現在放送されている「牙狼 VANISHING LINE」ですが、かなり面白いですね!
第2話も見ましたが、面白かったです!
今作に登場しているルークの魔戒銃が最先端でいい感じですよね。
この小説に登場するアキトも魔戒銃使いですが、あそこまでの進歩はされられないと思います。
次回以降も期待です!
さらに「ラブライブ!サンシャイン!!」の二期もやってるので、楽しみが多くて困ってます(笑)
さて、今回こそこの章の最終回となります。
前回尊士を撃破した奏夜ですが、μ'sのライブに間に合わせることは出来るのか?
それでは、第55話をどうぞ!
奏夜と穂乃果は、ことりを連れ戻すために統夜の協力によって某国際空港に向かっていたのだが、尊士による妨害を受けてしまう。
奏夜は穂乃果をことりのもとへ行かせるために体を張って、尊士の妨害を阻止する。
その甲斐があったからか、穂乃果はことりを連れ戻すことに成功する。
そして奏夜は、尊士と激しい戦いを繰り広げており、激闘の末、尊士を撃破する。
その影響により、身も心もボロボロになりながら、奏夜は音ノ木坂学院へと向かっていった。
その頃、奏夜の計画していたライブの開始時間が目前に迫っており、μ'sのメンバーと剣斗は、講堂ステージの舞台袖で待機をしていた。
「穂乃果とことりは間に合うの?もう、ライブが始まっちゃうわよ!」
にこはライブ開始がまもなくであることに対して焦りを見せていた。
このままでは、9人揃ってのライブは不可能だからである。
「心配ない。奏夜と穂乃果はきっとことりを連れて戻ってくるさ」
「それはそうだけど!」
剣斗は奏夜たちを信じており、にこだって信じていない訳ではないが、ライブが迫っているため焦っていたのである。
「それよりも凛たちは制服だよ!?」
「ま、スクールアイドルらしいし、このままライブでもいいんじゃないの?」
μ'sのメンバーは全員制服のままなのだが、真姫はこのままライブをしたらどうかと提案していた。
「うむ!それはなかなかイイアイディアだと思うぞ!」
剣斗は制服のままパフォーマンスを行うことを賛成していた。
「それはいいんやけど、本当にもうすぐ時間になっちゃうよ!」
「お客さんを待たせる訳にもいかないわね……」
(奏夜……。穂乃果……)
このまま奏夜と穂乃果がことりを連れ戻して来なければ、7人でライブをせざるを得なくなる。
海未は2人のことを信じてはいるが、不安げに舞台袖から外に繋がっている扉を見つめていた。
すると、待ちに待った瞬間が訪れたのである。
バタン!と力強い扉が開く音が聞こえてくるのと同時に、穂乃果が入ってきた。
「うわぁっ!……っとっとっと!」
穂乃果は扉を開けて中に入った瞬間、勢いあまってバランスを崩してしまっていた。
そして、滑り込むように尻餅をつき、海未たちの前に現れたのである。
「いてて……。お待たせ!」
「穂乃果……!ことり!!」
それと同時にことりも中に入ってきており、その姿を見た海未は歓喜の声を上げていた。
「それに、統夜さんも!」
さらに、統夜も中に入ってきており、花陽は歓喜の声を上げていた。
しかし、ここで1つ大きな疑問が浮かび上がってきた。
「……あれ?奏夜は?一緒じゃなかったの?」
奏夜が現れる様子はないため、絵里は首を傾げていた。
穂乃果と奏夜がことりを連れ戻しに行ったのに、奏夜が戻ってこないのはおかしいと思ったからだ。
「……」
絵里の疑問に答えることをしなかった穂乃果は浮かない表情を浮かべていた。
「俺たちはことりを連れ戻すために空港に向かう途中、尊士に遭遇し、妨害を受けた」
そんな穂乃果に代わり、統夜がその時の状況を説明していた。
統夜の説明を聞き、穂乃果とことり以外の全員は驚きを隠せなかった。
「そ、尊士って確か、奏夜君が手も足も出なかったあの人だよね……?」
「そうだ。そして、奏夜は俺と穂乃果をことりの元へ行かせるために尊士を抑えてくれたんだ」
「奏夜……大丈夫かしら……?」
