牙狼ライブ! 〜9人の女神と光の騎士〜   作:ナック・G

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お待たせしました!第38話になります!

前回で合宿が終わり、今回は牙狼メインの話になります。

前後編にかけて魔竜の眼についての話になりますが、魔竜の眼はいったいどこに眠っているのか?

そして、ジンガや尊士は動くのだろうか?

それでは、第38話をどうぞ!




第38話 「魔眼 前編」

……ここは、秋葉原某所にある今は使われていない廃ビル。

 

そこのとある一室にジンガはおり、椅子に座ってワインを飲みながら街の景色を眺めていた。

 

「……ジンガ様、ワインのお代わりはいかがですか?」

 

ワインのグラスが空になったタイミングを見計らって、アミリが出現すると、ワインボトルを持ってジンガの前に現れた。

 

「あぁ、いただこう」

 

「かしこまりました」

 

アミリはジンガに深々と一礼をすると、空になったグラスにワインを注いでいた。

 

「アミリ、たまにはお前も一緒に飲まないか?」

 

「いえ。私ごときがジンガ様と一緒にワインとは畏れ多いです。……失礼いたします」

 

アミリは再びジンガに一礼をすると、その場を離れていった。

 

「ったく……。あいつは秘書としては一流だけど、真面目すぎるんだよなぁ……」

 

アミリはジンガや尊士とは違ってホラーではないのだが、ジンガの思想に賛同し、彼の秘書となったのである。

 

しかし、ジンガに忠誠を誓っているアミリは、生真面目なところがあるため、ジンガはそこだけは直して欲しいとずっと思っていた。

 

ジンガがこのようなことを呟いていると、尊士が彼の前に現れた。

 

「……ジンガ様」

 

「おう、尊士か。どうしたんだ?」

 

「例の魔竜の眼ですが、元老院もどうやら調査しているようです。その形跡をたどってあるところを調べてみましたが、どうやらガセネタのようです」

 

紬や真姫の別荘のあるエリアに魔竜の眼らしきものを見つけたと元老院が調べたのだが、どうやら尊士もそこを調査していたようであった。

 

しかし、魔竜の眼どころか、有力な情報すら得られなかった。

 

「ま、そう簡単には見つからないよな」

 

ジンガは魔竜の眼がすぐ見つかるとは思っていなかったため、そこまで慌ててはいなかった。

 

「ですが、有力な情報は入手しました」

 

「ほう?聞かせてもらおうか」

 

「はい。実は……」

 

尊士は、魔竜の眼に関する有力な情報を、ジンガに伝えていた。

 

「なるほどな。そこなら魔竜の眼がある可能性はありそうだな」

 

「はい。ただちにその場所へ向かい、魔竜の眼が本当にあるのなら、回収いたします」

 

「待て、尊士。今回は俺も行こう」

 

尊士は情報の場所へと向かおうとしたのだが、ジンガも同行しようと提案していた。

 

「で、ですが、ジンガ様……」

 

「恐らくは月影統夜や天宮リンドウの妨害もあるだろう?たまには体を動かさないとなまってしまうからな」

 

「はっ、かしこまりました」

 

「それじゃあ、行くぞ、尊士」

 

「ははっ!」

 

こうしてジンガは、尊士と共に、魔竜の眼があると情報のあった場所へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

真姫の別荘にて合宿が行われたのだが、それは無事に終わることが出来た。

 

奏夜は合宿から戻ってくると、すぐさま番犬所へと向かい、合宿が終わったことを報告していた。

 

「……お、やっと戻ってきましたね、奏夜」

 

「はい。ロデル様。如月奏夜、合宿を終えて戻りました」

 

奏夜は合宿を終えたことを報告しつつ、ロデルに一礼していた。

 

「ご苦労様です。充実した合宿でしたか?」

 

「はい。練習も充実した練習を行うことが出来ました」

 

「そうですか。それな何よりです」

 

何事もなく合宿が終わったと知り、ロデルは安堵していた。

 

「奏夜。戻って早々申し訳ないのですが、あなたに行ってもらいたいところがあります」

 

「行ってもらいたいところ?指令ですか?」

 

「まぁ、そんなところです」

 

このような前置きをした後、ロデルは語り始めた。

 

「実は、例の魔竜の眼ですが、元老院の調査員が、有力な情報を仕入れました」

 

