いよいよ2018年ですね!
この牙狼ライブも、来月で投稿して1年になります。
最近は色々忙しくて投稿は遅れてますが、どんなに遅くなっても完結まで続けるつもりなのでよろしくお願いします!
さて、今回から新章に突入します。
新章のタイトルは、「蒼哭の竜詩編」となっています。
ここからはラブライブの二期編ですが、蒼哭は、牙狼の劇場版である「蒼哭ノ魔竜」から取りました。
竜詩は、ジンガが復活させようとしているニーズヘッグをイメージして付けてみました。
ここから物語はさらに進むと思うのでよろしくお願いします!
では、第56話をどうぞ!
第56話 「再来」
学園祭でのライブ失敗や、ことりの留学など、奏夜たちは大きな問題を抱えていた。
そのため、μ'sは一時的にバラバラになるのだが、奏夜の決死の活躍によってμ'sは再び結成され、ことりもまた、留学を思い留まるのであった。
そんな中、奏夜は最大の強敵である尊士を倒すことに成功する。
その後も魔戒騎士として試練があったのだが、奏夜はそれを乗り越えていった。
そして、気が付けば、μ's再結成から1ヶ月が経とうとしていた。
この日は全校集会が行われており、音ノ木坂学院の生徒たちは全員講堂に集められていた。
『音ノ木坂学院は、入学希望者が予想を上回る結果になったため、来年度も生徒を募集することになりました』
現在は理事長の挨拶が行われているのだが、廃校の危機が免れたことを改めて報告していた。
『3年生は、残りの学園生活を悔いのないように過ごして下さい。実りのある生活を送っていただきたいと思います』
そして、理事長は卒業する3年生にメッセージを送っていた。
『そして1年生、2年生は、入学してくる後輩たちのお手本となるよう、気持ちを新たに前進していって下さい』
続けて、在校生である1、2年生に対するメッセージを送ったところで、理事長の挨拶は終了した。
『理事長、ありがとうございました』
理事長は、講堂の舞台で挨拶を行っており、少し離れたところに、全校集会の司会が座っていた。
その司会とは、なんとヒフミトリオの3人であった。
『続きまして、生徒会長、挨拶。生徒会長、よろしくお願いします!』
ヒデコがこのように進行をすると、講堂の客席に座っていた絵里が立ち上がったのであった。
他の生徒たちは生徒会長であるはずの絵里が何故このようなところにいるのかわからず、さらに、いきなり立ち上がったことに困惑していた。
そして、絵里はパチパチパチと拍手を送ると、舞台袖にスポットライトが当たっていた。
そんな中、舞台袖から出てきたのは、なんと穂乃果であった。
穂乃果が舞台袖から現れると、絵里やμ'sのメンバーを筆頭に、生徒たちから大きな拍手が起こっていた。
奏夜、海未、ことりの3人は舞台袖で待機しており、穂乃果のことを見守っていた。
『……皆さん、こんにちは!』
穂乃果はこのように挨拶をすると、それだけで生徒たちから拍手か送られていた。
穂乃果はμ'sのリーダーであることはほとんどの生徒に認知されているため、この大きな拍手はそこから来ていたのである。
『この度、新生徒会長になりました!スクールアイドルでおなじみ!』
このように宣言すると、穂乃果はマイクパフォーマンスを行おうとしているのか、マイクを手に取り、手にしているマイクを上空へ放り投げていた。
そして、綺麗に一回転すると、その落ちてきたマイクをキャッチして、こう宣言する。
『高坂穂乃果と申します!』
穂乃果のマイクパフォーマンスは効果的だったからか、客席からは生徒たちの拍手だけではなく、歓声も起こっていた。
《……おい、奏夜。生徒会長の挨拶であのくだりは必要なのか?》
奏夜の指にはめられているキルバは、穂乃果の挨拶で行ったパフォーマンスが疑問だったからか、呆れながら奏夜にテレパシーで語りかけていた。
