牙狼ライブ! 〜9人の女神と光の騎士〜   作:ナック・G

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お待たせしました!第75話になります!

前回投稿からはかなりの時間が空いてしまいましたが、今回は思ったより早く投稿が出来ました。

前回、A‐RISEに対抗するために色々と模索する奏夜たちであったが、突破口を見出すことは出来るのか?

それでは、第74話をどうぞ!




第74話 「変化 後編」

奏夜たちμ'sは、ハロウィンでパフォーマンスをすることになったのだが、A-RISEに対抗するために、いつもとは違うインパクトを求めて試行錯誤を重ねていた。

 

しかし、妙案が浮かぶどころか全てが空回りに終わり、インパクトを求めるということは迷走している。

 

それでも、ハロウィンでのパフォーマンスに向けて、曲や衣装などの準備は進めていた。

 

その頃、秋葉原某所では……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はぁ、はぁ、はぁ……」

 

OLなのだろうか、ビジネススーツを身にまとった女性が、長い黒髪をなびかせながら全力で駆け出していた。

 

まるで、何かから逃げるように……。

 

この女性は、ジンガに仕えているアミリに雰囲気か似ている女性であった。

 

すると、必死に何かから逃げる女性に、1つの影が迫る。

 

「くくく……。逃がしませんよ?あなたを始末するのが、この私の仕事ですからね」

 

女性に迫っているのは、ビジネススーツを身にまとい、メガネをかけている、いかにもビジネスマンといった雰囲気を出す男性だった。

 

女性を追う男性の眼が怪しく輝いており、この男性がホラーであり、この女性を標的にしている。

 

「…どうして……っ!こんなことに……」

 

未知の怪物に追われている女性は、この状況に絶望しながらも、必死に逃げ惑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

女性がホラーに襲われる少し前、奏夜は偶然にも見回りでその付近を歩いていた。

 

「……」

 

奏夜は何か考え事をしているのか、険しい表情で歩を進めている。

 

『…おい、奏夜。どうしたんだ?そんな難しい顔をして』

 

「……あぁ」

 

そんな奏夜を訝しげに思ったのか、キルバが声をかけるが、奏夜は生返事を返していた。

 

『もしかして、焦っているのか?一刻も早くジンガの拠点を見つけて、ニーズヘッグ復活を阻止しないととか思ってるんじゃないだろうな?』

 

「…そりゃ、それも大事な使命だし、それもちょっとは考えてはいたさ」

 

『ということは、穂乃果たちの言っていたインパクトとやらか?』

 

「……ま、そういうことだ」

 

相棒であるキルバに見透かされていることを予想していたのか、奏夜は苦笑いを浮かべながら返事をしていた。

 

「…あれからずっと考えていたんだ。確かに、あのA‐RISEに対抗するためには、インパクトのある何かを表現しなきゃいけないかもしれない。だけどさ……」

 

『む?』

 

「そもそもの話なんだが、μ'sって、性格も個性もバラバラな9人が1つになって、大きなものを作っていく。それだけでも充分インパクトがあるんじゃないかと思ったんだよ」

 

『…なるほどな。まぁ、お前の言い分は理解出来るさ』

 

奏夜は色々考えを巡らせていた中で、このような結論に至っており、それにキルバも納得していた。

 

「穂乃果たちもそのことにきっと気付けるさ。俺はそう信じている」

 

奏夜のこの発言は、穂乃果たちがスクールアイドルとして多くの苦境を乗り越えてきたことを目の前で見てきたからこそ出た言葉である。

 

『ま、確かにそうかもしれんな。あいつらはあいつらでそれなりに成長してるからな』

 

穂乃果たちがスクールアイドルとして成長しているのはキルバも感じており、そこはキルバも認めていた。

 

「このハロウィンのパフォーマンスでそれに気付けた時、穂乃果たちはまた大きく成長する。あのA‐RISEに匹敵する実力を付けつつあるしな」

 

奏夜は、今度のパフォーマンスで穂乃果たちが更なる成長を遂げてくれることを大いに期待していたのであった。

 

その時である……!