「!!それは本当ですか?」

 

合宿の時に統夜が得た情報はガセネタだったのだが、今度は有力な情報らしく、奏夜は驚いていた。

 

「それで、その場所はいったい?」

 

「……今、今年の修練場の修行が行われていますが、その修行の地に魔竜の眼らしきものが眠っていると話を聞きました。これは、目撃者も多いため、間違いはなさそうです」

 

「修練場……ですか……」

 

奏夜は修練場という言葉を聞くと、何故か表情が暗くなっていた。

 

「?奏夜?」

 

そんな奏夜に気付いたロデルは、首を傾げていた。

 

「あっ、いえ……。申し訳ありません」

 

暗い表情になっていた奏夜はすぐにハッとしており、ロデルに謝罪をしていた。

 

「奏夜。合宿から戻って早々申し訳ないのですが、すでに統夜とリンドウには向かわせています。あなたも、明日には修練場の会場へと向かってください」

 

ロデルは、大輝以外の全員を修練場の会場へと送り込み、その間のホラー狩りは大輝に行ってもらおうと考えていた。

 

「わかりました。穂乃果たちにも連絡して、なるべく早く向かいます」

 

ロデルは明日で良いと言っていたのだが、統夜やリンドウが向かっていると聞いた以上、のんびりはしていられなかった。

 

「すいませんね、奏夜。μ'sの練習を優先して欲しいのは山々ですが、今回は事態が事態です。こちらの使命を優先してください」

 

μ'sのファンであるロデルは、マネージャーである奏夜に練習を優先させたかったが、それは出来なかった。

 

「ロデル様。お気遣い、ありがとうございます。ですが、問題ありません。穂乃果たちもきっとわかってくれますから」

 

「そうですね……。それでは、頼みましたよ、奏夜」

 

「はい!」

 

奏夜はロデルに力強く返事をすると、ロデルに一礼し、番犬所を後にした。

 

「さてと……」

 

奏夜は番犬所を出るなり、携帯を取り出すと、穂乃果に電話をかけ始めた。

 

番犬所からの指令でしばらくは練習に顔を出せないことを伝えるためである。

 

奏夜の話を聞いた穂乃果は、1度電話を切ると、LAINのグループ通話に切り替え、全員にこの話を伝えられる状態にしていた。

 

10人でのグループ通話となり、奏夜は再び番犬所の指令でしばらくは練習に顔を出せないことを伝えた。

 

『……そうですか……。ラブライブも近いですし、出来れば顔を出して欲しいですが……』

 

『最優先の仕事となると仕方ないわね』

 

海未は奏夜がしばらく練習に顔を出せないと聞いて残念そうにしていたが、絵里は仕方ないと割り切り、納得していた。

 

『それで、奏夜君はどこに行くの?』

 

「あぁ。修練場っていう、魔戒騎士の卵が10日間集団生活を送りながら修行するっていうのをほぼ毎年やっていてな。その修行する場所に例のホラー復活に必要なものが眠っているみたいなんだ」

 

奏夜はニーズヘッグや魔竜の眼といった単語は出さずに説明を行っていた。

 

『修練場ですか……』

 

『まぁ、魔戒騎士にも合宿みたいなのがあってもおかしくはないわよね』

 

『それで、そーや君も小さい頃はその修行に行ってたのかにゃ?』

 

「まぁ……な」

 

凛がこのような質問をすると、奏夜の声のトーンが低くなっていた。

 

『?そーくん?』

 

「あぁ、悪い悪い」

 

『もしかして、そーくんはその修練場っていうのにあまり良い思い出はないの?』

 

「そんなところかな」

 

ことりの鋭い指摘に奏夜は驚くのだが、平静を装ってこう答えていた。

 

『奏夜。良かったら話してくれませんか?』

 

『ウチらだって、奏夜君の話くらいは聞けるしな。話したら楽になるんと違う?』

 

『そうよ。私たちは仲間なんだから、水臭いのはなしよ』

 

海未、希、にこの3人は、奏夜から修練場時代の話を聞き出そうとしていた。

 

「……ありがとな。その話は、帰ってきたらすることにするよ。今からその修練場の会場に行かなきゃいけないからな」

 

『大変ですね……。合宿が終わって解散したばかりなのに』

 

