エロエロンナ物語   作:ないしのかみ

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思いの外、短時間で完成しましたので投稿します。
<閑話>のウサ耳村はニナの幼少期のお話。まだルローラ家に仕える前ですね。
これもスキュラ同様、暫く続きますので宜しく。



偽りの聖女2

〈閑話〉ウサ耳村1

 

 ナイフ片手に木に刻みを入れる。

 斜めに切られた傷痕から、白い樹液がじわっと染み出てくる。それを傷下に置かれた小さな壺へと溜めて、壺が一杯になったら交換。

 いつもの光景。単純作業だが、日が高くなると暑さの為にやっていられなくなる。

 でも、まだゴム園での労働は楽な方だ。椰子の木に登らされて実を採取する高所作業は、転落すると生死に関わる。

 ああ言う場所の作業はヤシクネーなんかが最適なのだが、彼女たちはそれなりに高給取りであり、コストの問題もあってニナの様な子供が多数従事させられている。

 賃金は大人の二割で済む。その分、労働効率は大人の半分程度であるが、コストパフォーマンスから考えれば、農園経営者にとって子供は安価な労働力として歓迎される存在なのである。

 

「船が着くらしいぴょん」

「私掠船だ。歓迎の宴があるらしいよ」

 

 午前の作業が終わった。ニナが休憩の為、宿舎に戻ろうとする時、数人の大人達の会話を耳にする。

 私掠船。国家公認海賊の事だ。良く分からないけど、グラン王国以外の船舶を襲って取り分を国家に献上するらしい。他に無許可の海賊を取り締まったり、時には海軍の一員にもなるらしい。と、婆様から聞いている。  

 ニナはまだ五歳。両親は分からない。

 ウサ耳族の常として、母親は行きずりの男(大抵は異種族だ)と交わり、子供を出産したら部族に預けて何処かへ行ってしまう事が多い。

 亜人の大半がそうである様に、ウサ耳族も女性が大半を占め、男性が生まれてくる事は極めて稀であるからだ。

 生まれた子供もウサ耳族以外の場合、昔、奴隷制度があった頃は奴隷商に売り飛ばしていたが、それから考えると現在の境遇は悲惨のひと言に尽きるだろう。大抵は放置で、そのまま餓死させてしまうからだ。

 男児の場合、場合によっては繁殖用に育てられる。つまり、大きくなったら部族の性奴隷役としてウサ耳族達の玩具にされるのだ。要は種馬である。

 ニナも母から産み捨てられた身だ。ウサ耳族は部族社会なので、そうした子供達は部族の者達の手で育てられる。その際、母の名は分かっていても秘匿される。後で親子関係で問題を起こすと、部族全体の統制が乱れるからである。

 

「婆様。今、帰った」

 

 布一枚が張られただけの、粗末な小屋の入口をくぐる。

 中央の土間、囲炉裏を囲む正面に年老いたウサ耳族の老女が座っている。その周囲に沢山の子供達が走り回っている。

 

「表が騒がしいね。ニナ、何があったのかえ」

「私掠船が港に入るそうだよ。あ、これ土産」

 

 ニナは婆様に途中で拾ったココ椰子を投げた。 ヤシ酒を作る為、実が殆ど成らないココ椰子はここらでは貴重品だが、採取の際に落ちた奴を拾うのは許されている。

 愛用のナイフを抜き、もう一つのココ椰子の上をえぐると、美味そうに中のジュースを喉を鳴らして飲み干した。

 

「そうかえ。最近、海賊が暴れ回っておるしの」

「時間が出来たら見物に行ってみるよ」

 

 ニナはそのまま殻を割って、白いコプラ(果肉)をすくって口に運ぶ。若い実であるらしく、コプラも弾力性があってガリガリ削る必要はなかった。

 婆様はこの付近のウサ耳族の長老格だ。名はあるのだろうが、ニナは婆様としか認識してないし、部族内でもそれで通る。

 既に戦士や働き手としては一線から退いているが、子守役としての重責を務め、また、発言力も族長に比肩する程の重みを持つ。

 

「歓迎の宴があるって話だし」

 

