牙狼ライブ! 〜9人の女神と光の騎士〜   作:ナック・G

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お待たせしました!第54話になります!

本来であれば、今回が「崩壊と再生の絆編」の最終回となる予定だったのですが、20000字を遥かに超えてしまったため、話を区切らせてもらい、三部構成とさせてもらいました。

前編中編後編を合わせたら40000字近くになるだろうな……。(汗)

アニメ一期編が佳境に入ったので、それだけ書きたいことがあったのです。

さて、今回は中編となってしまいましたが、今回は奏夜と穂乃果がことりを連れ戻すために空港へと向かいます。

奏夜たちに邪悪な影が忍び寄っていますが、それを乗り越えることは出来るのか?

それでは、第54話をどうぞ!




第54話 「九人 中編」

ついにことりが日本を発つ当日となってしまった。

 

そんな中、奏夜はことりを連れ戻し、9人でライブを行うことを企んでいた。

 

そのための下準備を整え、この日、その旨を穂乃果に伝え、ギクシャクしていた海未との仲直りをさせた。

 

こうして、問題が1つ解決したところで、奏夜は穂乃果と共にことりを連れ戻すために空港へと向かっていた。

 

そんな中、偶然にも車に乗る統夜に声をかけられた2人は統夜の車に乗り込み、空港へと向かうのであった。

 

そして現在、奏夜たちは空港に続く道を走っていたのである。

 

「……驚いたろ?俺がいきなり車で現れてな」

 

「はい……。だけど統夜さん、どうしてここに……?確か統夜さんは元老院に報告に行ったあと、桜ヶ丘に戻ったんですよね?」

 

奏夜が指摘する通り、統夜は学園祭でのトラブルの後、元老院に戻ってこれまでの事件の顛末を報告しており、その後桜ヶ丘に帰っていた。

 

「ああ。お前の言う通り、俺は桜ヶ丘に戻って、しばらくは紅の番犬所の管轄内で仕事をしてたさ。いつまでも戒人や幸人に負担をかけさせる訳にはいかんからな」

 

統夜の言っている戒人というのは、堅陣騎士ガイアの称号を持つ黒崎戒人(くろさきかいと)のことであり、戒人は統夜の良きライバルであり、親友である。

 

そして、幸人というのは、統夜が桜ヶ丘高校を卒業して間もなく配属された魔戒騎士である楠神幸人(くすがみゆきと)のことである。

 

幸人は統夜や戒人とは違ってソウルメタルで作られた弓矢で戦う魔戒騎士であり、とある称号を受け継ぐ魔戒騎士である。

 

幸人はエリート意識が高く、最初は統夜や戒人と度々衝突していたのだが、今では大切な盟友となったのであった。

 

「そうですか……。戒人さんも幸人さんも元気そうなんですね……」

 

奏夜は戒人だけではなく、幸人とも面識があるため、彼らのことを思い出していた。

 

「それに、大体の事情は剣斗から聞いた。だからこそ協力しようと思ってな」

 

「そうだったんですか……」

 

統夜は桜ヶ丘にいる間も、剣斗から奏夜たちの近況は聞いており、穂乃果がμ'sを辞めて再び戻ってきたことや、ことりの留学のことなど、事細かに話を聞いていた。

 

そして、今日が日本を発つ日だということも聞いており、奏夜が留学しようとしていることりを連れ戻し、ライブを行うことも聞いていた。

 

だからこそ、奏夜に協力するために再び東京にやって来たのである。

 

「それよりも統夜さん、この車はどうしたんですか?」

 

穂乃果は、1番気になっていることを統夜に聞いていた。

 

「ああ、この車か?一応は俺の車だよ。自分の金でちゃんと買ったんだぜ?……まぁ、ムギのコネは使わせてもらったけどな」

 

統夜は去年の夏頃、バイクだけではなく車の免許も必要になると感じたからか、魔戒騎士の使命の合間に自動車学校へ通い、免許を取得したのである。

 

それからまもなく、統夜は紬の紹介してくれたディーラーでこの車を購入したのだが、紬の口利きのおかげで、本来の価格より格段に安くこの車を買うことが出来た。

 

「え?この車、統夜さんが買ったんですか!?でも、車って高いんじゃ……」

 

「確かにな。だけど、一応は一括で購入したんだぜ。それなりに稼いでるしな」

 

「!!?」

 

統夜が一括でこの車を購入したと知り、穂乃果は驚愕していた。

 

「アハハ……。流石は統夜さん……」

 

統夜は20歳ながらも一流の魔戒騎士として、多くのホラーを討滅してきたため、番犬所からはかなりの額を支給されている。

 

そのため、年収で換算したらかなりの額を稼いでいる。

 

そのことを知っている奏夜は苦笑いをしていた。

 

「さて、空港までもう少しなんだ。急ぐぞ!」

 

統夜は事前に空港までのルートを下調べしており、近道もバッチリ押さえていた。

 

そのため、渋滞に巻き込まれることもなく、スムーズに進んでいた。

 

そして、急いで空港へ向かうために統夜はさらにアクセルを踏み込もうとしていた。

 

 

 

 

 

 

……その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

ドン!!

