今回はこの章のエピローグ的な話となっております。
ジンガやニーズヘッグとの戦いに決着がつき、奏夜たちはこれからどうするのか?
それでは、第84話をどうぞ!!
奏夜や統夜の奮戦により、怒りの権化と呼ばれたニーズヘッグは倒された。
しかし、自らニーズヘッグの核となったジンガはどうにか生き延び、再び奏夜たちの前に立ちはだかる。
奏夜は自分がジンガと決着を付けようとするも、ニーズヘッグとの戦いで力を使い果たしていたため、そんな奏夜に代わってジンガと対峙したのは統夜であった。
ジンガはニーズヘッグの核となったことにより邪気を高めて力を高めていたのだが、統夜は魔戒騎士としての揺るぎない強さを見せ、ジンガを撃破する。
こうして、ニーズヘッグを巡る一連の戦いは幕を閉じたのであった。
「…そうですか。ニーズヘッグの復活は許してしまいましたが、ニーズヘッグを倒し、それを企むジンガなる元魔戒騎士のホラーも討滅されたのですね?」
ここは全ての番犬所を統括する最高機関である元老院。
統夜とアキトは、元老院の神官であるグレスにニーズヘッグとジンガを討滅したことを報告し終えたことであった。
「…統夜、あなたとしては管轄の違う番犬所での仕事でしたが、よくやってくれました」
「ありがとうございます。身に余るお言葉を頂き、光栄です」
グレスから称賛を受けた統夜は、深々とグレスに頭を下げる。
「今回の仕事を経て、あなたは魔戒騎士として更に力を付けたみたいですね。そんなあなたをこのままずっと1つの番犬所所属の魔戒騎士としておくのは本当に勿体ないと思っております」
「ということはまさか…?」
アキトはこれからグレスが何を言おうとしていたのかを察していたからか、この後に紡がれる言葉に期待を抱いていた。
「…月影統夜。いや、白銀騎士奏狼(ソロ)よ!先の戦いの功績を評価し、あなたはこれから元老院付きの魔戒騎士として、励んでもらいます」
「!?俺が元老院に…?」
グレスから告げられたのは、統夜にしてみたら思いがけないものだったからか、驚きを隠せなかった。
「あなたの実力は前から評価しておりました。あなたの元老院入りの話は、そこにいるアキトだけではなく、冴島鋼牙も推薦していましたからね」
統夜は若年ながら魔戒騎士として多大な成果をあげており、前々から元老院入りは推薦されていた。
今回は、さらに魔戒騎士としての力を知らしめたことにより、グレス自らが統夜の元老院入りを勧めた結果、このように命じたのだ。
「…ありがとうございます…!元老院付きの話、謹んでお受けいたします…!」
統夜はグレスに跪くと、元老院行きの話を受け入れた。
統夜としては、思い出の深い桜ヶ丘から離れたくない気持ちはあったものの、魔戒騎士として、ひとつの場所に拘らず、多くの人を守っていきたいという気持ちも強かったのだ。
そして、元老院の神官であるグレス直々の申し出を反故に出来る魔戒騎士や魔戒法師はいないだろう。
「…統夜、期待しておりますよ」
「はい!!」
こうして、統夜は紅の番犬所の魔戒騎士から、元老院付きの魔戒騎士となった。
統夜の実績ならもっと早く元老院付きの魔戒騎士になれただろうが、統夜は桜ヶ丘に強い思い入れがあったのだ。
それに、20歳という若さで元老院付きの魔戒騎士へ抜擢されるのは、以前のサバックでベスト4の成績を残した鷹山宗牙以来の快挙なのである。
こうして、ニーズヘッグ討滅の報告を終え、元老院付きの話が統夜に舞い込んだところで統夜とアキトはグレスに一礼をし、その場を後にした。
「…それにしても、お前もついに元老院付きの魔戒騎士になったんだな!」
