牙狼ライブ! 〜9人の女神と光の騎士〜   作:ナック・G

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お待たせしました!前回の続きとなっています。

僕は牙狼コラボがきっかけでFF14を始めましたが、この前、牙狼コラボのコンテンツを全て終わらせることが出来ました!

牙狼装備をコンプリートし、それで得られる称号も集め、最終的には「Master of GARO」という称号をゲットしました。

詳細が気になる方は、FF14専用サイトのロードストーンというサイトにて、日記を書いてるのでそこを参考に。


https://jp.finalfantasyxiv.com/lodestone/character/16492123/blog/



前置きが長くなりましたが、前回の続きをどうぞ!




UA20000記念作品 「休日 後編」

音ノ木坂学院の生徒であり、陽光騎士輝狼の称号を持つ如月奏夜は、魔戒騎士とスクールアイドルのマネージャーという二足のわらじを履きながらもそれぞれの役割を果たしていた。

 

奏夜の残した功績は大きく、魔戒騎士としても多くの強大なホラーを討滅し、μ'sのマネージャーとしても、μ'sを一人前のスクールアイドルグループへと押し上げていった。

 

そんな奏夜の功績を翡翠の番犬所の神官であるロデルは大きく評価しており、何か奏夜に褒美を与えることにした。

 

そんな中、奏夜は休みを希望し、奏夜はその休みを利用し、趣味である釣りをするために静岡県沼津市にある内浦というか場所へと向かった。

 

奏夜は沼津駅からバスに乗り込み、そのまま宿泊する旅館である十千万の前に到着した。

 

入り口にいる看板犬に驚きつつも、奏夜は旅館の中に入るのであった。

 

(へぇ……。けっこう綺麗なところじゃん)

 

ロビーは隅々まで掃除が行き渡っており、清潔感のある感じになっており、その清潔感と、旅館独特の雰囲気に奏夜は感心していた。

 

奏夜がさっそく「すいませ〜ん」と声をかけると、「は〜い!」と返事が返ってきて、1人の女性がやって来た。

 

女性はこの旅館の跡取りなのか、10代後半から20代前半くらいの若い女性で、長くて綺麗な黒髪が特徴であった。

 

「ようこそいらっしゃいました。私はこの旅館の高海志満(たかみしま)でございます」

 

この女性……。志満のおっとりとした雰囲気にドキッとした奏夜は、「あっ、ども……」とだけ返事をしていた。

 

「今日から2泊3日で予約を入れている如月奏夜っていいます」

 

奏夜は予約確認を行うため、宿泊日数と名前を明かしていた。

 

「如月奏夜さんですね……?……はい、承っております」

 

予約は間違いなく取れていたようであり、奏夜は安心していた。

 

「電話では高校生だと聞いておりましたので、学生証の提示をお願い出来ますでしょうか?」

 

「ああ、はい。わかりました」

 

学生証が必要だと言われたため、奏夜はすぐに学生証を取り出すと、すぐにそれを提示した。

 

「……はい。確認しました」

 

志満が奏夜の学生証を確認すると、奏夜は学生証をしまったのであった。

 

「電話で聞いた時は驚いたけど、本当に高校生だったのねぇ……」

 

「えぇ……まぁ……」

 

「それも東京から来たなんてねぇ……。ここへは何をしに?」

 

志満は奏夜が東京の高校生だと知ると、都会の高校生がここまで来た理由が気になっていた。

 

「実は、釣りが趣味でして、たまにはのんびりと釣りがしたいと思ってここまで来たんです」

 

奏夜はここへ来た目的を正直に話していた。

 

隠すようなことでもないからである。

 

「まぁ!それは素敵な趣味ね!何もないところだけど、ゆっくりしていって下さいね!」

 

「ありがとうございます」

 

「それでは、お部屋の方へ案内しますね」

 

こうして、志満は奏夜を部屋まで案内しようとしたのだが……。

 

「たっだいま〜♪」

 

「お邪魔しま〜す!」

 

奏夜が入ってきた入り口から2人の女の子が入ってきた。

 

