牙狼ライブ! 〜9人の女神と光の騎士〜   作:ナック・G

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お待たせしました!第48話になります。

まだ活動報告にはあげていませんが、この小説のUAが20000を越えました。

ここまで多くの人にこの小説を読んでもらい、とても感謝しています。

記念の番外編も投稿予定ですが、その詳細は活動報告に載せようと思っていますので、そちらをご覧下さい。

さて、今回はさらにシリアスな展開になっていきます。

これから奏夜たちを待ち受けるものとは?

それでは、第48話をどうぞ!






第48話 「友達」

学園祭ライブが中止となり、μ'sがラブライブ出場を辞退してから数日が経過していた。

 

この時には穂乃果の熱は完全に下がっており、学校にも復帰していた。

 

しかし、奏夜は現在も西木野総合病院に入院していた。

 

もうジンガによる傷は完治したのだが、担当医が退院を許してくれないのである。

 

あれほどの重傷だったにも関わらず治癒が早かったため、医師たちは徹底的に奏夜の検査を行っていた。

 

しかし、魔戒騎士である奏夜の体のメカニズムを医師たちが解読出来るハズはなく、検査の結果、渋々2日後の退院を許したのであった。

 

「……っという訳で、明後日には退院出来そうなんだよ」

 

現在は16時過ぎであり、現在2年生組以外の6人が見舞いに来ていた。

 

そのため奏夜は、検査の話やもうすぐ退院出来ることを絵里たちに説明していた。

 

「そう……。良かったわ。だって、もっと入院が長引くと思ったんだもの」

 

「それにしても、あれだけの傷を負ったのにもうピンピンしてるなんて、魔戒騎士はどういう体の作りをしてるのよ」

 

絵里は奏夜の退院が近いことに安堵し、にこは傷の治りが早い奏夜の体に呆れていた。

 

「パパも驚いていたわ。如月君はいったいどういう体の作りをしてるのか。本当に人間なのか?って」

 

「やれやれ……。ひどい言われようだな」

 

医師である真姫の父親は、奏夜の体のメカニズムに興味を持ってこのことを言っていたのだが、奏夜は真姫の話を聞いて肩をすくめていた。

 

「だけど、そーや君が元気そうで、安心したにゃ!」

 

「そうだね!だって、奏夜君が重傷を負ったって聞いた時は凄く心配したもん」

 

「ウチもな、学園祭前日に占いをしたら死神のカードを引いちゃって奏夜君のことを心配してたけど、何もなくて安心したわ」

 

希はここで初めて奏夜に死神のカードの話をしていたのだが、奏夜が元気だとわかり、安心していた。

 

「死神のカードか……。確かにそれは縁起が悪いな。だけど、心配すんな。俺はこうしてピンピンしてるんだ。そんな不安はすぐに吹き飛ばしてやるさ」

 

奏夜は希が引いたとされる死神のカードに一瞬たじろぐのだが、希を不安を吹き飛ばすかのように力強い言葉を送っていた。

 

その言葉に希は満足そうにしていたのだが、希の引いた死神のカードが意味していたのは学園祭ライブの失敗でも奏夜の負傷でもなく、他の出来事の予見であった。

 

しかし、そのことを奏夜たちは知る由もなかった。

 

希の話が終わったところで、コンコンと扉をノックする音が聞こえてきた。

 

「はい、どうぞ」

 

奏夜がこう返事をすると、病室の扉が開かれた。

 

そして入ってきたのは、穂乃果、海未、ことりの3人。

 

さらにμ's結成当初から奏夜たちの手伝いをしてくれたヒデコ、フミコ、ミカことヒフミトリオの3人であった。

 

6人が病室に入るなり、ヒフミトリオの3人が奏夜のいるベッドに迫っていた。

 

「ちょっと奏夜君!大丈夫なの!?」

 

ヒフミトリオの中で、ポニーテールが特徴であるフミコが奏夜の身を案じていた。

 

「心配したんだよ!奏夜君がひったくり犯に刺されたって聞いた時は!」

 

「え?」

 

ヒフミトリオの中で、短いツインテールが特徴のミカが、心配そうにこのような話をしており、奏夜は面食らっていた。

 

「小津先生から聞いたの。奏夜君って学園祭当日にひったくり犯を捕まえようとして刺されたんでしょ?それで学校へ行って、その後入院したって」

 

(……なるほど、その事件は知ってたけど、剣斗は他の生徒に怪しまれないためにその事件を利用してくれたんだな)

 

奏夜の推測通り、剣斗は奏夜の入院が大きな騒ぎになると判断したため、奏夜がひったくり犯を捕まえようとして刺されてしまったと他の教師や生徒たちに説明をしていた。

 

実際ひったくり犯に刺されたのは違う人物なのだが、どうやら奏夜と歳も背丈も近かったため、どうにか誤魔化すことが出来たのであった。

 

「……まぁ、そういう訳だ。ごめんな、心配かけて」

 

「でもまぁ、奏夜君が無事で安心したよ。クラスのみんなも奏夜君のこと心配してたしさ」

 

ヒフミトリオの1人で、明るい髪が特徴のヒデコは、奏夜が予想以上に元気だったことに安堵していた。

 