(確かに俺はそう思ったが、穂乃果があれをやりたがってたんだよ……)
どうやらこのパフォーマンスは、穂乃果たっての希望であり、奏夜は強く止めることはしなかったのだ。
《穂乃果のやつ、パフォーマンスに夢中で挨拶を忘れなきゃいいが……》
(アハハ……。さすがにそれは……)
穂乃果は挨拶の内容をど忘れすることはないだろう。
奏夜はそう思っていたのだが……。
『……あ〜っ……。え〜っ……』
どうやら穂乃果は本気で挨拶の内容を忘れたみたいであり、言葉に詰まっていた。
それを見ていたことりは心配そうに穂乃果を見守っており、奏夜と海未は呆れながら頭を抱えるのであった。
「あの馬鹿……。まさか本気で挨拶を忘れやがるとは……」
《やれやれ……。穂乃果らしいと言えばらしいんだがな……》
2人だけではなく、キルバも呆れており、ジト目になっていた。
《ところで奏夜。こっからどう穂乃果をフォローするつもりなんだ?》
(心配するな。こんなこともあろうかと思ってな……)
どうやら奏夜は、最悪のケースを想定して、何かしらの対策を立てているみたいだった。
すると、穂乃果は本気で困り果てているからか、舞台袖の方を向き、奏夜に目で助けを求めていた。
奏夜は穂乃果に何かを伝えるように、ブレザーのポケットを叩いていた。
穂乃果は首を傾げながらブレザーのポケットを調べると、1枚の紙が入っていた。
「……!」
それを開くと、中身は生徒会長挨拶の例文であり、それを見た穂乃果は驚いていた。
それと同時に救われた穂乃果は、その紙の内容を参考にスピーチを始めるのであった。
「良かったぁ……。穂乃果ちゃん、挨拶を再開出来たよ!」
「えぇ。私も安心しました」
穂乃果が再び喋り始めたことに、ことりと海未は安堵するのであった。
「やれやれ……。こっそり忍ばせといたカンペがあんなところで役に立つとは……」
どうやら穂乃果の持っている紙に書かれた文章は奏夜が書いたものであり、実際に使うことになったことに驚いていた。
「奏夜。穂乃果の持っているあの紙はもしかして……」
「お察しの通りだ。穂乃果が挨拶をど忘れする可能性を考慮して、カンペをこっそりとポケットに忍ばせておいたんだ」
「アハハ……。さすがそーくん。抜け目がないね……」
奏夜のあまりの抜け目のなさに、ことりは苦笑いしていた。
こうして、穂乃果はピンチを乗り越えて、どうにか無事に生徒会長の挨拶を終えることが出来たのであった。
※※※
全校集会が終わり、放課後となった。
奏夜、穂乃果、海未、ことりの4人は生徒会室に来ていた。
「はうぅ……。疲れたぁ……」
全校集会での挨拶で肝を冷やした穂乃果は、力無い感じでテーブルに突っ伏していた。
「穂乃果ちゃん、お疲れ様♪」
ことりは、そんな穂乃果に労いの言葉を送っていた。
「生徒会長挨拶って、ライブとは全然違うんだねぇ……。緊張しっぱなしだったよ!」
「アハハ……。ま、そんなもんだろ」
「そうかもね。だけど、穂乃果ちゃんらしくて良かったと思うよ♪」
どうやら穂乃果は生徒会長挨拶でかなり緊張していたみたいであり、2人はそんな穂乃果をフォローする言葉を送っていた。
そんな中……。
「どこが良かったんですか!せっかく昨日4人で挨拶文を考えたというのに……」
海未は、穂乃果が途中で挨拶の内容をど忘れしてしまったことに異議を唱えていた。
「アハハ……。ごめん……」
「まったく……。あの時奏夜が機転を利かせてくれなかったらどうなっていたことか……」
「そーくん、ありがとう!本当に助かったよぉ!」
「ったく……。もしものためにカンペを忍ばせといたけど、まさか本当に使うことになるとは思わなかったぞ」
『穂乃果。お前はただの挨拶で張り切り過ぎだ。だから挨拶をど忘れしたんじゃないのか?』
「むぅ……!だって、あのパフォーマンスはやりたかったんだもん……」
奏夜は穂乃果の挨拶を思い出して苦笑いしており、キルバは挨拶でのパフォーマンスについて追求していた。
