まさか、ここまで投稿が遅れるとは……(>_<)
仕事だけではなく、プライベートの用事(FF14じゃないよ)でバタバタしてて、なかなか小説が書けませんでした。
その間に、この小説のUAが30000を越えました。
それに伴って、番外編も作りたいですが、以前話した仮面ライダーとのコラボもまだ制作中なため、いつになるかはまだ未定になっています。
そして、話はラブライブ2期の2話に突入します!
タイトルに書いてある奏夜たちの課題とは?
それでは、第60話をどうぞ!
奏夜たちは3月に行われるラブライブに出場することになり、そんな中、奏夜は蒼哭の里からここへ来たララという魔戒法師と出会うのであった。
ララの暮らす蒼哭の里には、魔竜の眼が眠っていたのだが、この魔竜の眼が狙われていることを知り、里を守るためにララが眼と共にこの街へやってきたのであった。
奏夜は、自分たちだけが助かればいいという蒼哭の里の体制に怒るのだが、ララは誰かのために親身になることが出来る奏夜に惹かれるのであった。
魔竜の眼についての話を統夜たちにも行い、この管轄にいる全員が一丸となって魔竜の眼を守ることになったのであった。
その翌日、ララはロデルの計らいによって転校生として音ノ木坂学院に通うようになり、奏夜を驚かせる。
穂乃果たちにも事情を説明し、ララはμ'sのメンバーにはならなかったが、アイドル研究部の部員として、μ'sの手伝いをすることになったのであった。
その数日後、奏夜たちはアイドル研究部の部室でラブライブの予選で行う曲について考えていたのだが……。
「ええ!?その話、本当なの!?花陽ちゃん!」
穂乃果は、花陽からある話を聞き、驚きを隠せなかった。
その内容とは……。
「そうなんです!今回の予選で使用する曲は、今まで未発表の曲に限るそうなんです!」
「そ、それじゃあ、今までの曲は全部使えないってことなの?」
『それはそうだろう……。お前、ちゃんと花陽の話を聞いてたのか?』
「むー!意地悪なこと言わないでよ!キー君!」
キルバは呆れながらこのような言葉を穂乃果に向けるのだが、穂乃果はぷぅっと頬を膨らませ、反論していた。
『だから!最高に格好いい俺に変なあだ名を付けるな!』
「あんた……。この中で1番ナルシストよね……」
キルバは自分の容姿が優れていると日頃から豪語しており、それをよくわかっているにこは、ジト目で呆れていた。
「でもさぁ、本戦じゃなくて予選なんでしょ?何で新曲限定になっちゃうの?」
ララは最近スクールアイドルのことを知ったため、詳しくはないのだが、予選の曲が新曲限定だということに疑問を持っていたため、それを聞いてみるのであった。
「どうやら、参加希望のチームが予想以上に多いみたいで……。中には、プロのアイドルをコピーしているグループもいるみたいで……」
「この段階でふるいにかけようって訳やね?」
「どうやら、そうらしいな。だが、ただ真似をするだけのグループが上に行けるとも思えんがな」
今回のラブライブは、ランキングが関係ないということもあるからか、参加希望のグループが予想を遥かに上回る結果となったのであった。
参加希望のグループの中には、プロのアイドルをコピーしただけというオリジナリティのないグループも多数存在するのもまた事実なのである。
ラブライブの質を上げるために、運営委員会は、まだどこにも発表していない新曲を披露するのが予選の参加条件であることを明言したのであった。
それは、予選を勝ち上がった本戦にも、言えることなのだが……。
「奏夜の言うことはわかります。ただ、中には私たちみたいに作詞や作曲が出来る人がおらず、コピーを使ってでも勝ちたいと思ってるグループもいると思うのです」
「それはわかってるさ」
「うむ!選ばれた者たちだけが、予選と言う熱き舞台で、己の技を披露し、高みを目指す……。イイぞ……!ラブライブ予選、なかなかそそる内容になってきたではないか!!」