それに、奏夜の心配をしていたのはクラスの全員であるとわかり、奏夜は穏やかな表情で笑みを浮かべていた。

 

 

「……そっか。そしたら、クラスのみんなに俺はもうすぐ退院だから心配いらないって伝えてくれないか?」

 

「うん!任せといて!」

 

ミカは、このように元気な返事をしており、クラスメイトたちに奏夜が無事だということを伝える仕事を引き受けていた。

 

「……奏夜。これは今日の分のノートのコピーです」

 

海未は、カバンからB4くらいの紙を何枚か取り出すと、それを奏夜に手渡した。

 

「悪いな、海未。助かるよ」

 

「いえ。私に出来ることといえば、これくらいしかありませんから」

 

奏夜は穏やかな表情で海未に礼を言っており、海未もまた、穏やかな表情でこう返していた。

 

「そーくん、これ、下着とか着替えが入ってるよ。穂乃果ちゃんのお母さんが持っていけって言ってたから」

 

ことりは手に持っていた大きめの紙袋を奏夜に手渡していた。

 

この中には男性用の下着や、シャツなど、入院で必要な物が入っていた。

 

穂乃果の母親も、奏夜の入院は聞いていたため、着替えなどを用意してくれたのである。

 

「この前小津先生が穂乃果ちゃんのお母さんに謝りに行ってね、その時にそーくんの入院を話したの」

 

奏夜が入院している間に、剣斗はμ'sを代表して穂乃果の母親へ謝りに行っていた。

 

しかし、穂乃果の母親は穂乃果が無茶をしたことを悟っており、さほど気にしている様子はなかった。

 

その時に奏夜が入院していることを知ったようだった。

 

「そうだったか……。退院したらお礼を言いに行かないとな……」

 

穂乃果の母親が入院に必要な着替えを用意してくれたことに対して、奏夜はお礼をしなければと思っていた。

 

「……」

 

ここにいる全員が奏夜に話しかける中で、穂乃果だけは俯きながらなかなか口を開こうとはしなかった。

 

「……ほーのかっ、黙っちゃってどうしたのさ?」

 

「そうだよ!奏夜君のこと、心配だったんでしょ?」

 

なかなか口を開こうとしない穂乃果を気遣い、ヒデコとフミコが穂乃果に話しかけていた。

 

「……私……。私は……」

 

穂乃果はやはり俯いており、なかなか奏夜と話をすることが出来なかった。

 

そんな穂乃果を見かねた奏夜は……。

 

「……みんな、悪い。穂乃果と2人にしてくれないか?話をしたいと思ってさ」

 

「え!?そ、そーくん!?」

 

奏夜のいきなりの提案に、穂乃果は驚いていた。

 

「そうね。その方が腹を割って話せるだろうし、私たちはここら辺でお暇しましょうか」

 

絵里が奏夜の言葉に賛同すると、他のメンバーも頷いており、先にμ'sのメンバーが病室を後にしていた。

 

それを追いかけるように、ヒフミトリオの3人も病室を後にして、病室は奏夜と穂乃果の2人だけになった。

 

「さてと……。これなら話しやすいだろ?」

 

奏夜は穂乃果が何でも話せるよう、2人きりの状態を作ったのであった。

 

「……うん」

 

穂乃果は少しだけ気が楽になったと感じたのか、少しだけ表情が明るくなった。

 

「そーくん……。あのね……?」

 

穂乃果はやはりなかなか自分の言いたいことを口に出来なかったのだが、勇気を振り絞ってある言葉を口にするのであった。

 

「……ごめんなさい!」

 

それは、奏夜に対する謝罪の言葉であった。

 

「私があの時ちゃんとそーくんの言う通りにしていたら、学園祭ライブが中止になって、ラブライブを諦めることもなかったのに……」

 

穂乃果はどうやら、自らのオーバーワークがライブの失敗やラブライブの辞退に繋がっていると考えており、責任をかんじていた。

 

「それだけじゃなくて、そーくんにあんなひどいことを……。私たちは、そーくんがいなかったらここまでは来られなかったのに……」

 

さらに穂乃果は、奏夜に対して「住む世界が違う」と言ってしまったことも後悔していた。

 

あの時は咄嗟に出てしまったのだが、奏夜には感謝しているために、穂乃果は自分の失言を申し訳ないと思っていた。

 

「……穂乃果。あまり気にするなよ」

 

「そ、そーくん……?」

 

「確かにライブの失敗は無理をした穂乃果が悪いが、穂乃果だけじゃない。止められなかった俺も悪いし、穂乃果の異変を気付けなかったみんなも悪い。これは俺たち全員の責任なんだ。だから穂乃果1人が背負うことはないんだよ」

 

奏夜はこの頃にはライブの失敗は全員の責任と割り切ることが出来ていたため、このような発言が出来たのである。

 

「それだけじゃない。あの言葉が穂乃果の本心じゃないことは知ってたさ。だけど、それを鵜呑みにしたのは俺の心が弱かっただけだ。だからこそ俺はジンガにやられて魔竜の牙を……」

 

「……その話は小津先生や海未ちゃんから聞いたよ。私があんなことを言わなきゃ、そーくんは……」

 

