牙狼ライブ! 〜9人の女神と光の騎士〜   作:ナック・G

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お待たせしました!第61話になります!

最近最新話の投稿が2週間から3週間に1度くらいのペースになっちゃってるな……。

リアルが忙しいせいで、なかなか小説を書く暇がないのです。

べ、別にFFが忙しいからって訳じゃないんだからね!(笑)

それはともかくとして、今回は奏夜たちが合宿へと向かいます。

原作とは違い、真姫の別荘は使えませんが、いったいどうなって行くのか?

それでは、第61話をどうぞ!




第61話 「不調」

奏夜たちは、ラブライブ優勝に向けて動き始めるのだが、とある問題に直面することになってしまう。

 

予選で使える曲が、今まで未発表の新曲に限られるというのだ。

 

そのため、ラブライブに出場するために新曲を作らなくてはいけない。

 

そんな中、絵里は合宿を行うことを提案する。

 

しかし、真姫の別荘は、父親の都合によって使うことが出来ないことが判明してしまった。

 

すると、剣斗が父親に頼んでみると提案をする。

 

剣斗は、奏夜、ララ、真姫と共に家へと赴き、父親に別荘を使わせてもらえないか頼んでみる。

 

すると、真姫のことを知っている剣斗の父親は、二つ返事でこれを承諾するのであった。

 

奏夜たちは番犬所から許可も貰い、合宿へ参加出来ることになった。

 

そして、合宿当日、奏夜たちは電車に揺られながら都会とはかけ離れた、のどかな無人駅へと向かうのであった。

 

「なぁ、剣斗。けっこう長いこと電車に乗ってきたけど、別荘はこの駅の近くなのか?」

 

奏夜は周囲の景色があまりにのどかなのが気になっからか、少しだけ心配そうに訪ねるのであった。

 

「うむ!既に話はしたとは思うが、これから行く場所は山の近くなのだよ」

 

「なるほどな……。そういうことなら納得だよ」

 

「他の別荘も使えたのだが、空気の綺麗なのどかな場所の方が曲作りもはかどるだろうと父上が配慮してくださったのだよ」

 

「そこまで考えてくれてるなんて、後でおじさまにお礼を言わないとね……」

 

剣斗の父親と面識のある真姫は、誰よりも彼の配慮に感謝しており、改めてお礼を言いに行こうと決意するのであった。

 

「小津先生、先生の家の別荘はこの駅からけっこう歩くんですか?」

 

「うむ、そこに関しては心配はない。まずは駅から出るとしよう」

 

剣斗は海未の質問に答えると、そのまま改札を出て、駅の入り口に向かうのだった。

 

他のメンバーもそれに続くのだが、奏夜は足を止め、周囲を見渡すのであった。

 

「あれ?そーくん、行かないの?」

 

「もちろん行くけど、みんなちゃんと降りてきたかどうか確認してるんだよ」

 

足を止めた奏夜を見た穂乃果が奏夜に声をかけると、奏夜はこのように答えるのであった。

 

「……うん、みんな揃ってるな」

 

誰も電車に残ってないことを確認し、奏夜は安堵していた。

 

「特に穂乃果。お前は電車の中で寝てそのまま乗り過ごすんじゃないかと心配だったんだよ」

 

「むー……!そんなにドジなことはしないよぉ〜!」

 

奏夜の言葉が心外だったからか、穂乃果はぷぅっと頬を膨らませていた。

「悪い悪い。俺が心配性なのだけだったよ」

膨れっ面の穂乃果を見て、奏夜は素直に謝罪をしていた。

 

「ほら、みんな待ってるから行くぞ」

 

「うん!」

 

奏夜と穂乃果も、他のメンバーについて行き、駅の入り口に向かうのであった。

 

そこで奏夜たちを待ち受けていたのは……。

 

「……剣斗様にμ'sの皆様ですね?お待ちしておりました」

 

20代中頃くらいの正装の男性が奏夜たちを待っており、その姿を見るなり深々と一礼をするのであった。

 