1人は橙色の髪の女の子で、もう1人はグレーの髪の女の子だった。

 

「ちょっとあなたたち!ここはお客さんが入るんだからこっから入っちゃダメって言ってるじゃない!」

 

「「ごめんなさ〜い!」」

 

志満は2人の女の子に注意をするのだが、特に悪びれる様子はなかった。

 

「……あれ?このお兄さん、お客さん?」

 

「まぁな。2泊3日で世話になるんだ」

 

橙色の髪の女の子がこのように問いかけると、奏夜はすぐに答えていた。

 

「……ごめんなさい。私の妹と、そのお友達なんです」

 

「そうなんですか?えっと……」

 

志満が話す雰囲気から身内であることは理解していたが、名前まではわからないため、奏夜は名前を聞こうとしていた。

 

「初めまして!私は高海千歌(たかみちか)っていいます!小学6年生です!」

 

「その親友の渡辺曜(わたなべよう)であります!」

 

志満の妹である千歌は元気いっぱいに自己紹介をしており、その親友である曜は、ウインクをしながら船乗りのような敬礼をしていた。

 

「千歌ちゃんに曜ちゃんね。俺は如月奏夜。音ノ木坂って高校に通ってる高校2年生だ」

 

奏夜もまた、千歌と曜に自己紹介をしていた。

 

「如月さんは東京の高校に通ってるんだけど、趣味の釣りをするためにここに来たみたいよ」

 

志満は奏夜がここへ来た目的を千歌と曜に話していた。

 

「東京から来たんですか!?」

 

「うぉっ!?」

 

奏夜が東京から来たことを知ると、千歌は思い切り食い付いてきており、そのことに奏夜は驚いていた。

 

「いいなぁ、東京……。私、憧れなんです!」

 

どうやら千歌は、都会に対してかなりの憧れがあるみたいだった。

 

「そうか?東京なんてただ人が多いだけのとこだぞ。それに、ここだっていいところじゃないか」

 

奏夜は本当にそう思っているためこう主張するのだが……。

 

「いえ!だってここなんて本当に田舎なんですもん!バスは1時間に一本だし、人は本当にいないし……」

 

千歌はこの内浦が田舎なのが不満なのか、愚痴っぽく語っていた。

 

(まぁ、俺はそれがいいと思うけどな……)

 

《都会にいれば田舎に憧れ、田舎にいれば都会に憧れる。自然な話だとは思わないか?》

 

(まぁ、確かにそうだけどさ……)

 

キルバはテレパシーを使って奏夜にこのように話しかけており、その言葉に奏夜は納得はしていた。

 

「さて、ごめんなさい、如月さん。お部屋に案内するわね」

 

千歌と曜の登場により、奏夜を部屋へ案内出来なかったため、志満は奏夜を部屋まで案内しようとしたのだが……。

 

「私も一緒に案内したい!」

 

「私も!」

 

千歌と曜は、一緒に奏夜を部屋へと案内することを申し出ていた。

 

「もう、如月さんはお客様なのよ。そんなのダメに決まってるじゃない」

 

これからちゃんとした接客を行うというのに、千歌と曜を一緒に連れていく訳にはいかなかった。

 

そんな志満の判断に千歌と曜は不満げだったのだが……。

 

「別にいいですよ。2人もついてきても」

 

奏夜としてはあまり気にしていないからか、このように答えており、そんな奏夜の言葉に千歌と曜の表情はぱぁっと明るくなった。

 

「いいんですか?」

 

「はい。2人がいた方が賑やかな気がしますしね」

 

奏夜としてはちゃんとした接客を求めてる訳ではなく、賑やかで楽しければいいと思っているため、このようなことが言えたのである。

 

「わかりました……。2人とも、如月さんに迷惑をかけたらダメよ?」

 

「「は〜い!」」

 

「それでは、改めてお部屋に案内しますね」

 

こうして奏夜は、志満、千歌、曜の3人による案内で、今日泊まる部屋へと案内されたのであった。

 

「……こちらがお部屋になります」

 

奏夜が案内された部屋は、旅館としてオーソドックスな感じの部屋であり、1人で泊まるにはやや広めな部屋だった。

 