それが面白くなかったのか、穂乃果はぷぅっと頬を膨らませていた。
「その話はもういいでしょう。とりあえず……!」
海未は手にしていた書類の山を、ボン!と穂乃果の前に置くのであった。
「今日はこれを片付けてから帰ってもらいます」
「えぇ!?こんなに!?」
目の前にある仕事はかなりのものであり、穂乃果は顔を真っ青にしていた。
「それと、これも!」
どうやらまだ 仕事はあるみたいで、海未は1枚の紙を穂乃果に手渡すのであった。
「どれどれ……。学食のカレーがまずい……。アルパカが私に懐かない……。学園祭に有名人を……。って、何これ?」
『どうやら、一般生徒からの要望みたいだな』
「ええ、キルバの言うとおりです」
穂乃果が先ほど読み上げたのは、生徒からの要望書の一部であった。
「ん?どれどれ……?」
奏夜は穂乃果からその要望書を受け取ると、他の内容も読み上げるのであった。
「男子が少なくて肩身が狭いです……。うんうん、俺もわかるが仕方ないよな……」
最初に読み上げた内容に、奏夜は強い共感を覚えるのであった。
「他には……?パソコン室でゲームが出来るようにして欲しい……。男子が少ないっていうのに女の子にモテません!……校内のリア充を殲滅して欲しい……」
奏夜はさらに文章を読み上げると、次第にジト目になっていった。
そして……。
「知らんがな!!」
このような奏夜のツッコミが空を切るのであった。
『これは要望というよりはただの不満のはけ口だな……』
要望書の内容とは思えない文章たちに、キルバは呆れ果てていた。
「それはともかくとして、そーくんと海未ちゃんも手伝ってくれてもいいじゃん!2人とも副会長なんだし!」
穂乃果の言う通り、副会長は奏夜だけではなく、海未もその役を受けたのであった。
海未は、魔戒騎士であり、μ'sのマネージャーである奏夜の負担を少しでも減らそうと考えた結果、副会長の仕事を引き受けたのであった。
「私と奏夜はすでに目を通してあります」
「まぁ、俺は絵里や希の手伝いをしてたし、これくらいはな」
どうやら海未と奏夜は、穂乃果のやるべき仕事に目を通していたみたいであった。
「じゃあ、2人ともやってよぉ〜!」
穂乃果は手伝いをしてくれない奏夜と海未に不満をぶちまけていた。
「あのなぁ……。生徒会の仕事はそれだけじゃないんだぞ」
「奏夜の言うとおりです!あっちには校内に溜まりに溜まった忘れ傘の放置!各クラブの活動記録も放ったらかし!そこのロッカーの中にも3年生からの引き継ぎのファイルが残っています」
「まぁ、引き継ぎのファイルに関しては、面倒そうなのは終わらせたんだけどな……」
奏夜は、絵里や希の手伝いをしていたため、引き継ぎに関しては面倒そうなものだけは先に終わらせていたのであった。
「本来であればそれも穂乃果にやってほしかったのです」
どうやら海未としては、ちょっとでも奏夜が先に仕事に手を付けたことが不満のようだった。
「生徒会長である以上、この学校のことは誰よりも詳しくなくてはいけません」
「で、でも、4人いるんだし、手分けした方が……」
「ことりは穂乃果に甘すぎます!」
ことりは穂乃果に助け舟を出そうとするものの、それは海未に一刀両断されてしまった。
「ったく……。仕方ないな……」
奏夜は、やれる範囲で穂乃果の仕事を手伝おうと考えていたのだが……。
「奏夜、いくら穂乃果が泣きついてきても、穂乃果のやるべき仕事も一緒にやってしまおうなどと思わないようにしてください」
「!?」
どうやら海未は、奏夜の考えはお見通しのようであり、痛いところを突かれた奏夜は、驚きを隠せなかった。
それだけではなく、穂乃果も奏夜をアテにしていたようであり、海未の言葉を聞いて、同じように驚いていた。
「奏夜も穂乃果には甘いですからね。私が釘を刺しておかないと、なんでも仕事をやってしまいそうですから」