 

 

 

 

 

 

 

車の屋根から衝撃が伝わってくると、車が少し揺れてしまった。

 

「きゃっ!?」

 

「うぉっ!?」

 

「くっ……!」

 

その衝撃に穂乃果と奏夜は驚き、統夜は衝撃によってブレた車の進路をハンドルを切って修正していた。

 

「な、なんだ!?」

 

奏夜は慌てて窓を開けて上を覗き込むのだが、車の上にいる存在を確認すると、息を飲んでいた。

 

「そ……尊士!!」

 

「えぇ!?何でこんなところに?」

 

どうやら現在統夜の車の上にいるのは尊士のようであり、その事実に穂乃果は驚愕していた。

 

「まさかとは思うが、俺たちが空港へ行くのを邪魔しに来たのか……?」

 

統夜はこのように分析をするのだが、何故そこまでのことをするのか理解出来なかった。

 

そして、統夜の分析通り、尊士は奏夜たちの邪魔をしに来ており、素早い動きで移動しつつ、統夜の車に飛び乗ったのである。

 

「理由はわからんが、このまま邪魔されたら間違いなくことりを連れ戻せないだろうな」

 

「そんな!?」

 

尊士による妨害は明らかにことりを連れ戻すための障害となっているため、穂乃果は悲痛な声をあげていた。

 

「奴を振り払うぞ!2人とも、しっかり掴まってろ!」

 

このように宣言するなり、統夜はハンドルを右に左にと大きく切っており、車体を大きく振らせていた。

 

「きゃあっ!!」

 

「っとと……」

 

あまりにもアクロバティックな運転になってしまったからか、穂乃果は悲鳴をあげており、奏夜は動じることなく尊士の動向を見守っていた。

 

統夜の荒々しい運転も虚しく、尊士は力強く踏ん張っているからか、振り落とすことは出来なかった。

 

「くそっ!ダメか!」

 

尊士を振り落とすことが出来ず、統夜は舌打ちをしていた。

 

『おい、統夜!このままじゃまずいぞ!奴は強引にでもこの車を止めさせるつもりだ!』

 

統夜の魔導輪であるイルバが心配するように、このまま尊士がタイヤを潰すなどの行動を起こし、車を停車させてしまっては、間違いなく間に合わなくなり、奏夜の計画が瓦解してしまう恐れがあった。

 

「そんなこと……!させるかよ……!」

 

それだけは絶対に阻止したい奏夜は、決意に満ちた表情をしていた。

 

そして……。

 

「……統夜さん。穂乃果を必ずことりの元へ送り届けて下さい」

 

「それはもちろんだけど、お前、まさか……!」

 

統夜は奏夜がこれから何をしようとしてるのかを察しており、奏夜はその答え合わせをすることなく、ニヤリと笑みを浮かべていた。

 

「そーくん、いったい何をするつもりなの?」

 

そして、奏夜が何をしようとしているのか理解出来ない穂乃果は、そんな疑問を奏夜に投げかけていた。

 

「……こうするのさ!」

 

奏夜は自分が座っている助手席側の後部座席の窓を全開にすると、そこから身を乗り出し、尊士のいる車の上へと飛んでいった。

 

「えぇ!!?」

 

奏夜の予想外な行動に、穂乃果は目を大きく見開いて驚愕していた。

 

「……!小僧、貴様……!」

 

「貴様に、穂乃果とことりの仲直りの邪魔はさせない!!」

 

奏夜はこう言い放つと、レスリング選手顔負けのタックルを尊士に仕掛け、尊士と共に車から飛び降りていった。

 

そして、2人はそのまま少し先にある土手まで落ちていった。

 

「そーくん!」

 

奏夜が体を張って尊士を追い払ったのを見て、穂乃果は思わず声をあげていた。

 

「穂乃果、行くぞ!奏夜の決死の思いを無駄には出来ないだろ?」

 

「……っ!……はい!」

 

「それじゃあ、しっかり掴まってろ!」

 

こうして邪魔者がいなくなったことを確認した統夜はアクセルを踏み込み、車の速度をあげて空港へと向かっていった。

 

そして、尊士は統夜の車が走り去るのを見送ることしか出来なかった。

 

「おのれ、小僧……!邪魔をしおって……!」

 

ジンガに与えられた命令を奏夜に妨害されてしまい、尊士は怒りを露わにしていた。

 

「それはこっちの台詞だ!これ以上、お前たちに邪魔をさせる訳にはいかない!」

 

奏夜はこのように言い放つと、魔戒剣を抜き、尊士のことを睨みながら構えていた。

 

「愚かな……。貴様のような未熟な魔戒騎士がこの私に勝てると思うな!」

 

尊士は奏夜と戦った時に常に奏夜を圧倒していたため、奏夜を見下すようなことを言っていた。

 

「俺を……。今までの俺と同じと思うな!」

奏夜はこのように言い放ち、尊士のもとへ向かっていった。

 

そして、尊士は格闘戦の構えをすると、奏夜を迎撃する準備を整えていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