「小津家の別荘まではこちらのバスでご案内致します。お荷物も積み込みますのでお預かりいたします」

 

男性の近くには1台の大型バスが止まっており、別荘へはこのバスを使って移動するみたいだった。

 

「うむ。そういうことだ。この駅から別荘まではやや距離があるのでな。父上がバスを用意してくださったのだ」

 

奏夜たちはバスが用意されていることに驚きながらもバスのトランクに荷物を積み込み、バスに乗り込むのであった。

 

奏夜はバスの真ん中あたりの席に移動して、窓側の席に座るのだが……。

 

「そーくんの隣に座わろっと♪」

 

すかさず穂乃果が奏夜の隣に座るのであった。

 

「あっ、穂乃果ちゃんずるい!!」

 

穂乃果が速攻で奏夜の隣に座るのを見て、ことりはぷぅっと頬を膨らませるのであった。

 

「凛もそーや君の隣が良かったにゃ!」

 

「あのなぁ……。こんだけ席があるんだから、こんなにみんな集合しなくてもいいだろ?」

 

このバスはそれなりに大きく、席も余裕があるのだが、みんなは奏夜の周りに自然に集合しており、奏夜はそのことに呆れていた。

 

「まぁ、良いではないか、みんな、奏夜の近くがイイと言うわけなのだから」

 

剣斗が微笑みながらこう言葉を返すと、穂乃果たちは頬を赤らめ、少しだけ恥ずかしそうにしていた。

 

「……ま、別にいいけどさ」

 

奏夜としても悪い気はしなかったため、このように言葉を返すのであった。

 

「皆さま、お待たせ致しました!それでは、出発いたします!」

 

全員が乗り込んだことを確認した男性は、バスの自動ドアを閉めると、バスを小津家の別荘に向けて走らせるのであった。

 

バスで走ることおよそ15分、奏夜たちは合宿を行う小津家の別荘に到着するのであった。

 

『おぉ〜!』

 

荷物を降ろし、別荘の前に降り立った奏夜たちは、別荘の建物の大きさに驚くのであった。

 

「流石は小津財閥の別荘。なかなか大きいわね……」

 

自分の家の別荘よりも大きいからか、真姫は驚きを隠せなかった。

 

「真姫ちゃんの別荘も凄かったけど、こっちの別荘も凄いにゃ!」

 

凛は、別荘を見た率直な感想を述べており、それを聞いた花陽はウンウンと頷いていた。

 

「後は私が皆を案内する。ここまですまなかったな」

 

「いえ、皆様のお役に立てて何よりでございます。……皆様が帰る時間帯にお迎えに参りますので、よろしくお願いいたします」

 

剣斗は、自分たちをここまで連れてきてくれた男性に感謝の言葉を送ると、男性は深々と一礼し、バスに乗り込んでその場を離れるのであった。

 

「さて、ここからは私が案内するとしよう。みんな、付いてきてくれ」

 

剣斗は先頭となって別荘の中へと向かっていき、奏夜たちはそれについて行くのであった。

 

別荘の中に入ると、玄関から既に広く、奏夜たちを驚かせていた。

 

最初に案内されたのは、リビングであるのだが、その部屋にはピアノが置かれていた。

 

「へぇ、いいピアノじゃない。流石は小津財閥の別荘ね」

 

真姫は、置かれているピアノがとても良いピアノであるとすぐに感じ取り、感心するのであった。

 

「うむ!作曲をしたい時はここを使ってくれ。ピアノだが、調律もしてあるので問題はないはずだ」

 

「ええ、わかったわ」

 

こうしてリビングの案内は終わり、次に案内されたのは、奏夜たちがここで多くの時間を過ごすことになると思われる談話室なのだが……。

 

「おお、凄い!ここも凄く広いよ!」

 

穂乃果は広々とした部屋を見渡しながら目を輝かせるのであった。

 

「それに見てみて!暖炉もあるよ!」

 

穂乃果は、古き良き時代を思い出させるシックな作りをしている暖炉を見つけるのであった。

 