新曲限定と聞き、剣斗はラブライブは予選から熱いものになると感じ取り、興奮を隠せなかった。
「……アハハ……。剣斗って本当に熱いんだね……」
ララは、剣斗のあまりに熱い一面を垣間見たため、苦笑いをしていた。
「それにしても、これは由々しき問題ね……。だって、あと1ヶ月でなんとかしないと予選に出られないんだもの」
絵里の言う通り、ラブライブの予選が行われるのは1ヶ月後であり、この課題をクリアしなければ予選には出場出来ないのだ。
「そんなぁ〜……!なんとかしないと!」
新曲を用意することは最優先事項であり、穂乃果は焦りを見せていた。
「こうなったら……。作るしかないわね……!」
「?絵里、作るって、どうやってですか?」
絵里は何かを思いついたみたいなのだが、海未はそれが何かをわからず、首を傾げながら絵里に問いかけていた。
「……真姫!」
「絵里……。まさかとは思うけど……」
「そう……。合宿よ!!」
絵里は、新曲を作るために合宿を行うことを提案するのであった。
そんな絵里の提案に、奏夜たちは驚きを隠せなかった。
しかし……。
「……絵里。非常に言いにくいのだけれど……」
「?真姫……?」
「ウチの別荘はこの前のところともう一ヶ所あるのだけれど……。最近は、パパの知り合いの人たちが論文を作る研究会に別荘を使ってて、どっちもしばらくは別荘が使えない状態なのよ……」
どうやら、真姫の別荘は、真姫の父親の知り合いの医師たちが使うみたいであるため、合宿で使うのは不可能みたいだった。
「そんなぁ〜……!せっかくのアイディアだと思ったのだけれど……」
自分のアイディアが事実上不可能と知り、絵里はがっくりとうなだれていた。
「絵里のアイディアはとても良いのですが、真姫の別荘が使えないとなると、やはり厳しいですよね……」
「ねぇ、海未ちゃん。紬さんの別荘って借りられないのかなぁ?」
「それだよ!ことりちゃん!」
ことりは、奏夜の先輩騎士である統夜の大切な仲間である琴吹紬に、別荘が借りられないか提案してみた。
紬の家は桜ヶ丘で随一の富豪であり、統夜たちは何度も紬の別荘で合宿を行っていたのであった。
「それは難しそうだけどな。だって、紬さんの別荘を借りるには前もって言っておかなきゃいけないんだろ?」
「そうですね。新曲作りは急を要しますし、借りられるのを待ってる時間はないですよね……」
紬の別荘もまた、様々な人が使うみたいであり、使うには前もって行っておかなければならない。
そのため、紬の別荘が空くまで待っていては、新曲作りが間に合わなくなる可能性があった。
「じゃあ、曲作りはどうすんのよ!」
「そうやねぇ……。なるべくお金はかけたくないしね……」
合宿を行って曲作りをすることは難しくなり、にこと希は頭を抱えるのであった。
その結果、アイドル研究部の部室全体に暗い空気が漂い始めるのだが……。
「ふむ……。だとしたら、合宿が行える場所が用意出来れば良いのだな?」
「それはそうだけど、剣斗、アテがあるのか?」
「うむ。μ'sの合宿を行うための場所を借りられるよう、父上に掛け合ってみよう」
「小津先生!それって本当かにゃ?」
「うむ!確約は出来ないが、任せて欲しい」
どうやら、剣斗が合宿場所を確保するべく、父親に相談してみることにしたのだ。
「あれ?小津先生のお父さんも魔戒騎士だったんでしょ?」
「うむ!父上は先代の剣武であったのだが、病にて足を悪くされてしまってな。若いうちに魔戒騎士を引退され、私が剣武の称号を受け継いだのだ」
「そうだったんだな……」
奏夜は初めて剣斗の父親の話を聞き、驚きを隠せなかった。
「ねぇ、小津先生。あんたのお父さんって、まさか、あの小津財閥の?」
「おお、知っているのか!いかにも、私の父上は、魔戒騎士を引退し、小津財閥の会長となられたのだ!」
「ねぇ、真姫ちゃん。小津財閥ってなぁに?」