 

『…!奏夜!ホラーの気配だ!ここから近いぞ!』

 

「!!行くぞ、キルバ!」

 

キルバがホラーの気配を探知したため、奏夜はキルバのナビゲーションを頼りに、現場へ急行することになった。

 

 

 

 

 

 

そんな中でも女性は必死にホラーである男性から逃げ惑っていたものの、運悪く近くの石につまづいてしまい、転倒してしまう。

 

「…あぁ……!!」

 

転倒してしまったことにより、ホラーである男性に追いつかれてしまい、女性は恐怖で顔をひきつらせるのであった。

 

「くくく、ようやく追い詰めましたよ。まったく……。思った以上に手こずらせてもらいましたね」

 

逃げ惑う女性が逃げられない状況になっているのを見たホラーの男性はニヤリと怪しい笑みを浮かべながら、女性に迫る。

 

「これが私の仕事ですので、悪く思わないでくださいね?」

 

この男はホラーに憑依される前はビジネスマンだったのか、獲物の捕食を仕事と称して正当化しようとしていた。

 

男性の手が女性に伸びようとしていたその時である。

 

「……そこまでだ!」

 

キルバのナビゲーションで、ホラーのいる場所へと向かっていた奏夜が現れたのであった。

 

「ん?何ですか?君は?」

 

男性はホラーの姿にはなっておらず、人間の姿のままだったため、とぼけてその場をやり過ごそうとしていた。

 

しかし、奏夜はすぐさま魔導ライターを取り出すと、橙色の魔導火を灯す。

 

魔導火は男性の瞳を照らすのだが、男性の眼からは怪しい紋章のようなものが現れた。

 

この男性がホラーである何よりの証である。

 

「やれやれ、魔戒騎士ですか……。私の仕事の邪魔をしないで貰いたいのですがねぇ」

 

突然現れた魔戒騎士である奏夜の登場に、男性はうんざりしたかのように肩を落とすのだが、そこから間髪入れずに奏夜に拳による攻撃を繰り出す。

 

奏夜はその動きを見切っていたからか、無駄のない動きで攻撃をかわし、逆に反撃と言わんばかりの蹴りを放って男性を女性から遠ざけようとしていた。

 

「……今のうちに逃げろ!」

 

「はっ、はい!!」

 

突然の出来事に戸惑いを隠せないのか、キョトンとした表情のまま、奏夜に言われるがまま逃げるようにその場を離れたのであった。

 

しかし、この時奏夜は気付かなかった。

 

女性が逃げた直後に、蝶のようなものが奏夜の魔法衣に紛れるかのように中に入っていったのを……。

 

「……仕方ないですね。魔戒騎士、相手をしてあげますよ」

 

獲物である女性に逃げられしまったため、男性は目の前の障害である奏夜を倒すことにしたのであった。

 

「……悪いが、俺は最初からお前を斬るつもりだったぜ」

 

奏夜はゆっくりと魔戒剣を抜くと、剣を構えて男性をじっと見据える。

 

お互いその場に留まり、相手の動向を伺っていたのだが、先に動いたのは、男性の方であった。

 

男性は手のひらから植物の蔦のような触手を出すと、それを奏夜に向かって放つ。

 

奏夜は冷静にその動きを見極めており、魔戒剣を振るうことで、男性から放たれた触手を斬り裂いていく。

 

「この程度は序の口ですよね。だったら、これならどうですか?」

 

先ほどは片手のみ触手を出していたのだが、今度は反対の手も突き出し、両手から放たれる触手が奏夜に襲いかかる。

 

「……っ!」

 

奏夜は後ろに後退しながら魔戒剣を振るい、触手を斬り裂いていくが、男性は何度も触手を放ち、奏夜はそれを切り裂き続け、なかなか反撃するチャンスを掴めずにいた。

 

「こいつ……!なかなかやるな…!」

 

『おい、奏夜!このままじゃキリがないぞ!まずはあの触手をなんとかしなければ!』

 

「そうだな……!斬っても斬ってもキリがないなら、攻撃を避けながら反撃の機会を伺うまでだ!」

 

奏夜は再び魔戒剣を振るって触手を切り裂くと、続けて迫り来る触手は、軽やかな身のこなしで避けていた。

 