元老院内の通路を歩いてすぐ、アキトが口を開く。
「まぁな」
「だけどよぉ、お前は桜ヶ丘にこだわりが強かったのに…。どういう風の吹き回しなんだ?まぁ、グレス様直々の申し出じゃ断れないのもわかるけどさ」
統夜の盟友であるアキトは、統夜が桜ヶ丘への思い入れが強いことをよく知っていたため、その疑問を統夜にぶつけていた。
「…そりゃあ、その気持ちに変わりはないさ。だけど、俺が魔戒騎士として多くの人を守っていくならば、そんな考えのままじゃダメだと思っていた訳なんだよ。次誰かから推薦があった場合は引き受けるつもりだったんだ」
統夜は自分の今抱えている本音をそのままアキトへとぶつける。
「…なんだよ!それなら、俺がいくらでも推薦したのに!」
今の統夜が元老院付きの話が来たら受け入れるつもりだったという話を聞き、前々から元老院へ推薦していたアキトは面白くないと思ったのか、唇を尖らせていた。
「…あはは、悪い悪い」
そんなアキトに苦笑いをしながら、統夜は謝罪を入れる。
『ま、俺様はそう遠くないうちにこうなるだろうとは思っていたぜ。今のお前は、父親である龍夜以上に魔戒騎士として成果をあげていたんだからな』
統夜の父親である月影龍夜もまた、先代の輝狼(キロ)として、多くの成果をあげ、元老院付きの魔戒騎士になった経緯があったが、統夜程の成果をあげた訳ではなかったのだ。
「俺はそれでも父さんを越えたなんて思っていないさ。俺はこれからも精進を怠ることはしない」
統夜はイルバの称賛を真に受けることなく、これからも魔戒騎士としての使命を果たしていく決意を固めていたのだ。
「…それにしても、お前が元老院付きの魔戒騎士になったと聞いたら、戒人の奴がより1層奮い立ちそうだよな」
「そうだな…。戒人だけじゃない。幸人だって元老院付きの魔戒騎士になれる力はあると思っている。あいつらも精進を重ねていくだろうさ」
「…ま、そうだろうな」
統夜のライバルである黒崎戒人は、統夜の元老院付きの話を聞いたらどう感じるかはまだわからないが、それを悲観することなく、変わらずに統夜をライバルと見据えてこれからも魔戒騎士として統夜と共に精進していくだろう。
盟友である統夜とアキトはそう信じていた。
こうして、統夜とアキトはそのまま元老院を後にしたのである。
そこでアキトと別れ、統夜は桜ヶ丘へと向かう。
グレスから受けた話を、紅の番犬所の神官であるイレスに報告し、元老院付きの魔戒騎士になるために色々準備をしなければいけないからだ。
こうして、統夜は、魔戒騎士として新たな一歩を踏み出すことになったのであった。
※
ニーズヘッグとの激闘を終えた奏夜とララは、そのまま音ノ木坂学院へと向かっていた。
本来なら早く体を休めたいところであったが、穂乃果たちに一秒でも早く無事を報告したかったからだ。
「…あ!そーくん!!それに、ララちゃん!!」
穂乃果たちは、奏夜たちが戦っている間、部室にて待機し、奏夜たちの無事の帰還を祈っていた。
奏夜たちの姿を見かけて、穂乃果たちは奏夜とララに駆け寄る。
「…穂乃果…。みんな…ただいま…!!」
「奏夜…!終わったのですね!?」
「そーくん!おかえりなさい!!」
奏夜は帰還の報告を軽く済ませると、海未とことりが歓喜の声をあげる。
「まぁ、奏夜もララもボロボロだけどね…」
「そんだけ凄い戦いだったってことだよ!」
「だ、大丈夫!?奏夜君、ララちゃん!」
奏夜とララが戦いによって消耗しているのは穂乃果たちが見ても明らかだったため、花陽は心配そうに声をかける。
「大丈夫かと言われたら、決して大丈夫ではないがな…」