「だから気にするなよ。この件は穂乃果が悪いんじゃない。未熟な俺が悪いんだ」

 

「……」

 

穂乃果は奏夜の言葉を聞いてなお自分が悪いと思っているのか、俯いていた。

 

「それに、奪われたものは取り戻せばいい。それだけの話だよ」

 

奏夜は穂乃果が責任を感じないように、このように穂乃果を気遣う発言をしていた。

 

「本当にごめんね……」

 

「だから気にするなって。穂乃果が落ち込むなんてらしくないぞ。お前は呆れるくらい単純で、まっすぐなんだから」

 

「むー!褒めてるの?それ!」

 

奏夜のフォローが気に入らなかったからか、穂乃果はぷぅっと頬を膨らませていた。

 

「当然だ。俺はお前の太陽のような明るさに何度も救われたんだから……」

 

「そ、そう?エヘヘ……。そう言ってもらえると嬉しいな……」

 

奏夜のストレートな褒め言葉に、穂乃果は頬を赤らめていたのだが、どうやら奏夜の言葉が嬉しいみたいだった。

 

《ったく……。単純な奴だな》

 

(キルバ。間違ってもそれは言うなよ。穂乃果が膨れて面倒なことになるからな)

 

キルバはすぐに膨れっ面が治った穂乃果に呆れていたのだが、奏夜がテレパシーでそれをなだめていた。

 

「……キー君。なんか失礼なこと考えなかった?」

 

穂乃果は何かを感じ取ったからか、ジト目でキルバのことを見ていた。

 

『そ、そんな訳はないぞ!それに穂乃果!最高に格好いい俺様を変なあだ名で呼ぶな!』

 

キルバは穂乃果やことりにキー君と呼ばれるのが気に入らないみたいであり、こう呼ばれる度に訂正を求めていた。

 

(アハハ……。相変わらずだな、キルバの奴。それに穂乃果の奴、まるでエスパーみたいに読んでたな……)

 

奏夜はキルバに呆れるだけではなく、穂乃果が先ほどのテレパシーを読んでいたかのようなタイミングでキルバを追求していたことに苦笑いをしていた。

 

「……ま、とりあえずみんなも待ってるんだ。学園祭のことは仕方ないことだから、気持ちを切り替えようぜ」

 

「うん……。そうだね……」

 

こうして穂乃果との話は終わり、病室を後にしていたヒフミトリオと残りのμ'sメンバーが病室に入って来た。

 

全員とある程度話をした後に穂乃果たちは帰り、奏夜はゆっくりと体を休めるのであった。

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

それから2日後、奏夜はようやく退院の許可が下りたため、退院することが出来た。

 

西木野総合病院を後にした奏夜は、まっすぐ番犬所へと向かい、ロデルに傷の完治を報告したのであった。

 

「……奏夜。その様子だと、もう大丈夫そうですね」

 

奏夜の元気な姿を目の当たりにして、ロデルは安心していた。

 

ここ最近の奏夜は身も心もボロボロなことが多かったからである。

 

「ロデル様。心配をおかけしまして、申し訳ありませんでした。俺はもう大丈夫です」

 

「そうですか。それにしても、ラブライブに出場出来ないのは残念でしたね。あともう少しだったのですが」

 

「えぇ。俺もそう思います。ですが、これからはやることが色々あります。なので落ち込んでもいられません」

 

「確かにそうですね。奪われた魔竜の牙や魔竜の眼を奪い返さなければなりませんし、ことりの問題もありますしね」

 

ことりの問題。

 

ロデルがこう口にした瞬間、奏夜の表情が沈んでいた。

 

「あれから海未に聞いたのですが、ことりは先方に留学する旨を伝えたそうです」

 

「そうですか……。そのことを他のメンバーは?」

 

このロデルの問いかけに、奏夜は首を横に振っていた。

 

「このことを知っているのは俺と海未。そして剣斗だけです」

 

海未は、ことりの留学を知っている奏夜と剣斗に、ことりが留学を決めたことを話していた。

 

「他のメンバーにはまだ話していないそうです」

 

「……そうですか……。私としては残念ですが、彼女が決めたことなら仕方ないですね」

 

「えぇ。俺としても行って欲しくはないですが、ことりが決めたことなら反対は出来ないですから……」

 

奏夜としてはことりに行って欲しくはなかったが、それを強く言うことは出来なかった。

 

彼女の人生についてとやかく言う資格はないと奏夜は思っていたからである。

 

「とりあえず今日はゆっくりと体を休め、明日から魔戒騎士として使命を果たしてください」

 

「ありがとうございます、ロデル様。それでは、失礼します」

 

奏夜はロデルに一礼をすると、番犬所を後にして、そのまま家に帰っていった。

 

久しぶりに自宅へ戻った奏夜はゆっくりと体を休めていたのであった。

 

そして翌日、奏夜は朝早くに起床し、エレメントの浄化を行っていた。

 

今まで休んでた分を少しでも取り戻し、大輝やリンドウの負担を減らしたいと思っていたからである。

 

「……はぁっ!」

 