「ほう……?作戦を変えて来ましたか?ですが、いつまで持ちますかな?」

 

男性は、奏夜が自分の攻撃をかわしながら接近しようとしていることは読めていたため、それを阻止するために、攻撃を激しくしていた。

 

「くっ……!こいつ……!!」

 

男性がなかなか反撃の機会を与えないことに奏夜はやや焦りを覚えるものの、突破法が見いだせないため、どうにか攻撃を避け続けていた。

 

「おやおや、あの尊師様を退けた魔戒騎士の実力とは、この程度なのですか?」

 

「へっ、言ってくれるじゃねぇか……!」

 

男性は奏夜に対して挑発ともとれる言葉を放つものの、奏夜はニヤリと笑みをこぼしながらその言葉を受け流していた。

 

(仕方ねぇ……!こうなったら、鎧を召還して一気に距離を詰めるか?いや、ダメだ!鎧の召還だって制限時間があるんだから……!)

 

奏夜は突破口を開くために鎧の召還を行おうと考えるものの、男性がまだホラーの姿を晒していないこともあるため、今はそのタイミングではないと判断していた。

 

(だが、このままだとジリ貧なのも事実。一か八かだが、前に出るしかないか!)

 

奏夜は意を決して男性に接近しようと試みようとしたその時であった。

 

どこからか現れた何者かが剣を振るうと、男性の触手を斬り裂いていった。

 

「!?何者だ!!」

 

男性は突然の乱入者に驚き、攻撃の手を止めてしまった。

 

男性と奏夜の間に現れたのは……。

 

「よう、奏夜。ずいぶんと手こずってるみたいだな」

 

「!リンドウ!すまない、助かったよ」

 

奏夜と同じ翡翠の番犬所所属の魔戒騎士であり、様々な修羅場をくぐり抜けてきた魔戒騎士でもある、天宮リンドウであった。

 

「魔戒騎士がもう1人現れましたか!ですが、何人来ようと私の敵ではありません!あなた方など、一気に蹴散らしてみせましょう」

 

リンドウの出現に男性は平静を装いながらも、焦りは隠しきれず、二人を見一気に倒すために、ホラーの姿へと変わったのであった。

 

『奏夜。奴はホラー、ヘデラ。あの姿になったら触手の攻撃はより激しくなるぞ!気を引き締めろ!』

 

「ああ、わかってるさ!」

 

ギルバがこのように説明するのは正しいのか、ホラーの姿へと変わったヘデラは、植物のような見た目のホラーであり、先ほどのように植物の蔦のような触手を放って攻撃してきた。

 

奏夜とリンドウはそれぞれ魔戒剣を振るって触手を切り裂くが、その攻撃は激しさを増していく。

 

「やれやれ……。煙草を吸う暇すら与えてくれないか……!」

 

リンドウはホラーとの戦闘中でも煙草を吸うほどの愛煙家であるものの、ヘデラはそんなチャンスを与えてはくれないほど攻撃が激しかった。

 

『リンドウ!今は戦闘中ですよ!もっと集中してください!』

 

リンドウの相棒の魔導輪であるレンが軽口を放つリンドウのことをたしなめる。

 

「へいへい。わぁってるよ!」

 

そんなレンの小言を流しながらも、リンドウは魔戒剣を振るい続けていた。

 

「……!待てよ…?奴は植物のホラーならば、もしかして……」

 

奏夜は魔戒剣にてヘデラの攻撃をしのぎつつも、何かを思い付いたようであった。

 

「キルバ!あいつに向かって魔導火を放ってくれ!」

 

『なるほど、そういうことか!!』

 

奏夜の意図をキルバが理解したところで、奏夜は行動に出る。

 

奏夜は片手でヘデラの触手の攻撃をしのぎつつ、キルバを嵌めている左手をヘデラの方へ突きつけた。

 

「……っ!キルバ!今だ!!」

 

『ああ!!』

 

奏夜の合図と共に、キルバは口から魔導火を放つのであった。

 

「!?」

 

キルバから放たれた魔導火を恐れているのか、ヘデラは攻撃の手を止めて一歩後ろへ下がってしまう。

 