「私は問題ないわ。単純に力を使いすぎただけだからね…」
奏夜はいくら今は多少体力が回復しているとはいえ、消耗しているのは事実だったため、正直に報告していた。
「だけど、2人とも無事に戻ってきてくれただけでも良かったよ!!」
「そうね……!奏夜、ララ!本当にお疲れ様!!」
奏夜の無事を希は満面の笑みで喜んでおり、絵里は穏やかな表情で奏夜とララを労う。
「まったく…。あんたたちはいつも無茶するんだから…。心配させないでちょうだい…!」
にこは本気で奏夜たちのことを心配していたのか、不機嫌そうに呟く。
「にこ…。ごめんな、心配かけて」
「心配するのは当たり前じゃない!!小津先生だけじゃなくて、あんたたちまで失ったら、私たちはどうすればいいのよ!!」
にこは剣斗だけではなく、奏夜とララまで命を落としたらと最悪なことを考えてしまい、不安で押しつぶされそうになっていたのだ。
「…そうだよな…。俺も死ぬ訳にはいかないと思って戦っていたよ…。だけど、ニーズヘッグの怒りの力は俺の想像を遥かに越えるものだったんだ。奴の怒りの炎を受けて、俺は死を覚悟したくらいだよ…」
奏夜はニーズヘッグとの戦いで起きたことを軽く話すと、奏夜の不穏な言葉に穂乃果たちの顔が真っ青になる。
「だけど、そんな俺を救ってくれたのが剣斗だったんだよ…」
「…小津先生が、そーくんを?」
「ですが、小津先生は…」
命を落とした剣斗が奏夜を助けられるわけがない。
そう思っていたことりは首を傾げ、海未はその疑問をぶつける。
「厳密に言えば剣斗の英霊が俺に力を貸してくれたんだ。剣斗だけじゃない。俺が魔戒騎士になったばかりの時、俺を助けるために命を落とした先輩の英霊も…」
「私は信じるよ!だって、小津先生はそーくんの友達だもん!命を落としたとしても、そーくんを救ってくれたんだね!」
穂乃果は奏夜の言葉を信じており、そんな穂乃果の言葉に奏夜は無言で頷く。
「その力のおかげで、ニーズヘッグを倒す事が出来たんだ…」
「やっぱり命懸けだったんじゃない…」
剣斗やテツの英霊の力添えがなければ奏夜は命を落としていたと知り、にこはさらに不機嫌になってそっぽを向くのだった。
「そうだな。それに関しては返す言葉もないよ。だけど俺は絶対にみんなの元に帰ると決めてたんだ。生きて、これからもμ'sを見守っていくためにも!!」
奏夜のまっすぐな言葉を聞いてドキッとしたのか、にこは頬を赤らめる。
「ま、まぁ!!本当なら許せないけど、あんた
たちが無事に帰ってきたことに免じて特別に許してあげるわ!」
「ありがとう、にこ…」
こうして、奏夜とララは戦いが終わり、自身の無事を報告出来たのであった。
「確かにニーズヘッグは倒されて、ジンガの野望は砕いた。だけど、魔戒騎士としての俺の戦いは終わった訳じゃない。俺は、ホラーから人を守るのが使命だから……」
そして、ニーズヘッグとの決着が、魔戒騎士としての戦いの終わりでないこともすぐに伝えていく。
「わかってるよ!だけど、これからもμ'sのマネージャーとして、私たちを支えてね!」
「もちろんだ!そこに関しても頑張るつもりだ!」
それだけではなく、これからもμ'sのマネージャーを続けることも、改めて報告する。
奏夜はこのように決意するのだが……。
「……ごめん。私はこれ以上、みんなと一緒にはいられないわ」
ララは言いにくそうにしながらもこのように告げる。
その言葉に穂乃果たちだけではなく、奏夜も驚きを隠せなかった。
「ええ!?何で!?」
