牙狼ライブ! 〜9人の女神と光の騎士〜   作:ナック・G

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お待たせしました!第37話になります!

今回でいよいよ合宿は終了となります。

もうちょっと短くまとめるつもりだったけど、まさか4話にもなるとは……。

ラブライブ!10話の話は前回で終わっているため、今回はオリジナル回となります。

奏夜たちと統夜たちはいったいどのような交流をするのか?

それでは、第37話をどうぞ!




第37話 「親交」

真姫の別荘で合宿を行った奏夜たちであったが、初日は海で遊ぶのが中心となり、練習らしい練習を行うことが出来なかった。

 

しかし、絵里の提案した「先輩禁止」によって、先輩後輩の垣根を取り除いた奏夜たちはさらに絆を深めることが出来て、翌日の練習は充実した練習を行うことが出来た。

 

そして練習終了後、穂乃果たちは1度風呂に入って練習での汗を流したところで、紬の別荘へと向かうことになった。

 

奏夜たちが別荘に到着した時には、既に17時を過ぎていたのである。

 

「ここが紬さんの別荘ですか……」

 

「この前来た時はちらっとしか見てないけど、じっくり見たらやっぱりでかいよな……」

 

奏夜は、紬の別荘の大きさを新たに実感して、驚いていた。

 

「……それじゃあ、中に入ろうよ」

 

大きさな別荘に緊張しながらも、穂乃果が先導して別荘に入ろうとしていた。

 

すると……。

 

「……おっ、お前たち、来たんだな」

 

入り口近くにある中庭で、。バーベキューの準備をしていた統夜が奏夜たちの姿を見つけて、声をかけていた。

 

統夜は魔法衣を脱いでおり、Tシャツにジーパンというラフな格好をしており、頭にタオルを巻いてコンロの火起こしをしている。

 

その姿は魔戒騎士とはとても思えず、何かしらのサークルの大学生といってもおかしくない程だった。

 

「……あっ、統夜さん!」

 

「なんか、いつもと雰囲気が違うので気付きませんでした」

 

奏夜は統夜の姿を見つけて手を振っており、海未は魔法衣を着ていない統夜の容姿に違和感を感じながら苦笑いをしていた。

 

こうして奏夜たちは統夜が火起こしを行っているコンロのところへと向かっていった。

 

「……他の皆さんは?」

 

奏夜は周囲を見回すが、そこには統夜以外の姿はなかった。

 

「唯、澪、律、梓とお前らがスーパーで見かけた晶は野菜の下ごしらえをしたりおにぎりを作ったりしている。ムギと、晶と同じバンドの2人はスーパーでバーベキューの肉や飲み物の買い出しに行ってるよ」

 

どうやら他のメンバーはバーベキューの準備を行っているみたいであった。

 

「……統夜さん。俺たちも手伝います。何かやることはありますか?」

 

先輩である統夜たちだけに準備をさせるのは申し訳ないと思っていた奏夜は自分たちも何か手伝いをしたいと申し出ていた。

 

「いいんだよ。これはみんなで話し合って決めたことだ。準備は俺たちでやるってな。お前らはお客さんだしな」

 

統夜たちは奏夜たちを出迎えると聞いた時に、このようなことを話し合っていた。

 

「ですが……」

 

「いいっていいって。みんなはみんなで準備を楽しんでるしな。おっ、噂をすれば……」

 

統夜が誰かの気配を感じると、野菜の下ごしらえやおにぎりを作っていたチームが中庭にやって来ていた。

 

「あっ、奏夜君たちだ!」

 

「いらっしゃい!よく来たね♪」

 

唯と梓が奏夜たちの姿を見つけると、奏夜たちのことを歓迎していた。

 

奏夜たちは梓のことをジッと見ていたのだが……。

 

『誰?』

 

と、声を揃えて言っていた。

 

「まさか、奏夜君たちにも!?」

 

奏夜たちにこのようなことを言われ、梓は驚愕していた。

 

何故梓がこのようなことを言われていたのか……。

 