「なるほど。奴さんは植物のホラーなら火に弱いって訳か」

 

リンドウはホラーの特性を戦いながら見抜き、突破口を見出した奏夜に対して称賛の目を向けていた。

 

『奏夜、今だ!』

 

『リンドウ!今がチャンスです!』

 

「ああ!」

 

「わかってるって!」

 

このチャンスを逃すまいと、奏夜は魔戒剣を上空へ突き出し、リンドウは魔戒剣を前方へ突き出した。

 

奏夜は上空で魔戒剣を円に描き、リンドウは八の字を描く。

 

奏夜は自ら描いた円から放たれた光に包まれ、リンドウは描いた八の字が円の形になった後にその円からの光に包まれる。

 

それぞれが放った円から鎧が現れると、2人はそれぞれの鎧を身にまとった。

 

奏夜が身にまとっている鎧は、陽光騎士輝狼。牙狼とは異なる黄金の輝きを放つ鎧である。

 

一方、リンドウが身にまとっている鎧は、神食騎士狼武(ロウム)。その鎧は漆黒の鎧であるものの、闇は感じず、雄々しさを放っていた。

 

鎧を召還したことで、奏夜の魔戒剣は陽光剣へと姿を変え、リンドウの魔戒剣は、先ほどよりも形が大きくなり、ノコギリのような刃が特徴の機神剣へと姿を変化させる。

 

「しまった……!思わず怯んでしまいました……。ですが、鎧を召還したところで!」

 

ヘデラは、自らが与えてしまった隙により、奏夜とリンドウに鎧の召還を許してしまったが、それでもこの2人を倒すつもりでいた。

 

しかし……。

 

「悪いな……!一瞬でも隙を作ったこと、それがお前の敗因なんだよ!」

 

「ええい、ほざくな!!」

 

奏夜の言葉に激昴してしまったヘデラは、先ほどよりも攻撃の勢いを激しくしていた。

 

「これ以上、お前を暴れされるかよ!一気に決める!」

 

奏夜は、ヘデラの攻撃を避けながらも、自らの魔導火である橙色の魔導火を身にまとい、烈火炎装の状態となる。

 

それとタイミングを同じくして、リンドウは自らの魔導火である青紫色の魔導火を身にまとい、同様に烈火炎装の状態となった。

 

「奏夜!決めるぞ!」

 

「ああ!!」

 

奏夜とリンドウは同時に魔戒剣を振るうと、それぞれの魔導火の刃が飛び出し、同じタイミングでそれをヘデラに向かって放つ。

 

ヘデラは触手による攻撃でどうにか凌ごうとするも、魔導火の刃が迫り来るスピードは速く、為す術もなくその身体が切り裂かれてしまった。

 

「ばっ、馬鹿な……!この私が……!ですが、これでいいのです……。私は、しっかりと仕事は果たしたのですからね……」

 

「!?どういうことだ!」

 

ヘデラの放つ意味深な言葉を奏夜は問い詰めようとするものの、ヘデラはそれに答える間もなく身体が消滅していき、その陰我と共に消えていった。

 

「……あのホラーの言ってたことは、いったいなんだったんだ……?」

 

奏夜は、ヘデラの言葉に戸惑いながらも、鎧を解除し、魔戒剣を鞘に納めた。

 

「さぁな。あのホラーが暴れてるのも、ジンガの策略のひとつなんだろうさ」

 

リンドウもまた、鎧を解除し、魔戒剣を鞘に納めながら、このような推察をする。

 

「もうすぐあいつも動き出すってことか……」

 

『奏夜、リンドウ。気を引き締めろよ?もしジンガが動くということは、俺たちに竜の眼が渡っていることを知っている可能性が高いということだからな』

 

「そうだな……」

 

戦いを終えたばかりではあるが、今後激闘が繰り広げられるだろうと予想しているからか、奏夜の表情は険しくなっていた。

 

ヘデラを討滅した奏夜とリンドウは、このことを番犬所へ報告するために、そのまま番犬所へ向かうのであった。

 

その事実を知ったロデルは、奏夜たちに今まで以上に警戒を務め、可及的速やかにジンガの拠点を見つけるよう指令を出すのである。

 