奏夜はこの電話が終わったらすぐにでも向かおうとしており、そのことに花陽は驚いていた。

 

「まぁ、合宿で2泊もして、それだけ休んでたんだ。その分は働かないとな」

 

『は、ハラショー……』

 

奏夜のあまりの働き者ぶりに、絵里は驚いていた。

 

『その姿勢は立派ですが、無理だけはしないでくださいね』

 

『そうだよ!それでそーくんが倒れることがあれば、心配だもん!』

 

海未や穂乃果は、働き者な奏夜の心配をしており、それには他のメンバーも電話越しだがウンウンと頷いていた。

 

「みんな、ありがとな。無理はしないようにするよ」

 

魔戒騎士の仕事は危険がつきものなのだが、そこをあえて言わず、こう言うことによって、穂乃果たちを安心させようとしていた。

 

『わかった。それじゃあ、そーくん。気を付けて行ってきてね』

 

「わかった。それじゃあ、行ってくるな」

 

『行ってらっしゃい!』

 

穂乃果たちが口々にこう言うのを聞いて、奏夜は電話を切った。

 

「……よし、行くか……」

 

携帯をポケットにしまった奏夜は、このまま修練場の会場を目指して歩き始めた。

 

その会場は、普通に移動すればかなり時間がかかってしまうのだが、魔戒道と呼ばれる魔戒騎士や魔戒法師しか通ることの許されない道を進むことで、かなりのショートカットが可能となる。

 

今から出発すれば、この日の夕方には到着出来る予定だ。

 

奏夜はどこも寄り道をすることなく、秋葉原某所にある魔戒道のゲートから魔戒道に入り、そのまま修練場の近くまで移動していた。

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奏夜が修練場の会場に到着した時、既に夕方になっており、間もなく日が暮れるところであった。

 

会場には稽古を受けているであろう子供たちの姿はなく、既に訓練は終わっているものと予想することが出来た。

 

「……また、こうしてここへ来ることになるとはな……」

 

奏夜は修練場の会場を見渡しながら、このように呟いていた。

 

『奏夜……。そうか、お前は確か……』

 

奏夜とは付き合いの長いキルバは当然修練場時代の奏夜を知っており、そこで何があったのかを理解していた。

 

「とりあえず、誰かいないか調べないとな……」

 

魔竜の眼を探そうにも、誰かと出会わなければ話にならないため、奏夜は近くを歩いて誰かを探そうとしていた。

 

すると……。

 

「おーい、奏夜!!」

 

「あっ、統夜さん!」

 

偶然近くを通りかかった統夜が奏夜の姿を見つけて手を振っており、奏夜はそんな統夜に駆け寄っていた。

 

「お前も指令を受けたんだな」

 

「えぇ。統夜さんとリンドウもですよね?」

 

「まぁな。俺は昼頃ここに着いたが、大変だったぞ。魔戒騎士の卵たちに詰め寄られてな」

 

統夜はここで起こったことを振り返り、げんなりとしていた。

 

統夜は15歳で魔戒騎士となり、高校生という若さで様々な指令を乗り越え、牙狼と互角の力を持つ魔戒騎士に成長したため、魔戒騎士の卵たちにとって、統夜は憧れの的であった。

 

牙狼みたいに強くなれないけど、頑張れば統夜みたいになれるかもしれない。

 

そんな気持ちが統夜をより憧れの存在にさせたのであった。

 

「なるほど。だけど、その子たちの気持ち、俺にはわかる気がします」

 

「おいおい、お前もかよ」

 

奏夜もまた、15歳で魔戒騎士になったのだが、先輩騎士である統夜の背中を追いかけてきたところがあった。

 

初めて統夜に出会った時から、奏夜は統夜に憧れていたのである。

 

「ま、それはともかく、今日の訓練は終わったぞ。子供たちは今、飯を食っているところだ。今のうちに教官たちに挨拶をしてくるか?」

 

「はい。そうします」

 

「それじゃあ、案内するよ」

 

先にここへ来た統夜の案内で、奏夜は宿舎へと向かっていき、修練場で教官をしている人たちに挨拶をしていった。

 

奏夜が修練場で修行した時の教官はいないみたいであり、奏夜は安堵していた。

 

奏夜は統夜と共に、修練場の教官たちに挨拶して回っていた。

 