奏夜が妨害をして来た尊士を抑えてくれたため、統夜と穂乃果は予定よりも早く空港に到着することが出来た。

 

「……穂乃果!俺はまたすぐ出発出来るようにここで待機してる。だから、急いでことりを連れ戻して来い!」

 

「はい!ありがとうございます、統夜さん!」

 

穂乃果はここまで自分を運んでくれた統夜に感謝の言葉を送ると、車を飛び出してことりのもとへと向かっていった。

 

「……頑張れよ、穂乃果」

 

統夜は穏やかな表情でこのように呟くと、いつでも車を出せるように待機をしていた。

 

そして、同じ頃、ことりは諸々の手続きを済ませ、現在は椅子に座り、飛行機の搭乗開始の時を待っていた。

 

(……そーくん。私と穂乃果ちゃんを会わせるって言ってたけど、無理だったんだね……)

 

奏夜はことりと穂乃果を仲直りさせるため、2人を会わせると言うことを話していたのだが、現在自分が空港にいるため、それは実現出来なかったと予想していた。

 

(……穂乃果ちゃんやみんなに会いたいなぁ……。でも、もし会っちゃったら、私は……)

 

ことり自身も奏夜たちに会いたいと思っていたし、先ほど見送りに来ていた母親にも会わなくてもいいのかと問いかけられたのだが、「会ったら泣いちゃうから」とだけ答えて会おうとしなかった。

 

(それに、私が迷ってたせいで、穂乃果ちゃんやみんなを傷つけちゃった……)

 

ことりも、少し前の穂乃果のように、自分の決断が周囲を傷つけてしまったと自責の念に駆られていた。

 

(だから……。これで良かったんだよ……。だって、服飾の仕事は本当に私の夢なんだから……)

 

ことりは自分の夢を持ち出し、このように自分を言い聞かせていた。

 

そうしなければ、後悔と自責の念に押し潰されそうになるから。

 

そんなことを考えているうちに、ことりの乗る飛行機の搭乗手続き開始のアナウンスが流れていた。

 

(……時間か。もう行かなきゃ)

 

ことりはゆっくりと椅子から立ち上がり、そのまま搭乗手続きを行うために飛行機の搭乗口に向かおうとしていた。

 

……その時だった。

 

「……ことりちゃん!!」

 

急に誰かにそう呼ばれて腕を掴まれたため、驚きながらその方向を見たのだが、その人物を見てことりはさらに驚愕していた。

 

「ほ、穂乃果……ちゃん……?」

 

その人物は、奏夜や統夜の協力によって空港までたどり着いた穂乃果であった。

 

「穂乃果ちゃん……。どうして……?」

 

穂乃果がここに来ていることに疑問を抱いていたことりだったが、そんなことを考える暇もなく、穂乃果はことりに抱き付いていた。

 

「ことりちゃん……!ごめんね!」

 

穂乃果はまず最初に色々あった出来事に対しての謝罪をしていた。

 

「私、スクールアイドルをやりたいの!ことりちゃんと一緒にやりたいの!いつか別の夢に向かっていかなきゃいけなくなることはわかってる!だけど、行かないで!」

 

穂乃果は今自分の思っている本音をことりにぶつけたのであった。

 

ことりはそんな穂乃果の本音が嬉しかったのかホッとしたのか、その瞳からは涙が溢れていた。

 

「うぅん……。私、自分の気持ち……。わかってたのに……!」

 

ことりの本音は、留学など行かず、もっともっと穂乃果やμ'sのメンバーといたいというものであった。

 

しかし、留学のことを穂乃果に相談出来ず意固地になってしまい、話がここまでこじれてしまったのである。

 

奏夜の真っ直ぐな言葉を聞いた時、ことりの心は揺れていたのだが、折れることはなかった。

 

しかし今、穂乃果から「行かないで」と言われるのはことりも望んでいたことであり、ここでようやくことりは自分の気持ちに素直になれたのであった。

 

「ことりちゃん、帰ろう。μ'sのみんなも待ってるよ!」

 

「穂乃果ちゃん……。うん!」

 

抱き合っていた穂乃果とことりは離れると、穂乃果はこのように宣言し、ことりは満面の笑みで返していた。

 

この時ことりには一切迷いはなく、本気で留学の話をなかったことにして、大切な仲間たちのもとへ帰ろうと思っていた。

 

「さぁ、ことりちゃん、行こう!これからライブをすることになってるんだ!9人揃ってね」

 

「えぇ!?これから!?」

 

これからライブをするなど予想もしていなかったからか、ことりは驚きを隠せなかった。

 

「それに今、統夜さんが車で私たちのことを待ってるよ!」

 

「統夜さんが?どうして……?」

 

「詳しい話は車の中でするよ。さぁ、急ごう!」

 

「う、うん!」

 

こうして、無事にことりを連れ戻すことに成功した穂乃果は、ことりと共に空港を出ると、そのまま統夜の車まで戻って来た。

 

2人はすかさず統夜の車に乗り込むと、統夜は車を発進させ、そのまま音ノ木坂学園へと向かっていった。

 