「そうね。1度は叩きのめされた相手だもの……。いくら奏夜でも勝てるかどうか……」
絵里と真姫は、奏夜が尊士に手も足も出ずに敗れてしまった様子をみているため、不安げな表情をしていた。
そんな中……。
「大丈夫だよ!そーくんはあの尊士って人をやっつけて、私たちのライブを見にきてくれるよ!」
「ことり……」
空港から学校へ向かう車内で、統夜の魔導輪であるイルバを介して奏夜の強い思いを聞いていたことりは、凛とした表情でこのように言い切っていた。
「そうだよ!だってそーくんは、私たちμ'sを導いてくれるマネージャーで、私たちだけじゃない。多くの人を守る「守りし者」なんだもん!」
そして、穂乃果もまた、自分が道を見失った時も見捨てることなくここまで引っ張り上げてくれた奏夜に心から感謝をしていた。
それではなく、「守りし者」というキーワードをあげており、それを聞いたμ'sのメンバーは穏やかな表情をしていた。
「だから、そーくんを待とうよ!ライブはそれからの方がいいもん!」
穂乃果は奏夜がここへ来るまではライブの開始は待ってほしいと提案するが……。
「……私たちもそうしたいですが、もうライブ開始の時間になります」
「そうね。お客さんを待たせる訳にはいかないわ」
海未と絵里も、奏夜を待ちたいというのが本音ではあったが、自分たちがスクールアイドルである手前、自分たちの都合でお客さんを待たせる訳にはいかないと判断していた。
「そんな……!」
穂乃果がそんな2人の言葉に肩を落とす中、統夜は笑みを浮かべていた。
「……だったら、奏夜が来るまで持たせれば大丈夫だよな?」
「それはそうですが、いったい何を……」
統夜は何かを企んでおり、不敵な笑みを浮かべると、剣斗のことを見ていた。
「……剣斗!プランBを実行するぞ!」
「うむ!私もちょうど同じことを考えていたところだ!」
統夜と剣斗は「プランB」なるものを実行に移そうとしており、剣斗はステージの方へと向かっていった。
「お、小津先生!」
海未が剣斗を引き止めるも手遅れであり、統夜は1度扉から外へ出ると、まもなくしてギターケースを手にして戻ってきた。
「と、統夜さん……?まさかとは思いますが……」
この時点で、絵里は統夜と剣斗の企みを察したのであった。
「ああ。これはスクールアイドルのライブだけど、前座は何でも構わないだろ?」
統夜はしれっと答えながら、ギターケースを開け、ギターの準備を行っていた。
それと同時に、剣斗がステージに現れ、観客たちは少しだけ戸惑いを見せていた。
『……みんな!今日はμ'sのライブに来てくれて、本当にありがとう!私は小津剣斗。μ'sが所属しているアイドル研究部の顧問をしている!』
剣斗はマイクを手に取ると、自分が何者なのか自己紹介をしていた。
剣斗がアイドル研究部の顧問であることは知れ渡っていることなので、生徒たちは驚くことはなかったのだが、戸惑いは見せていた。
『本来ならばこのままμ'sのライブといきたいところなのだが、ライブの準備がもう少しかかりそうなのだ!』
剣斗は奏夜を待っているためライブが出来ないとは話さず、まだ準備がかかりそうだと説明をしていた。
『そこでだ。私から1つ提案がある。……このままライブが始まるまで待つのはみんなも我らも心苦しい。μ'sのライブの前に、前座による演奏をしたいと思っているが、どうだろう?』
剣斗の提案に戸惑いを見せる観客たちであったが、前座がどのようなものが行われるか興味を持ったからか、大きな拍手を送っていたのであった。
『……みんな、ありがとう!それではさっそく行こうか!統夜!』
剣斗は舞台袖の方を向き、統夜の名前を呼ぶと、ギターの準備を整えた統夜がステージに現れたのであった。
統夜が登場したことで、「あの人誰だろう?」といった戸惑いの声や、「格好いい!」と容姿を褒める声が聞こえてきた。
それだけでは終わらず剣斗が10秒ほど舞台袖に下がると、まるでこの展開を読んでいたかのようにギターを持って現れたのであった。