そして、最後に挨拶をしたのは、魔戒騎士には珍しい銀髪で、整った顔立ちをしている背の高い男性であった。

 

「……おぉ!統夜から後輩騎士が来ると聞いてはいたが、それは君のことだろう?」

 

その男性は、奏夜の顔を見るなり表情が明るくなり、歓迎ムードであった。

 

「はっ、はい。如月奏夜……です」

 

「なるほど……。奏夜か。良い名前だ。私の名は小津剣斗(おずけんと)。覚えておいてくれ!」

 

この男性は小津剣斗と名乗っており、そんな剣斗の迫力に、奏夜はタジタジになっていた。

 

「ふむ……。統夜から事前に話は聞いていたが、話に聞く以上にイイ魔戒騎士のようだな」

 

剣斗は、奏夜の体をまじまじと眺めながらこのようなことを言っていた。

 

「統夜は統夜で、若いながらも熟練した雰囲気を醸し出しており、とてもイイ!だが、奏夜。君は若さと情熱あふれる魔戒騎士だ!イイ!とてもイイぞ!」

 

「あ、アハハ……」

 

剣斗はとても熱い性格のようであり、そんな彼の一面を垣間見た奏夜は、苦笑いをしていた。

 

「君の若さや情熱あふれる戦いぶりを、修練場という舞台で拝むことが出来るのだろう?」

 

「い、いや、俺は……」

 

「ふふ、皆まで言うな。話は既に統夜から聞いているのでな」

 

どうやら剣斗はただ熱いだけではなく、冗談も達者なようであり、そんな剣斗の一面に奏夜は安堵していた。

 

「話にあったその眼のようなものは、この修練場のお守りとして保管されている。修練場の修行の際に、ホラーに襲われることが度々あったとのことでな」

 

「……」

 

どうやら魔竜の眼は実在するようであり、この地のお守りとして厳重に保管されていた。

 

その背景を聞いた統夜は、悲痛な面持ちをしていた。

 

(そっか……。確か統夜さんは修練場で……)

 

統夜も幼少の頃に修練場の修行に参加していたのだが、最終日にホラーの襲撃に遭い、共に修行をした仲間を失っていた。

 

統夜と同じ紅の番犬所に所属する、堅陣騎士ガイアの称号を持つ黒崎戒人もまた、統夜と同期であり、奇跡的にホラーの襲撃から生き延び、魔戒騎士となったのであった。

 

そんな2人の事情を奏夜は聞かされていたため、奏夜は統夜を気遣うかのように悲しげな表情をしていた。

 

「……悪い、心配かけちまったな。だけど、大丈夫だ。あいつらを殺したホラーは俺自身の手で倒したし、あいつらの想いも受け継いだから……」

 

統夜は右手をギュッと握りしめてこのようなことを言っていた。

 

「……統夜さん」

 

「話が湿っぽくなってしまったな。話を続けよう」

 

これ以上湿っぽい雰囲気を出すことを良しとしていない剣斗は、このように話を戻していた。

 

そんな剣斗の気遣いを、奏夜と統夜はありがたいと思っていた。

 

「その眼のようなものは、特別な結界で守られている。いかなる魔戒騎士や魔戒法師。さらにホラーだろうとこの結界を破ることは出来ないだろう」

 

この地のお守りでもある魔竜の眼は、とある場所に保管されているのだが、その場所は特別な結界が貼られている。

 

この結界はかなり強固な結界であり、結界を張った者くらいしか解除が出来ないものであった。

 

「……まぁ、それが本当なら安心ではあるけど……」

 

『奏夜、安心するのはまだ早いぞ』

 

「キルバの言う通りだな。尊士やジンガがここを強襲してくる可能性はあるしな。そうなると、ここで修行をしてる子供たちにも危害が及ぶ可能性がある」

 

統夜は神妙な面持ちで安心している奏夜に喝を入れていた。

 

『それだけではない。この修練場の人間にはあらぬ噂が出ているんだ』

 

「?噂?それはいったい?」

 

イルバが言った噂という言葉に、奏夜は首を傾げていた。

 

「……ホラーと結託している者がいるという噂が流れているのだ。私は当然信じてはいないが、もしそれが本当であれば、結界を解く手引きをする可能性もあるのだ」

 

「……」

 

剣斗の言葉通り、今回の修練場の教官の中にホラーと結託している者がいるという噂が流れていたのである。

 