 婆様はふむと口にしてしわくちゃの顔をほころばせる。宴と聞いてご馳走を思い起こしたのだろう。ウサ耳族の平均寿命から考えれば、婆様は物凄い高齢なのだが、若い頃は一流の戦士であったと聞いている。

 齢は八十を超え、杖を必要とし、視力も衰えて眼鏡を愛用せねばならなかったが、まだまだ身体は健康で食欲は旺盛だ。無論、酒も嗜むのでそれを期待しているのに相違ない。

 

「族長からの招待状が、早う来んかのぅ」

「飲み過ぎると身体に良くないよ」

 

 ニナは釘を刺した。

 育ててくれた恩人なのだから、なるべく長く生きて貰いたいとの願いがある。

 そして、部屋の中に居る姉妹達(血縁はないが)の面倒を見るべく、腰を上げる。年少者の世話は、ニナの様な年上の仕事である。

 おしめも取れない様なのは婆に任せて、やんちゃな姉妹達を纏めて遊び場へと連れて行く。お昼頃まで面倒を見るのが日課だ。

 長い、本当に長い一日が始まろうとしていた。

 

 

 

〈エロエロンナ物語15〉

 

 あたし達が教会の入口で様子を窺ってると、外を通る人々が不思議そうな表情で通り過ぎて行く。ここは人通りの多い広場だから当たり前なんだけど。

 まぁ、どう見ても不審者よね。格好もバラバラだし。

 

「目立ってますね」

 

 最初に指摘したのはイブリンよ。

 そして「エロコ様達だけ中へ」と提案する。

 

「イブリンは?」

「流石に同じ顔がご対面ってのは避けたいでしょう。こちらの素性も隠したいし…」

 

 そうなのよね。イブリンはある意味切り札。向こうの反応が未知数だから、尚更表へは出したくないわ。でも、一人にすると危ないし…。

 

「やっ、エロコ達じゃん♪」

 

 そこへ声が掛かる。この軽い口調は…。

 

「どしたの。あたいが王都で遊び回ってちゃ、おかしいのかなっ♪」

 

 何処かの露店で買ったのだろう。串焼きを片手にもぐもぐしながら現れたのはユーリィ・リリカ子爵令嬢。

 今日は士官学校の制服であるセーラー服ではなく、私服だ。黒と黄色のレザーで出来た露出度の高いセパレーツルック。大胆にもスリットが入った丈の短いミニスカート。ベルトには綺麗な細工を施したレイピアを帯剣をしている。

 その姿は、そう…あのマリィを連想させるわね。

 

「ユーリィ様。丁度良かった。

 済みません、うちの侍女を少しの間、見ててくれませんか」

「へ? そりゃエロコの頼みだから構わないけど…あ、おーい♪」

 

 言い残すと、あたしとニナは教会の中へと進んだ。

 そして確信していた。ユーリィ様が現れたのは偶然じゃない。

 

            ◆       ◆       ◆ 

 

「参ったね♪」

「参ってらっしゃらないでしょう?」

 

 やれやれと頭を掻くユーリィへ、侍女の姿をした聖女が告げる。

 エロコ同様、イブリンも確信しているからだ。

 彼女が何故、楽しみにしていた実習航海を突然、キャンセルしてこちらに残ったのか。それは夏休みに本土に残留する、エロコの行動に会わせた為だと。

 

「どゆこと♪」

「我々はそれ程愚鈍ではありませんよ。ユーリィ様。

 貴女がエロコ様。いいえ、私の護衛兼お目付役に。王室から付けられたエージェントであるのは、大体、察しているのですよ」

 

 いつもにこやかで、得体の知れない軽い表情をしているユーリィの顔が少し真面目になった気がしたが、それはほんの一瞬。

 次の瞬間、彼女は腹を抱えて大爆笑していた。

 

「あははは、な、何それ。凄いなーっ、あたいは王室の秘密捜査官か何かだったのか♪

 あ、あたいが、じょ、冗談きついよ。あはははは♪」

 