『ま、確かに、海未の言う通りだろうな』
キルバもまた、奏夜なら穂乃果を甘やかすだろうと予想していたため、海未の言葉に同意していた。
「奏夜。もし穂乃果を甘やかしたら……わかってますね?」
「も、もちろんわかってるよ!穂乃果、自分のやるべき仕事はしっかりやってくれよ!後は俺らでやるから」
海未は険しい表情で奏夜を睨みつけており、それにたじろいだ奏夜は、素直に海未の言うことを聞くしかなかった。
「はうぅ……。生徒会長って大変なんだねぇ……」
いざという時に奏夜を頼れないとわかり、穂乃果は涙目になっていた。
すると……。
「……わかってくれた?」
先ほどの話を聞いていたのか聞こえただけなのか。絵里が生徒会室に入りながらこう言っていた。
「あ、絵里ちゃん!」
「みんな、頑張っとるん?」
「希ちゃんも!」
絵里だけではなく、希も一緒みたいであった。
さらに……。
「うむ、さっそく大変そうだな、穂乃果」
「剣斗!お前も一緒だったんだな!」
奏夜と同じ魔戒騎士であり、今は音ノ木坂学院の教師でもある小津剣斗も絵里や希と一緒に生徒会室に入ってきた。
「私はお前たちの様子を見にきたのだが、どうやら絵里と希も同様だったみたいでな」
「大丈夫?挨拶、ちょっと拙い感じだったわよ」
絵里は、生徒会長挨拶でつまり、カンペを使ってどうにか乗り切った穂乃果のことを心配していた。
「えへへ……ごめんなさい。絵里ちゃんと希ちゃんも小津先生みたいに様子を見に来てくれたの?」
「まあ、そんなところね。私が穂乃果を生徒会長に推薦した手前、心配でね」
「奏夜君もいてくれるし、大丈夫だとは思うけどなぁ」
「アハハ、そう言ってもらえると光栄だよ」
絵里は自分が穂乃果を生徒会長に推薦したからか、色々と心配していたのだが、希は奏夜が副会長としていてくれているため、そこまでは心配していなかった。
「それに、明日からはみっちりとダンスレッスンもあるからね」
μ'sが再始動し、練習はしっかり行っているのだが、毎日がみっちりとダンスレッスンを行うということは出来ず、生徒会長も決まり落ち着いたため、明日から本格的にダンスレッスンを行う予定であった。
「カードによると、穂乃果ちゃんは生徒会長としてかなり苦労するみたいやで♪」
「うぇぇ!?」
「それに、奏夜君も、かなり苦労するみたいやで」
希は穂乃果だけではなく、奏夜のことも占っていたみたいであり、そのことを報告していた。
「かなり苦労……。そうかもしれないな。尊士はどうにか倒したけど、まだジンガが残ってる。あいつを倒さないと……」
奏夜は副会長の仕事だけではなく、魔戒騎士としても苦労することは奏夜自身もわかっていた。
倒すべき敵のことを思い浮かべ、奏夜の表情は自然と険しくなっていた。
「そーくん……」
奏夜の顔が先ほどの穏やかな顔から魔戒騎士の顔に変わり、穂乃果は心配そうに奏夜のことを見ていた。
「奏夜、生徒会の仕事が落ち着いたら少しいいか?そこら辺のことで話があってな」
「ああ、わかったよ」
どうやら剣斗は奏夜に話があるみたいであり、このように約束を取り付けていた。
「奏夜、色々と大変だとは思うけど、よろしく頼むわね」
「任せとけ。仕事はきっちりとこなすさ」
魔戒騎士とμ'sのマネージャー。
それだけではなく生徒会副会長と三足のわらじを履くことになった奏夜なのだが、その状況を作ってしまった絵里は申し訳なさそうにしていた。
しかし、奏夜は気にしておらず、与えられた仕事はきっちりとこなすつもりでいた。
「海未ちゃんとことりちゃんもそんな2人のサポート、お願いね♪」
「気にかけてくれてありがとう♪」
「いえいえ♪何か困ったことがあれば言ってね。力になるから」
「うん!ありがとう!」
「絵里や希だけではなく、何かあれば私にも相談するといい。教師の立場で力になれることもあるだろうからな」
