エロエロンナ物語   作:ないしのかみ

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今回は番外編です。
時系列的に現時点の『エロエロンナ物語』よりも、かなり未来のお話になります。


〈閑話〉、サッキュバス

〈閑話〉サッキュバス

 

 ここは娼館の裏庭。

 昼前の穏やかな日、お母さん達は寝ている。

 あたし達子供は余り声を立てない様に、幾つか用意された遊具で遊ぶ。

 だって、お母さん達は仕事明けで眠いと思うからね。

 ブランコは楽しいけど、大声できゃっきゃっと笑いたいなぁ。

 

 あたしは淫魔、サッキュバスと言う魔族だから、近所の子供と接触させて貰えないって言うんだ。

 何でも【魅了】て魔法を本能的に持ってるから、それを上手くコントロールしないといけないらしいのよ。

 

 うん、サッキュバスは淫魔。だから生きて行く為の糧として殿方のエキスが必要。

 小さい頃はお母さんから分けて貰うんだけど、あたし位の年頃になったら、自力で補給する術を学ぶわ。 

 その手段が【魅了】ね。お母さんの助手として殿方相手に練習してるけど、加減が上手く行かないのが悩みだなぁ。強すぎて、このまま本番に突入しちゃう所だったし、まだ、9歳で処女は散らしたくないから焦ったわ。

 お口か尻尾で受けてエキスを啜るのだけど、恥丘目掛けてあれが突っ込んでくるんだもん。お母さんがとっさに庇ってくれて何とか回避したけど、これって加減が難しい。

 上のお口でエキスを吸精するのは本当は効率が悪くて、下のお口を用いた方が何倍も吸精効率が良いらしいんだけど、まだ未熟だからと10歳を超えないと許可されない。でも、事故で処女喪失しちゃうサッキュバスの娘もいるのも分かるわ。

 

 勘違いする人も多いけど、サッキュバスは魔族であって悪魔じゃ無いのよ。

 魔族と言うのは、ある時、魔界って所からやって来た種族。つまり、生き物ね。ヒトよりも優れた能力を持っているけど、生き物だから殺されたら死んじゃう。

 対して悪魔ってのは、生物とは違う上位の存在。

 この世界に仮初めの身体を持って現れるけど、倒されても滅びる事は無い。仮初めの身体が滅んで世界に干渉出来なくなるだけ。

 精神を同時に滅ぼさない限り、幾ら倒しても時と共に再生しちゃう。

 でも、再生には百年単位の時間が掛かるらしいから、取りあえず倒せば、妖精族でも無い限り、一生再会する事は無いんでしょうけどね。

 

 魔族にも色々な種があって、サッキュバスは中位魔族から下位魔族に相当するのね。両性具有種で、女性型だけど自分の意志で股間に逸物を生やす事が出来るわ。

 この形態をインキュバスって呼ぶ事もあるけど、それって間違いだからね。

 見た目は普通の女性よ。種族特性として美人が多いと言われてるけどね。身体もヒトと違う所を上げれば、尻尾がある位かな。

 大半を占めるのがコモン種。こっちが下位魔族。

 そしてロイヤル種と呼ばれる上級種が存在するわ。

 ロイヤル種は背中に出し入れ自由なコウモリ風の羽が生えていて空を飛べる。一寸羨ましい。でも、あんまり速くないらしい(あたし、実物見た事ないの)。

 でも、一番の違いはロイヤル種は自分の身体で子孫を孕める事ね。コモン種はロイヤル種が作り出す、蜂や蟻に例えれば働き蜂か蟻みたいな者で、自分の胎内に精を受けても妊娠出来ない。出来るのは吸精だけ。

 そうして吸精された殿方のエキスはサッキュバスの胎内で精製されて、より濃縮された生命力の満ちたエキスとして再生されるわ。そうしてコモン種が集めたそのエキスをロイヤル種が摂取する。働き蜂が集めた花粉を女王蜂が頂く様にね。

 中にはコモン種を何十人も接合して、特別に濃厚なエキスを作る事もあったらしいわね。射精、吸精、精製、射精を繰り返して最終的に作り出されたエキスは、硬いゼリー並みの粘度を持ち、黄色を通り越して黄金色に輝いていたそうよ。