「凄いにゃ!初めて暖炉見たにゃ!」

 

凛は初めて見る暖炉に感動しているのか、穂乃果同様にキラキラと目を輝かせていた。

 

「うむ!この暖炉は父上のこだわりが詰まっていてな。団欒といえば暖炉だろうということで、凝った作りになっているのだ!」

 

剣斗は自分の父親のこだわりを、まるで自分のことのように誇らしげに主張していた。

 

「なるほど……。なんか安らげそうな雰囲気を感じたけど、そういうことだったんだな」

 

奏夜はこの部屋の雰囲気を気に入っており、この部屋のこだわりに納得したみたいだった。

 

「ま、こんな感じじゃないけど、私の里には似たようなものはあったから見慣れてるけどね」

 

「そういえば、ララは魔戒法師の里から来たと言ってましたもんね」

 

ララがアイドル研究部の一員になってからそれなりに経っているため、穂乃果たちはララから彼女の出自を聞いていた。

 

だからこそ海未は、ララの言葉に納得したのである。

 

「当然暖炉だから火は付けられるぞ!実際に付けてみるか?」

 

「え?本当にいいの?」

 

「小津先生もそう言ってるし、遠慮なく火を……」

 

凛と穂乃果は、嬉々として剣斗の提案を受けようとしたのだが……。

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」

 

何故か真姫が慌てて止めに入るのであった。

 

「?真姫ちゃん?」

 

何故部屋を暖めるのを止めるのかが理解出来ず、凛は首を傾げるのであった。

 

「まだそんなに寒くないじゃない!それに、冬になる前に煙突を汚しちゃったらサンタさんが来てくれないじゃない!パパが言ってたわ」

 

「……え?」

 

真姫の口からサンタという言葉が飛んでくるとは思わなかったからか、奏夜は唖然としていた。

 

「パパ……」

 

「サンタ……さん?」

 

それは奏夜だけではなく、穂乃果と凛もポカンとするのであった。

 

「素敵!」

 

「優しいお父さんですね」

 

そんな中、真姫の言葉にことりは歓喜の声をあげており、海未は穏やかな表情で笑みを浮かべていた。

 

「今回使えなかった別荘にもこんな暖炉や煙突はあるんだけど、それは私が毎回綺麗に手入れをしているの。今までサンタさんが来てくれなかったことはなかったんだから」

 

真姫はこのような話を誇らしげに話しており、表情も心なしかキラキラしていた。

 

「それに、毎年毎年サンタさんへのメッセージはバッチリ書いてるんだから♪」

 

真姫は頬を少しだけ赤らめながら語るのだが、やはりどこか誇らしげだった。

 

そんな中……。

 

「ぷぷ……あんた……」

 

にこは真姫がサンタを信じていることがおかしく、笑いを堪えていた。

 

「真姫が……サンタ……」

 

にこは笑いを堪えながらサンタの真実を話そうとしていた。

 

すると……。

 

「にこちゃん!」

 

「それはダメよ!!」

 

花陽と絵里が慌ててにこに詰め寄り、これ以上の言葉を阻止するのであった。

 

「痛い痛い!何よぉ!」

 

花陽と絵里が急に詰め寄ってきたため、にこは異議を唱えるのであった。

 

「ダメだよ!それ以上言ったら重罪だよ!」

 

「そうにゃ!真姫ちゃんの人生を左右する一言になるにゃ!」

 

穂乃果と凛もまた、必死ににこを止めるのであった。

 

「だってあの真姫よ?あの真姫が……」

 

「ダメー!!」

 

にこは目に涙をためながら笑っており、サンタの真実を話そうとするが、穂乃果が必死に止めるのであった。

 

そんな中、真姫は何がなんだか理解出来ないからか、キョトンとしながら首を傾げるのであった。

 

『やれやれ……。真姫のやつ、高校生にもなってサンタとはな……』

 

キルバは、真姫が未だにサンタを信じていると知り、呆れるのであった。

 