穂乃果は真姫が問いかけたことを初めて聞いたため、そのことを真姫に聞くのであった。
「え!?知らないの!?秋葉原ではないけれど、東京にある有名な財閥じゃない!あちこちで経営に手を伸ばしている……」
「エヘヘ……。そうなんだ。知らなかったや……」
「小津財閥って私ですら名前くらいは聞いたことがあるわよ……」
穂乃果は剣斗の家の凄さを知り、苦笑をしていたのだが、にこも、財閥の名前だけは聞いたことがあった。
「小津財閥の会長さんは、パパと親交があるから良く話は聞いてたのよ。まさか、元魔戒騎士だとは思わなかったけれど」
真姫は病院を経営している父親と繋がりがあるから小津財閥のことはよく知っていたが、それが剣斗の父親だということは知らなかった。
「ということは、小津先生は財閥の御曹司さん!?」
「凄いにゃあ!お金持ちだにゃあ!」
剣斗の家の実情が明らかになり、花陽と凛は驚いていた。
驚きを隠せないのは、全員そうなのだが……。
「よしてくれ。私は魔戒騎士なのだから、財閥の経営とかはよくわからないのだ。財閥の運営は、父上と兄上がやっているのでな」
「へぇ、小津先生ってお兄さんがいたんですね!」
「あれ?でも、お兄さんがいるなら、何で剣斗が剣武の称号を継ぐことになったんだ?」
奏夜は剣斗に兄がいると聞き、すぐにこの疑問を抱くのであった。
魔戒騎士の称号は一子相伝であるため、大抵は長男が称号を継ぐのがほとんどである。
しかし、誰に称号を継がせるか決めるのは称号を持つ者のため、何か諸事情がある場合は、長男以外の人間が称号を受け継ぐこともあるのである。
「うむ。兄上は生まれつき体が弱くてな。魔戒騎士としての修業を行えなかったのだ。だからこそ、次男である私と三男の弟が修業を積み、私が剣武の称号を受け継いだのだ」
「なるほどな……。そういうことなら納得だよ」
『ま、必ずしも長男が称号を継ぐ訳ではないからな』
「そういうものなのですか?」
「ああ。長男が魔戒騎士として才能がないと判断されたら次男が継ぐというのもよく聞く話ではあるんだよ」
「魔戒騎士もやっぱり大変やなぁ……」
「ねぇねぇ、そーくんも魔戒騎士ってことは、お父さんから称号をもらったってことだよね?」
穂乃果がこの質問をした瞬間、奏夜の表情が一気に暗いものになってしまった。
「……今はそんな話をしてる場合じゃないだろ?」
「奏夜。夏休みの合宿の後も、過去を話してくれると言ってましたが、結局は話してくれませんでしたよね?」
「奏夜。教えて欲しいわ。あなたがどのようにして魔戒騎士になったのか……」
奏夜は今まで自分の過去を話そうとはせず、いずれ話すということも有耶無耶になっていた。
だからこそ、奏夜の過去を聞き出そうとするのだが……。
「そんな話をしてる場合じゃないって言ってるだろ!!」
奏夜は両手で机をバン!!と叩くと、激しい剣幕でこのようにまくし立てるのであった。
奏夜の剣幕に、剣斗とララ以外はビクっと肩をすくめ、悲しげな表情を浮かべるのであった。
穂乃果たちの顔を見た瞬間、奏夜はハッとするのであった。
「……悪い。怒鳴っちまって……」
「いえ……。こちらこそ、すいません。奏夜にとっては話したくないことなんですものね?」
奏夜はすぐに謝罪するのだが、重苦しい空気がアイドル研究部の部室を包んでいた。
「……ちょっと外の空気を吸ってくる。後は頼んだぞ」
「え?ちょっと、奏夜?」
奏夜は海未の制止を聞くこともなく、部室を飛び出していってしまった。
「そーくん……」
奏夜が部室を飛び出し、穂乃果は心配そうに部室の入り口方向を見つめるのであった。
「……みんな、気にすることはないわ。これは魔戒騎士に限った話じゃないけど、触れられたくない話の1つや2つはあるでしょう?奏夜にとってのそれが過去の話なのよ」
重苦しい空気が耐えられないからか、ララはこのような言葉でフォローをするのであった。