剣斗がギターを弾けることを初めて知った音ノ木坂の生徒たちのテンションが最高潮になっていたのであった。
「小津先生ー!!」
「格好いい!!」
モデルのような容姿に、生徒思いな熱い心を持つ剣斗は生徒から絶大な人気を得ており、密かにファンクラブが存在する程だった。
そんな剣斗がバンドの花形であるギターを弾くというのは、生徒たちを興奮させるには十分だった。
「これは、上手くいきそうだな」
統夜は剣斗にしか聞こえないくらいの声で剣斗に語りかけていた。
「うむ。この調子で奏夜を待とうではないか」
そんな統夜の言葉を聞いた剣斗は、力強く答えていた。
『さぁ、μ'sに負けないパフォーマンスを見せてやろうぜ!剣斗!』
『うむ!そうだな、統夜!……さぁ、始めようか!』
剣斗がこのように宣言をすると、音響を担当しているヒデコが何かを再生し始めた。
剣斗は予めヒフミの3人と入念な打ち合わせをしており、穂乃果たちが遅れる場合は自分が演奏するため、ある曲を再生して欲しいと話していたのである。
ヒデコが何かを再生すると、ドラムスティックでリズムを刻む音が聞こえてきた。
それに合わせて統夜と剣斗はギターを演奏したのであった。
使用曲→Bright hope(統夜&剣斗デュエットver)
現在、統夜と剣斗が演奏している曲は、「Bright hope」という、統夜が高校時代に度々演奏していた曲であった。
この曲はもともと、プロを目指すミュージシャンであるSHUと呼ばれる人物が作った曲である。
この曲を演奏していた頃は偶然拾ったホラーの鱗をピック代わりにしており、それが効いているのか、プロデビュー目前まで来ていたのであった。
しかし、ホラーを探す統夜と出会い、音楽の本当の大切さに気付いたSHUは、ホラーの鱗の力に頼らず、自分の力のみで再スタートしようと誓っていた。
この曲はその直後に統夜のバンドである「放課後ティータイム」の曲として使って欲しいと託され、今に至る。
ちなみに現在SHUは、努力が実を結んだからか、売れている訳ではないが、プロデビューは果たしているのであった。
そんな「Bright hope」を、統夜と剣斗によるツインギター+ツインボーカルにて演奏しているのであった。
μ'sのライブを観に来た観客たちは、前座である統夜たちの予想以上のパフォーマンスに大いに盛り上がっていた。
「アハハ……。凄い盛り上がりだね……」
μ'sのメンバーとしても、この盛り上がりは予想外であり、ことりが苦笑いをしていた。
「まぁ、これなら奏夜が来るまでの時間稼ぎにはなるだろうけど……」
「スクールアイドルのライブなのに、ロック!?あー!もう!イミワカンナイ!」
絵里は2人の演奏が良い時間稼ぎになると考えていたが、スクールアイドルのライブには似つかわしくないロックな演奏に、真姫は頭を抱えていた。
「そーくん……。早く来て……。私たちはそーくんを待ってるんだよ……?」
穂乃果はまるで祈るかのように小さな声でこのように呟き、奏夜が現れるのを待っているのであった。
※※※
そんな中、奏夜が音ノ木坂学院に到着したのは、ちょうど統夜と剣斗による演奏が始まった直後であった。
「くっ……。急いで講堂まで行かないと……」
奏夜はボロボロな体に鞭を打ちながら、どうにか講堂へと向かっていった。
そして、どうにか講堂にたどり着いたのだが、講堂は既に異様な盛り上がりを見せており、それが外まで聞こえてきた。
「!?この盛り上がりは穂乃果たちの……?いや、違う。これは……!」
今演奏されているのがμ'sの曲ではないことにすぐ気付いた奏夜は、急いで講堂の中に入るのであった。
そして目に飛び込んできたのは、ギターを奏でる統夜と剣斗の姿であった。
「!?統夜さん……剣斗……」
奏夜が現れた時は、ちょうど曲の終盤であり、統夜と剣斗は、ギターを奏でながら、講堂に現れた奏夜を笑みを浮かべていた。
そして曲が終わり、客席からは大きな拍手と歓声があがっていた。
『……奏夜。ようやく来たみたいだな……』