「……ことり、無事に戻ってきたみたいだな」

 

「はい。統夜さん、ありがとうございます」

 

「気にすんなって。それよりも急ぐぞ。これからライブが待ってんだろ?」

 

「「はい!」」

 

2人の返事を聞いた統夜はアクセルを踏み込んで車を加速させると、出来るだけ迅速に音ノ木坂に着くよう努力していた。

 

その道中、穂乃果は奏夜のおかげで大切なことを思い出したことや、ことりを連れ戻して9人でライブをすることは奏夜の作戦だということを伝えていた。

 

そして、奏夜も途中までは一緒にいたのだが、尊士の妨害を受けてしまい、穂乃果を行かせるために身を呈して尊士に向かっていったことを話していた。

 

その話が終わるタイミングを見計らって、統夜はイルバを使って奏夜と連絡を取ることにしたのであった。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

その頃、穂乃果をことりのもとへ行かせるために尊士に向かっていった奏夜は、尊士と激しい戦いを繰り広げていた。

 

そんな中、尊士は驚きを隠せずにいた。

 

初めて戦った時は自分を相手にして手も足も出なかった未熟な魔戒騎士が、本気の自分と互角に渡り合えているからである。

 

「このぉっ!!」

 

奏夜は魔戒剣を一閃するのだが、尊士は魔戒剣に酷似した剣を抜くと、奏夜の一撃を受け止めていた。

 

「まさか……!貴様のような小僧がこの私に剣を抜かせるとはな……」

 

格闘戦の時も尊士は本気を出してはいたのだが、剣を抜くことになるとは思っていなかったからか、尊士は驚いていた。

 

「しかし……貴様など私の敵ではない!」

 

尊士は負けじと剣を力強く振るうと、奏夜を弾き飛ばしていた。

 

「くっ……!まだまだ!」

 

奏夜は間髪入れずに尊士に接近し、魔戒剣を一閃した。

 

尊士は奏夜の一撃をかわすと、剣を持っていない方の手で奏夜に鉄拳を放っていた。

 

「ぐっ……!なんの!まだだぁ!」

 

尊士の一撃を受けても奏夜は怯むことなく接近し、魔戒剣を振るっていた。

 

その一閃は確実に尊士を捉えようとしており、尊士はそんな奏夜の鋭い一撃に驚きながらも剣で奏夜の攻撃を受け止めていた。

 

そんな中、2人は互いに一歩も引かずに激しく剣を打ち合っていた。

 

そして、尊士は何度目かの剣の一閃をするのだが、奏夜はそれを魔戒剣で受け止めて、ここで鍔迫り合いの状態になっていた。

 

「何故だ!あの時未熟だった小僧が、何故私と対等に渡り合えるのだ!」

 

尊士は自分の疑問を奏夜にぶつけていた。

 

「当たり前だろ?俺には守りたいものがある。それが俺を強くするんだ。だから、今までの俺と思うな!」

 

奏夜がこう言い放つと鍔迫り合いは終わり、奏夜と尊士は後方に下がっていた。

 

そして、 再び尊士に向かっていこうとしたその時だった。

 

『……奏夜!月影統夜からだ!』

 

キルバは統夜の魔導輪であるイルバを介して連絡が来たことを伝えていた。

 

「統夜さんから?」

 

このタイミングで統夜から連絡が来ると言うことは……。

 

奏夜は淡い期待を抱いていた。

 

そして……。

 

『奏夜!生きてるか!』

 

キルバを介して統夜の声が聞こえてきた。

 

「えぇ。なんとか生き残ってますよ」

 

奏夜もまた、キルバを介して統夜に返事をしていた。

 

すると、『そーくんの声が聞こえた!?』と穂乃果とことりの声が聞こえてきた。

 

この瞬間、全ての事情を察した奏夜は、これまでにないくらいの高揚感を覚えていた。

 

『……奏夜。お前が察する通り、ことりは戻ってきたぞ。今は音ノ木坂学園に向かっている』

 

「そうですか……。良かった……」

 

ことりが留学を辞めて戻ってきてくれた。

 

今の奏夜にとって、これ以上に嬉しいことはなかった。

 

安堵をしているからか、心にゆとりが出来てしまったところを尊士は見逃さなかった。

 

「……小僧!隙だらけだぞ!」

 

そんな奏夜の隙を突こうと、尊士は剣を構えて奏夜に向かい、奏夜を始末しようとしていた。

 

しかし、奏夜は冷静であり、しっかりとした動きで魔戒剣を振るい、尊士の攻撃を受け止めていた。

 

「な、何だと!?」

 

明らかに攻撃を防ぐことは不可能だと思っていたため、奏夜が攻撃を防いだことに尊士は驚きを隠せなかった。

 

その驚きが、逆に自分に隙を作ってしまい、奏夜は蹴りを放って尊士を吹き飛ばしていた。

 

「おのれ……!未熟な魔戒騎士如きが……!」

 

まさか自分が奏夜にしてやられるとは思っていなかったからか、尊士は憤怒の込もった目で奏夜を睨みつけていた。

 

『そーくん!?大丈夫なの!?』

 