 しかし、これは演技だ。とイブリンは看破していた。

 自分だって聖女としてのVIP歴は長い。この手の間者との付き合いも当然ある。

 本職ではなく、急遽、臨時に回された半人前である事は、エロコからも知らされている。だから、さっきの様な隙が生まれるのだろう。

 本職ならば、指摘されても表情を変える事なく、もっと上手く演技する筈だからだ。

 

「あくまで否定なさるのですね。まぁ、構いませんけど」

「ひ…否定も何も…あははは、あー可笑しい♪」

 

 ここで仲間に引き入れるのは諦めた。出来れば、何でも話せる仲になって共同でこれからの脅威に対処をしたかったのだが、向こうにも都合があるのだろう。

 組織とはそう言う物だから仕方ない。

 こちらの考えを強要するのは、単なるこちらの我が儘に過ぎない。

 

「そんな事より、串焼き食べに行かない♪」

「貴女の奢りなら。侍女のお給金って少ないんですよ」

 

 本当の事だ。結構重労働だから、もう少し欲しいのは本音。

 尤も、この世界一般から考えれば、内勤で済む仕事でこれだけ貰えるなら、かなりの高給取りに分類されるだろう。

 馬車馬の様に働かされる土方や、糸を紡ぐ女工なんかに比べれば天国である。 

 

「士族になった子爵令嬢のお小遣いもね。

 先月、国から支給された額も少なかったしなぁ♪」

 

 上っ面な会話を続けながら、彼女ら二人はエロコが出てくるのを待ったのだった。

 

            ◆       ◆       ◆ 

 

「おーい、その可愛娘ちゃんを紹介してくれよ」

 

 軽薄そうな言葉。それが耳にした第一声だったわ。

 若い、と言ってもあたし達よりは年上ね。ハイティーンのやたら軽そうな男性が、事もあろうに贋イブリン、もとい贋聖女に声を掛けていたのよ。

 

「あの…」

「俺はワール・ウインドウ。ワールって呼んでくれ」

 

 爽やかなと言うか、何も悩みのなさそうな、滅茶苦茶明るい表情でナンパしてますね。

 短い灰色の髪。瞳は黄色。派手な緑色の革鎧に褐色のズボン。 腰には鞭を下げていて、ズボンに短剣を挟み、頭に赤いバンダナを巻いている。

 右頬にばってん傷がある。街でたむろってる愚連隊のリーダーか、良くて冒険に出かける若い山師(クエスター)かしらね。

 盗賊系の身なりだし、鞭を持ってる時点で、やくざな商売に就いてるのが分かるけどね。

 

「あの…私は…フローレ」

「オーケー、オーケー、フローレちゃんね。さ、どこへ行く。

 ここら辺だとお洒落な店はないから、西地区がいいかな」

 

 こ、こいつ、他人の話を聞いてねぇ。

 自分ペースに乗せて連れ出す気満々だ。ニナが「姫様」と呟いた時、あたしは決心したわ。贋者だけど、こいつの手にイブリンを委ねちゃいけないと。

 

「いい加減になさい。その女性が困ってるわ」

 

 あたしが前へ出ようとした時、反対側から咎める声が響いた。

 あ、異国の女性。東方の皇国風な格好をしているわ。白と赤の衣装に身を包み、髪型はポニーテール。腰に長い刀を佩いている。

 

「なんだ。マドカか」

 

 ワールはその女性と顔見知りらしい。一目見ただけで、うんざりした表情を作る。

 その女性はワールを無視して、贋フローレの前に進んで跪く。

 頭を垂れると、特徴的な青い髪がさらりと前へ流れた。

 

「聖女様。私の知人の無礼、お許し下さい」

 

 このマドカって人も目の前の女性が聖女だって知ってるのか。まぁ、有名人だから当たり前かな。にしても皇国人にも有名なのね。

 後ろから聞こえる、「おーい、マドカ。聖女って何の話だぁ」ってワールの言葉は無視してるわね。

 贋フローレはきょとんとした意外な顔でマドカを見ていたけど、やがてにっこり、「面を上げて下さい」の言葉と共に微笑んだ。

 

「そちらにの方も、どうぞ、いらして下さいな」

 