ここがステージであることをまるで忘れているかのように、剣斗は普通に語りだしていた。
「剣斗……。俺は……!」
『あいつらが待ってる。早く行ってやれ』
奏夜は自分を待つために時間を稼いでくれた2人に感謝していたのだが、そんな言葉を統夜が遮っていた。
「……はい!」
この時の奏夜は痛みがどこかへと消え去っており、軽い足取りでステージの舞台袖へと向かっていった。
まもなくμ'sのライブが行われるため、統夜と剣斗はそれまでの時間稼ぎを行っていたのであった。
「……!奏夜!!」
舞台袖に奏夜が姿を現し、絵里は歓喜の声をあげていた。
「……悪い。遅くなった」
奏夜は穏やかな表情で微笑みながら自らの無事を報告するのであった。
「まったく……。奏夜のせいでライブが遅れてるんだからね」
「その通りよ。それに、いつも言ってるじゃない。レディを待たせるなって」
真姫とにこは奏夜の無事に安堵していたのだが、そんな本音を隠し、ツンとした態度を取っていた。
そんな2人の態度に、奏夜は苦笑いをしていた。
「まったく……。よく言うわ。奏夜君のことが心配で誰よりもハラハラしてたのになぁ♪」
「「うっ、うるさいわね!」」
希はニヤニヤしながら真姫とにこのことをからかっており、2人はムキになって反論していた。
「アハハ……。まぁまぁ♪」
ムキになっている2人を、ことりが苦笑いしながらなだめていた。
「何かいつも通りの凛たちに戻って安心したにゃ♪」
「確かに……そうですね……」
奏夜を含めて10人揃ってこのように軽口を叩ける光景に凛と海未は安堵していたのであった。
「それよりも奏夜君、その傷……」
花陽は、全身ボロボロな奏夜のことを心配そうに見つめていた。
「心配はいらないさ。この程度はかすり傷だよ」
奏夜は花陽を心配させないために強がっていたのだが、実は体の痛みはかなりのものであり、動くのもやっとなのである。
「そーくん……。勝てたんだね。あの人に……」
「まぁな。だけどそれは俺1人の力じゃない。みんなの力があったからこそ、俺はあいつに勝てたんだよ」
奏夜はμ'sの存在が、今回の勝利に繋がったことを語っており、穂乃果たちにとって、そんな奏夜の言葉は何よりも嬉しかった。
「それはともかくだけれどね……。奏夜、その傷のこと、後でじっくり聞かせてもらうからね」
絵里はライブが終わった後、奏夜の傷について追求しようと考えていた。
「お、お手柔らかにお願いします……」
厳しい追求は必至であると判断した奏夜の表情は引きつっており、そのまま苦笑いをしていた。
「と、とりあえず!さっそくライブを始めるぞ!統夜さんと剣斗が時間稼ぎをしてるけど、それも長くは持たないからな!」
奏夜は話題を切り替えるために、目の前のライブの話をしていた。
時間稼ぎに限界があるのは本当のことであるからである。
「まぁ、確かにそうやね。それでは、部長のにこっちから一言」
「えぇ!?私!?」
希に無茶振りをされ、にこは動揺を露わにしていた。
しかし……。
「……なーんてね。今回はバッチリ考えてあるわ」
先ほどの動揺はブラフであり、本当はこのような振りが来ることを予想していたにこは、挨拶を用意していたのである。
それを確認した穂乃果たちは円になると、ピースをした状態の指を前に突き出し、それが合わさることで1つの形になっていた。
奏夜も円に加わっているため、2本の指×10人分により、形が形成されていた。
「……今日、みんなを1番の笑顔にするわよ!」
にこの宣言を聞き、奏夜たちは無言で頷いていた。
そして……。
「……1!」
「2!」
「3!」
「4!」
「5!」
「6!」
「7!」
「8!」
「9!」
穂乃果、ことり、海未、凛、花陽、真姫、にこ、希、絵里の順番で次々と数字を言っていった。
そして、絵里までが言い切ると、穂乃果たちは穏やかな表情で一斉に奏夜のことを見ていた。
そんな穂乃果たちのことを見た奏夜もまた、穏やかな表情で微笑みながら頷いていた。
すると……。
「……10!」