しかし、その後はジンガが動く様子はみられず、そのままハロウィン当日となってしまったのであった。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

ハロウィン当日、街はカボチャのオブジェやらオレンジや黒の風船やらなどで装飾されており、この日がハロウィンであるということがよくわかる街並みだった。

 

それだけではなく、この日はハロウィンということもあり、人々もまた、仮装を楽しんでいる様子もあった。

 

「……うぅ、いよいよライブ……。緊張するね……」

 

奏夜たちはパフォーマンスが行われる会場へ向かっていたのだが、穂乃果が不安そうな表情で奏夜に話しかけていた。

 

「まぁ、今の俺たちにやれることはやったんだ。気負いせず楽しんでいこうぜ」

 

奏夜がリンドウと共にヘデラを討滅した次の日以降もパフォーマンスにインパクトを出す方法を思案していたが、いいアイデアは浮かばず、本番用の衣装と曲の練習を最優先事項としていたのである。

 

その中でも、奏夜たちは自分たちに与えられた役割をそれぞれこなしていき、どうにか本番である今日を迎えたのであった。

 

「そうね。だから、楽しんでいきましょう」

 

奏夜の言葉に絵里も同意しており、穂乃果をリラックスさせるために声をかけるのである。

 

「それに、みんなはほら、楽しそうよ」

 

そう言いながら絵里は後ろを歩いている他のメンバーに視線を移し、奏夜と穂乃果も同様に眺めていた。

 

すると……。

 

「ねぇ、見てみて!おっきなカボチャだにゃあ!」

 

「本当だ!凄いねぇ!こんな大きなカボチャ、私見たことないよ!」

 

凛とララが、大きなカボチャのオブジェを目を輝かせながら眺めており、他のメンバーはそんな2人の様子を見守っていた。

 

「そうだねぇ。……凛ちゃん、ララちゃん。撮るよ〜」

 

そんな2人の言葉に、花陽はスマホを構えながら同意しており、凛とララのことを写真に撮る。

 

その楽しげな様子に、他のメンバーは笑みを浮かべていた。

 

しかし、穂乃果だけはその様子を見て何かを感じ取ったのか、目を大きく見開いてその様子を眺めていた。

 

「……?穂乃果?どうしたの?」

 

「え?ううん、なんでもないよ!」

 

絵里に声をかけられて穂乃果はハッとするが、少し間を置いてから、話を切り出した。

 

「……ねぇ、絵里ちゃん。そーくん」

 

「ん?」

 

「どうした?」

 

「私、このままでいいと思うんだ」

 

「ほう……?」

 

穂乃果の言葉に、絵里は驚くことなくジッと聞いており、奏夜はその言葉を待っていたからか、少しばかり笑みを浮かべていた。

 

「A‐RISEが凄くて、私たちもなんとか新しくなろうと頑張ってきたけど、私たちはきっと今のままが一番いいんだよ」

 

「……そうだな。実は俺はそのことを薄々勘づいていたんだよ」

 

「そーくん……」

 

「確かに、新しい風を吹かせようとすることは悪いことじゃない。だけど、無理にそれをしようとすることで、俺たちらしさを殺してしまってたのかもしれないな……」

 

奏夜は、自分なりのμ'sのあり方をゆっくりと語り始める。

 

「よく考えてみろ。みんなそのままでも十分個性的だと思わないか?」

 

「うん!それは私も思ってたよ!」

 

「普通の高校生だったら、似た者同士が集まるだろうけどさ、俺たちは違うだろ?」

 

「そうだね!時間をかけてお互いのことを知って、お互いのことを受け入れ合って、ここまで来られた……」

 

「ああ。それこそが俺たちμ'sの一番の特徴だし、どのスクールアイドルもけっして真似出来ない個性でもあると思う」

 

「うん!だから、私はそんなμ'sが好き!」

 

「ええ、そうね。私もそうよ」

 

奏夜と穂乃果の思っていることは同じであり、そんな2人の言葉を聞いた絵里は優しく微笑んでいた。

 

「うむ!その意見には私も同意だぞ!」

 

すると、奏夜たちの話を聞いていた剣斗が話に入ってきた。

 