魔戒騎士と言っても人間であるため、当然何かしらの陰我を抱えてしまったり、ホラーに弱みを握られることもある。

 

そんな人物が本当にいるのなら、結界解除の手引きを行う可能性があり得るのだ。

 

剣斗の噂を聞き、統夜は険しい表情になっていた。

 

「そんな!魔戒騎士がホラーと結託するなんて!もしそれが本当なら、その魔戒騎士は闇に堕ちたも同然じゃないか!」

 

「うむ。奏夜の言う通りだ。そんな噂が流れている故、当然元老院から派遣された保安部の連中の聞き取りも行われたが、そのようなことをしそうな者はいなかった。だからこそ、根も葉もない噂だと私は信じている」

 

剣斗は、今流れている噂が、デタラメな噂であるということを信じていた。

 

魔戒騎士の卵に魔戒騎士の何たるかを指導する教官がホラーと手を組むなど考えられないからである。

 

「……剣斗。お前のそういうところは嫌いじゃないが、やはりもう一度調べ直した方がいいんじゃないか?魔竜の眼を狙ってるジンガって男は油断ならない奴だ。どんな手を使ってくるのか……」

 

そんな中、統夜は今回の修練場の教官の中に確実に何かをしてくる奴が現れると疑いの目を向けており、慎重な姿勢になっていた。

 

「統夜さんの言うこともわかります。ですが、同じ魔戒騎士同士、そんな奴などいないと信じてみても良いんじゃないですか?」

 

『ふん、相変わらず甘いな、小僧』

 

『イルバの言う通りだ。お前だってジンガという男を見たろう?よくそれでそんな甘い考えを持てたものだ。疑わしき者は徹底的に調べなければな』

 

奏夜の意見に、イルバとキルバがこぞって奏夜に対して批判をしていたのである。

 

そんな中……。

 

「……イイ!実にイイぞ!!」

 

「……剣斗?」

 

剣斗のリアクションに、統夜は首を傾げており、奏夜も同様に首を傾げていた。

 

「どんなことがあろうと同士を信じようとする、その曇りなき心。私はそれを甘いとは思わない!」

 

「剣斗……」

 

剣斗は奏夜の考えを甘いと一蹴することなく受け入れており、そんな剣斗の言葉が、奏夜には嬉しかった。

 

すると……。

 

「ま、そういうところが奏夜のいいところなんじゃねぇのか?」

 

このようなことを言いながら奏夜たちの前に現れたのは、2人同様にここへやって来たリンドウであった。

 

「!リンドウ……」

 

「剣斗が教えてくれた魔竜の眼が保管されてるところに行ってきたが、異常はなかったぞ」

 

どうやらリンドウも既に魔竜の眼の場所に関する話や結界の話を聞いていたようであり、その話をもとに、魔竜の眼の保管場所の調査を行っていたようだ。

 

「ま、あれだけ大がかりで強力な結界が貼られてるんだ。誰だろうとそう簡単には手出しは出来ないだろう。これだけの結界を解くとなると間違いなく騒ぎになるだろうしな」

 

「……確かにそうかもしれないが……」

 

「統夜。お前さんも大人になったもんだ。だが、もし本当に誰かがホラーと結託してるなら、俺らが止めればいい。そのために俺たちが派遣されたんじゃねぇのか?」

 

統夜は様々な経験を積み、魔戒騎士として成長した故、慎重な考え方をしていたのだが、それをリンドウは見透かしており、それでいてそんな統夜をなだめる言葉を送っていた。

 

「……まったく……。リンドウには敵わないな……」

 

そんな言葉を真摯に受け取った統夜は、苦笑いをしていた。

 

「ま、俺はこう見えても色んな魔戒騎士を見ているからな。これくらいはお見通しって訳よ」

 

リンドウはこのように言いながら煙草を取り出すと、煙草を吸い始めていた。

 

「おいおい、リンドウ。ここで煙草とはイイとは言えんな。吸うなら他で吸ってもらおうか」

 

「えぇ?そんなケチくさいこと言うなよ。これでも大変なんだぜ?俺の管轄では煙草が吸えるところが少なくてよぉ」

 

「「アハハ……」」

 

このようなところはやはりリンドウなのだなと感じていた統夜と奏夜は苦笑いをしていた。

 