キルバを介して、ことりの声が聞こえてきた。

 

「心配はない。それよりも……。今の俺は、誰が相手だろうと負ける気がしない!」

 

μ's再生の活路が完全に見えている奏夜にとって、その事実が力を与えており、どんな強敵も倒せるといった強い気持ちになっていた。

 

そんな奏夜の言葉を尊士が許せるはずもなく、尊士は剣を手に再び奏夜に向かっていき、奏夜も応戦していた。

 

そして、互いに激しく剣を打ち合っており、その度に飛び散る火花がその激しさを物語っていた。

 

『そーくん……。ごめんね……。そーくんが言ってくれた通り、留学に行きたいっていうのは本心じゃなくて、私は自分の気持ちに嘘をついてたの……。それを、穂乃果ちゃんが気付かせてくれたんだ。だから……』

 

ことりは自分の思いをキルバを介して語っていた。

 

その声はとても弱々しく、キルバを介しても聞こえるか聞こえないかといったところだったが、激しく剣を打ち合っている奏夜の耳と心にしっかりと届いていた。

 

「ことり、何も気にすることはないぞ。お前が帰ってきてくれたんだ。これ以上、何を望むって言うんだ」

 

これもまた、奏夜の本心であり、奏夜はことりが帰ってきて、離ればなれにならずに済んだことを心から喜んでいたのだ。

 

『でも……。私は……』

 

「おっと。皆まで言うな。これからライブが待ってるんだ。まずはそれを成功させないとな!」

 

奏夜は力強く剣を振るい、尊士を弾き飛ばしながらこのように宣言をしていた。

 

『私たちはそのつもりだけど、そーくんは間に合うの?』

 

奏夜は現在、尊士と戦っており、これから穂乃果たちのライブに顔を出せる保証はない。

 

尊士の実力は目の当たりにしているため、穂乃果はそこを心配していた。

 

しかし……。

 

「大丈夫だ。俺はなるべく急いで戻ってくるさ。……尊士を倒してな!」

 

奏夜はこのように断言しており、この発言は尊士をさらに怒らせるには充分だった。

 

「調子に乗るな……!小僧!」

 

奏夜の言葉をこれ以上許すことが出来なかった尊士は、精神を集中させると、ホラーの姿へと変化した。

 

それと同時に尊士は衝撃波を放つのだが、それをまともに受けた奏夜は後方に吹き飛んでしまう。

 

「くっ……!」

 

しかし、すぐに体勢を立て直すと、再び魔戒剣を構えたのであった。

 

『奏夜!俺から言えることはたった1つだ。……尊士を倒して、絶対に生きて帰って来い!そして、μ'sの再スタートを見届けろ』

 

「統夜さん……」

 

『奏夜……やれるな?』

 

「……はい!元よりそのつもりです!」

 

統夜の投げかける問いかけに、奏夜は力強く答えていた。

 

奏夜の強い決意を感じ取った統夜は、尊士との戦いに専念出来るよう連絡を終えていた。

 

「貴様のような未熟で弱い魔戒騎士が私を倒す?冗談は大概にするんだな!」

 

奏夜は本気で尊士を倒すつもりだったのだが、尊士はそんな奏夜の態度が気に入らず、奏夜に接近して、剣による攻撃を仕掛けてきた。

 

奏夜は辛うじて尊士の動きに対応出来ており、尊士の攻撃を魔戒剣で受け止めていた。

 

(さすがにホラー態になるとスピードもパワーも上がるか……。やっぱり手強い相手だぜ。こいつは……)

 

尊士の攻撃を受け止めることで精一杯だった奏夜であったが、怯む様子は一切なかった。

 

「……尊士!あんたの言う通り、俺は魔戒騎士としては未熟だし、弱い!だけど、俺はそれを受け入れて、それを強さの糧にしてるんだ!」

 

内なる影との試練を乗り越えて、魔導馬光覇の力を得た奏夜は、自分の弱さを受け入れており、逆にそれを自分の力にしていた。

 

「それに気付けたのも、尊士!あんたにコテンパンに叩きのめされたからだ!」

 

奏夜は尊士と戦う前から自分の弱さを受け入れているつもりになっていたが、心の奥底では自分が弱いことや弱くあることを認めようとはしなかった。

 

それを受け入れ、成長の糧にしているのは、尊士との敗戦があったからであった。

 

「あんたがどういう経緯であのジンガの部下になったかは知らないけど、元は魔戒騎士だったんだろ?俺は、ホラーじゃない、騎士のあんたと出会いたかったよ!」

 

尊士と初めて戦った時、尊士は奏夜の魔戒剣を軽々と手にしていた。

 

その時から奏夜は尊士が元は魔戒騎士であったと確信をしていた。

 

だからこそ、奏夜はこのようなことが言えたのであった。

 

「くだらないことを……」

 

尊士はそんな奏夜の言葉をこのように切り捨てていた。

 

これ以上、奏夜の言葉に付き合っていられないからか、尊士は手にしていた剣を振るうのだが、奏夜はその一撃を魔戒剣で受け止めていた。

 