「小津先生もありがとう!」
こうして、激励にきた絵里、希、剣斗の3人は生徒会室を離れ、残った奏夜たちは生徒会の仕事を始めるのであった。
※※※
生徒会の仕事がひと段落ついた奏夜は、剣斗と話をするためにアイドル研究部の部室に来ていた。
「おお、奏夜。仕事はひと段落したのか?」
「まぁな。俺のやるべき仕事は終わらせてきたよ」
奏夜が。仕事を終わらせたと聞き、剣斗は笑みを浮かべていた。
「お前は本当に真摯に働くな。そんなお前だからこそ、多くの者が奏夜を信頼しているのだろう」
剣斗は、そんな奏夜に労いを兼ねた称賛を送っていた。
「アハハ……。それで、話って?」
「うむ。そうだったな」
奏夜は本題を切り出してきたことにより、剣斗は奏夜にあることを伝えるために語り始めるのであった。
「少し前に統夜から連絡があったのだが、未だに魔竜の眼の足取りは掴めないみたいだ」
剣斗の話というのは、魔竜ホラーと呼ばれているニーズヘッグ復活に必要な魔竜の眼の行方のことである。
ニーズヘッグ復活には、魔竜の牙と、2つの魔竜の眼が必要なのだが、魔竜の牙と魔竜の眼の片割れは、ジンガの手に渡っている。
統夜は、紅の番犬所の魔戒騎士であるが、元老院からの指令で、ニーズヘッグ復活を阻止しようと動いている。
そして、奏夜たちの宿敵であるジンガは、魔竜ホラーであるニーズヘッグを復活させようと動いている。
ニーズヘッグを復活させるのもそれを阻止するのにも未だに行方の掴めない魔竜の眼の力が必要になるのである。
しかし、現在は未だにもう1つの魔竜の眼は見つかっていない。
「ジンガは魔竜の眼を手に入れただろ?あいつはその力を使ってもう1つの眼を探すことはしてないんだろうか?」
「ふむ……。それは一理あるな」
『ジンガも恐らくは眼の力を使ってもう1つの眼を探そうとはしただろう。だが、今もなお見つかってないところを見ると、奴も魔竜の眼は見つけられてないのだろう』
「これは俺の推測だけど、もう1つの魔竜の眼はどっかで守られてるんじゃないかな。特殊な結界みたいなもので」
奏夜は、何故魔竜の眼の片割れを持つジンガが未だにもう1つの眼を見つけられないのか、このような推察をしていた。
「それはあるかもしれないな。それならばジンガが魔竜の眼を見つけられてないことに説明がつくし、統夜も未だに足取りを掴めないことも納得だからな!」
剣斗は、奏夜の推測を全面的に肯定していた。
『その可能性は大きいが、それはきっとジンガの奴も気付いているだろうな』
「ああ。今は尊士を失ったばかりだから大人しいんだろうが、近いうちに奴は仕掛けてくるだろうな……!」
奏夜は、ジンガが本気を出せば、魔竜の眼が見つかるのは時間の問題だと考えていたからか、深刻な表情をしていた。
『奏夜。そこまで気負うことはないと思うがな』
「うむ!キルバの言う通りだ!お前には仲間がいるではないか!共にホラーと戦う最高にイイ仲間がな!」
ジンガの力を計り知れない奏夜は不安になっていたのだが、それを吹き飛ばすように、剣斗が励ましの言葉を送っていた。
「……そうだな。俺は1人で戦ってる訳じゃないんだもんな……」
奏夜は共に戦う仲間がいることを思い出し、穏やかな表情になっていた。
「なぁ、剣斗。ありが……」
ありがとな。
奏夜がこう言おうとしたその時、バタン!と部室の扉が開かれ、穂乃果たち9人が一斉に中に入ってきた。
「はぁ……はぁ……はぁ……。良かった、奏夜はここにいたわね」
かなり慌てた様子で中に入ってきたからか、にこは息が上がっている様子だった。
「どうしたんだ?お前ら、そんなに慌てて」
主ににこと花陽が何かに対して慌ててる様子があり、奏夜は首を傾げていた。
「あんたたち……。のんびり話してる場合じゃないわよ!」
「そうです!もう1回行われることになったんです!」
「もう1回?」