それは、梓がまるで別人のように日焼けをしていたからである。

 

梓はどうやら日焼けをしやすいタイプのようであり、合宿の度にこのように日焼けをしては、色んな人からこのようなリアクションをされている。

 

日焼け止めを塗っても効果はないらしく、やはり日焼けをしてしまうようだ。

 

「あっ、梓さんでしたか……。すいません、本当に気付きませんでした……」

 

「もぉ、気付いてくれてもいいのに……」

 

後輩にあたる奏夜たちですら気付いてくれなかったからか、梓はぷぅっと頬を膨らませながらプリプリと怒っていた。

 

その姿はとても大学1年生には見えず、そんな梓に、ことりがキュンときていた。

 

……他のメンバーも大なり小なりはあっても梓を可愛いと思っていたのだが……。

 

「……ところで統夜先輩、火はつきましたか?」

 

「あぁ。今しがたついたぞ」

 

統夜は奏夜たちと話をしながらも火起こしをしており、先ほど火がついたみたいであった。

 

「おぉ!いい感じだね♪」

 

「そうだな。後はムギたちが到着すればすぐに始められそうだよ」

 

どうやら野菜の下ごしらえやおにぎりも出来上がっているようであり、買い出し班が戻ってくればすぐにでもバーベキューは始められそうだった。

 

すると……。

 

「みんなぁ、お待たせぇ♪」

 

買い出しに向かっていた紬たちが戻ってきた。

 

「あっ、紬さん!」

 

「まぁ、みんなも来てたのね♪」

 

紬は奏夜たちの姿を見つけると、おっとりとした笑顔を向けていた。

 

「……あっ!もしかしてこの子たちってμ'sの子達だよね!」

 

「うん、そうみたい……」

 

茶色のショートヘアの少女が穂乃果たちを見つけてこのようなことを言っており、茶色の長髪に背の高い女性が頷いていた。

 

「あっ、あの。あなたたちは?」

 

「あぁ、そういえば初めましてだよね?私は吉田菖(よしだあやめ)。唯ちゃんたちとは違うバンドだけど、軽音部に入ってるんだ。ちなみに晶と同じバンドね」

 

最初に茶色のショートヘアの女性……吉田菖がこのように自己紹介をしていた。

 

菖は晶が奏夜たちと会ったことを話していたため、このような自己紹介になっていたのである。

 

「……林幸(はやしさち)。2人と同じバンドを組んでる。よろしくね」

 

続いて茶色の長髪に背の高い女性……。林幸がこのように自己紹介をしていた。

 

幸は、菖と比べたら大人しめな印象であった。

 

「そして私は和田晶。菖と幸の3人で恩那組(おんなぐみ)ってバンドを組んでいるんだよ」

 

「!!」

 

どうやら奏夜は恩那組という名前に聞き覚えがあったからか、過剰に反応していた。

 

「……?そーくん、どうしたの?」

 

「い、いや。何でもない!」

 

「?」

 

奏夜は何故か動揺していたのだが、それが何故だかわからず、穂乃果は首を傾げていた。

 

「それにしても、幸さん……。でしたっけ?背も高いし、スタイルも良いし、素敵です!」

 

「凛もそう思うにゃ!とっても素敵にゃ!」

 

花陽と凛は、幸のスタイルをべた褒めしていた。

 

それを聞いた幸は……。

 

「……」

 

何故か前かがみになって縮こまっていた。

 

「あー……。ごめんね?幸は背が大きいことがコンプレックスなんだよね」

 

何故幸がこの状態になっているのか。

 

菖が幸に代わって説明するのだが、何故か申し訳なさそうにしていた。

 

「え?そうなんですか?」

 

「ごめんなさい……。そこを気にしてるとは知らなくて……」

 

「うぅん。気にしないで。人のコンプレックスなんて知らないのは当然だから」

 

続けて幸は、穏やかな表情でこのように答えており、それを見た花陽と凛の表情も明るくなっていた。

 

「それにしても、幸さんはどうして背が高いのがコンプレックスなんですか?」

 