「あんたのおかげで、俺は自分の未熟さを実感することが出来た!勝つ事の意味を知ったんだ!」

 

奏夜は尊士に敗れたからこそ、多くのことを学べたため、敵ながらも尊士には感謝していたのであった。

 

「小僧……。いや、如月奏夜。その首、もらった!」

 

尊士は剣を力強く振り下ろして奏夜を吹き飛ばすと、すかさず奏夜の顔面に拳を叩き込んだ。

 

奏夜はその一撃をまともに受けても怯むことはなく、そのまま魔戒剣による一撃を尊士に叩き込んだのであった。

 

「ぐっ……!?き、貴様……!!」

 

奏夜の一撃をまともに受けて、尊士は表情を歪ませていた。

 

「だからこそ俺はあんたを倒す!大切なものを、守るために!」

 

尊士を倒す。

 

初めて戦った時もそれは言っていたのだが、あの時はそれを実行する実力は身につけていなかった。

 

しかし、今の奏夜なら尊士を倒すことが出来る。

 

奏夜はそんな強い自信を持っていた。

 

そして、尊士を倒し、これから行われる9人による再スタートのライブに絶対間に合わせようと考えていた。

 

尊士の実力からそれは難しいのだが、絶対にライブに間に合わせる。

 

そんな強い気持ちが奏夜を突き動かしていた。

 

奏夜が尊士に一撃を叩き込んだ後、尊士はすかさず反撃しようとしていたが、その前に奏夜は蹴りを放ち、尊士を吹き飛ばしていた。

 

「くっ……!おのれ……!」

 

「尊士!貴様の陰我、俺が断ち切る!」

 

奏夜が尊士に対してこう宣言すると、奏夜は魔戒剣を高く突き上げ、円を描いた。

 

円を描いた部分の空間が変化すると、奏夜はそこから放たれる光に包まれていた。

 

奏夜の体が光に包まれていると、変化した空間から黄金の鎧が現れると、奏夜は黄金の鎧を身に纏ったのであった。

 

こうして、奏夜は陽光騎士輝狼の鎧を身に纏ったのであった。

 

「よかろう……。私も全力でお前を始末するとしよう。我が主の崇高な目的のために!」

 

尊士は先ほどの戦いでも本気は出していたものの、未だに秘めてる力を使い、確実に奏夜を葬ろうと考えていた。

 

そんなことを考えていた尊士は、精神を集中させると、背中に翼を出現させると、空高く飛翔した。

 

そして、素早い動きで奏夜を翻弄しつつ、剣による攻撃を連続で叩き込んでいた。

 

「ぐっ……!」

 

奏夜はどうにか反撃をしようとしたのだが、自身に空を飛ぶ能力はないため、尊士に一方的にやられることしか出来なかった。

 

「……もらった!」

 

奏夜は体勢を整える隙も与えられず、何度目かの斬撃を受けてしまった。

 

その一撃によって奏夜は吹き飛び、その衝撃で鎧は解除されてしまった。

 

「くっ……!」

 

ここまで一方的にやられながらも、奏夜はゆっくりと立ち上がり、どうにか魔戒剣を構えていた。

 

そして、奏夜は反撃の準備をするのかと思いきや、目を閉じて瞑想をしていた。

 

『おい、奏夜!何を考えている!それじゃやられるだけだぞ!』

 

「ふっ、いいだろう。このまま一気に楽にしてやる!」

 

尊士は奏夜にトドメを刺すべく奏夜に向かっていった。

 

(……俺は自分の中の闇を……。弱さを受け入れた。そして俺は、その思いと共に飛ぶ!μ'sのみんなを守るために!)

 

奏夜は心の中でこのような誓いを立てていたのであった。

 

「……その首、もらった!」

 

奏夜を始末する最大の好機を得た尊士は素早く飛翔し、奏夜に向かっていった。

 

尊士による凶刃が奏夜の首元に迫ろうとしていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ!?」

 

奏夜の体の全身を覆うように光が放たれると、光と同時に衝撃波が放たれており、それを受けた尊士は後方に下がっていた。

 

「な、何が起きたと言うのだ……?」

 

あのまま行けば奏夜の首を切断し、その首を見せつけてμ'sメンバーに大きな絶望を与えることが出来た。

 

しかし、それが直前で妨害されてしまったのだが、突如放たれた光や謎の力に尊士は困惑していた。

 

すると、奏夜の体を包んでいた光は上空に飛翔し、ある程度の高さに来たところでその光は消滅した。

 

尊士もまた飛翔し、奏夜の体を包んでいた光の正体を確かめようとした。

 

「……!?何だと……!?」

 

自分の目の前に飛び込んできた光景に、尊士は驚きを隠せなかった。

 

尊士の目の前には輝狼の鎧を身に纏った奏夜がいたのだが、その見た目は先ほどとは大きく変わっていた。

 

輝狼の鎧は先ほどのような黄金の鎧ではなくなり、黒と金の鎧となっていたのだが、黒の割合が多くなっていた。

 

さらに、背中にはマントのような翼が生えており、奏夜はその力で飛翔しているものと思われる。

 