奏夜は本日3箇所目のオブジェに到着すると、そこから飛び出してきた邪気を魔戒剣の一閃で真っ二つに斬り裂いた。

 

「……よし!」

 

邪気が消滅したのを確認した奏夜は、魔戒剣を緑の鞘に納め、魔戒剣を魔法衣の裏地の中にしまった。

 

『……奏夜。あともう1箇所邪気を浄化したら学校へ向かうぞ』

 

「そうだな。復帰早々遅刻は勘弁だからな」

 

奏夜は遅刻を避けるためにもう1箇所だけ邪気を浄化してから学校へ向かうことにした。

 

キルバのナビゲーションを頼りに、その場所へ向かおうとしたのだが……。

 

「……おう、奏夜。復帰早々精が出るな」

 

「リンドウ……」

 

たまたま近くを通りがかっていたリンドウが奏夜の姿を見つけたため、奏夜に声をかけていた。

 

「ジンガに刺されて重傷を負ったって聞いた時は心配したが、元気そうで安心したぜ」

 

リンドウは奏夜の無事に安堵すると、煙草を一本取り出し、煙草を吸い始めていた。

 

「……それに、統夜や剣斗から話は聞いたが、ラブライブだったか?出られなくて残念だったな」

 

「まぁな……。だけど、俺たちはこんなところでは立ち止まれないからな」

 

「ふっ……。そうしてる方がお前さんらしいぜ」

 

奏夜は落ち込んでいる様子はなかったため、リンドウはそんな奏夜を見て笑みを浮かべていた。

 

「ところで奏夜。お前はこれから学校か?」

 

「あぁ、あと1箇所邪気を浄化したら行こうと思ってる」

 

奏夜はもう1箇所だけ邪気を浄化することをリンドウに伝えるのだが……。

 

「それは俺がやっておく。お前は早く学校に向かうんだな」

 

「え?だけど……」

 

「お前、学校に行くのも久しぶりなんだろ?早く行ってあのお嬢ちゃんたちを安心させてやれ」

 

「……すまないな、リンドウ」

 

「気にすんなって。早く行ってこい」

 

「あぁ!」

 

奏夜は残り1箇所のノルマをリンドウに任せることにして、そのまま学校へと向かっていった。

 

「……やっぱり若いな。これが青春ってやつなのか?」

 

このように呟きながら、リンドウは携帯灰皿を取り出すと、そこで煙草の火を消し、吸い殻を灰皿の中に入れていた。

 

「……さて、俺もお仕事お仕事っと」

 

リンドウは煙草の一服を終えると、そのままエレメントの浄化へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

リンドウの粋な計らいによって奏夜は予定よりも早く学校に到着した。

 

奏夜は玄関で靴を上履きに履き替えると、そのまま教室へと向かおうとしていた。

 

しかし……。

 

「……そーくん!」

 

奏夜の姿を見つけた穂乃果が声をかけ、それを聞いた奏夜は足を止めていた。

 

そこにいたのは穂乃果だけではなく、μ'sのメンバーが勢ぞろいだった。

 

恐らく、奏夜が復帰すると知っていたため、待っていたのだと思われる。

 

「……みんな。どうしたんだ?こんなところで」

 

奏夜は勢ぞろいで出迎えられると思っていなかったため、驚いていた。

 

「そーくんに重大な報告があって待ってたの」

 

「重大な報告?」

 

穂乃果は朗らかな声でこう伝えていたため、奏夜は首を傾げていた。

 

「行けばわかるよ!ほらっ、行こっ!」

 

「おい、引っ張るなって!」

 

穂乃果は奏夜の手を取ると、そのまま奏夜の手を引っ張り、どこかへと移動していった。

 

他のメンバーもまた、そんな2人の後を追いかける形でどこかへと移動していった。

 

移動すること数分。

 

穂乃果が奏夜を連れてきたのは学内にある掲示板だった。

 

そこにとある紙が貼られていたのだが、その紙の内容とは……。

 

「……えっと……。来年度入学者受付……。!?こ、これって……」

 

この紙は来年度にこの学校への入学を希望する者のための受付用紙なのだが、その紙の意味を理解した奏夜は驚きを隠せなかった。

 

「そうだよ!学校……存続するんだよ!?」

 

穂乃果の声色は明るいものであり、廃校が無くなったことを誰よりも喜んでいた。

 

「そうか……。成し遂げたんだな、俺たち……」

 

この「来年度入学者受付」の紙が来たということは、奏夜たちμ'sが本気で学校を救ったことを意味しており、奏夜はμ'sが大きな事を成し遂げたことの充実感と達成感を感じていた。

 

『やったな……奏夜』

 

「あぁ、そうだな……」

 

奏夜は冷静に返事をしていたのだが、内心は学校が存続したことに対して喜びが隠せなかった。

 

それを見抜いていたキルバは……。

 

(ったく……。嬉しいなら嬉しいと言えば良いものを……)

 

素直に自分の言葉を言わない奏夜にキルバは呆れていた。

 

こうして、学校が存続したことを知った奏夜は、そのまま教室へと向かっていった。

 

奏夜が教室へ入るなり、奏夜の身を案じていたクラスメイトたちが一斉に押し寄せてきた。

 