リンドウの言う通り、人界の現代社会は、やれ分煙だやれ禁煙だとあちこちで聞かれるようになり、路上での喫煙も注意されるようになっている。

 

喫煙者自体の健康問題や受動喫煙などの問題もあるからである。

 

そのため、リンドウは常に携帯灰皿を持ち歩いており、煙草を吸う場所の確保に苦労しているようだった。

 

「ったく……。人界のルールのないここだと心置き無く煙草が吸えるっていうのによぉ……」

 

リンドウはブツブツと文句を言いながら、煙草を吸うためにこの場を離れていった。

 

「……とにかく、その魔竜の眼とやらについてはそういうことだ。噂の真偽はともかくとして、お前たちはこの魔竜の眼を守るためにここへ来たのだろう?」

 

リンドウが離れて唖然とする空気を変えるために、剣斗は改めて統夜たちの目的を確認しており、2人は無言で頷いていた。

 

「ところで、魔竜の眼はこの修練場のお守りなんだろ?この修行が終わったらどうするつもりなんだ?」

 

奏夜はずっと気になっていた疑問を剣斗にぶつけていた。

 

この修行終了後の管理をどうするのか気になっていたからである。

 

「うむ。例年であれば、この近くにある里の蔵で保管されているのだが、事情が事情だ。恐らく今回は元老院が保管することになるだろう」

 

「なるほどな。確かに、元老院ならいくらジンガといえど簡単に手出しは出来ないからな」

 

「俺はここへ来てすぐにでも魔竜の眼を回収出来ないか掛け合ってみたんだが、これは修練場のお守りだから認められないと突っぱねられちまってな」

 

統夜は奏夜が来る前に魔竜の眼を先に回収する交渉をしていたのだが、この修行を管理する人間が許可を出さず、交渉は決裂していたのである。

 

「私の方からも話はしたのだが、頭の固い上の連中はどうも認めてくれなくてな……。元老院で魔竜の眼の保管をすると説得をするのにも苦労したよ」

 

どうやら剣斗も動いてくれたようであるが、魔竜の眼を修練場の修行終了後に元老院で保管すると説得するだけでも一苦労であった。

 

「とにかく、修練場の修行は明日には終わる。明日魔竜の眼を運ぶ時に結界は確実に解かれるだろう」

 

「狙われるとしたら恐らくはそこか……」

 

統夜は、魔竜の眼がジンガたちに狙われるタイミングを予想していた。

 

「だが、それよりも早く狙ってくる可能性もあるだろうな」

 

「あぁ。だから今夜は見張りをせねばなるまい。だが、まずは食事でもとって体力をつけてくれ。既に用意は出来ている」

 

「あぁ。そうさせてもらうよ。……行こうぜ、奏夜」

 

「はい、統夜さん」

 

ここへ来た本来の役割を果たす前に、まずは剣斗からの厚意を受け取ることにした2人は、剣斗の案内で食堂へと向かった。

 

途中、煙草を吸っているリンドウと合流し、奏夜たちは食堂に向かって食事をとることにした。

 

そんな食堂に向かう奏夜たちを遠くから見ている怪しい影があった……。

 

「……魔竜ホラーの眼……。誰にも渡すわけにはいかない……!」

 

その人物は、魔戒騎士のような容姿をしており、この地に眠る魔竜の眼を狙っているものと思われる。

 

この地に眠るニーズヘッグの眼は、いったいどうなってしまうのか?

 

そして、ニーズヘッグ復活を企むジンガと尊士はこの地に現れるのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『魔竜ホラーの眼か……。禍々しいオーラを感じるぜ。こいつは狙われるのもわかる気がするぞ。次回、「魔眼 後編」。姿を現わす、魔竜の眼!』

 

 




新キャラが登場しました。

新たに登場した剣斗は、魔戒騎士としてはかなり熱い男だったと思います。

剣斗のモデルとなっているのは、FF14に登場する「オルシュファン」というキャラです。

プレイ経験のある人は「あっ……」となるかもしれませんが、僕はこのキャラが好きなので、このキャラをモデルにしたキャラを出したいと思っていたのです。

剣斗はこれから奏夜とどのように関わってくるのか?

そして、次回は魔竜の眼が姿を見せます。

魔竜の眼を巡る争奪戦が始まってしまうのか?

それでは、次回をお楽しみに!


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