「うむ。奏夜のことは私に任せて欲しい。私はこれから父上のところに行ってくる。奏夜も一緒に連れていこう。頭を冷やす時間も必要だからな」
「私も行く!私は練習で手伝えることはないし、そういう仕事の方が性に合ってるもの」
「私も行くわ。小津財閥の会長さんとは私も顔見知りだし、練習場所を借りるならμ'sメンバーもいた方がいいでしょう?」
剣斗はこれから父親に会いに行くために家に向かおうとしてるのだが、奏夜も同行させるつもりだった。
それだけではなく、ララと真姫も同行を申し出るのであった。
「うむ。確かにその通りだな。ララと真姫は出かける準備をしてくれ。私は奏夜を探してこよう」
「では、残りのメンバーは練習を行うので、屋上へ集合してください」
すかさず海未がこのような指示を出すと、真姫とララ以外の全員が頷いていた。
こうして、それぞれが今自分に出来ることを行うべく、行動を開始するのであった。
※※※
その頃、アイドル研究部の部室を飛び出した奏夜は、中庭に来ており、ベンチをベッドのようにして寝転がっていた。
「……ったく……。何やってんだよ、俺は……」
奏夜としては、自分の過去は知られたくないものではあるのだが、感情に任せて穂乃果たちに怒鳴ってしまったことに自己嫌悪を抱いていたのだ。
そんな気持ちが読み取れるように、奏夜は左手を額に当て、右手で髪をクシャクシャっとしていた。
『なぁ、奏夜。あの男のことは別に穂乃果たちに話してもいいんじゃないのか?』
「そうかもしれないけど、俺は話したくないんだよ……」
キルバとしては奏夜の過去を語っても問題はないと思うのだが、奏夜がそれを良しとしなかった。
『ったく、面倒くさいやつだな、お前は……』
自分の出自を明かそうとしない奏夜にキルバは呆れるのであった。
すると……。
「……奏夜、ここにいたのだな」
「……剣斗か」
剣斗はベンチで寝転がってる奏夜の姿を見つけて、顔を覗き込んでおり、それに気付いた奏夜はゆっくりと起き上がり、ベンチに腰掛けていた。
「……奏夜。私はこれから父上のところへ行って、合宿の場所を提供してもらえるよう掛け合うつもりだ」
「……そうか」
「ララと真姫も同行するのだが、マネージャーであるお前にも同行して欲しいのだ」
剣斗は、父親のところへ向かうため、奏夜にも同行を求めていた。
ララと真姫も同行すると聞いても、奏夜は顔色ひとつ変えなかった。
「……そうだな。これも、マネージャーの仕事だもんな……」
奏夜は特に拒否する様子は見せず、すぐに剣斗の父親のところへ行く話を了承するのであった。
「……なぁ、剣斗。俺……」
奏夜は、先ほど穂乃果たちを怒鳴ってしまったことに自己嫌悪を抱いており、その気持ちを伝えようとしたのだが……。
「……奏夜。何も言わなくてもいい。私はもちろんだが、みんなもお前の気持ちは察しているはずだ」
「剣斗……」
「私もお前の過去には興味はある。だが、あえて聞くことはやめておこう。それは、みんなも同様だとは思うぞ」
自分の出自を語りたくない奏夜の気持ちを剣斗だけではなく、穂乃果たちも察しており、それ故に奏夜が気に病むことがないよう、剣斗は言葉を紡ぐのである。
「でも……俺は……」
「人は誰しも感情的になってしまうことはある。それがどんなに優秀な人物でもな。だから、気にするな。そこまで気に病んでいては、余計に穂乃果たちが心配するぞ」
「剣斗……」
「奏夜。先ほどのことを気にしているのならば、気持ちを切り替えて、明日からは何事もなかったかのように接すればいい」
「……」
剣斗の放った言葉があまりにも予想外だったからか、奏夜は驚きながらも呆けていた。
「……そうだな。今はウジウジと悩んでる場合じゃない。ラブライブ優勝に向かって、前進して行かないとな……」
「うむ!それでこそ奏夜だ!イイ顔付きに戻ってきたぞ、奏夜!」
「ありがとな、剣斗。お前のおかげで、気持ちが楽になったよ」
奏夜にとって、剣斗の言葉はとても優しく、とても力強いものであるため、奏夜はそんな剣斗の言葉に励まされていた。