更に色々と質問攻めを受けており、始業チャイムが鳴るまで、奏夜はその対応に追われていた。

 

こうして奏夜は普段と変わらぬ感じで授業を受けており、放課後となった。

 

実は奏夜が退院したのと、音ノ木坂学院の廃校が無くなったことがわかったのは同じ日であった。

 

そして、今日奏夜が復帰することは事前にわかっていたため、奏夜の復帰と、学校存続を祝って部室でパーティを行うことになった。

 

その直前、奏夜は海未とことりに呼び出されて屋上へ来ていた。

 

「すいません、奏夜。いきなり呼び出してしまって……」

 

「気にすんな。それで、ここへ呼び出すってことは何か話があるってことだろ?」

 

「はい。ことりの留学のことです」

 

「……」

 

海未は話のテーマを説明すると、ことりは悲しげな表情を浮かべていた。

 

「ことり、もしかしてまだ穂乃果やみんなには話してないのか?」

 

「うん……。何度も話そうと思ったんだけど、なかなか話せなくて……」

 

どうやらことりは、自分が留学するという話を穂乃果や他のメンバーに話してはいないみたいだった。

 

「私は何度も話した方がいいって言ったんです。言うのが遅れれば遅れる程辛くなるだけですから」

 

「うん……。それはわかってるんだけど……」

 

『ことり、お前はこの話をすることでみんなを傷付けるかもしれない。そう思っているのか?』

 

本当のことを話したがらないことりに業を煮やしたキルバは、このような問いかけをことりにぶつけていた。

 

「……」

 

キルバの問いかけに、ことりは答えようとしなかった。

 

『だとしたらそれは見当違いだぞ。留学したいのは自分の夢のためだろう?誰かを傷付けるかもしれないと気を遣うくらいなら始めから留学など行かない方がいいってもんだ』

 

「キルバの言葉には俺も賛成だ。だって、ことりはもうすぐ日本を経つんだろ?きちんと話をしなきゃ。これからみんなとギクシャクすることになるぞ」

 

「うん……。そうだよね……」

 

キルバや奏夜は、ことりにきちんと留学のことを話すように説得をしていた。

 

「だけど、留学を決める前に穂乃果ちゃんに相談出来てたら、何て言ってくれたのかな?って……。それを思うと、上手く言えなくて……」

 

「ことり……」

 

ことりは何故穂乃果たちに留学を打ち明けられないのかを語っていた。

 

ことりとしてはこの話を決める前に穂乃果に相談したかったのだが、それは出来なかった。

 

もし、穂乃果にも相談出来ていたらと考えると、なかなか留学の話を打ち明けられなかったのだ。

 

そんなことりの真意を理解し、奏夜は悲しげな表情を浮かべていた。

 

「……ことり、これからみんなでお祝いをするだろ?その時にちゃんとみんなに話すんだ」

 

「え?でも……」

 

「ことりの言い分はわかる。だけど、今言わなかったらいつ言うんだよ。今日を逃したら、恐らくはみんなに話を切り出すことなく日本を経つことになるぞ」

 

「……っ!」

 

奏夜の言葉は的を得ており、ことり自身が勇気を出して話さなければ、穂乃果たちに留学を告げることなく日本を経つという最悪な結末になりかねなかった。

 

そんな未来を想像してしまったことりは息を飲んでいた。

 

「奏夜の言う通りです。それに、今日はお祝いだからとことりは気を遣うのかもしれませんが、今言わなければずっと言えないですよ」

 

「うん……」

 

奏夜はこの後のお祝いで留学の話をしっかりするようにことりに告げており、それには海未も同意していた。

 

ことりは一応返事をするのだが、まだ煮えきっていなかった。

 

こうして話を終えた3人は、そのままアイドル研究部の部室へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

奏夜たち3人が部室に到着すると、剣斗以外の全員は既に揃っており、お祝いの準備はおおよそ整っていた。

 

アイドル研究部の部室はいつもとは雰囲気が変わっており、あちこち飾り付けがされており、黒板には学校存続と書かれていた。

 

剣斗は1度部室に来たのだが、まだやることがあると言い残し、どこかへと行ったみたいだった。

 

それだけではなく、自分以外が揃ったら先に始めてくれと言っていたため、奏夜たちはお祝いを始めることにした。

 

「にっこにっこに〜♪みんなぁ、グラスは持ったかなぁ?」

 

『おぉ!!』

 

にこが席を立ち、黒板の近くまでくると、このような宣言をして、それに全員が応じていた。

 

その近くにはレジャーシートが敷かれており、そこに穂乃果と奏夜。そして1年生組が座っていた。

 

そして、窓際の長椅子には海未とことりが座っており、扉側の椅子に絵里と希が座っていた。

 

「奏夜が無事に復帰して、さらに学校の存続が決まった訳だし、ここで部長のにこにーから一言挨拶をさせてもらいます!」

 

このようににこが宣言すると、奏夜たちは拍手を送っていた。

 

「奏夜のことはともかくとして、今思えば、μ'sが結成され、私が部長に選ばれてから、どれだけの月日が経っただろうか」

 

「俺の復帰はスルーかよ……」

 

『にこは自分のことを語りたいだけだろうな』

 