「……キルバ。次余計なことを言ったらハンマーを召還するからな」

 

奏夜は真姫の純粋な気持ちを尊重しており、無粋な言葉を呟くキルバをジト目で見るのであった。

 

『俺はハンマー如きではビクともしないがやめてくれ!』

 

キルバはソウルメタル製なので、ハンマーで叩かれても砕け散ることはないのだが、キルバは嫌がるのであった。

 

こうして、談話室の見学を終えた奏夜たちは、荷物を個室へしまうと、練習の準備を始めるのであった。

 

この合宿はあくまでも新曲を作るためのものであり、作曲担当の真姫と歌詞担当の海未。そして衣装担当のことりは別行動となるのだが……。

 

早々に準備を終えた奏夜とララは、集合場所である別荘入り口近くにある自然豊かな広場で待機をしていた。

 

しばらく待っていると、いつもの練習着を着た穂乃果たちが合流し、別行動している海未たちに部屋を案内していた剣斗もすぐに合流するのであった。

 

「……あっ、小津先生。海未ちゃんたちは?」

 

剣斗の姿を見るなり、穂乃果はこう訪ねるのであった。

 

「うむ!3人はそれぞれの部屋に案内したぞ。皆、それぞれの作業を開始した頃だろう」

 

「だからこそ、私たちは私たちでしっかり練習しないとね」

 

海未たちが新曲作りに動き出したと知り、絵里はこのように話をすると、練習を開始するのであった。

 

「さて、今は基礎の練習がメインになるだろうし、これからどうするか……」

 

練習は始まったものの最初はストレッチや、基礎のトレーニングがメインになってくるため、奏夜の出る幕はあまりないのである。

 

そのため、これからどうするか、奏夜は悩んでいたのであった。

 

「奏夜、それならば私と共に鍛錬を行わないか?」

 

「そうだな。それは俺も考えてたし、剣斗と2人ならいいトレーニングが出来そうだしな」

 

奏夜は、魔戒騎士としての鍛錬をしたいとも考えていたため、剣斗の提案を受け入れるのであった。

 

「私は曲作りをしてる3人の様子を見てくるわ。私はそれくらいのことしか出来ないしね」

 

そしてララは、別行動をしている3人の様子を見に行くために1度別荘の中へ戻ることにした。

 

「……みんな!俺らは俺らで別行動するから、何かあれば呼んでくれ!」

 

「ええ、わかったわ。練習は私たちだけでやるから任せて!」

 

奏夜の言葉を絵里はすぐに聞き入れており、ララは別荘へと戻っていった。

 

そして奏夜と剣斗は、鍛錬を行うために今いる場所からさらに離れた場所へと移動するのであった。

 

「さて……。ここならばみんなの練習の邪魔にはなるまい」

 

鍛錬に良さげな場所へと移動すると、剣斗はこのように呟くのであった。

 

すると、剣斗は自らの武器である魔戒剣と盾を取り出す。

 

それを見た奏夜も呼応するように魔戒剣を抜くのであった。

 

『おい、お前ら!何を考えている!魔戒騎士同士の私闘は禁じられているだろう?』

 

2人が魔戒剣を取り出したのを見て、キルバは慌てて止めるのであった。

 

「キルバ、お前は何を勘違いしてるんだ?」

 

「うむ!これはあくまでも鍛錬なのだ。限りなく実践に近いがな」

 

「これくらいしないと、鍛錬にならんだろ」

 

奏夜と剣斗は、真剣勝負の形式でぶつかることによって、より実践的な鍛錬を行おうと考えていたのである。

 

「キルバ、これが私闘ではなく、鍛錬であれば問題はあるまい?」

 

『ま、まあ、そういうことならばいいのだが……』

 

今から行うのは鍛錬と知り、キルバは納得せざるを得なかった。

 

「そういう訳だ!奏夜!お前の全てを私に見せてくれ!」

 

「ああ!全力で行くぜ、剣斗!お前もそうしてくれよな!」

 

「ふっ……無論だ!」

 

