王子の弟という頭の痛いお仕事   作:ドラオ

3 / 6
この場所は。

「おお! 目を覚ましたか! 3日間も眠ったままだったから心配したよ」

 

「え! 3日も……?」

 

「しっかし流れ着いた樽の中に人がいるだなんて思いもしなかったなあ、わはは」

 

「あの、すみません……こんなに良くして頂いて」

 

「いいってことよ。それより、あんなものに乗ってくるなんてよっぽどの事情があったんだろ?」

 

「はい……実は幼い頃から奴隷として働かされていたのですが、仲間と共にようやく逃げることに成功したんです。 ……そういえば、他のみんなはどこです?」

 

「樽に入ってたのはお前さんだけだったな……それにしても、とんでもねえとこから逃げてきたんだな。ま、しばらくはゆっくり休むといいさ」

 

「そうもしていられません……仲間とはぐれてしまったのならば、一刻も早く合流しなくては。真に勝手ですみませんが、もう出発したいと思います。お世話になりました」

 

深々とお礼をし、荷物をまとめて出ていこうとしたが、まとめる程の荷物を持っていないことに気づき、俺は苦笑する。

 

「本音を言うと、少し寂しかったんだよ。最近は海が荒れて、船も容易に出せなくてね。この港に訪れる旅人もめっきり減って、いつも妻と2人っきりなのさ」

 

なるほど外に出てみると船を泊めるための桟橋がある。ここは港だったんだな。

 

 

 

 

「それじゃあ、ありがとうございました」

 

「おう、元気でな」

 

港を出て北へ向かって歩いていると、町が見えてきた。まずは装備を何とかしたい。流石に奴隷の服とナイフでは手強い魔物にやられてしまうのが目に見えている。

しかもこのナイフって果物を切るためのものなんだよなぁ……

と考えていると、

 

まもののむれが あらわれた!

 

げっ、ドラキーとピッキーだ。

俺はすぐにナイフを構える。大丈夫。こんな貧弱な装備でも、1対ずつなら何とか……

 

ピッキーが嘴で俺を突こうと走ってきた。俺はそれを避けて奴の足を斬りつける。機動力を削いでしまおう。

 

俺はもう片方の魔物の方へ振り向く、が、ドラキーは既に俺の鼻先まで迫っていて、左肩に噛み付いてきた。

 

ひだりかたに 15ポイントの ダメージ!

 

「うぐっ」

 

左腕を押さえながら、ひとまず飛び退く。

 

どうする?一旦体制を立て直す為にホイミするか?

 

その間にも2体の魔物は俺に攻撃しようと近づいていた。

 

ピッキーが突っ込んでくる。俺はそれを躱さずに受け、渾身の力を込めてナイフを突き刺した。

 

かいしんの いちげき!

ピッキーを たおした!

 

ピッキーは流砂となって何処かへ消えてしまった。魔界だろうか……

次の瞬間、ドラキーに右肩を噛まれ、持っていたナイフを落としてしまう。しかし、俺はすかさずホイミを唱え、ナイフを拾って奴を切り裂いた。

 

まもののむれを やっつけた!

なんと ドラキーが おきあがり

なかまに なりたそうに こちらをみている!

なかまに してあげますか?

 

 

ふぅ……やはりこの装備では駄目だな。早く町に行って買うとしよう。

 

ドラキーは まわりこんだ!

なかまに なりたそうに こちらをみている!

 

「うおっ!? お前まだ生きていたのか? まあ、怪我してるだろうし俺は見逃すからさっさと帰りな」

 

なかまに なりたそうに こちらをみている!

 

俺は町へ向かって歩きだした。といっても、目と鼻の先にあるんだけどな、と苦笑して…

 

ドラキーは まわりこんだ! なかまに なりたそうに こちらをみている!

 

「……俺に恨みがあるなら恨んでもいい。でも襲い かかってきたのはお前らだからな?」

 

俺はドラキーを無視して、また歩き出す……

 

「いい加減気づけキー!」

 

え?

 

「さっきからオイラが仲間になってやろうって思って見つめていたのにそれをことごとく無視しやがって、何様だキー!」

 

「いや、今から主人にしようとしている相手に向かって言う言葉じゃないだろ……」

 

なんで、こいつ喋ってんだ?気色悪い。

 

「まあ、いいや。ついて来るなら来なよ。特に面倒みてあげようとはおもわないけどさ」

 

「ありがとうキー!」

 

 

そして町に着いた(既に目と鼻の先にあったけど)。おお、(うち)の城下町よりも大きいな、ここは。

俺は取り敢えず、商店の集う通りへ行った。うーん、どれを買おうか。

 

「すみません、鋼の剣と鉄の鎧ください」

 

「3200ゴールドです。まいどあり!さっそく装備しますか?」

 

「あ、装備はしますけど、恥ずかしいんで試着室で着替えたいんですが……」

 

「お客様wそんな恥ずかしい格好してるくせに今更なに言ってるんですかwwあっはは」バンバンバン!