このお祝いは学校存続だけではなく奏夜の復帰祝いも兼ねているのだが、にこは奏夜のことをスルーしていた。

 

そんなにこに奏夜とキルバは呆れており、奏夜はジト目でにこのことをみていた。

 

「たった1人のアイドル研究部から耐えに耐え抜き、今、こうしてメンバーの前で自分の思いを語り……」

 

『かんぱーい!!』

 

「ちょっと待ちなさーい!!」

 

にこの話は長くなると判断した奏夜たちはにこの語りをスルーしてそのまま乾杯していたのだが、それに対してにこは待ったをかけていた。

 

しかし、乾杯は終わってしまったので、そのままパーティは始まってしまった。

 

お祝いと言うだけあって、何品か料理が並んでおり、凛はサンドイッチに手を伸ばしていた。

 

「お腹すいた〜。にこちゃん、早くしないとなくなっちゃうにゃ!」

 

「卑しいわね……」

 

凛はサンドイッチにがっついており、そんな凛を見て、にこは呆れていた。

 

そんな中、花陽は事前に用意していた炊飯器とにらめっこをしていた。

 

そして……。

 

「みんな!ご飯炊けたよ〜♪」

 

花陽はご飯が炊けるのを心待ちにしており、その瞬間をみんなに告げていた。

 

「ご飯、ご飯♪」

 

凛はサンドイッチを1つ食べたばかりなのだが、炊きたてのご飯に心を躍らせていた。

 

その直後、コンコンと扉をノックする音が聞こえると、扉が開いて剣斗が中に入ってきた。

 

「みんな、遅くなってすまない」

 

「先生、遅い!もう始めちゃってるよ!」

 

「そうです!そして、ちょうどご飯が炊けましたよ!」

 

凛は遅れてきた剣斗に文句を言っており、花陽はご飯が炊けたことを伝えていた。

 

「おぉ!それはちょうど良かった!美味な飯には美味なおかずが必要だろう?」

 

そう言って剣斗が奏夜たちに見せたのは、数種類のおかずであった。

 

どのおかずも湯気が立っており、出来たてであるということがすぐにわかった。

 

「ど、どれも凄く美味しそうだにゃあ……♪」

 

「もしかして、これは小津先生が?」

 

凛はおかずたちを見て目を輝かせており、絵里はこのように剣斗に問いかけていた。

 

「うむ。騎士たる者、身の回りのことは自分で出来て当然なのでな。これくらいは何てことないさ」

 

「まぁ、俺も料理や家事は一通り出来るしな」

 

剣斗は自慢気に語っていたのだが、奏夜も料理や家事は出来るため、そのことを主張していた。

 

そうは言っても、魔戒騎士や魔戒法師の全員が出来るという訳ではなく、仕事が忙しいため、家事がまったく出来ない魔戒騎士や魔戒法師も多い。

 

むしろ、奏夜や剣斗のように、家事をそつなくこなせるほうがごく少数なのである。

 

「ところで、全部出来たてみたいですけど、この料理はいったいどこで?」

 

希は出来たてのおかずを見て、抱いていた疑問を剣斗にぶつけていた。

 

「調理室を借りたのだよ。私の料理する様子を見て、料理研究会の部員たちは驚いていたぞ」

 

剣斗は放課後になるとすぐに調理室へこもり、料理研究会の部員に使用許可をもらったところでパーティ用のおかずを作っていたのであった。

 

剣斗の手際の良さに、部員たちも驚いていた。

 

「早く食べたいにゃ!!」

 

「ふふ、そう急かすな。今準備をする」

 

剣斗はすでに準備されているテーブルに、作った料理を並べ、これで完全にパーティの準備は整ったのであった。

 

「いっただきま〜す!!」

 

剣斗が料理を並べている間に凛は炊きたてのご飯をよそっており、剣斗の用意した料理もいの一番に取っていた。

 

そして凛は、さっそく剣斗の料理を頬張るのだが……。

 

「!?う、美味いにゃあ!!」

 

凛は剣斗の料理の味に驚きながらも、目をキラキラと輝かせていた。

 

「どれどれ?」

 

穂乃果、花陽、真姫もまた、剣斗の料理を皿に盛り付けて味見をするのだが……。

 

「本当だ!美味しい!」

 

「えぇ。悪くはないわね」

 

「これは……!ご飯が進みます!」

 

3人にも剣斗の料理は好評であり、花陽は剣斗の料理を食べ、すかさず炊きたてのご飯を食べていた。

 

こうして、それぞれがご飯や料理に舌鼓を打っていた。

 

「……それにしても、ホッとしたようやね。エリチも」

 

希は用意された料理を食べながら、穏やかな表情をしている絵里を見て安心していた。

 

「そうね。肩の荷が下りたって気がするわ」

 

「μ'sに入って良かったやろ?」

 

「……どうかしら。正直、私が入らなかったとしても、結果は同じだったと思うけど」

 

学校の存続はμ'sの9人と奏夜の力によるものが大きかったのだが、絵里は自分がそれほど学校存続に貢献していないと思っていたため、このような発言をしていた。

 

「いや、それは違うな!」

 