「私がここに来たのも、魔竜の眼を守るためだったからね。その役目は終わったわ。いや、いくら理由があるとはいえ、私は魔竜の眼の封印を解いてしまい、ニーズヘッグの復活を許してしまった。この罪は消えることはないわ。だから私は故郷に帰って、その罪を償わなきゃいけないの」
『その過程はあったが、ニーズヘッグは倒されたんだ。お前が罪に問われることもないと思うがな』
確かにララはニーズヘッグ復活のきっかけを作ってしまったが、キルバの言う通り、ニーズヘッグは倒されたのだ。
その事実を聞いても、ララは首を横に振る。
「ううん。いくらニーズヘッグは倒されたとしても、ニーズヘッグ復活によって里を危険に晒す可能性があったのも事実だもの。私は使命を果たせなかった魔戒法師として、きっと罰を受けることになると思うわ」
「そんなの、馬鹿げてるわよ!」
「真姫の言う通りだ!蒼哭の里の連中は里を守るためだけにその責務をララに押し付けたんだろ?それなのに、ララが罰を受けるなんて…!!」
蒼哭の里の話はララから聞いていたが、ララが罰を受けるかもしれないと聞き、奏夜と真姫は怒りを露わにする。
「…ありがとう。私のために怒ってくれて…」
奏夜は初めてララと会った時も蒼哭の里のあり方に怒っていたが、今回も同様に怒ってくれたのが嬉しかったのか、ララは穏やかな表情で微笑む。
「私ね、今回のことできっと里から追放される可能性は高いと思うの。だから、その時は旅に出ようと思う」
「…え?こっちには戻ってこないん?」
ララからの思わぬ言葉に、希は首を傾げながら訪ねる。
「うん。各地を旅しながら、魔戒法師として力を付けていくつもり。例え離れていたって、私はいつでもμ'sのことを応援しているから…!」
「ララちゃん……」
ララの決意を聞き、穂乃果たちは何も言うことは出来なかった。
「…ララ、また会えるよな?」
「もちろん!だって、私たちは仲間でしょ?」
「ああ!」
「だけど、私はひとつだけやらなきゃいけないことがあるの」
ララはそれだけ言うと部室を後にしたため、穂乃果たちはララを追いかける。
ララが向かったのは、屋上であった。
「…ララちゃん?どうするつもりなの?」
「私がこの学校にいたというみんなの記憶を消すの。私はいつここに戻ってこられるかもわからないし、もしかしたら戻ってこられないかも知れないからね」
「!?そんな!そこまでしなくても!!」
穂乃果は自身の存在の記憶を消そうとするララに異議を唱えようとするが……。
「その方がいいかもしれないな…」
「そーくんまで!!」
『ララは転校生として潜り込んでたからな。急にいなくなるのも不自然だろう。だったら、最初からいないことにした方が余計な混乱も起きないだろう』
「…うん、キルバのいう通りだよ」
ララがやろうとしてることの意図をキルバはわかっており、そのことに対してララは苦笑いをする。
「私としても、この学校は好きだからこうしたくないけれど、これが余計な混乱を起こさせない最良の手段だから…」
ララは魔導筆を取り出すと、精神を集中させ、上空に向かって法術を放った。
その術は雲に到達すると、その雨は雨雲へと変化し、唐突に雨が降り始めたのだ。
「大丈夫。μ'sのみんなは私の記憶は消さないつもりだよ。だってみんなは、私の仲間だもの…」
「ララちゃん……」
「……さようなら。ラブライブ、頑張ってね!離れてたって、私はみんなのことを見守ってるから…!!」
ララは穂乃果たちに別れの挨拶をすると、法術を放って、どこかへと姿を消した。
ララの姿が消えたと同時に、雨は止み、太陽が再び顔を出すのだった。
(ララ…頑張れよ…!俺は必ず、穂乃果たちを高みへ連れていくから、見守っててくれよな…!)