「気にすることはないさ。お前はμ'sを導く者。そんなお前でも立ち止まることはある。そんな時は、私が道しるべとなろう。何故なら、お前はかけがえのない友なのだからな」
剣斗は、大切な友である奏夜のためだからこそ、奏夜を支えようとしていたのである。
「……そうだな。お前にそう言ってもらえるのはとても体が暖まるのを感じるよ」
「うむ!そう言ってもらえるとはとてもイイ!!では、さっそく真姫やララと合流しようではないか!」
「ああ!」
こうして、剣斗の励ましによって、自己嫌悪な気持ちを吹き飛ばした奏夜は、剣斗と共に玄関にいるララや真姫と合流するのであった。
「……あ、剣斗、奏夜」
「まったく……。遅かったじゃないの、2人とも」
先に玄関で待っていたララと真姫は、それぞれの反応をするのであった。
「はは、すまないな。遅くなってしまった」
「……」
剣斗はいつものように接するのだが、奏夜はバツが悪そうにしており、少しだけ俯いていた。
「あ、あのさ……。俺……」
「奏夜。皆まで言わなくてもいいわ。みんなあなたの気持ちは察してるから」
「え?」
「いいから、さっさと行くわよ!」
真姫は頬を赤らめて恥ずかしそうにしながらも奏夜の手を引っ張り、そのまま外へと移動しようとしていた。
「ふふっ、奏夜ってみんなに大切に思われてるんだね」
「それはそうだろうな。奏夜がいたからこそ、今のμ'sがあるのだから……」
ララとしては、奏夜がμ'sのみんなにとって大切に思われているのが驚いていたのだが、剣斗は奏夜たちが逆境を乗り越えてきたのを見てきたため、奏夜が存在となっていることがよくわかっていた。
そのようなやり取りをしながらも、剣斗とララも外へ移動し、校門前で奏夜たちと合流するのであった。
奏夜たちはそのまま移動を開始するのだが、剣斗がすぐにタクシーを拾うのであった。
奏夜、真姫、ララの3人が後部座席に座り、剣斗は助手席に座るのであった。
剣斗が目的地を伝えると、タクシーの運転手は、その場所へと車を走らせるのであった。
※※※
タクシーを走らせることおよそ30分。
タクシーを降りた奏夜たちがたどり着いたのは、秋葉原ではないが、東京某所にある、かなり大きな家であった。
「ほえ〜……!ずいぶんとでかいわね……」
「そうだな……。本当に剣斗の家は金持ちだったんだな……」
剣斗の家を見て、ララと奏夜は驚いているのだが、真姫は顔色ひとつ変えることはなかった。
「あれ?真姫は何でこんなでっかい家を見てそんなに冷静でいられるのよ!」
「別に?私の住んでる家と同じくらいだから、驚くようなことはないわ」
「ぐぬぬぬ……!そういえば、真姫の家も金持ちって言ってたわね……!」
『何故悔しそうにしてるんだよ……』
ララは、真姫が父親が病院を経営しているため、別荘を複数所有する程の金持ちであるという話を思い出しており、何故か悔しそうにしていた。
すかさずキルバが呆れながらツッコミを入れるのだが……。
「ふふ、とりあえず入るぞ」
剣斗は家の方へと進んでいき、奏夜たちはそれに続くのであった。
家の門に到着すると、剣斗はすぐにインターホンを鳴らすのであった。
するとすぐに、『はい』と壮年の男性の声が聞こえてきた。
「小津剣斗だ。少し前に電話で通り、父上に会いに来た!お目通りを願いたい!」
『けっ、剣斗様!?かしこまりました!少々お待ちくださいませ!』
剣斗はここへ来る前に、自分の家に連絡を取って、このような用件で父親に会いに行く旨を伝えていた。
スムーズに話を行うためである。
それから間もなくして、閉ざされていた門が開き、剣斗はそのまま家の中へと向かっていき、それに奏夜たちが続いた。
奏夜たちが剣斗の家の中に入ると……。
「おかえりなさいませ、剣斗様!」
この家の執事らしき人が出迎えてくれて、剣斗に深々と頭を下げるのであった。