にこと花陽は慌てながらも興奮した様子であり、そんな花陽の言葉をおうむ返しのように繰り返した奏夜は首を傾げていた。
「もう1回ねぇ……。まさか、ラブライブがもう1回行われるとか?」
奏夜の口にした「ラブライブ 」とは、スクールアイドルの祭典と呼ばれる大会であり、以前、第1回大会が行われたばかりであった。
「そうです!A- RISEの優勝で幕を閉じたラブライブがまた行われるんです!」
「へぇ、ラブライブねぇ……。そいつはなかなか……。って!なんだと!?」
奏夜は本気でラブライブが二人行われると思っていなかったため、反応が遅れてしまい、驚いていた。
「しかも!今回のラブライブは前回を上回る大会規模で、会場の広さも数倍。ネット配信の他、ライブビューイングも計画されています!」
「す、凄いわね……」
「いつかは第2回が来るとは思ってたが、こんなにも早く来るとはな……」
スクールアイドルは今や全国区であり、スクールアイドルの甲子園とも言えるラブライブが再び行われることは奏夜も予想していた。
しかし、ここまで早く第2回が来るのは予想外であり、奏夜は驚いていた。
「しかも!ここからが重要になってきます!」
興奮冷めやらぬ中、花陽はパソコンのところへ移動し、パソコンを起動させると、ラブライブの特設サイトを開いていた。
「大会規模が大きくなったことで、今回のラブライブは前回のランキング形式ではなく、各地で予選が行われ、各地区で代表になったチームが本戦に進むことになりました!」
「ほぉ……?」
前回のようにランキング形式ではなくなったことを知り、奏夜は不敵な笑みを浮かべていた。
『なるほどな。ということは、今までのランキングは関係なくなるということだな』
「その通りです!これはまさしくアイドル下克上!ランキング下位のチームでも、予選のパフォーマンス次第では本戦に進めるんです!」
「それって、私たちにもチャンスがあるってことよね?」
「凄い!凄いにゃ!」
「やらない手はないわね!」
今度のラブライブの大会形式を聞き、希、凛、真姫の3人は興奮を隠せなかった。
「ふふ、並みいる強豪を押しのけ、王者への道を進んでいくということか……。イイ!とてもイイ!」
それだけではなく、剣斗もまた、興奮を隠せなかった。
「ま、まぁ、言ってることは合ってるけど……」
剣斗の言葉は的を得ているのだが、あまりにも熱い剣斗に、にこは引き気味であった。
『予選形式なのはいいのだが、1つだけ大きな問題がある』
「大きな問題……?あっ!」
ことりはキルバの言葉の意味を察して、顔が青くなっていた。
「地区予選があるってことは……。私たちはあの「A- RISE」とぶつかるってことよね?」
第1回ラブライブを制した「A- RISE」の学校であるUTX学園は、秋葉原にあるため、音ノ木坂学院と同じ地区に当たる。
本戦に進むためには「A- RISE」を退けなければいけないのであった。
その事実を知った花陽たちは……。
「お、終わりました……」
「ダメだぁ……!」
「あのA- RISEに勝たなきゃいけないなんて……」
「それはいくらなんでも……」
「無理よ……」
一気に絶望感が支配してしまったからか、一気に空気が暗くなってしまった。
(ったく……。お前らは……)
A- RISEとぶつかるとわかって気落ちする花陽たちに、奏夜は呆れていた。
そして……。
「じゃあ……いっそのこと、出るのをやめるか?」
「はぁ!?何言ってるのよ!」
「そうです!せっかくのチャンスなんです!」
奏夜の言葉に、にこと花陽が異議を唱えていた。
「だが、A- RISE相手に諦めムードだろ。そんな状態で出ても無意味だと思うがな」
「「そ、それは……」」
この絶望感は、最初から負けると決め付けているからであるため、にこと花陽は奏夜にこれ以上の反論は出来なかった。