奏夜は心の中でララに別れの言葉をかわし、このように誓いを立てる。
ララがいなくなってすぐに奏夜は戦いで消耗した体を休ませるために音ノ木坂学院を後にし、穂乃果たちは奏夜抜きで練習を行うことになった。
そして翌日、奏夜は昨日の激闘で消耗してたのもあったのかぐっすりと眠ってしまい、遅刻ギリギリの登校となってしまったのだ。
「…おはよう!なんとか間に合った!」
奏夜はクラスメイトたちに挨拶をすると、自分の席に座る。
それと同時にチャイムが鳴り、担任の山田先生が教室に入ってきた。
「お、如月。珍しく遅刻ギリギリじゃないか。寝坊でもしたのか?」
「アハハ…、まぁそんなところです」
寝坊したのは事実だったため、奏夜は苦笑いしながらこう答えると、あちこちから笑い声が聞こえてきた。
「ま、次からは気を付けろよ。それじゃあ、朝のホームルーム始めるぞ〜」
こうして、朝のホームルームが始まった。
そこでは特に変わったことはなかったのだが、出欠確認の時、ララの名前は呼ばれることはなかった。
それだけではなく……。
「…あれ?なんか机がひとり分多くないか?誰かが転校してくるとも聞いてないが…」
山田先生はララの座ってた席を見て首を傾げていた。
そう。まるでララは最初から存在しなかったかのような扱いだったのだ。
「先生!そこは蒼井ララさんの席ですよ!」
それを見かねた穂乃果が山田先生にこう指摘するのだが…。
「……蒼井ララ??初めて聞く名前だが……」
山田先生は穂乃果の言葉を不思議そうに聞いており、改めて出席簿を確認するも、そんな名前が載っている形跡はなかった。
「…あっ……。すいません……」
穂乃果は、ララが自分たち以外の記憶を消したことをここで思い出したのか、ここで口を閉じる。
「…まぁ、いい。後でそこの机片付けておいてくれ。これでホームルーム終わるぞ〜」
こうして、ララの存在が消されていることを再認識したところで朝のホームルームは終了したのだった。
「……ねぇ、穂乃果、大丈夫?」
穂乃果が変なことを言っていると思ったのか、ヒデコ、フミコ、ミカの3人が穂乃果の席にやって来て、ヒデコが声をかける。
「アハハ、ごめん。私、変な夢見ちゃってたかも…」
穂乃果は苦笑いしながら、このように話を誤魔化していた。
ここでララがいたことを説明しようとするも、余計に混乱させるだけだと判断したからだ。
「穂乃果たち、ラブライブに向けて頑張ってるんだもん!そりゃ疲れも出るよねぇ!」
「う、うん…。そうなんだ…」
穂乃果の言葉を疑うことはなく、フミコは普段頑張ってる穂乃果に労いの言葉を送っていた。
そんな中……。
「だけど、何でだろうね?不思議なんだけど、確かにあの席に誰かいたような気がするんだよね。気のせいだとは思うけど」
ミカがララの席を見ながら不思議そうに呟いていた。
「ミカもそう思ってた?実は私もそれは思ってたんだ…」
「私も……」
穂乃果たち以外はララに関する記憶は消えているのだが、うっすらとララの存在の形跡を感じていたようであった。
「でもまぁ、後でその机も片付けておかないとね…」
ヒフミトリオの3人は、ララの席を不思議そうに見つめながら自分の席に戻っていった。
「…みんな、本当にララのことを忘れてしまっているのですね…」
朝のホームルームと、先ほどのヒフミトリオとのやり取りを見ていた海未は、寂しそうに呟いていた。
「そうだね……」
「そのおかげで、混乱もないみたいだし、これからも頑張っていかないとな……」
「…うん、そうだよね…!」
「そうですね。ララはこれからの私たちを見守ってるんですから」
「そうだよ!頑張ろうね!」
これからのμ'sの活動は剣斗だけではなく、ララもいない状態となる。
しかし、穂乃果たちはそんな状態だろうと、ラブライブ優勝という大きな目標に変わりはないのだ。
奏夜たちはこのように自分たちを奮い立たせる言葉をしたのと同時にチャイムが鳴り、授業は始まった。