「うむ!久しぶりに帰ったが、変わらないな、ここは」
「あれ?剣斗ってここから学校に通ってた訳じゃないのか?」
「私は音ノ木坂学院の教師をしているだろう?だから今は番犬所が用意してくれた住まいが学校の近くにあるので、そこから通わせてもらっているのだ」
「そうだったのか……」
奏夜としては、剣斗がどこに寝泊まりしているのか疑問だったのだが、ここでようやく真実を知り、驚きを隠せなかった。
「魔戒騎士の指令とはいえ、剣斗様が教師をなさっているのは存じ上げております。立派な仕事をなさっていることに、ご主人様もお喜びになられておりました」
どうやら剣斗が教師をしていることは、この家の人間にも知れ渡っているようであり、このように語る執事は誇らしげだった。
「先ほど話したとおり、父上にお目通りに来た。父上はおられるか?」
「はい!ただ今、お部屋でお待ちになられております。ご案内いたします」
執事は、奏夜たちを剣斗の父親のいる部屋まで案内してくれるとのことなので、執事について行くのであった。
執事が案内したのは、玄関からそこまで遠くない部屋であった。
部屋の前に到着するなり、執事はドアをノックするのであった。
「ご主人様、失礼いたします。剣斗様とそのお連れ様がお見えになられました」
「うむ。入ってもらってくれ」
「かしこまりました。……さぁ、皆様、どうぞ」
執事は部屋の扉を開けると、奏夜たちは剣斗を先頭に中へと入っていくのであった。
奏夜たちの入った部屋は、応接室のような部屋であり、とても広い部屋であった。
その部屋の奥にデスクがあるのだが、その席に、60代前半くらいの壮年の男性が座っていた。
「……父上!小津剣斗!ただ今戻りました!」
剣斗は父親に深々と頭を下げ、帰還の挨拶をするのであった。
「剣斗、よく戻ったな。お前の活躍は耳にしているよ」
「ハッ、ありがとうございます!」
「それで、今日戻ったのは私に用事があるのだろう?」
「はい!本日は、父上にお話したいことがございまして、こちらの3名と共に参りました」
剣斗は簡単に奏夜たち3人の紹介をすると、3人はペコリと一礼をするのであった。
「おじ様、ご無沙汰しています」
そんな中、剣斗の父親と顔見知りである真姫が剣斗の父親に笑みを浮かべながら挨拶をするのであった。
「おお、君は西木野院長のご令嬢ではないか。君が来るとは思わなかったよ」
「はい。私は今、学校でスクールアイドルとして活動してるのですが、おじ様にお願いしたいことがあるのです」
「うむ。君がスクールアイドルをやっていることは西木野院長から聞いているよ。色々あったみたいだが、頑張ってるみたいだね」
剣斗の父親は、まるで孫娘の活躍を褒めるかの如く、優しい表情を浮かべていた。
「はい!私たちはラブライブ優勝に向けて頑張っているんです」
「ほぉ……。それはなかなか大きく出たものだな。ちょうど、我が財閥はラブライブへ出資を行う予定でな。スクールアイドルの話は色々と耳にしていたのだよ」
「そうなのですか!?父上!」
自分の家である小津財閥が、ラブライブ に関わっていくことになることを知り、剣斗は驚きを隠せなかった。
「それに、普段から世話になっている西木野院長の娘さんの頼みならば無下には出来ないのでな」
「ありがとうございます!おじ様!」
真姫は剣斗の父親に礼を言うと、ラブライブに向けて新曲作りをするために合宿を行おうとしていることと、自分の父親の都合で別荘が使えないことを話すのであった。
「なるほど……。そういえば、西木野院長は論文作りで忙しいと言っていましたな」
剣斗の父親は、真姫から話を聞き、事情を察するのであった。
「父上!私たちが今日ここへ来たのは、合宿を行うために、どこか別荘を借りられないかお願いするために来たのです!」
剣斗はここで改めて、ここへ来た目的を父親に話すのであった。
「そうであったか……。わかった。別荘が使えるように手配をしておくとしよう」