 

好きでこの格好してるんじゃねーよ!

 

 

着替えながら、このドラキーにも装備を買ったほうがいいかなと思った。

 

「そういえば、お前何が装備できるんだ?」

 

「これキー」

 

「おお、木の帽子と、刃のブーメランね……っておい、なんで持ってきた」

 

「会計は後でいいって言われたキー」

 

「……一応聞くが、誰が払うんだ?」

 

「え……キー」

 

「そこ! 取ってつけたようにキーを言うんじゃない!」

 

まったく……幸い王子時代に貯めておいた貯金でなんとかなるけど、こいつ頭が弱いのでは?

 

「お前、今度何か買うときは俺に言えよ」

 

「はいキー……それとオイラのことはドラきちと呼んでほしいキー」

 

えっ、名前あったのかよ。

 

 

魔物ってこんなものなのか……俺って、ずっと城で生活してて魔物を見たことなんてほとんどなかったから、初めて魔物と戦ったときは恐怖しかなかったなぁ……でも、魔物も個性的なんだな。こいつと会ってそれを知ることが出来た。

 

「お前と、いやドラきちと出会えて良かったよ」

 

「え? 急に気持ち悪いキー。それに、その言葉は長く冒険をともにした人に言うものキー。さらに言えば、それは死亡フラグだキー」

 

「まあ、気にすんな。それと、俺の名前はアレンだ」

 

俺達は町を後にして、今度は東へ向かった。もしかしたらラインハットに行けるかもしれない。ここどこかわからんけど。

 

「あっ!」

 

「なにかあったキー?」

 

「情報を集めるの忘れてたぁぁー!」

 

「情報って何キー?」

 

「俺は今迷子なんだよ。ここがどこか知りたかったんだが……」

 

「オイラもよく知らねえキー。オイラが生まれてすぐ、親は殺されてしまって何も教われなかったキー」

 

「ふーん、でも次の町で聞けばいいかな」

 

 

だが、この決断が、2人の運命を左右するものであったことを彼らは知る由もなかった……

 

 

 

 

 

 

 

ってふざけて言おうか迷ってる内に次の村へ着いた。近かったなぁ。さて、村人さんに色々聞いて回りますか。

 

ところが、俺は衝撃の光景を目にすることとなった。町は凄惨な有様で、家屋は半壊、畑は荒らされ、所々に毒沼が湧いている。村を流れる川の水も濁っていた。

 

「ここは、こういう村キー。それでも、人間は何人か住んでいるんだキー」

 

……

 

家に入って見ると、年老いた男性が1人。

 

「はて、どちら様じゃったかのう……」

 

「え、俺を知っているのですか!?」

 

「おお! そうか、こんなに大きゅうなって……立派になったのう……」

 

 

「あの…」

 

「そういえば、お前さんの父が洞窟の中に大切なものを隠してたようじゃ。何年も経っているのでどうなってるかは知らんがきっとまだあるはず! 気をつけて調べなされよ。」

 

俺の父さんが?

俺はここに連れてきてもらったことがあった?

 

「アレン、とりあえず行ってみようキー」

 

「そうだな……」

 

村を流れる川は洞窟に繋がっていた。お爺さんは舟を使って探索するように勧めてくれたので、舟を借り、洞窟へ入っていった。洞窟内は風が微かに吹く音と、川の流れる音だけが響いて妙に静かだ。

 

しばらく進むと、川は途切れていた。代わりに、地下へと進む階段があったので陸へ上がって降りてみる。

 

すると、今度は迷路の様な空間に出た。

 

「うわー……これは大変そうだな」

 

「オイラが先に飛んでいって、見てこようかキー?」

 

「ああ、頼む」

 

ドラきちに進む先を見てもらっている間にアイテム整理でもしておこうかな。

 

ブラウニーたちが あらわれた!