 

 こう言ったロイヤル種の下にコモン種が隷属する、女王国家にも似た体勢が古代王朝期まで続いたのだけど、ある日、それが潰えたのよ。

 テラ・アキツシマ。古代王国の英雄が「基幹艦隊と同じく頭を潰せば、烏合の衆じゃん」と次々とロイヤル種を狙い撃ちにして、サッキュバスの組織が崩壊したの。

 テラが女傑なのも悪かったわね。一部の特殊な性癖を除いて、あたし達の【魅了】は女性には通用しないのよ。

 こうしてロイヤル種は殆ど居なくなってしまった。このまま、サッキュバスは滅亡すると思われたし、事実、滅亡寸前まで数が減ったの。

 コモン種の寿命は短く、せいぜい人間の倍程度だからね。

 

 でも、あたし達は諦めなかった。自分達が孕めないのなら、他種族に代理出産しても貰おうと考えた一派が登場したの。両性具有なら可能じゃ無いかってね。

 そして、その試みは成功したわ。

 但し、出産確率はとてつもなく低かった。しかも、ただセックスしただけでは駄目で、互いに相思相愛じゃ無いと生まれないって条件が付いたわ。そして、生まれたのもコモン種ばかりだった。

 それでも種族滅亡は回避出来た。あたし達は徐々に数を増やして行くけど、かつての王朝時代の栄光は取り戻せなかった。

 リーダーたるロイヤル種が存在せず、昔みたいな組織化が出来なかったのよ。

 サッキュバスは個人で、或いは数人で世界中に散り、細々と活動を続けしかなかったわ。

 

 ここまでが『サッキュバス史』の予習ね。

 学校の勉強って楽しい。あたし達には娼館に併設された公立の学校があるんだ。学ぶのはみんなサッキュバス。

 世間で生きて行ける様に世の中の事とか、これから公職に就く為の勉強も習ってるわ。

 ここの領主がサッキュバスを保護してかなり経つ。

 迫害された我が種族を保護するってのが名目だけど、自分の糧を自分で稼ぐ為、公娼制度を取り入れて、暫くしてから公務員としての仕事に追加がなされたの。

 それは「あれ? もしかして彼女たち間者として優秀なんじゃね」と気が付いた事。だから枕事で情報を収集する、娼婦兼スパイとしての教育も行われてるのよ。

 高級娼婦として礼儀作法や知識を叩き込まれたり、武器の扱い方、毒薬の知識なんかもね。無論、世間一般に知られてないわよ。

 まだまだ、サッキュバスって偏見の目で見られてしまうからね。

 

 13歳から公職、最初は公娼として15年務めれば予備役になる。予備役になったら自由に職業が選べる。いざと言う時に動員されちゃう条件付きだけど、それでも本当にやってみたい職に憧れるのよね。

 唯一の不満は、この街から出られないとかしら?

 ここは領主様が特別にサッキュバスに市民権を与えてるから、市民としての権利が保障されてるけど、領地の外に出たら、魔物として狩られてしまう。

 サッキュバスを魔族では無く、害獣の魔物であるとしている土地は多いわ。だから、殺されても文句一つ言えないのよね。

 大抵のサッキュバスはヒトを搾り尽くして、殺めたりする事は無いのになぁ。

 大勢を【魅了】して村中の男を一晩で枯死させて行く、凶悪なイメージは余程の田舎者じゃ無い限りはやらないわ。ヒトと共生しないと生きていけないんだから。

 

 あたしは庭の向こうに見える海を眺めながら、ブランコを漕ぐ足に一層力を入れたわ。

 いつか、船に乗って外国へ行ってみたいなと夢見ながら。

 

〈FIN〉




単独話。
いや、気分転換に書いてたら出来てしまった。
題材が題材だけに、ちょいとエッチです。

露骨な性描写は入れてないので、ぎりぎりR15の筈。
敢えてサッキュバス少女の名は入れてません。

改訂
エルダ世界の成人年齢を考慮して、15歳→13歳へ年齢変更。


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