2人は魔戒剣を構えると、まるで真剣勝負のような雰囲気で対峙するのであった。

 

そして、2人は同時に駆け出すと、同時に魔戒剣を一閃し、互いに激しく剣を打ち合うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

「……とりあえず、ここまでにして、少し休憩するとしよう」

 

奏夜と剣斗は、40分ほど激しく戦いを続けており、剣斗がキリの良いところで戦いを終わらせるのであった。

 

「ああ、そうだな」

 

奏夜も少し休みたいと思ったからか、魔戒剣を鞘に納め、剣斗もまた、魔戒剣を鞘に納めて剣と盾をしまうのであった。

 

「奏夜、また腕を上げたな。剣のキレが前にも増して良くなっているぞ」

 

「剣斗もやっぱり強いな。おかげでいい練習になったよ」

 

真剣勝負の形式で鍛錬を行った2人は、互いのことを称賛するのであった。

 

「うむ!魔戒騎士同士が汗を輝かせ、互いに学び切磋琢磨をする……。イイ!とてもイイぞ!」

 

剣斗は奏夜と真剣にぶつかれたのが嬉しかったからか、興奮冷めやらぬ感じであった。

 

「アハハ……」

 

そんな剣斗の熱さに、奏夜は苦笑いをするのであった。

 

「さてと……。俺は1回みんなの様子を見てくるよ。そろそろ練習も落ち着いた頃だろうし」

 

自分の鍛錬を終えた奏夜は、練習を行っている穂乃果たちの様子を見に行こうとしていた。

 

「うむ!私は少しだけ休んでから別荘に戻るとしよう」

 

「ああ、わかった」

 

奏夜は剣斗と一旦別れると、そのまま穂乃果たちのところへ向かうのであった。

 

奏夜が穂乃果たちのところにたどり着くと、練習はひと段落して、休憩をしているみたいであった。

 

すると……。

 

「あっ、奏夜!ちょっと来て!」

 

奏夜の姿を見るなり、にこが奏夜を呼び出すので、奏夜はにこの方へと向かっていった。

 

「?にこ、どうしたんだ?」

 

「あれなんだけど……」

 

にこが指差したのは、急斜面になっているところに落ちている自分のリストバンドであった。

 

「なるほど、何かあってそこに落としたんだな」

 

「そういうことよ。手を伸ばしても届かないし、危ないし……」

 

にこのリストバンドは、手を伸ばしても微妙に届かない場所にあり、無理に手を伸ばせばこの先にある崖へ落ちる危険性があった。

 

「わかったよ。ちょっと待ってな」

 

奏夜は魔戒剣を取り出すと、リストバンドを鞘の先端部分にくぐらせ、あっという間にリストバンドを回収するのであった。

 

「ほら、今度は落とすなよ」

 

奏夜はすぐにリストバンドを渡すのであった。

 

「あっ、ありがと……」

 

にこは、頬を赤らめ、しおらしい感じで奏夜に礼を言うのであった。

 

「?にこ、どうしたんだ?珍しくしおらしい感じじゃないか」

 

「う、うるさいわね!ふん!」

 

奏夜の言葉が気に入らなかったからか、にこは膨れっ面になりながらそっぽを向くのであった。

 

「やれやれ……」

 

そんなにこを見て、奏夜は苦笑いをすると、魔戒剣を魔法衣の裏地の中にしまうのであった。

 

「奏夜、私たちが練習してる間にどこに行ってたの?」

 

「ああ、ちょっと前まで剣斗と鍛錬をしてたんだよ。実践形式ではあるけどな」

 

絵里がこのように聞いてきたため、奏夜は正直に答えるのであった。

 

「じ、実践って……。怪我はしなかったの!?」

 

剣斗と実践形式の鍛錬を行ったと聞き、心配になった花陽は、奏夜に詰め寄るのであった。

 

「あ、ああ……。別に怪我をするほどのことはしてないから大丈夫だけど……」

 

花陽が詰め寄ってきたため、奏夜は一歩下がり、苦笑いしながら答えていた。

 