「……見せてやる、尊士。この、天月の力を!」

 

奏夜は魔戒剣が変化した陽光剣を構えて、このように宣言していた。

 

この姿は、天月輝狼(てんげつキロ)。

 

奏夜が自分の弱さを受け入れ、さらにμ'sのみんなを守りたいという強い思いに鎧が答え、漆黒の翼を与えた奇跡の形態である。

 

奏夜はそのまま尊士に向かっていくかと思われたのだが、何故か奏夜はどこかへ向かって飛んでいってしまった。

 

「……!?逃がさん!!」

 

奏夜の予想外の行動に尊士は驚くのだが、尊士もまた飛翔し、奏夜を追いかけていた。

 

奏夜の姿を捉えた尊士は、素早い動きで奏夜を斬りつけようとしていた。

 

しかし、奏夜は冷静に尊士の攻撃を受け流し、移動を再開していた。

 

「飛翔能力を得た時は驚いたが、臆したか、小僧!」

 

「……」

 

奏夜は尊士の挑発には一切乗らず、どこかへ移動するかのように飛翔していた。

 

「おのれ……!これならどうだ!」

 

尊士は手からエネルギー弾のようなものを何発も放ち、奏夜を叩き落そうとしていた。

 

しかし、奏夜は無駄のない動きでエネルギー弾のようなものをかわしていた。

 

すかさず尊士は剣による攻撃を叩き込むのだが、奏夜はそれを受け止めており、2人は互いに剣を打ち合いながらどこかへと向かっていった。

 

「……よし、ここら辺ならいいか」

 

鎧の制限時間が残り50秒を切っており、奏夜はどこかへ移動するのを辞めてきた。

 

「ようやく移動を辞めたか……。!?こ、これはまさか……!」

 

移動を辞めた奏夜を見て、尊士は周囲を見て驚いていた。

 

そこは、奏夜の通う音ノ木坂学園付近だったからであった。

 

「ようやく気付いたか。だが、手遅れだ!」

 

天月の力によって飛翔能力を得た奏夜は、その力を利用し、尊士を誘導しながら音ノ木坂学園へと向かっていた。

 

穂乃果たち9人のライブを確実に見届けるためである。

 

尊士と遭遇したエリアは、車で走っておよそ40分程の場所なのだが、奏夜も尊士もかなりのスピードで飛翔していたため、学校の近くまで来れたのであった。

 

「さて、一気に決着をつけさせてもらう!」

 

「小僧が……。なめるな!!」

 

尊士と向き合い、陽光剣を構える奏夜に、尊士は勢いよく向かっていった。

 

奏夜はその攻撃を受け止めており、激しく剣を打ち合いながら、反撃の隙を伺っていた。

 

そして、何度目かの攻撃で、その機会は訪れた。

 

「……!もらった!」

 

奏夜は一瞬の隙を突いて、尊士に接近し、陽光剣を一閃し、尊士の体を斬り裂こうとしていた。

 

「させん!!」

 

一瞬の隙を突かれた尊士であったが、どうにか剣で受け止めて、逆に奏夜を斬り裂こうとしていた。

 

この状況を制した者が勝者となるため、2人は激しく互いの剣を押し合っていた。

 

「私は負けん!貴様のような未熟な魔戒騎士に遅れを取ってたまるものか!」

 

尊士は自分のプライドを守るために、奏夜を斬ろうとしていた。

 

「俺は負ける訳にはいかない!守りし者として、μ'sのみんなを守るために!そして、再スタートをするμ'sを、マネージャーとして見守るためにも!」

 

そして、奏夜は魔戒騎士として、そしてμ'sのマネージャーとして、この戦いに勝とうと思っていた。

 

尊士は自分のために。奏夜は大切な仲間のために。

 

どちらの思いが強いかは一目瞭然であった。

 

そのため……。

 

「終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

奏夜はまるで獣のような咆哮をあげると、尊士の剣の切っ先を斬り裂き、そのまま尊士の体を斬り裂いたのであった。

 

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

そして、体を斬り裂かれた尊士は断末魔をあげており、その体は陽光剣によって斬り裂かれるのと同時に爆発したのであった。

 

奏夜はこのまま尊士を本当に倒したのか確認したかったのだが……。

 

『まずいぞ、奏夜!時間がない!』

 

キルバがこのように警告するように、鎧の制限時間があと10秒になろうとしていた。

 

奏夜は尊士を討滅したかどうか確認することは出来ないまま、着地をするために急降下していた。

 

 

 

 

 

 

5……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3……

 

 

 

 

 

 

 

 

2……

 

 

 

 

 

 

 

 

1……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

0……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……になる寸前で奏夜は鎧を解除したのであった。

 

そのため、心滅獣身になることはギリギリ避けることが出来たのであった。

 

しかし、天月のスピードをもってしても完全な降下は行えず、奏夜はビルの3階分の高さから落下してしまった。

 

「……ぐぁっ!!」

 

そして、奏夜は落下先であるコンクリートにそのまま体を叩きつけられてしまった。

 

