呟くウルベルトの言葉を聞いて、少しだけ佐助はホッとした。

最終的に、ウルベルトはテロを優先させたものの、日付さえ違っていればちゃんとモモンガに会いに行く意思はあったのだと、準備が済んだ状態を見せられれば、それが嘘ではなく本当だと納得する事が出来るからだ。

 

「……そっかぁ……それなら、まぁ、いいんだよ、うん……

でも、そのお陰で予定よりも早くログイン出来そうだ。

他の皆からは、【今日、顔を出す】って返事を殆ど貰えなかったとか言ってたし……あまり待たせると、円卓の間から移動しちまいそうだからなぁ、モモンガの旦那は。」

 

せっかく、ウルベルトも連れて行けるのだからと、サクサク作業を進めていく佐助の横で、ウルベルトは聞かされた言葉に少しだけ更にバツが悪くなるのを感じていた。

自分以外の仲間が、もっと顔を出すと思っていたからこそ、最後の最後で不義理をする選択をしたのだが……もっと不義理をする面々の方が多かったらしい。

もしかしたら、その事が佐助を余計に神経質にさせていたのかもと、ウルベルトが反省していた事も露知らず、当人は暢気に【ユグドラシル】へのログイン準備に入っていたのだった。

 

*******

 

一方、ヘロヘロがログアウトして、一通り怒りを発散させるようにテーブルを叩いたモモンガは、そろそろ円卓の間から移動しようと、ゆっくりとそれまで座っていた椅子から立ち上がっていた。

北斗―佐助-が来る約束をしているが、彼には【最後は王座の間で迎えたいと思っています】と言う事を、昨日の夜の時点で告げてあったので、問題はないだろう。

ただ……移動するのにあたり、ギルド武器である【スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン】を持って行きたいと思わなくもないが、流石に彼が来るなら勝手に持ち出すのは駄目だろうと、一旦杖に伸ばした手を引っ込めようとした瞬間である。

 

≪北斗が、ログインしました≫

≪ウルベルト・アレイン・オードルが、ログインしました。≫

 

と、モモンガの視界に二人のログインポップが浮かび上がったのは。

北斗―佐助―はまだしも、ウルベルトの名前がポップされた事に驚き、思わず目を見開いているモモンガの前に、佐助の姿が転移して現れ。

驚いて、声もかけられないでいるモモンガに対して、それは晴れやかな様子で佐助は次に転移してきた相手の首根っこを掴むなり、にこやかに一言。 

 

「モモンガの大将、ばんわー!

仕事先のお土産に山羊一頭、狩ってきましたー!!」

 

まるで、猫の子を摘み上げるかのように、首根っこを掴んでウルベルトを持ち上げた佐助は、笑顔のままモモンガにそれを差し出しているし、掴まれたウルベルトの側はウルベルトの側で、普段の不遜さは鳴りを潜め、文句を言わずに苦虫を潰した顔をしている。

ニコニコと笑う佐助と、苦虫を潰したような顔をするウルベルトを目の前にして、目を白黒させていたモモンガだが、たった一つだけ確実な事があった。

目の前には、佐助だけではなくウルベルトも一緒に居ると言う事だ。

 

「……大変お久しぶりです、ウルベルトさん。

北斗さんも、こんばんは!

昨日の話じゃ、もしかしたらログイン出来ないかもしれないって思ってたんですけど、無事にお仕事が終わってよかったです。

と言うか、狩ってきたって……そりゃ、ウルベルトさんは山羊の悪魔ですけど、どっか違いませんか!?」

 

挨拶をした所で、佐助のセリフを思い出したのか突っ込むモモンガに、クスクスと笑う佐助。

ますます、ぶすっと不機嫌な様子を見せるウルベルトに、自分の発言が不味かったのかと焦るモモンガに対して、サラッと佐助は言い切った。

 

「いやぁ、そんなに心配しなくても大丈夫さ、モモンガの大将。

ウルベルトの旦那は、ちょいと自分の失態に腹を立てていなさるのさ。

ここん所、旦那は色々と忙しかったらしくてね。

終了日と仕事の終いの日が一緒なのを、勘違いしていたらしいんだよ。

んで、その事を偶然仕事先で会った俺様に指摘されて、しかも勝負に負けたら仕事は一旦休むって賭けまでしなさって、盛大に俺様に負けちまったからね。

色々と、モモンガの大将に申し訳なくて、あんな顔をしているって訳さ。」

 

ニヤリと笑う感情アイコンを出しつつ、そうモモンガに宣った佐助に対して、ウルベルトは思わず軽く頭を叩いたが、佐助は気にする様子など全くない。

まぁ、同士討ちは出来ない仕様だし、例えで来たとしても戦士職の佐助と魔法職のウルベルトでは物理攻撃能力と、物理耐性能力が全く違う以上、殆どダメージなど通らないだろう。

それを理解してなお、ウルベルトは叩かずにいられなかったのだが……それを突っ込む者は誰もいなかった。

 

「……どんな理由でも、こうしてウルベルトさんが来て下さって、最後まで一緒に過ごせるのなら、俺はすごく嬉しいです。」

 

そう、嬉しそうにモモンガに言われて、バツが悪そうに視線を逸らすと、ウルベルトは漸く口を開いた。

 

「……お久しぶりです、モモンガさん。

色々と、不義理をしてすいませんでした。

後、残り僅かしかありませんが……今まで不義理していた分も付き合いますから、一緒にシャットダウンまでナザリックで過ごしましょう。」

 

ユラユラと揺れていたウルベルトの視線が、最後にモモンガに向いた瞬間、やったと言わんばかりに両手を上げて喜ぶモモンガと佐助。

軽く手を打ち鳴らし合った所で、フッと佐助がある事に気が付いた。

 

「なぁ、モモンガの大将。

そこに立ってたのって、もしかして【スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン】をもって王座に向かうつもりだったりした?

だったら、最後なんだし最強の大将の姿が見たいな、俺様。

むしろ、大将だけじゃなくてウルベルトの旦那もきっちり最強装備を揃えようよ。

どうせ、宝物殿の奥にしまってあるんだし、最後くらいは格好良く装備を固めて終わらせようぜ、大将も、旦那も、俺様も!」

 

両手を打ち鳴らし、そう主張する佐助の言葉に、ウルベルトもうんうんと頷いて同意を示す。

 

「そうですね……せっかく作ったんですし、モモンガさんが装備しないまま終わるのも、勿体ないですよね。

俺の装備もあるなら、宝物殿に取りに行ってきっちりと装備を整えた後、三人で有終の美を飾ると言う提案も悪くありませんし……」

 

二人から勧められ、自分も持っていきたいと思っていたモモンガは、少しばかり躊躇いがちに【スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン】に手を伸ばしていた。

 

 

 







実は、この帰還の際の佐助の台詞が書きたくて、この話を書き始めたともいう。



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