こうして、ニーズヘッグとジンガは討滅されたが、穂乃果たちの日常は変わることはなく過ぎていくのであった。
そして放課後、奏夜は穂乃果たちに許可を貰い、番犬所へと向かった。
自分の口で改めてニーズヘッグとの戦いについての報告を行うためである。
「奏夜…。あなたの活躍は既に報告を受けています。本当に、よく頑張りましたね…」
奏夜から改めて報告を受けたロデルは穏やかな表情で微笑むと、奏夜に労いの言葉を送る。
「身に余るお言葉…。恐縮です」
番犬所の神官であるロデルの言葉を聞き、奏夜は深々と頭を下げた。
「今回の激闘を乗り越えたことで、あなたは魔戒騎士としてさらに成長を遂げたことでしょう。ですが、それに満足してはいけません。魔戒騎士として多くの人を守るため、さらに精進を続けてくださいね?」
「はい!俺はもっともっと強くなります!俺には、越えたいと思う、尊敬する魔戒騎士がいますから…」
こう決意を固める奏夜の脳裏に浮かんでいたのは、先輩騎士である統夜であった。
確かに自分は全力でニーズヘッグを倒すことが出来た。
しかし、その後現れたジンガを相手取る程の力は残っておらず、統夜にジンガの相手を託すことになったのだ。
そんな統夜は、邪気を高めて力をつけたジンガを難なく撃破してみせた。
だからこそ、まだまだ統夜とは実力の差があるのは歴然であるため、そんな統夜のような魔戒騎士になりたいと心に決めていたのだ。
「頼みましたよ、奏夜。そして、魔戒騎士としてだけではなく、ラブライブも気合を入れなければいけませんね?」
「…はい!」
番犬所の神官としての顔ではなく、1人のスクールアイドルのファンの顔を見せていたロデルは、μ'sを応援しており、次なる最終予選に向けて奏夜へ激励の言葉を送るのであった。
こうして、ロデルへ今回の戦いの報告を終えた奏夜は、魔戒剣の浄化を済ませてから番犬所を後にする。
ジンガを倒したことにより、1つの大きな戦いは幕を閉じた。
しかし、これが奏夜にとって最後の戦いではない。
人間の心に邪心があるかぎり、陰我は生まれ、ホラーは出現する。
それ故に、奏夜たち魔戒騎士の戦いには終わりはないのだ。
しかし、それでも奏夜は戦い続けるだろう。
魔戒騎士として、守りし者として…。
それだけではない。
奏夜はμ'sのマネージャーとして、これからもμ'sを支えていくことだろう。
それこそが、奏夜にとって大きな力になるのだから…。
陽光騎士である奏夜の戦いは、まだ終わらないのであった…。
……蒼哭の竜詞編・終
──次回予告──
『やれやれ…。プライドの高い奴ほど、それが打ち砕かれた時、何をしでかすかわからんな。それこそが陰我に繋がるんだ!次回、「自尊」 その傲慢な陰我、断ち切らないとな!』
この章が終わり、この小説の牙狼サイドの話はひとつの区切りを迎えました。
前作小説にて、元老院入りの話を断っていた統夜でしたが、今回は元老院付きの魔戒騎士となる決意を固めました。
統夜にとって桜ヶ丘は大切な場所なのは間違いありませんが、この辺で統夜を元老院付きの魔戒騎士にしたいなと考えていたのです。
そして、ララは「炎の刻印」みたいに命を落とすことはありませんでしたが、里へ戻るという形での退場となりました。
今作のララをどうするか。
ここは大分悩みました。
ニーズヘッグとの戦いで命を落とすっていう展開も考えましたし、生存させてそのままμ'sのお手伝いをさせるという展開も考えました。
ですが、今回は生存はしたものの離脱という形での退場と決めたのです。
今後ララを再登場させるかどうかは未定ですが、おそらくは再登場はしないと思います。
次回からは再びラブライブの話が始まっていきますが、新章に入る前に番外編の話を投稿しようと考えています。
番外編はどのような話になるのか?
それでは、次回をお楽しみに!