「へぇ……。いい感じの部屋ですね」

 

どうやら奏夜は、この部屋の雰囲気が気に入ったみたいだった。

 

「ウフフ♪ありがとう♪それじゃあ、ごゆっくり♪」

 

志満はおっとりとした笑みを浮かべながら一礼すると、その場を後にした。

 

「さてと……」

 

奏夜はこのまま荷物を置き、のんびりしようと思ったのだが、ピコン!と奏夜の携帯が反応していた。

 

奏夜はポケットから携帯を取り出すと、穂乃果から「LAIN」によるメッセージだった。

 

奏夜は慣れた手つきで「LAIN」のアプリを起動させ、メッセージを確認すると……。

 

 

 

 

 

【そーくん!沼津には着いたの??】

 

 

 

 

 

という内容であった。

 

奏夜はすかさずこのように返事を出したのであった。

 

 

 

【たった今旅館に着いて、部屋を案内してもらったところだ】

 

 

 

 

どうやらこれは穂乃果のみのメッセージではなく、μ'sのメンバー全員が登録しているグループメッセージだった。

 

そのため、奏夜が旅館に着くとわかると、穂乃果を始めとしたμ'sのメンバーからのメッセージやスタンプが飛び込んできたのであった。

 

「ったく……。あいつらは……」

 

奏夜は穂乃果たちからのメッセージが嬉しかったからか、穏やかな表情で笑みを浮かべていた。

 

すると……。

 

「……もしかして、彼女さんですか?」

 

奏夜の表情が穏やかなものだったからか、曜がひょっこりと顔を出して問いかけていた。

 

「うぉっ!?お前ら、まだいたのかよ!」

 

千歌と曜は志満と共に出て行ったと思っていたため、2人が残ってることに奏夜は驚いていた。

 

「はい!お兄さんの話をもっと聞きたいって思ったので」

 

どうやらこの2人は、東京の高校生である奏夜に興味津々みたいであった。

 

「とは言っても俺はお前らが想像するような人間じゃないと思うけどな。至ってどこにでもいる高校生だよ」

 

奏夜は魔戒騎士という仕事を除けば、確かに普通の高校生であるため、2人にこのような説明をしていた。

 

「そうなんですね……」

 

「で、さっきのLAINは彼女さんですか?」

 

普通の高校生だという奏夜の言葉に納得したのかしてないのか、千歌は生返事をしており、曜は奏夜に来たLAINについてグイグイ迫っていた。

 

そんな曜の姿勢に、奏夜は苦笑いをしていた。

 

「いや、彼女ではないよ。ただ……」

 

「「ただ?」」

 

「何があろうと守ってやりたい。それくらい大切に思ってる仲間だよ……」

 

奏夜は穂乃果たちと出会い、μ'sのマネージャーとして関わるようになり、穂乃果たちを心から守りたいという感情を抱いていた。

 

そのことにより、「守りし者」とは何なのかを知る事が出来たのである。

 

「へぇ!素敵ですね!」

 

何があっても守りたいと思う存在というところが響いたのか、千歌の表情はキラキラと輝いていた。

 

「ところで奏夜さん、これからどうするんですか?」

 

「そうだな……。実際釣りをするのは明日にしようと思ってるから、釣り場探しを兼ねてここら辺を見て回ろうかなと思ってる」

 

奏夜はこれからの予定を千歌や曜に説明していた。

 

「良かったら案内しますか?」

 

千歌はこの町の案内を申し出てくれたのだが……。

 

「気持ちはありがたいけど、遠慮しておくよ。1人でのんびりと歩きたいって思ってるからな」

 

「そうですか……」

 

自分の申し出を断られ、千歌は少しばかりしょんぼりとしていた。

 

「……そういう訳で行ってくるよ」

 

奏夜は自分の荷物を置くと、魔法衣だけを取り出し、部屋を後にした。

 

そこまで寒い季節ではないのに何故コートを持って出かけたのかわからず、千歌と曜は首を傾げていたのであった。

 