「普通ならば、ここまでバラバラな9人がひとつになることは難しいだろう。だが、μ'sはそんなバラバラな9人がひとつとなり、大きなものを作っていく。それがμ'sの最大の武器ではないか……!イイぞ……!そんなμ'sの活躍からますます目が離せん!!」

 

剣斗が興奮しながらμ'sの魅力を語っており、それを聞いていた奏夜たちは苦笑いをしていた。

 

「そういう訳だから、難しいことは何も考えなくていい。お前たちはそのままの自分を表現すればいい。それこそが、μ'sのことを最大限に魅せることの出来る、何よりの“インパクト“なんだからな」

 

奏夜たちは、A‐RISEに負けないようなインパクトを求めて迷走していたため、奏夜はインパクトという言葉を強調することで、綺麗にこの問題を解決させようとしていた。

 

そんな言葉に穂乃果たちは頷いており、自分たちがどのようなパフォーマンスをしていけば良いのかが見えてきたようである。

 

「さ、行こうぜ!そしてみんなに見せつけてやるんだ。誰も真似出来ない、お前らならではのインパクトってやつをさ!」

 

奏夜の言葉に穂乃果たちは頷き、そのままパフォーマンスを行う会場へと向かっていった。

 

そして、穂乃果たちμ'sのパフォーマンスは始まった。

 

 

 

 

 

 

~使用曲→ Dancing stars on me!~

 

 

 

 

今回の曲の衣装はハロウィンということもあり、ハロウィンに合わせたところがあるのだが、9人それぞれに合わせた色や形をしており、それだけでもひとりひとりが個性的であることがわかる。

 

しかし、パフォーマンスを行うことで、個性的な9人がひとつになり、その様子に多くの観客たちが魅力されていた。

 

(穂乃果たち、またひとつ成長したな……)

 

穂乃果たちのパフォーマンスを眺めていた奏夜は、心の中で穂乃果たちのパフォーマンスを大きく評価する。

 

(ちょっとずつではあるけど、あのA‐RISEに近付きつつある。このまま行けば、A‐RISEを破ってラブライブ優勝だって有り得ない話じゃかいかもしれない……)

 

奏夜は、今のμ'sはA‐RISEに近くなってきていると感じているからか、このような評価なのである。

 

(だからこそだ……。あのジンガが何かしてくるかもしれない。あいつらの夢を守るためにも、ジンガは必ず俺が討滅する。そして、ニーズヘッグだって復活はさせない)

 

奏夜は、穂乃果たちのパフォーマンスを眺めながら、心の中でこのような誓いを立てるのであった。

 

こうしてハロウィンでのパフォーマンスは大成功に終わり、奏夜たちはパフォーマンスの成功を労いながら帰り支度をしていたのだが……。

 

「……あのぉ、μ'sの皆さん、ですよね?」

 

「は、はい。そうですけど……」

 

突然1人の女性が穂乃果たちに話しかけてきたのだが、突然の出来事に穂乃果たちは驚いていた。

 

そして、奏夜はその女性を見て、さらに驚きが隠せない様子なのだが、その理由は……。

 

「……あなた、μ'sのマネージャーさんだったのですね?この前は、危ないところを助けていただき、本当にありがとうございました」

 

「あなたは、やっぱり、あの時の……!」

 

穂乃果たちに話しかけてきた女性はなんと、理由はわからないものの、ホラーヘデラに襲われていた女性であったのだ。

 

「?そーくん、お知り合い?」

 

「…ああ、まぁ…」

 

奏夜は穂乃果の問いかけに言葉を濁すのだが、キルバをチラッと見せることで、言葉に出すことなくホラーに襲われていたのを助けたことがあることを伝えたのである。

 

「……ああ、ご紹介が遅れましたね。私、月間電撃G'sという会社で記者をしております、御影アミリと申します」

 

そういうと、女性は、御影アミリと名乗り、名刺を奏夜へと手渡した。

 

「!!電撃G'sといえば、スクールアイドルの雑誌を出してる大手の会社じゃない!」

 

「はい!まさか電撃G'sの記者さんと出会えるとは!」

 