そんな絵里の言葉を否定したのは奏夜でとなく、剣斗であった。

 

「小津先生……」

 

「μ'sというグループは、9人の少女のそれぞれ違う個性が見事に調和しているのが魅力なのだ。そこがイイと言える」

 

剣斗は自分なりに感じていたμ'sの魅力を熱弁していた。

 

「そんな9人の少女とマネージャーである奏夜が1つの目標に向けてキラキラと汗を流す……。イイ!とてもイイぞ!」

 

「アハハ……。あ、ありがとうございます……」

 

剣斗のあまりにも熱いトークに絵里は引き気味になっており、苦笑いをしていた。

 

「小津先生の言う通りやよ。μ'sは9人と奏夜君がいてこそなんや。それ以上でもそれ以下でもないんよ。それは、カードも言うとることや」

 

希はμ'sは9人+奏夜がいることで未来が開けると占いで出しており、それは今でも変わらないと思っていた。

 

「……そうね……」

 

剣斗や希の言葉を聞き、絵里はμ'sに入ったことは間違いではないということを実感していたのであった。

 

奏夜もまた、炊きたてのご飯や剣斗の料理に舌鼓を打っていたのだが……。

 

(……ん?海未?ことり?)

 

海未とことりは窓際の長椅子に座っていたのだが、パーティを楽しむ様子はなく、2人とも俯いているみたいだった。

 

(ったく……。あいつらは……)

 

そんな2人を見かねた奏夜は、そのまま2人の元へと向かっていった。

 

「……2人とも」

 

「あっ、奏夜……」

 

「そーくん……」

 

「ことり、お前やっぱりあの話をする勇気が出ないのか?」

 

「うん……。やっぱり……私は……」

 

ことりはなかなか留学の話を切り出すことが出来ず、俯いていたのであった。

 

「私は何度も説得をしていたのですが、やはり……」

 

海未はこのパーティが始まってからもことりに留学の話を切り出すよう説得をしていたが、効果はないみたいだった。

 

「ったく……。仕方ないな……」

 

このままではいけない。

 

そう思った奏夜はパーティを楽しむ穂乃果たちの方を向いた。

 

そして……。

 

「……みんな、悪い。ちょっといいか?」

 

奏夜がこう話を切り出すと、全員の視線が奏夜に集中していた。

 

そんな奏夜に呼応するように海未も立ち上がり、奏夜の隣に来ていた。

 

「すいません。みんなにちょっと話があるんです」

 

奏夜1人に重荷を背負わせたくなかったからか、海未もこのように話を切り出していた。

 

奏夜と海未がこのように話を切り出してきたことに穂乃果たちは困惑していた。

 

「いきなりこんなことを言ってもみんなは戸惑うだけだと思うが……」

 

奏夜はこのように前置きをしてから再び語り始めた。

 

「……ことりが留学することになった」

 

『……え?』

 

「……」

 

奏夜の突然の告白に、剣斗以外の全員が驚きと困惑が入り混じっていた。

 

さらにことりは、悲痛な表情を浮かべていた。

 

「それで、2週間後には日本を経つことになりました」

 

奏夜1人に話させることはせず、海未も語り始めていた。

 

「うそ……」

 

「……どういうことなの?」

 

「私、前から服飾の仕事に興味を持ってて、それをお母さんに話したら、お母さんの知り合いの学校の人が来てみないか?って声をかけてくれたの」

 

ことりは何故留学することになったのか、その経緯を説明していた。

 

「……ごめんね。もっと早く話そうって思ってたんだけど……」

 

どうにか留学の経緯を説明したことりであったが、その声はどんどん弱々しくなっており、穂乃果たちは何も言えない状態になっていた。

 

『お前らは学園祭に向けてまとまっていただろう?ことりはお前らに気を遣いたくなかったんだよ』

 

「なるほど、それで最近……」

 

希はことりの様子がおかしいことに気付いており、そのことを気にしていたのだが、キルバの説明を聞いて納得したみたいだった。

 

「……行ったきり、戻ってこないのね?」

 

「うん……。恐らく、高校を卒業するまでは……」

 

絵里の問いかけに、ことりはこう答えていた。

 

それはすなわち、ことりが日本を発ってしまえば、そのまま会えなくなってしまうのだ。

 

「……」

 

穂乃果はことりが留学すると聞いた時から一言も喋らず、黙っていた。

 

そして、留学する経緯の話が一通り終わると……。

 

「……どうして言ってくれなかったの?」

 

ことりとは幼い頃から付き合いのある穂乃果は、自分に何の相談もなしに留学行きを決めたのが納得出来なかった。

 

「さっきキルバも言ってたろ?学園祭があったからだって……」

 

奏夜はゆっくりとことりに近づく穂乃果をなだめるのだが……。

 

「そーくんと海未ちゃんは知ってたんだ」

 

「……すまない。ことりの留学行きの話は私も聞いていた。ことりが悩んでるのを教師として放っておけなくてな」

 

剣斗は、自分も留学の話を聞いていたことを明かしていた。

 

穂乃果以外の全員は剣斗は教師だからもいうことで納得していた。

 

「どうして言ってくれなかったの?ライブがあったからって言うのはわかるよ。でも、私と海未ちゃんとことりちゃんはずっと……!」

 