奏夜もまた、数字を言っており、この瞬間、9人の女神と1人の少年が揃ったことが確認されたのである。
「μ's!!」
『ミュージック……スタート!!』
奏夜たちμ'sは、心を1つにするためのかけ声を行っていた。
ステージからその掛け声を聞いていた剣斗は笑みを浮かべていた。
『さぁ、みんな!待たせたな!いよいよ音ノ木坂学院が誇るスクールアイドル、μ'sの登場だ!』
剣斗がこのように宣言をすると、観客の盛り上がりは最高潮になっていた。
そして、穂乃果たち9人はステージに1列に並ぶと、剣斗と統夜はステージから退散した。
「皆さん!こんにちは!私たちは、音ノ木坂学院のスクールアイドル……μ'sです!」
穂乃果はマイクを一切使わず、地声で挨拶を行っていた。
ライブの冒頭に挨拶するのは打ち合わせではなかったのだが、穂乃果は伝えたい思いがあるみたいだった。
「私たちμ'sの初ライブはこの講堂でした!その時、私は思ったんです!いつか……ここを満員にしてみせるって!」
μ'sのファーストライブは観客がほとんどいない完敗からのスタートであったが、穂乃果はその時から講堂を満員にすることを目標としていた。
「一生懸命頑張って、今、私たちがここにいるこの想いをいつかみんなに届けるって!」
穂乃果の心の中に抱いている強い想いは、μ's結成当初からくすぶることはなく、より一層強くなっていたのである。
「その夢が今日……。叶いました!だから、私たちはまた駆け出します!新しい夢に向かって!」
穂乃果は1度は活動休止をしてしまったμ'sの再スタートをここで宣言したのであった。
「これから歌う曲は、そんな私たちの再スタートに相応しい曲です!」
『聞いて下さい!』
μ'sの9人がこのように宣言をすると、音響を担当しているヒデコが曲の再生を始めたのであった。
使用曲→START:DASH(9人ver)
穂乃果たちがライブの曲に選んだのは、ファーストライブでも演奏した「START:DASH」だった。
あの時は2年生組の3人のみだったが、現在は9人。
人数が増えたことにより、そのパフォーマンスはさらに質の高いものとなっていた。
パフォーマンスの質が上がったのは、人数が増えただけではなく、穂乃果たちの今までの努力が実を結んだからこそなのである。
「みんな……成長したな……」
穂乃果たちのパフォーマンスを舞台袖で見ていた奏夜はしみじみと呟いていた。
奏夜はμ's結成当初から穂乃果たちのことを見守っており、その成長も挫折も目の前で見てきたのである。
「成長したのは穂乃果たちだけではあるまい?お前も成長したのではないか?奏夜」
「俺も成長?したのかな……」
統夜と共に舞台袖に移動した剣斗は奏夜が魔戒騎士としてだけではなく、男として成長したことを感じていた。
「うむ!顔付きが今まで以上に凛々しくなっている。男の顔になったと思うぞ、奏夜」
「俺もそう思う。お前はμ'sのマネージャーとしてだけじゃない。魔戒騎士としても大きな挫折を味わい、這い上がってきた」
統夜もまた、後輩騎士である奏夜の成長を実感しており、その要因を推測していた。
「だからこそ、お前は大きく成長出来たんだ。あの尊士を倒せる程にな」
「……はい!」
剣斗と統夜。2人から称賛の言葉を受けた奏夜は、これまでに見せたことのない凛々しい表情で返事をしていた。
「さぁ、奏夜。お前と共に成長したμ'sのパフォーマンスをその目に焼き付けろ。これからお前たちはさらに羽ばたいていくんだろ?」
「はい!」
奏夜はこのように答えると、μ'sのパフォーマンスに集中していた。
穂乃果が冒頭に言っていた通り、講堂は満員になっており、音ノ木坂学院の生徒だけではなく、一般のお客さんも来ていた。
穂乃果の妹である雪穂や、絵里の妹である亜理沙も来ており、それだけではなく、穂乃果の両親も駆けつけていた。
さらにはことりの母親である理事長もライブを見守っていた。
その表情は穏やかであり、娘であることりが留学に行かずに済んでホッとしたようにも見える。