「そうなんだね、良かった……」

 

花陽は本気で奏夜の身を案じており、奏夜は穏やかな表情で笑みを浮かべていた。

 

「剣斗は少し休んでから別荘に戻るって言ってたから、今頃は別荘に戻ってるはずだ」

 

「私たちの練習もひと段落したし、一度戻りましょうか」

 

「そうだね!海未ちゃんたちの様子も気になるし!」

 

絵里は1度別荘に戻ることを提案し、そのことに誰も反対はしなかった。

 

そのため、奏夜たちは1度別荘に戻ることになった。

 

「……あっ、みんな!おかえりなさい!」

 

奏夜たちが別荘に入ると、ララが出迎えてくれた。

 

「みんな、練習の方はもういいの?」

 

「うん!練習も落ち着いたから、海未ちゃんたちの様子を見に来たんだ!」

 

「へ、へぇ……。そうなんだ……」

 

海未たちの様子を見に来たという穂乃果の言葉を聞き、何故かララは焦り始めていた。

 

「なぁ、ララ。みんなの曲作りは順調なのか?様子を見てたんだろ?」

 

「あ〜……。それが……」

 

何故かララはバツが悪そうにしており、それを見た奏夜たちは首を傾げていた。

 

ララは口で話をするより実際に見てもらった方が早いと感じたからか、奏夜たちをある場所へ案内することにした。

 

そんなララについていくことにした奏夜たちは再び外へ出ると、ララに案内されて、別荘の敷地内のとある場所へと移動するのであった。

 

すると、そこで奏夜たちが見たのは……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はぁ……」

 

 

 

 

「……はぁ……」

 

 

 

 

 

「……はぁ……」

 

 

 

 

 

 

俯き、体育座りをしながらため息をつく真姫、海未、ことりがいたのであった。

 

「……え?こ、これって……?」

 

そんな3人の様子に、奏夜は戸惑いを隠せなかった。

 

「まぁ、これを見たら何となく察してくれたとは思うけど、詳しくは中で話をしましょう」

 

このようにララが話を促してきたため、奏夜たちは真姫たち3人を連れて、別荘の団欒室で話をすることにした。

 

剣斗も合流したところで、奏夜たちが練習している間に何があったのか、ララは語り始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

『スランプぅ!?』

 

ララから最後の結論を聞かされた奏夜たちは口を揃えて驚くのであった。

 

「私が別荘に戻ってきてからも曲作りが芳しくないみたいでね。とりあえず息抜きに外へ連れ出したらずっとあんな感じだったって訳」

 

ララは別荘に戻り、曲作りをしている3人の様子を見に行ったのだが、その時からすでに曲作りが上手くいかず、3人は塞ぎ込んでいた。

 

それを見かねたララは、3人を先ほどの場所へ連れ出し、気分転換をしてもらおうと考えていたのだが、効果はなく、ため息ばかりついてしまう展開となってしまったのであった。

 

「3人とも、今までより強いプレッシャーがかかっているということね」

 

「はい……。気にしないようにしてはいたのですが……」

 

「上手くいかなくて、予選敗退しちゃったらって思うと……」

 

海未とことりは、自分の作った詩や衣装が芳しくなく、そのせいで予選敗退してしまったらと考えるようになってしまい、思うように作業が進まなかったみたいであった。

 

「わ、私はそんなの関係なく進んでいたけどね!」

 

「その割には譜面が真っ白にゃ!」

 

「ちょっと!勝手に見ないで!」

 

真姫はこのように強がっていたのだが、それを凛にあっさり見抜かれてしまい、自分も不調であることがバレてしまった。

 

「ふむ……。確かに、私たちは3人に頼りきりだったかもしれないな。それはとてもイイとは言えないことだからなぁ」

 

「剣斗の言う通りだな。俺たちは、すっかり3人に甘えて頼ってばかりだからだったかもな」

 

作詞は海未。作曲は真姫。そして衣装はことりが担当しており、それらの作業は1人で行っていた。

 