 これは入口で立ちすくむ、あたしとニナへ向けた言葉だ。

 先程まで贋聖女と話していた神官二人は、互いに頷き合って入口へ向かい、正面の扉を重々しく閉鎖する。

 密室。

 これで教会内に居るこの七人以外の余人は、入って来られなくなったわね。

 外に居るイブリン達が心配だけど、ユーリィ様が居るから大丈夫でしょうと思い込むわ。

 

「あたしの目が間違っておらぬのなら、ラグーン法国の聖女、フローレ様とお見受け致します。それが何故、我がグラン王国の王都ハイグラードへいらっしゃったのですか」

 

 あたしは主題をずばっと切り込んだ。

 贋聖女は相変わらず、曖昧な笑みを浮かべている。一人、「せいじょ~?」と間抜けな声を出しているのはワール。

 

「それは、私も知りたい所です。あっ、私は春社 円…。いえ、こちらで言うなら、マドカ・ハルシャと申します。東方の出で、今は理由あって、この教会の責任者をしている者です」

 

 面を上げ、はっとした様に自己紹介を付け加えるマドカ。

 神官さん二人も「ルイザです」「レオナと申します」と同じ様に自己紹介してるわね。

 

「ええと…」

「エロコと申します。こちらは侍女のニナ」

「…エロコさん。それが私にも分からないのです」

 

 え?

 

「いつの間にやらここへ来ていた。と言うべきでしょうか。

 昨晩まで、確かに私は聖都でお勤めをしていた筈なのです」

 

           ◆       ◆       ◆ 

 

 互いの自己紹介を交えて、贋聖女の話を総合すると…。

 自分は聖都の大神殿で仕事をしていた筈だし、昨夜も一日の礼拝を終えて床に就いた記憶がある。しかし、目が覚めたら、王都の雑踏に居たらしい。

 しかも、何故か正装で。

 こんな姿で眠る訳はないし、夢遊病とかが仮に自分にあったとしても、こんな遠隔の地に、一晩で移動するとも思えない。

 

「ここが隣国の王都だと耳にして、本当に肝を潰しました」

 

 そう語ってるけど、あんまり驚いた表情してないのよね。

 せいぜい『まぁ、大変』程度の感じで、『驚愕してます』やら、『ああ、どうしよう』てな焦りの感情を出してないと言うか。

 公的な顔って奴かな。

 素のイブリンを身近で見ている分、あたしにとってかなりの違和感。

 もっともイブリンも聖女の顔を見せたら、同じ様な感じに豹変可能なのかも知れないけどね。そう言えば、出会った最初の頃はあんな感じに近かったかしら?

 ある時、「イブリンも喜怒哀楽がはっきり出る様になったわね」と言ったら、「姫様がそれを仰られるとは…」とニナに呆れられてしまったわ。

 昔のあたしは、あれよりもっと酷かったらしいのよね。

 

「なー、難しい話は終わったのか。じゃあ、飯食いに行こーぜ」

「ワール、黙ってなさい」

 

 一方、こっちは凸凹コンビね。

 後に聞いた話だけどマドカは皇国の神官で、貴族子女、つまり良い所のお嬢様だけど、武者修行とやらで各地を回っていたらしいのよね。

 ワールは盗賊系のクエスター。自称、義賊。う、胡散臭いわ。

 二人は何処かの遺跡で出会って以来の腐れ縁。今、こうしてこの小さな教会にいるのも、地元のごろつきが教会の立ち退きを迫るのに、ワールが変な正義感を出して首を突っ込み、遺跡で一攫千金を得て解決した結果だと言う。

 でも教会を管理していた法官は既に高齢で亡くなり、借金を重ねた結果の立ち退き騒動だったから、借金を返してもいずれは同じ困窮に陥る。

 だから、周りから推されてマドカがこの教会の責任者になった。

 遙か昔、ラグーン法国から神官が皇国へ辿り着き、布教をした結果、ラグーン教は皇国にも根付いていて、マドカはラグーン教の司祭だったからよ。

 もっとも、現地化して本国とはだいぶ様式が代わってしまっており、東方では本山を崇めるけど、その直接的な権威は認めてないわ。だからラグーン法国の過激派は東方ラグーン教を、『異端』と嫌悪する向きもある。。