「出る出ないはみんなに任せるつもりだけど、むしろこれはチャンスだとは思わないのか?あのA- RISEに勝てれば、ってさ……」
「でも!相手は前回の王者なのよ!?そんな相手に勝とうだなんて……」
「ふむ……。俺はみんなの努力次第ではA- RISEに届くと思ってたけど、俺の見当違いだったか?」
奏夜のこの言葉に、場の空気は一気に凍りつく。
「うむ。私もそれは思っていた。確かにA- RISEは絶対王者に相応しい実力者だ。しかし、皆は様々な修羅場を乗り越えてきただろう?私は今のμ'sはA- RISEと遜色はないと思うのだがな」
奏夜が厳しい言葉を言ったことや剣斗がそれに同意したのは、2人がそれだけμ'sの実力を評価しているからであった。
「奏夜……小津先生……」
絵里はそんな2人の気持ちを汲み取るのであった。
「そうですね。A- RISEとぶつかるのはとても厳しいことです。ですが、諦めるのは早いと思います」
ネガティブな空気が流れる中、この海未の言葉が、その空気を切り裂くことになった。
「確かに……。やる前から諦めてたら、何も始まらないわよね……」
「それもそうね」
「エントリーするのは自由なんやし、やってみてもいいんやない?」
海未の言葉を聞き、絵里は前向きなことを言っており、それに真姫と希も同意していた。
「た、確かにそうだね!厳しいとは思うけど、私は参加したい!」
A- RISEとぶつかると知って最初に絶望していた花陽であったが、ラブライブへの思いは強いため、参加したいという意思を伝えていた。
「じゃあ、ラブライブに出場するってことでいいわね?」
先ほどの暗い空気からうって変わり、ラブライブ出場へ前向きな感じになっていた。
そんな中、奏夜は1つだけ気になることがあった。
(……何で穂乃果はさっきからだんまりなんだ?)
《確かにな。本当なら真っ先に出ると言いそうなものだが……》
ラブライブの話をしているにもかかわらず、穂乃果は一切話に参加しておらず、そのことに奏夜とキルバは疑問に思っていた。
そのため……。
「……なぁ、穂乃果。穂乃果はどう思うんだ?」
『お前が1番ラブライブに出たいんじゃないのか?』
奏夜とキルバはこのように穂乃果に問いかけるのだが、穂乃果はズズズとお茶をすすりながらのんびりしていた。
そして、この後穂乃果の言い放つ言葉が、奏夜たちに大きな衝撃を与えることになる。
「……出なくてもいいんじゃない?」
「……え?」
「ラブライブ、出なくてもいいと思う!」
『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?』
穂乃果のまさかの発言に奏夜たちが驚きの声を上げる中、穂乃果は満面の笑みを浮かべるのであった。
……続く。
__次回予告__
『穂乃果のやつ、まさか出ないと言いやがるとはな……。まぁ、何か事情があってのことだろうが……。次回、「息抜」。たまにはこんな日があってもいいよな』
いよいよ始まりました、二期編!
ラブライブの二期は、穂乃果が可愛いシーンが結構あるので好きなんですよね。
当然一期でも穂乃果は可愛いですが(*^_^*)
新章は、ジンガとのバトルも見どころですが、奏夜の恋愛事情も見どころにしようと思っているのでご期待ください!
話は変わりますが、「ラブライブ!サンシャイン!!」の二期が終わってしまいましたね。
個人的にはあの終わり方はありかなと思いますが、ニコ生は荒れてましたね(笑)
劇場版も楽しみです!
牙狼の方も、もうすぐ「神ノ牙」が公開になります。
今作でも宿敵のジンガが活躍するので楽しみです!
それだけではなく、「闇を照らす者」の三騎士が揃うので期待しかしてないです(笑)
地元近辺では公開しないので、遠出して見に行こうと思ってます。
さて、今回の終わりで穂乃果はラブライブに出なくていいと宣言しましたが、次回はいったいどうなってしまうのか?