 

うわっ、魔物かよ。しかも4体。だが、負ける訳にはいかない!俺は剣で1体を斬りつける。すると他のブラウニーたちは俺に大きな木槌で攻撃してくる。威力は凄まじいが、隙が大きすぎるため簡単に避けられた。1体目に止めを刺し、呪文を唱える。

 

「ベギラマ!」

 

燃え盛る火炎がブラウニーたちに襲いかかる。焼き栗の完成だ。

 

 

よし、倒したな。なぜか、呪文の伸びは早いんだよなぁ……早いに越したことはないけれど。

 

突然、ブラウニーの1体が起き上がって攻撃をしてきた。

避ける暇がない!

 

そう思った瞬間、どこからともなくブーメランが飛んできて奴に突き刺さり、そいつは塵となって消えた。

 

「アレン、階段があっちにあったキー」

 

「ああ、ありがとう」

 

__________

 

 

……!今度は亀か。

 

ガメゴンたちが あらわれた!

 

ドラきちはブーメランを飛ばして全体攻撃をする。しかし、ダメージはあまり入っていないようだ。

 

「硬い……ドラきち!ここは呪文をつかって戦おう」

 

俺はベギラマを唱える。炎に焼かれてる亀を見ながら、焼いた亀って旨いのかな?なんて考えてしまった。いかんいかん。

 

一方ドラきちはラリホーを唱えて応戦。ガメゴン1体を眠らせることに成功したようだ。

 

ガメゴンの こうげき!

 

ガメゴンは甲羅についた棘を当ててくる。痛っ!結構痛いんですけど

 

「ドラきち、気をつけろ!」

 

すると、眠りから覚めたガメゴンが寝ぼけて仲間に攻撃した。ガメゴンたちの連携が乱れた。

 

「今だ! 一気に仕留めるぞ!」

 

ザシュ

 

グサッ

 

 

 

ガメゴンたちを やっつけた!

アレンは スクルトを 覚えた!

 

「はぁ……苦労したな。硬いのに痛いし」

 

俺はベホイミで自分たちの傷を癒やす。

 

 

_____________

 

 

「こっちに階段があったキー」

 

_____________

 

 

「次はこっちだキー」

 

俺達は魔物と戦いながら奥へ進んでいった。そして……

 

「ん?何か生活感のある場所に出たぞ」

 

狭い部屋だが、タンスや壷、机と椅子が置いてある。奥には扉があったので開けて入ってみると、そこには何かの紋章が描かれた剣、その側には手紙らしきものが置いてあった。

 

父の手紙……?

 

『アベルよ。お前がこれを読んでいるということは私はお前の側にいないのだろう。知っているかもしれんが、私は邪悪な手に攫われた妻のマーサを助けるため旅をしている。私の調べた限り、邪悪な手から妻を取り戻せるのは天空の武器、防具を身につけた勇者だけだ。私は世界中を旅して天空の剣を見つけることができた。しかし、未だ伝説の勇者は見つからぬ……。アベルよ! 残りの防具を探し出し、勇者を見つけ、我が妻マーサを助け出すのだ。頼んだぞ、アベル!』

 

アベル?

 

の、父……?

 

「パパスさんか……」

 

これは間違いなくパパスさんの手紙だ。どうやら俺は、あのお爺さんにアベルと間違われてしまったようだ。

 

「何かわかったキー?」

 

「ああ、ここはパパスさんのいた村、サンタローズの村だ。そして俺の故郷がこの東にある」

 

「それじゃ、これから向かうキーね?」

 

「ああ……」

 

そう言ってリレミトを唱える。俺達の体は出口へと飛ばされた。初めて使ったが、この呪文、慣れるまでに時間がかかりそうだ。気持ち悪い……

 

「手紙と剣は持ってこなくて良かったキー?」

 

「アベルと会った後に、また取りにくればいいと思ってな」

 

「アベルっていうのが、アレンの仲間なのかキー……」

 

「ああ、仲間思いで素直な、良い奴だよ」

 

俺達は兄さんがラインハットに戻ることをアベルに提案しているかも知れないので、そこへ向かうことにした。

 

 

次の目的地は、我が故郷ラインハットだ!!




ドラきちの語尾は小説版では「にゃー」でしたが、ここでは適応されてません。おかしいですね…
個人的にはこのドラきち、キーキーうるさくて嫌いです。

それと、主人公の設定でひとつ。
アレンは呪文に長けているのですが、覚える呪文は15個までに絞ろうかなと思っています。sfc版では大抵のキャラがそれくらいですので。

○現在覚えている呪文
1メラ   2ホイミ
3スカラ  4メラミ
5ベギラマ 6ベホイミ
7リレミト 8スクルト
9~15???

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告