そのまま奏夜は旅館の入り口で志満に出かける旨を伝えると、そのまま旅館を後にした。

 

「さて、まずはどこへ向かおうか……」

 

奏夜は旅館を出たのは良いものの、目的地をどこにするかは決めていなかった。

 

『おい、奏夜。お前はどこに行くのか決めないまま出てったっていうのか?』

 

行き当たりばったりな奏夜の姿勢に、キルバは呆れていた。

 

「まぁ、そう言うなよ、キルバ。風の向くまま気の向くまま町を回るつもりさ」

奏夜が町の見回りをする時は多少は気を張っているのだが、今は騎士の使命を忘れて休んでいるため、のんびりと町を回ろうと考えていた。

 

奏夜は携帯を取り出し、地図アプリを起動させると、その地図を頼りに歩き始めた。

 

内浦の町は、完全に海の町といった感じの雰囲気であり、奏夜は滅多に見ない海に目を輝かせていた。

 

奏夜は東京の人間であるため、お台場あたりまで行けば海は見れるのだが、騎士の仕事やμ'sのマネージャーとしての仕事が忙しく、なかなかお台場まで行くことはないのである。

 

奏夜が最初に訪れたのは内浦港であった。

 

この町の港がどうなっているのか気になっていたからである。

 

それだけではなく、内浦港あたりが釣りスポットになっていると、ネットの情報に載っていたため、釣り場の下見も兼ねていた。

 

(へぇ、この辺は意外と賑わってるな)

 

内浦港は観光客も訪れるスポットらしく、奏夜の予想以上に賑わっていた。

 

近くには水族館や、海水浴場もあるみたいであり、そのことが、この盛り上がりを裏付けていた。

 

この内浦港は少し前までは釣りスポットとして有名だったのだが、釣り場として使われていた堤防が立ち入り禁止になり、ここでは釣りは行えないみたいだった。

 

奏夜は実際にその堤防を見に行ったのだが、ネットの情報通り、立ち入り禁止の立て札が置かれていた。

 

「あちゃー……。やっぱここじゃ釣りは無理なのか……」

 

奏夜は可能であればここを釣り場の候補にしていたからか、がっくりと肩を落としていた。

 

しかし……。

 

「だったら、ここの近くにある釣り場しかなさそうだな……。そこは穴場っぽいし……」

 

ここで釣りが出来ないことを予想していた奏夜は、ネットで調べた穴場の釣り場がここの近くにあることを突き止めており、そこへ行ってみることにした。

 

「……釣り場としては小さいけど、穴場としては悪くないかもな」

 

そこは釣りをするには決して大きく快適なスペースとは言い難かったのだが、のんびりと釣りをしたいと思う奏夜にはちょうど良かった。

 

しかし……。

 

「……ここが駐車場の近くじゃなかったら完璧なんだけどな……」

 

そこは駐車場の近くであるため、人通りがそれなりにあるため、落ち着いて釣りが出来るかどうかは微妙な環境であった。

 

奏夜は携帯を取り出すと、再び内浦の釣り場が他にはないか検索をしてみた。

 

調べていたら、淡島と呼ばれる場所にも釣りスポットはあるみたいなのだが、現在は閉鎖されてるみたいだった。

 

「……マジかよ、ここもダメか……」

 

淡島も釣りは厳しいことを知ると、奏夜はがっくりと肩を落としていた。

 

その結果……。

 

「明日はまたここに来よう。ここが1番釣り場としては無難みたいだしな」

 

奏夜は今いるここで釣りを行うことを決めたのであった。

 

調べ物を終えた奏夜は、携帯をポケットにしまっていた。

 

「さて……これからどうするかな……?」

 

釣りをする場所も決まり、奏夜は次の目的地をどこにするか考えていた。

 

(……ここら辺は水族館や海水浴場はあるが、そこへ行ってもなぁ……)

 

奏夜は1人で行動しているため、水族館や海水浴場へこのまま1人で行くことに若干抵抗を感じていた。

 

(とりあえず中には入らないで、外観だけ見て旅館に戻ることにするか)

 