μ'sを始める前からスクールアイドルが好きだったにこと花陽は、アミリの言っていた会社名を聞き、目を輝かせていた。

 

「あなたたちは以前あのA‐RISEと同じところでパフォーマンスをしてましたよね?それで、あなた方のことは注目していたのです」

 

「まさか、電撃G'sの記者さんがそこまで私たちのことを注目してくれてるなんて……!」

 

「ふっふっふ……。にこにーの時代が来るのもきっと時間の問題ね」

 

花陽は変わらず目を輝かせており、にこは不敵な笑みを浮かべるのだが……。

 

「…いや、そんな時代はきっと来ないと思うのだが……」

 

「ぬわぁんでよ!!」

 

にこは、奏夜の冷静なツッコミが気に入らないのか、異議を唱えていた。

 

「うふふ、今日は時間がないのだけれど、近いうちにそちらの学校へお邪魔します。μ'sの話をいっぱい聞かせてくださいね」

 

アミリはそう言いながら奏夜たちに一礼をすると、その場を離れていった。

 

奏夜たちが出会ったこの御影アミリこそ、あのジンガに仕えているアミリ本人なのだが、この時奏夜たちはその事に気付くことはなかった。

 

(……ジンガ様。作戦は滞りなく進んでおります。ここまま、しっかりと使命を果たさせて頂きます)

 

その場を離れながら、アミリは一瞬ではあるが、ニヤリと笑みを浮かべるのであった。

 

(……あの女、一瞬だが妙な気配がしたような気がしたのだが……。俺の気のせいか?今はあの女からは何も感じない……。俺の考え過ぎならいいのだが……)

 

キルバは、一瞬ではあるが、邪気を感知したような気がしたのだが、あまりにもそれが微弱だったからか、魔導輪の力をもってしても、アミリの正体を探知することは出来なかった。

 

この出来事が、後ほど大きな波乱を巻き起こすことを、奏夜たちはまだ知る由もなかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その頃……。

 

「……アミリのやつ、順調に仕事をしてるみたいだな」

 

ジンガは、自分の拠点にてワインを飲みながら、自分の作戦が進んでいることを感じていた。

 

「あのヘデラのやつ、もうちょっと粘るかと思ったが、まぁいい。おかげでアミリはあいつらに接触出来たし、怪しまれる要素もないからな……」

 

これこそが、ジンガの作戦であった。

 

ヘデラにあえてアミリを襲わせることで、奏夜たち魔戒騎士に助けさせる。

 

これで奏夜が助けにくれば、一番都合が良く、あとはスクールアイドルの関係者と名乗って近付けば、奏夜たちには絶対に怪しまれない。

 

そこを突いて魔竜の眼を奪うために行動を起こす予定なのだ。

 

万が一作戦が悟られたとしても、奏夜たちは番犬所に顔を出していることもあり、番犬所の居所はアミリを通してジンガにも知られているため、番犬所襲撃もジンガの想定には入っている。

 

「さぁて、こっからが見ものだな……。待ってろよ、ニーズヘッグ……。もうすぐだ。もうすぐお前の怒りを外にぶつけさせてやるよ……」

 

ジンガは、決意に満ちた眼をしながらワインを嗜むのであった。

 

こうして、奏夜たちへ迫る暗雲は、もう目前と迫っていることに奏夜たちは知る由もなかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『やれやれ……。これはしてやられたぜ……。まさか、ここまで策が巧妙に動いているとはな……。次回、「暗雲」。漆黒の闇が牙をむく!』

 




今回の話はオリジナル+本編後編となってしまいました。

バトルシーンを入れたいがために、本編のシーンは大幅カットになっております。

今回現れたヘデラは、GOLD STOME翔の第11話に登場したサラリーマン風の男か変化したホラーで、攻撃も本編に忠実に再現出来ていたと思います。

そして、久しぶりのリンドウ登場。

最近は奏夜の相棒ポジションを剣斗に持っていかれているため、ここで登場させました。

こうして、奏夜とアミリが初邂逅を果たしましたが、これから奏夜たちに待ち受けるものとは?

次回からはオリジナルの話が続くのでよろしくお願いします。

それでは、次回をお楽しみに!

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