今回に限ってはプレッシャーが相当なものであり、今まで通りということが出来ないのであった。

 

「だったら話は簡単じゃない。みんなで協力すればいいんだよ!」

 

「ララの言う通りね……。私たちにだって何かは出来るだろうし、みんなで力を合わせれば何とかなると思うわ」

 

ララは3人に頼り切るのではなく、全員で曲作りをすることを提案しており、それに絵里が賛同していた。

 

「仕方ないわねぇ……。それなら私の作詞した「にこにーにこちゃん」に曲をつけるとして……」

 

「……なんて話をしてたら決まらないよ?」

 

にこの話をスルーしながら、希は全員で作業を行うことの欠点をで指摘するのであった。

 

しかし……。

 

「だったら話は単純だ。これだけ人数がいるんだから、3つの班に分けりゃいい」

 

「うむ!それがいい!!日本のことわざにも、3人揃えばなんとやらとあるからな!」

 

『剣斗……。お前は一応教師だろうが……』

 

剣斗は班分けすることを、ことわざに例えるのだが、教師とは思えない誤魔化し方に、キルバは呆れていた。

 

「まずはμ'sの9人で班分けをして、それから私たち3人がどこに入るか決めましょう」

 

「そうだな。俺もそれがいいって思ってた」

 

ララは班分けに関して詳細な案を出しており、それに奏夜は賛同していた。

 

「班分けはくじ引きがいいと思うけど、ちょっと待ってて」

 

ララはくじ引きで班分けをすることを提案すると、ビー玉サイズの玉を9つ取り出すと、それを地面に置いた。

 

すると、ララは魔導筆を取り出すと、9つの玉にとある術を施すのであった。

 

「?ララちゃん、いったい何をするつもりなの?」

 

ララの行動の真意が理解出来ないため、穂乃果は首を傾げるのであった。

 

「まぁ、それはすぐにわかるよ♪みんな、適当に玉を一個手に取って!」

 

ララはこれから何をするのか明かさず、そのまま穂乃果たちに指示を出すのであった。

 

穂乃果たち9人は、よくわからないまま、適当に玉を1つ選び、手に取るのであった。

 

「みんな、玉は持ったね?じゃ、行くよ!」

 

ララは再び魔導筆を構えると、地面に向かって法術を放つのであった。

 

すると、穂乃果たちの持っている玉が赤、青、黄色のいずれかに光るのであった。

 

「うん!これで班分けは終わったね!」

 

穂乃果たちの持っている玉は、赤、青、黄色に光っていたのだが、どの色も3つずつ光っているため、これにより、班分けは終了するのであった。

 

「ララちゃん凄い!いったい何をしたの!?」

 

玉が3色に光ったことに穂乃果は驚き、キラキラと目を輝かせるのであった。

 

「ああ、今やったのは、私の故郷の蒼哭の里でよく使われる術で、今みたいに何人かに分かれなきゃいけない時に使ってたのよ。余計ないざこざを起こさないためにもね」

 

『意図は理解したが、ずいぶんと回りくどいな……』

 

「まあ、私の里は良くも悪くも合理性を求めるところがあるからね……」

 

ララは、蒼哭の里にまつわる話を少しだけしており、苦笑いをしていた。

 

「とりあえず、自分と同じ色を持ってる人が同じ班ね」

 

こうして、班分けの作業は終わり、このように分かれるのであった。

 

 

 

赤……ことり、穂乃果、花陽

 

青……海未、希、凛

 

黄色……真姫、絵里、にこ

 

 

 

「なぁ、今ふと思ったんだけど、今のやり方だったら、海未とことりと真姫の3人が同じ班になる可能性もあったんじゃないのか?」

 

奏夜は気になる疑問を指摘したのだが、ララは動じてはいなかった。

 

「ああ、そこは心配ないわ。だって私、その3人が同じ班にならないように細工は施してたから」

 

「アハハ……。なるほどな……」

 

今回の班分けのトリックがわかり、奏夜は苦笑いをするのであった。

 