もう少し観光してから戻れば、夕食には丁度良い時間になるため、奏夜は近くにある水族館や海水浴場を見てみることにした。

 

そして、外観をある程度見た奏夜は早々に引き上げ、そのまま旅館へと戻っていった。

 

旅館へ戻ると、ちょうど夕食の時間になろうとしていたところだったため、奏夜はそのまま夕食をいただくのであった。

 

食事は決して豪華なものとは言いがたかったが、奏夜としてはその方が良く、じっくりと味わっていた。

 

食後は温泉の用意も整ってるとのことだったので、温泉に入ることにした。

 

ここの温泉はそれなりに広く、この日はお客さんも少ないため、ほぼ貸し切り状態であったため、奏夜はのんびりと温泉に浸かり、日頃の疲れを癒していた。

 

温泉から上がり、旅館の用意した浴衣に着替えた奏夜は、明日の釣りの準備を整えると、部屋でのんびりしていた。

 

すると、奏夜の携帯が反応していた。

 

すかさず携帯を確認すると、どうやら穂乃果から「LAIN」のメッセージが来ており、μ'sのグループメッセージだった。

 

 

 

 

 

【みんなでカラオケに行ってきたよ〜☆☆】

 

 

 

 

このような内容のメッセージだったのだが、すぐにその様子の写真が送られてきた。

 

そこには、穂乃果たち9人が身を寄せ合い、仲睦まじそうにしている様子が映っていた。

 

「……ったく……。あいつらは……」

 

携帯を見ながらこのように呟く奏夜の表情はとても穏やかなものであった。

 

それから間もなく……。

 

 

 

 

 

 

【凛たちに会えなくて寂しくなってきたでしょ??】

 

 

 

 

 

 

このようなメッセージが送られてきた。

 

「何でバレてるんだよ!」

 

奏夜は、今思ってることを見透かされたことに驚いていた。

 

奏夜はその通りであることを素直に伝えると、μ'sメンバーから、メッセージが飛び交っていたのであった。

 

奏夜はそのメッセージを処理し、早々にメッセージにによる会話終わらせたのであった。

 

穂乃果たちとは会いたいが、明日は趣味である釣りを思い切り楽しむことにしよう。

 

そう考えていた奏夜は、既に敷いてある布団に潜ると、早々に眠りについたのであった。

 

普段であれば、ホラーと戦っているか、街の見回りをしている時間であるため、この時間に寝れることを珍しがりながら、奏夜は眠ったのであった。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

翌日の早朝、奏夜は起床し、早々に釣りの準備をしていた。

 

この日は朝早く出かけることは志満に伝えているため、奏夜は朝食の準備をしている志満に一声かけてから旅館を後にしたのであった。

 

旅館を後にした奏夜は、昨日目星をつけた釣りスポットへと向かっていった。

 

旅館を出発した時は早朝だったのだが、奏夜が釣りスポットに到着した時は少しだけ明るくなっていた。

 

ここは小さい釣りスポットだからか、他に釣りをしている人はいないみたいだった。

 

「さてと……。始めますかね」

 

奏夜は釣りスポットに到着するなり、慣れた手つきで釣りの準備を行っていた。

 

座る椅子を出したり、釣竿を用意したり、釣りに使う餌を用意したりと、本当に釣りが好きだとわかるくらい、奏夜の手際は良かった。

 

そのため、すぐに準備は整っていた。

 

奏夜は準備を整えると、すぐさま釣りを始めていた。

 

「……」

 

奏夜は魚がかかるのを待っている間に携帯型の音楽プレーヤーを取り出し、イヤホンを両耳につけていた。

 

そして、再生ボタンを押すと、録音したμ'sの曲が再生されたのであった。

 

「……♪」

 

奏夜は音楽を流して気持ちを高ぶらせながら、釣りを楽しんでいた。

 

奏夜はその他にノートパソコンも持参しており、暇を持て余した時は動画でも見ようと考えていたのである。

 

釣りを始めてから10分ほど経過すると、奏夜の竿が反応した。

 

「……お、来たかな?」

 

奏夜はリールを巻きながら、慎重に魚を釣り上げようとしていた。

 