幸い、人通りの少ない場所に落下したため、騒ぎになることはなかったのだが……。

 

奏夜はゆっくりと立ち上がるのだが、尊士によるダメージと強大な力である天月を酷使したことによる身体的負担。

 

さらには先ほどコンクリートに叩きつけられたダメージがあるため、奏夜はボロボロであった。

 

「急いで学校に向かわないと……」

 

奏夜はダメージの残る体に鞭を打ち、音ノ木坂学院に向かおうとしていた。

 

……その時だった。

 

「おのれ……!如月……奏夜……!!」

 

「……!!?嘘……だろ……!?」

 

奏夜の目の前に、自分が先ほど倒したはずの尊士が現れており、そのことに奏夜は驚きと絶望が入り混じった表情をしていた。

 

先ほど尊士を斬った時、確かに手応えはあったのだが、倒し切ることが出来なかったのかと、奏夜は推測していたのである。

 

しかし、尊士もまた、ボロボロであるのだが、今の奏夜にはこれ以上戦うほどの余力は残っていなかったのである。

 

尊士が少しずつ奏夜に迫り、奏夜は息を飲むのだが、間もなくして尊士は膝をついたのであった。

 

奏夜の一撃は確実に効いていたのである。

 

「ま、まさかこの私が……。貴様のような未熟な小僧に遅れをとるとはな……」

 

尊士は自分の敗北を認めたくはなかったのだが、これ程のダメージを受けてしまったら、敗北を認めざるを得なかった。

 

「だが、この私を倒したからと言って、思い上がらないことだ……」

 

『おいおい、奏夜にやられたからと言って、負け惜しみか?』

 

尊士の捨て台詞のような言葉に、キルバは呆れ果てていた。

 

「ジンガ様の本当の実力は、私を遥かに凌駕する。貴様らがいくら力を合わせようが、ジンガ様を倒すことは出来ない……」

 

尊士は負け惜しみでこのようなことを言ってるのか事実なのかは不明だったが、ジンガの真の実力をこのように評価をしていた。

 

「それに、我が主の目的であるニーズヘッグが復活すれば、誰もジンガ様を止めることは出来ない。あの、黄金騎士牙狼だろうとな!」

 

「!?なんだと……?」

 

尊士の言葉は、最強の騎士である牙狼の存在を軽視しているようにも捉えられたため、奏夜は怒りを露わにしていた。

 

黄金騎士牙狼は全ての魔戒騎士の憧れであり、目標でもある。

 

そんな牙狼の存在を軽視されてしまっては、怒りを露わにするのももっともなことなのであるのだ。

 

「くくく……!スクールアイドルだかなんだか知らないが、せいぜい満喫するといい。その無駄な時間をな……!」

 

尊士は奏夜に言いたいことを最後まで言い切ると、その場に倒れ込んでしまった。

 

そして、陽光剣によって斬り裂かれた体は限界を迎えたからか、その体は徐々に消滅していった。

 

「……ジンガだって、絶対に倒してやるさ……。俺が、必ず……!」

 

奏夜は消えゆく尊士の姿をジッと見つめながらこう呟いていた。

 

「……みんな、今から行く。待っててくれよ……」

 

奏夜はボロボロな体に鞭を打ちながら、音ノ木坂学院に向かっていったのであった。

 

この時の奏夜に時計や携帯を見る余裕はなかったのだが、ライブ開始の時間は刻一刻と迫っているのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『最大の壁を越えたのは良かったが、ライブに間に合うのか?あいつらが待っているぞ!次回、「九人 後編」。今こそ輝け!女神たちよ!』

 

 




統夜が車を手に入れた経緯が明らかになりました(笑)

相変わらず、紬の力は凄いですねぇ。紬はディーラーにいくらの値切りをさせたのでしょうか……?(笑)

そして、本編には登場していない知らないキャラの名前が出てきました。

今回名前が挙がった楠神幸人というキャラは、僕が投稿している「牙狼×けいおん 白銀の刃」の後日談で、戒人が主役の話を書こうと考えていたのですが、そこで登場させるつもりだったキャラです。

楠神という苗字に弓使いということは……?

この幸人というキャラを登場させるかどうかは未定ですが、リクエストがあれば登場させようと思っています。

そして、今回、奏夜の鎧の強化体が出現しましたね!

天月輝狼のモデルは、「CR 牙狼 金色になれ」に登場した「真月牙狼」および、「牙狼 GOLD STOME 翔」に登場した「牙狼・闇」になっています。

僕は前者のイメージで書いていましたが、奏夜が天月になった状況を考えると、後者もしっくりくるんですよね……。

それでも、奏夜はあの尊士を倒すことが出来ました!

初対決の時は手も足も出なかったのに、奏夜はかなり成長しましたよね。

尊士をここで退場させるかさせないかは最後まで迷いましたが、今後の展開を考えて、退場させることにしました。

まだジンガが残っていますが、これからどうなっていくのか?

さて、次回こそは「崩壊と再生の絆編」の最終回で、アニメの一期編も終わりとなります。

次回はラブライブ要素がメインとなっています。

それでは、次回をお楽しみに!


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