「それで、私たち3人はどうする?それぞれが別々の班に行くのだろう?」

 

そして、剣斗の指摘通り、続いては奏夜たち3人をどこの班に分けるかを決める必要があった。

 

「私は真姫たちの班に行くわ。作曲は出来ないけど、興味はあるからね」

 

「うむ!ならば私は海未たちの班に行くとしよう」

 

「……そうなると、俺はことりたちの班に行くってことになるな」

 

ララと剣斗があっさりと候補を言い、奏夜も否定しなかったため、班分けはあっさりと決まるのであった。

 

「エヘヘ……♪よろしくね、そーくん♪」

 

「俺はあまり力にはなれないかもだけど、よろしく頼むよ」

 

奏夜が同じ班になったとわかり、ことりは嬉しそうにするのであった。

 

「ララ、よろしくね。一緒に作業をすることで、あなたともっと交流出来たらいいなと思ってたわ」

 

「それは私も同じ気持ち。だから、よろしくね♪」

 

絵里は、最近仲間となったララともっと交流したいと思っており、それが実現出来そうな予感がしたからか、嬉しそうにしていた。

 

「小津先生。色々とご迷惑をかけるかもしれませんが、よろしくお願いします」

 

「うむ!私に出来ることは限られているが、出来る範囲で力になろう」

 

「小津先生、頼もしいにゃ♪」

 

「そうやね♪小津先生は年長者やしね♪」

 

「む……。そう言われるのはあまりイイとは言えないが、まあ、いいだろう」

 

剣斗はその熱さから生徒と同じ目線で接することが出来るのだが、自分が年長者という自覚が足りないこともあり、年長者と呼ばれるのは良しとしていなかった。

 

しかし、年上として頼られている以上、そんな気持ちは飲み込む剣斗なのであった。

 

「それじゃあ、それそれの班に分かれて、作業を開始しようぜ!何かあったら互いに連絡が取り合えるようにはしよう」

 

「そうね。わかったわ」

 

こうして、班分けが決まった奏夜たちは、それぞれの班に分かれて、行動を開始したのだが……。

 

『……なあ、奏夜』

 

「ん?どうした、キルバ」

 

『海未のやつなんだが、合宿先が山だとわかった途端に張り切り出しただろ?嫌な予感しかしないのだが……』

 

「そうだな。だけど、剣斗が一緒なんだ。何かあっても大丈夫だと思うぞ」

 

『……だといいがな』

 

キルバは、自分が感じている嫌な予感を奏夜に伝えるのだが、それは奏夜も感じていることだった。

 

しかし、海未たちには剣斗がついているという理由があるからか、そこまで大きな心配はしていないのであった。

 

奏夜が立ち止まってキルバと話をしていると……。

 

「そーくん!何をやってるのぉ?早く行こうよぉ!」

 

それを見かねた穂乃果が、急かすように奏夜へ声かけをするのであった。

 

「わかってる!今行くよ!」

 

ちょうど話も終わったため、奏夜は急いで穂乃果たちと合流し、行動を開始するのであった。

 

こうして、ラブライブ予選で使用する新曲を作るための作業が幕を開けたのである……。

 

 

 

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『やれやれ……。あいつらが不調なのはわかったが、まさかこうなるとはな……。次回、「班分」。班分けは本当にこれで大丈夫なんだろうな……?』

 




今回登場した剣斗の別荘ですが、アニメ2期に登場した真姫の別荘と似た作りとなっています。

それにしても、ことごとくフラグを回避していく……。

ここまでフラグをかわすのもなかなかないと思うのでそれはそれで良いのかな?(笑)

そして次回は原作同様三班に分かれての活動が開始されます。

そこに奏夜たちが加わる訳ですが、どうなっていくのか?

そして、ラブライブ予選に向けた新曲は出来上がるのか?

次回も投稿が遅くなるかもしれませんが、なるべく早めに投稿したいと思っているのでよろしくお願いします!

それでは、次回をお楽しみに!


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