これから釣ろうとしている魚は小ぶりなものだからか、すぐに浮かび上がってきた。

 

奏夜は慣れた手つきでその魚を釣り上げると、その魚をジッと見ていた。

 

「小さい魚だな。ここには大物はいないとは書いてあったけど、贅沢は言うもんじゃないよな」

 

釣ったのが小さい魚であることに奏夜は少しだけ肩を落とすが、この場所に大物はいないことは予め調べてあったので、文句は言わないようにしていた。

 

先ほど釣った魚を水の入ったバケツに入れた奏夜は、再び竿を振り下ろし、釣りを再開した。

 

そんな感じで釣りを行い、あっという間に1時間が経過していた。

 

外は完全に明るくなり、車の通りも増えてきていた。

 

この近くの駐車場でも多少の車の出入れが発生していたが、奏夜は気にすることなく釣りを続けていた。

 

早朝から昼になるまで、奏夜はトイレに行くこと以外ではその場から離れることはせず、釣りに専念していた。

 

魚もそれなりに釣れたのだが、奏夜は釣りが終われば、魚たちを全部逃がすつもりでいた。

 

ここから東京へ持って帰っても鮮度が落ちてしまうし、旅館で調理してもらうのも迷惑をかけるだけだと判断したからである。

 

(さて、そろそろ休憩を兼ねて昼飯でも食いに行くかな?)

 

奏夜は一度釣りを中断すると、この近くで昼食を取ることにした。

 

奏夜が釣りを行っていたのは内浦港の近くであり、ここら辺にはいくつか食堂が存在していた。

 

せっかく港に来てるなら海鮮ものが食べたいと思っていた奏夜は、とある食堂に入ると、そこで海鮮丼を注文し、普段は食べない新鮮な料理に舌鼓を打っていた。

 

奏夜は昼食の後、釣り場に戻ってくると、そのまま釣りを再開した。

 

普段は魔戒騎士としてホラーと戦ったり、街の見回りをしてるだけではなく、それをしながらもμ'sのマネージャーとして奏夜は忙しく毎日を過ごしていた。

 

そんな忙しさを忘れさせてくれるほど、奏夜はのんびりと釣りを楽しんでいた。

 

しかし、奏夜は守りし者である魔戒騎士としての本分は忘れてはいない。

 

ではあるが、忙しい毎日を過ごしている奏夜には息抜きが必要であった。

 

今回の休日は息抜きをするにはちょうど良かったのである。

 

奏夜は夕方になるまで、1人でのんびりと釣りを楽しんでいた。

 

「……さて、そろそろ旅館に戻るとしますかね」

 

釣りを心から楽しんだ奏夜は、今日釣り上げた魚を全て海に逃がし、道具の片付けを始めていた。

 

片付けも慣れた手つきでこなす奏夜は、早々に片付けを終わらせると、そのまま旅館へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

「……あっ、戻りました〜」

 

奏夜は挨拶をしながら旅館に入ると、志満が出迎えてくれた。

 

「如月さん、おかえりなさい。釣りの方は楽しめましたか?」

 

「ええ。おかげさまで」

 

「……あら?今日は全然釣れなかったんですか?」

 

早朝から釣りをしていたことを知っていた志満は、奏夜の釣果がなさそうなことに首を傾げていた。

 

「いえ、魚はけっこう釣れましたよ。ですが、釣った魚は逃がすのが俺の流儀なので」

 

「あら、そうなの?持ち帰ってくれたら、その魚でお料理をしたのに」

 

「それをお願いしようと考えもしましたが、そこまで迷惑はかけられないと思いまして」

 

「あらあら♪今時の高校生にしては真面目ね」

 

お世話になってる旅館の人には迷惑をかけられないという奏夜の真面目な姿勢に、志満はクスリと笑みを浮かべていた。

 

「もうすぐ食事の用意が出来るので、荷物をお部屋に置いてくるといいですよ♪」

 

「はい、そうしますね」

 

志満との会話を終えた奏夜は、そのまま自分が泊まっている部屋へと向かい、荷物を全て置いたのであった。

 