ライブを見守っていると、真姫の母親もμ'sのライブの見学に訪れており、理事長と真姫の母親は互いの顔を見て驚きを隠せずにいた。
実は、理事長と真姫の母親は旧友であり、久しぶりの再会を果たしたのであった。
このライブは多くの人に見てもらおうという剣斗の粋な計らいによって生配信されており、μ'sのことを応援してくれた人たちはこのライブをパソコンやスマートホン越しで眺めていた。
統夜の大切な仲間である「放課後ティータイム」のメンバーたちも、大学の軽音部の部室で、ライブの様子を見守っていた。
そして、奏夜たちは知らなかった。
スクールアイドルの祭典であるラブライブを制し、ナンバーワンアイドルとなった「A-RISE」の3人もこのライブを見ており、穂乃果たちのパフォーマンスを見て驚いていることに。
こうして、多くの人に見守られながら、「START:DASH」の演奏は終了し、μ'sの再スタートのライブは終了したのであった。
それと同時に、スクールアイドルのサイト内では、登録が抹消されていた音ノ木坂学院のスクールアイドルグループ「μ's」が新たに登録されていたのである。
ライブが終了したことにより、講堂はこの日1番である大きな拍手と歓声に包まれていた。
それぞれの姉がパフォーマンスをしている雪穂と亜理沙は目をキラキラと輝かせており、穂乃果の母親も、娘の凛とした姿に喜んでいた。
穂乃果の父親に至っては、声をあげずに号泣する程感動していたのである。
そして、実際にパフォーマンスを行っていた穂乃果たちも、ステージ上でライブの成功を喜んでいたのであった。
「……皆さん、ありがとうございました!私たちμ'sはこれから、新たな夢に向かって走り出します!これからも私たちを応援、よろしくお願いします!」
『よろしくお願いします!』
穂乃果がライブ終了の挨拶をすると、それに続いて全員でこのように挨拶をして、ステージの幕は降りていった。
こうしてライブは終了したのだが、ステージの幕が降りても、しばらくは拍手と歓声は鳴り止まなかったのであった。
「みんな……。最高のライブだったぞ」
最高のパフォーマンスを終えた穂乃果たちを、奏夜は穏やかな表情で微笑みながら出迎えていた。
そんな奏夜の姿を見た穂乃果たちの表情は、ぱぁっと明るくなっていた。
そして……。
「そーくん!」
穂乃果は満面の笑みで奏夜に駆け寄り、そのまま奏夜に抱きついたのであった。
「うぉっ!?っとと……。おいおい、いきなり抱きつくなよなぁ……」
奏夜は穂乃果が抱きついてきたことが恥ずかしかったので頬を赤らめるのだが、それを悟られないために呆れ気味な口調になっていた。
「ヤダよ!だって、これからもこうやってみんな揃って活動が出来るのが嬉しいんだもん!」
穂乃果はこれまでにない程の高揚感を覚えており、それを奏夜にぶつける形となったため、奏夜に抱きついたのであった。
「ったく……。お前ってやつは……」
奏夜としては抱きつかれるのは恥ずかしかったのだが、満更ではなかった。
そんな中、海未とことりは互いに顔を見合わせると、笑みを浮かべていた。
そして、2人もまた奏夜の方へ向かっていくと、2人揃って奏夜に抱きつくのであった。
「ちょ!?お前らもかよ!」
「うるさいですよ!いいじゃないですか、たまにはこういうのも」
「そうだよ♪私もみんなとこうやっていられるのが嬉しいんだもん!」
海未とことりが奏夜に抱きついたのも、高揚感から来たものであった。
そんな状況を、残りの6人もジッと眺めていた。
そして、6人はアイコンタクトを取ると、奏夜に怪しげな笑みを向けていた。
「お前ら……まさか……」
奏夜は嫌な予感がしたからか顔が引きつっていた。
奏夜の予感は当たったのか、6人は奏夜に向かってきたのである。
「いぃ!?」
6人もまた、一斉に奏夜に抱きつくのだが、9人に抱きつかれてバランスが保てるはずもなく、奏夜はその場で倒れ込んでしまい、穂乃果たちもドミノ倒しのように倒れていった。
その結果、奏夜は9人に押しつぶされそうになっていた。