穂乃果は自分に相談をしてくれなかったことりのことを責めていた、

 

「穂乃果、そこまでにしておけ」

 

『奏夜の言う通りだ。ことりの気持ちも考えてやれ』

 

奏夜とキルバはことりのことを責めている穂乃果のことをなだめるのだが……。

 

「わからないよ!!」

 

激しい剣幕で奏夜やキルバのことを黙らせていた。

 

「だって、いなくなっちゃうんだよ!?ずっと一緒だったのに……離ればなれになっちゃうんだよ!?なのに……」

 

「穂乃果……」

 

奏夜は穂乃果の言いたいことが理解出来るため、何て声をかけていいのかわからなかった。

 

そんな中……。

 

「……何度も言おうとしたよ?」

 

「……え?」

 

「でも、穂乃果ちゃん、学園祭のライブに夢中で……。ラブライブに夢中で……」

 

「あっ……!」

 

ことりの言葉は穂乃果に取って耳の痛い言葉であり、穂乃果は言葉を失っていた。

 

「だから、ライブが終わったら言おうと思ってた……」

 

「ことりちゃん……」

 

「相談に乗って欲しいと思ってた……!でも、あんなことになっちゃって……。聞いて欲しかったよ!?穂乃果ちゃんには1番に相談したかった!」

 

このように語ることりの瞳からは涙が溢れ出ていた。

 

「だって、穂乃果ちゃんは初めて出来た友達だよ!ずっと側にいた友達だよ!そんなの……そんなの、当たり前だよ!!」

 

ことりはこう言い放つと、涙を流しながら部室を飛び出していってしまった。

 

「こ、ことりちゃ……!」

 

穂乃果は部室を飛び出したことりを追いかけようとしていたのだが……。

 

「穂乃果。今はそっとしておけ」

 

奏夜がすかさずそんな穂乃果を止めていた。

 

「……ずっと留学に行くかどうか迷ってたみたいです。いえ、むしろ行きたがってないように見えました。ずっと穂乃果を気にしてて……」

 

海未は部室を飛び出していったことりをフォローする発言をしていた。

 

「俺は「行って欲しくない」って本音を伝えたんだけどな……。ことりは本気で服飾の仕事に興味を持ってるみたいだし、俺のエゴでことりの夢を潰すわけにはいかないから、あまり強くは言えなかったんだよ」

 

「……そんなことを話していたのですね……」

 

海未は先ほど奏夜か言った言葉は初耳だったため、驚きを隠せずにいた。

 

「……ことりは本当に学園祭が終わったらすぐに穂乃果に相談するつもりだったんです。わかってあげて下さい」

 

海未はこのようにフォローを入れるものの、ことりの留学はかなりショックだったからか、静寂がその場を支配していた。

 

その静寂からは、戸惑いの感情が伺える程だった。

 

「……」

 

特に穂乃果はショックが大きいからか、俯きながら言葉を失い、その場で立ち尽くしていた。

 

《やれやれ……。こいつは面倒なことになったな》

 

(そうだな……。このまま、ギクシャクとさせとくわけにはいかないからな。なんとかしなければ……)

 

《奏夜、あまり1人で抱え込むなよ。これはお前1人の問題じゃないんだ。どうしてもダメなら仲間を頼れよ》

 

(あぁ、わかってるよ)

 

奏夜は穂乃果とことりがギクシャクしてしまったと感じてしまい、この問題を解決せねばと思っていた。

 

(……俺はこのままμ'sを終わらせるようなことは絶対にさせない!だから、俺が絶対に救ってみせる!)

 

奏夜にとってμ'sの存在はかなり大きなものになっていたため、目の前に迫る大きな問題を解決させて、μ'sを救おうと決意していた。

 

その意思は固く、奏夜は自然と鋭い表情になっていた。

 

こうして、学校存続と奏夜の復帰を祝うパーティは、とても続けられる状態ではなかったため、中止となってしまった。

 

奏夜が予想している通り、μ'sの崩壊はすぐ目の前に迫っていた。

 

そんな中、奏夜はどのような行動をとっていくのだろうか……?

 

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『あんなことがあったんだ。こうなるのも仕方ないよな。だが、このままという訳にはいくまい?次回、「崩壊」。奏夜、お前はいったいどうするつもりだ?』

 

 




話を誤魔化すためとはいえ、ひったくり犯に刺されるとかそれはいったいどこのジェットマンだろうか……?

このネタがわかる人はいったいどれくらいいるだろうか?

さて、今回全員がことりの留学を知る事になりました。

その結果、穂乃果とことりがすれ違うことになってしまいましたが、この問題を奏夜はどう解決していくのか?

最近はラブライブメインの話になっているため、戦闘描写が少ないですが、どこかで牙狼要素多目の話は作りたいな……。

一期の話も終わりに近付いているので、これからさらに盛り上げていきたいと思っているので、これからも牙狼ライブをよろしくお願いします!

さて、次回でラブライブ12話は終わりの予定です。

これからさらにシリアスな展開になると思います。

μ'sは本当に崩壊してしまうのか?

それでは、次回をお楽しみに!


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