そして、それから間もなくして夕食の時間となったので、奏夜は夕食を取り、この日も旅館の温泉に入ってのんびりしていた。

 

「それにしても、楽しい時間はあっという間に過ぎるものだな」

特別に3日という休みを番犬所からもらった奏夜であったが、明日には東京へ帰り、その後はいつもの日常へと戻るのであった。

 

『おい、奏夜。休んでた分、また忙しくなるからな。そこは覚悟しておけよ』

 

「わかってるって」

 

奏夜も休みをもらった分、忙しくなることは理解していた。

 

こうして、奏夜は布団に潜り、ゆっくりと眠りについたのであった。

 

翌日になり、奏夜は朝食を頂いてから、帰り支度を始めたのであった。

 

そこまで荷物を持ってきている訳ではないので、帰り支度はすぐに終わり、奏夜はチェックアウトをするために旅館の玄関へと向かっていった。

 

「あら、もうチェックアウトするんですか?」

 

玄関にいた志満は、荷物を持った奏夜の姿を見つけると、このように声をかけていた。

 

「はい。短い間でしたが、お世話になりました」

 

宿泊代は初日に払っておいた奏夜は、後は旅館を後にするだけなので、志満に一礼していた。

 

「良ければ、また遊びに来てくださいね♪」

 

「はい。いつになるかはわかりませんが、また絶対に来ます!」

 

奏夜はこの旅館が気に入ったため、朗らかな雰囲気でこのように答えていた。

 

こうして奏夜は「十千万」を後にすると、近くにあるバス停へと向かっていった。

 

奏夜はバスが来る時間を狙ってチェックアウトをしたため、1分と待たずにバスが到着した。

 

奏夜はそのバスに乗り込むと、沼津駅へと向かっていった。

 

バスで沼津まで戻ってきた奏夜は、沼津駅から電車に乗り込み、東京へと帰っていった。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

東京へ戻った奏夜は、穂乃果たちに帰って来たことを報告してから、番犬所を訪れた。

 

戻ってきたことをロデルに報告するためである。

 

「おぉ、奏夜。戻ったのですね」

 

休みを使って沼津へ向かうことを予め聞いていたロデルは、戻ってきた奏夜のことを歓迎していた。

 

「はい。お休みを頂き、感謝しています。ありがとうございました」

 

奏夜は休みをもらえたことに対して、ロデルに礼を言っていた。

 

「いえ。その調子だと、休みは満喫できたみたいですね。今日は指令もありませんし、明日からは通常通り、騎士としての務めを果たしてください」

 

「わかりました。失礼します」

 

奏夜はロデルに一礼をすると、番犬所を後にした。

 

奏夜はこのまままっすぐ自宅に戻ろうとしたのだが、奏夜の家の近くである「穂むら」を通り過ぎようとした時に穂乃果に引き止められてしまい、穂乃果の家に行くことになった。

 

既にμ'sのメンバーは集まっており、奏夜の帰りを今か今かと待っていたのであった。

 

奏夜はそのまま沼津でどのように過ごしたのかを話し、盛り上がっていた。

 

こうして、奏夜の3日間である休日は幕を閉じたのであった。

 

翌日からは、またいつもの日常が始まる。

 

しかし、奏夜は魔戒騎士としての本分は忘れてはおらず、騎士としての使命を果たしながら、μ'sのマネージャーとしても頑張っていこう。

 

このように改めて誓うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

……終。

 

 

 




ちょっと駆け足気味ではありましたが、奏夜の休日をお届けしました。

今回は千歌と曜が登場しており、他のキャラも登場させようと考えましたが、そうすると文字数も増え、投稿もさらに遅れそうだったので、見合わせてもらいました。

僕は釣りをしないので、釣りスポットとかはよくわからず、Google先生の力を借りて色々調べさせてもらいました。

そして僕はまだ沼津や内浦に行ったことがないのです。

聖地巡礼したいんですけどね……。

さて、次回からはいくつか番外編を投稿したいと思っています。

次回の番外編はどのような内容になるのか?

それでは、次回をお楽しみに!


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