穂乃果たちはこの状況にポカーンとしていたのだが、しばからくすると、この状況がおかしいからか、笑い出していたのであった。
穂乃果たちが笑うのを見ていた奏夜もまた思い切り笑っており、奏夜たちは思い切り笑い合っていた。
そんな奏夜たちの様子を、統夜と剣斗は穏やかな表情で見守っていた。
特に統夜は、この光景を見て感慨深いものを感じていたからか、「ふっ……」と笑みをこぼしていた。
『おい、統夜。お前さんまでどうしたんだ?急に笑い出して』
そんな統夜を見かねたからか、相棒であるイルバが語りかけてきた。
「別に?ただ、高校の時のことを思い出してただけさ」
統夜は奏夜たちが笑い合うのを見て、高校生の頃のことを思い出していたのである。
『なるほどな。お前さんもこんなことがしょっちゅうあったもんな』
イルバもまた、当時のことを思い出し、こう呟いていた。
(……そうだ……。俺は、この笑顔を守りたいって思ってたんだ。俺はこれからも、みんなと、みんなの笑顔を守ってみせる。……守りし者として)
奏夜は心の中で、このような誓いを立てていたのであった。
(統夜さん。俺、やっと理解出来ました。あの時あなたが伝えたかった、守りし者とはなんなのかってことが……)
奏夜は初めて統夜と出会った時、統夜は守るべき大切な存在があれば守りし者とはなんなのかが理解出来ると話をしていた。
その当時の奏夜は魔戒騎士になったばかりだったからか、その言葉の意味を理解出来なかった。
しかし、μ'sというかけがえのない存在が出来た今の奏夜は、あの時の言葉をよく理解していたのである。
(だからこそ、俺は魔戒騎士としてもっともっと成長してみせます。……守りし者として……)
奏夜はこのように誓いを立てながら、統夜のことをジッと見ていた。
そして統夜もまた、そんな奏夜の視線を感じていたのである。
(……奏夜。本当に成長したな。初めてあいつと出会った時、あいつに言ったことを奏夜は理解したみたいだな)
統夜は、軽音部という守りたい存在があったからこそ、魔戒騎士として強くなれたし、多くの強大な敵を討滅することが出来た。
それを統夜は後輩である奏夜にも伝えていたが、当時はピンと来てなかったみたいだった。
(守りし者がなんなのか。それを理解したあいつなら、これからの試練も乗り越えることは出来るだろうさ)
統夜は奏夜の成長を実感しており、奏夜であればこれから訪れるであろう試練も乗り越えるられると確信していた。
(だからこそ、ジンガの野望は阻止しなくちゃな……。後輩である奏夜にばかり良い格好はさせない)
統夜は、先輩騎士として、これからの脅威となるジンガを必ず討滅することを心に誓っていた。
こうして、奏夜は最大の障害の1つである尊士を倒し、ことりを連れ戻したことにより、9人でのライブも大成功を収めた。
しかし、大きな問題が解決した訳ではない。
奏夜はこれからも、大切なものを守るために戦い続けるのだ。
……魔戒騎士として。そして、「守りし者」として……。
……崩壊と再生の絆編・終
前作主人公である統夜がいい感じで活躍しましたね!
若干ではありますが、「けいおん!」要素も出せたと思います。
そして、剣斗もギターが弾けるという意外な事実が判明。
これは人気も出るよね。容姿が良くて生徒思いでギターも弾けてって……(笑)
そして、奏夜もなんとか間に合い、μ'sのライブも無事に終わりました!
最後は羨ましい展開となりますが、最初に言っておきます。
ハーレム展開にはしないつもりです。
個人的にハーレム展開はどうかなと思っているので。
まぁ、そんな展開は理想的といえばそうなんですけどね(笑)
そんな感じで、「崩壊と再生の絆編」は終了しました!
次回は、今更かもですが、UA20000記念作品を投稿しようと思っています。
どのような話になるのか?期待していてください!
そして、それが終了後は番外編をいくつか投稿するので、二期編スタートはしばらく先になると思います。
そこはご了承ください。
それでは、次回をお楽しみに!