剣斗の父親は、ほぼ二つ返事で別荘を貸すことを許可し、それを聞いた奏夜たちの表情が明るくなっていた。
「父上、ありがとうございます!」
「構わぬさ。先ほども言ったが、普段から世話になっている西木野院長の娘さんの頼みは無下に出来ぬからな」
「助かります。本当にありがとうございます、おじ様!」
「うむ。君も頑張るのだよ!」
こうして、剣斗の父親が別荘の貸し出しを許可してくれたことにより、新曲作りのための合宿の実現が現実味を帯びてきたのであった。
「それはそうと、君はこの2人がどのようなことをしてるのか、ご存知かな?」
剣斗の父親は、奏夜とララを見ながらこのように真姫に問いかける。
「はい。奏夜は魔戒騎士だし、ララは魔戒法師なんです」
「ふむ……。やはり君は魔戒騎士や魔戒法師のことを知ってたみたいなのだな」
剣斗の父親は、剣斗だけではなく、奏夜とララも一緒だったことから、真姫がホラーに関することを知っているのをすぐに察するのであった。
「そして君があの如月奏夜君か。君の噂は耳にしているよ」
「あ、はい。ありがとうございます」
「それに、我が息子の盟友であると聞いているぞ」
「はい、父上!奏夜は私にとってかけがえのない友なのです」
「俺も、剣斗は大切な盟友だと思っています」
奏夜は、剣斗が自分の友であることをしっかりと認めており、それを聞いた剣斗の表情が明るくなっていた。
「奏夜君。これからも、剣斗と共に精進し、魔戒騎士として高みを目指してくれ」
「はい!頑張ります!」
ここで奏夜の話は終わり、ララも簡潔に自己紹介をしたところで、奏夜たちは剣斗の家を後にするのであった。
その後、奏夜は穂乃果たちと連絡を取り、合宿が出来そうである旨を報告する。
それを聞いたことにより、合宿をいつ行うか話し合いが行われることになり、今度の週末に合宿を行うことにしたのであった。
奏夜は合宿の旨をロデルに報告すると、ロデルはすぐに合宿行きを許可するのであった。
それだけではなく、剣斗とララの同行も許可するのであった。
現在、この番犬所には正式に所属している大輝とリンドウもおり、違う番犬所の所属ではあるが、統夜も応援に駆けつけられる状態であり、人手は足りているからである。
こうして、奏夜、剣斗、ララの3人は合宿に参加することが可能となり、週末に行われる合宿に備えるのであった……。
……続く。
__次回予告__
『やれやれ。合宿に行けるのはいいのだが、まさかこのような問題に直面するとはな……。次回、「不調」。奏夜、いったいどうするつもりだ?』
2話に突入したって言ったけど、ほとんどがオリジナル展開になってしまった……。
真姫の別荘が使えず、剣斗の家の別荘を借りる展開になったのは、ここら辺で剣斗の家の話を書きたいと思ったからです。
剣斗の家族構成の話がありましたが、父親、長男、三男のモデルは、FF14に登場するキャラクターになっています。
わかる人はわかると思いますが、フォルタン家の人々です。
剣斗の父親は、剣斗のような熱い人間ではないですが、話のわかる良い人物になっています。
そして、また見えてきた奏夜の心の闇。
剣斗が初登場する回にて、修練場での仕事が終わったら奏夜の過去を話すといいながら明らかになりませんでした。
話したがらないのは、話したくなかったからという理由だった訳です。
その後もバタバタは続いたため、他のメンバーも話を聞くのを忘れていたという訳で。
奏夜の父親はどのような人物なのか?
そして、奏夜の過去がどのようなものなのか気になると思います。
奏夜の過去は少しずつ明らかにしていこうかなとは思っています。
奏夜は、統夜とは違う苦労を乗り越えて魔戒騎士になれたとだけは言っておきます。
そして、次回からは合宿が本格的に始まります。
奏夜たちの曲作りは上手くいくのか?
また投稿が遅くなるかもですが、ちょっとずつでも書いていこうとは思ってますので、次回をお楽しみに!