 まぁ、距離的に遠いからねぇ。砂漠を越えて、皇国まで腕木通信線を延々と伸ばす訳にも行かないでしょうし。

 そんな訳で、マドカとワールは教会に住み込んでいるんだけど、そこへ市場で聖女を発見した見習神官さん、さっきのルイザとレオナね。が聖女様を教会へ連れてきたって話になるわ。保護って意味もあったんでしょうけどね。

 

「保護は良いんですが、その服、着替えませんか?」

 

 ずっと控えていたニナが意見する。

 

「しかし、これは神衣ですから」

「目立ちますよ。とっても」

 

 ウサ耳族に指摘され、考え込む贋聖女。

 

「ですよねぇ」

「私の服で宜しければ」

 

 マドカが申し出る。向こうの女性神職が着る、白い上着にひだが入った緋色のスカート、巫女装束とか言う皇国風の格好だけど、彼女のはもっと過激で、胸にサラシを巻いているだけだわ。その双房は悔しいけどかなり大きい。

 

「…出来れば、もう少しおとなしめの服を」

「ルイザ、貴女の神官衣を貸して差し上げなさい」

「はい、マドカ様」

 

 着替えの為に、ルイザと共に奥へ消える贋聖女。あっちは神職の生活スペースね。

 惜しい。皇国風の姿は見たかった。

 でも、本物の聖女、つまりイブリンなら着てしまう気がする。「こんな格好している方が、よもや聖女とは思われませんから」とか言ってね。

 

「なーなー、要するにフローレちゃんは迷子なんだろ?」

「迷子…といえば、迷子なのかしらね?」

「姫様。ニナには判断出来かねます」

 

 ワールの問いにふと思う。迷子なら、いっそあたしが保護しちゃえば良いのではと。

 義姉様の名を出してね。

 手に入れてしまえばこっちの物だ。彼女が何者かも調べられるしなぁ。

 悪党っぽいけど、あたしは正義の味方じゃないし…。

 

「よしっ、俺がフローレちゃんを彼女の国に連れて帰ってやろう」

 

 こっちが考えを巡らせてる間に、この男、そんなとんでもない事を言いだしたわよ。

 あたしは口をあんぐり。

 マドカも同様。でも、はっと我に返って「冗談じゃない。多分、これは教団内の政治的何かよ。単純に故郷へ連れて行く訳には…」と怒り出したわ。

 

「知らねーよ。困ってる娘が居る。だから助ける。それの何が悪いんだ」

「あんたの単純さは、利点でもあるけど欠点よね」

「あんだよ」

 

 マドカは頭痛を抑える様に、こめかみに手を当てている。

 

「色々裏があるって話ですね」

 

 たまらず、あたしは助け船のつもりで発言した。

 

「部外者に教団の実情を話すのは不本意ですけど…その通りです。

 知っているかも知れませんが、聖女フローレ様は数ヶ月前より、ご病気であると公式に発表がなされているからです」

「そんな折、ここに健康体の聖女が現れた。それは極めて不自然だと?」

「エロコさんと言いましたか。慧眼恐れ入ります」

 

 そう言ってマドカはあたしに会釈した。そして言葉を継ぐ。

 

「彼女は…聖女様は、今、何等かの陰謀に巻き込まれている。

 私はそう判断しているのです」

 

 ひときわ大きな悲鳴と物を壊す様に物音が響いたのは、その直後だった。

 

〈続く〉

 




書き直しになったので裏話。

円さんは書き直し前は法国のキャラで、名前も姿も違っていました。
でも「そろそろ東の皇国を出す方が良いか」と思い直し、元原が電子の彼方へ消えたのをきっかけに、思いっきりオリエンタルのキャラに変更。
そう、東方は東洋風の世界なのです。皇国はオリエンタル日本で、勿論、天…ではなく、皇帝が治めてます。
ちなみに円さんの格好は『世界〇』のブシ子風(笑)。

次は実習航海編2です。
少し更新に時間が掛かるかも知れません。

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