奏夜は何故幸がこのコンプレックスを持っているのか、根本の部分を聞いていた。

 

「だって……。背が高いと、可愛い服があまりなくて……」

 

「わかるわかる!本当に可愛い服ってなかなか見つからないよな!」

 

「私もわかる気がします。服を選ぶのにも時間がかかりますし……」

 

幸の話に、同じように背が高く、スタイルの良い澪と絵里が賛同していた。

 

この3人は意気投合し、朗らかに話をしていたのだが……。

 

「……ぐぬぬ……!」

 

背が高くスタイルの良い3人の会話に、にこは面白くないと思っていたからか、悔しそうにしていた。

 

「にこちゃん!その気持ち、私にもわかるよ!」

 

にこは自分が小柄でスタイルが良くないことにコンプレックスを持っており、似たような体型の梓はそんなにこにどういをしていた。

 

そんな梓を見たにこは、無言で梓に手を出しており、梓とにこは硬い握手をかわしていた。

 

「……梓まで乗っかるなよ……」

 

改めて意気投合している梓とにこを、統夜はジト目で見ていた。

 

「まぁまぁ♪とりあえず準備をして始めましょうか♪」

 

紬がその場をなだめると、紬たちがスーパーで買ってきた肉類を取り出し、さらに飲み物も取り出していた。

 

「……」

 

奏夜は取り出した飲み物類を見て、驚いていた。

 

「?奏夜、どうしたんだ?」

 

「いえ、皆さんは大学生ですよね?酒らしいものが見当たらないなと思いまして……」

 

「あぁ、なるほどな……」

 

奏夜の言葉の意図を理解した奏夜は、苦笑いをしていた。

 

「みんなで話をしたんだよ。奏夜たちは高校生な訳だし、堂々と酒を飲むのはいただけないしな」

 

「まぁ、あたしとしちゃあ、ちょっとは飲みたかったけどな」

 

統夜たちは事前に話し合いをした時に、奏夜たちと一緒にバーベキューをする時は飲酒を控えようという話になったのである。

 

「おい、律!お前はまだ20歳になってないだろ?まだお酒は駄目じゃないか!」

 

「へいへい。ったく……。澪は相変わらず真面目だなぁ……」

 

澪がこのように律をなだめる中、律は唇を尖らせていた。

 

「こちらとしても、そうしていただけると助かります。正直、皆さんがお酒を飲んでいたらどうしようと思っていましたから」

 

どうやら海未は、大学生である唯たちが普通に酒を飲んでいたら酔っ払う唯たちとどう接して良いかわからないため、そこだけが気がかりだった。

 

今回のバーベキューはノンアルコールで行われると知り、海未だけではなく、穂乃果たちも安堵していた。

 

こうして、不安要素が取り除かれたことにより、バーベキューは開始された。

 

今回のバーベキューはかなりの人数で行われているため、大いに盛り上がっていた。

 

奏夜たちは普段あまり交流することの出来ない統夜たちとの会話を楽しんでいた。

 

特に、ほとんど交流のなかった恩那組のメンバーとは、話題も大いに広がったからか、盛り上がっていた。

 

奏夜を含めた2年生組は、統夜たちのライブを聴きに大学まで行っており、その時に恩那組もライブをしているのだが、面識がなかったため、気にして演奏を聴いていなかった。

 

そのため、恩那組の演奏には興味を持っており、今度聴かせてくれると約束をしてくれたのである。

 

そんな話をしながら、奏夜たちは統夜たちと共に、バーベキューを楽しんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

バーベキューが終了すると、その場にいる全員はまったりムードでのんびりしていた。

 

しばらくのんびりしていると……。

 

「ねぇねぇ。花火しよぉ♪」

 

紬がどこからか花火を持ってくると、満面の笑みを浮かべてこのような提案をしていた。

 

「おっ!いいね!凛も花火をしたいにゃ!」

 

凛も昨日やりたいと思っていた花火を提案され、ノリノリであった。

 

他のメンバーも反対する人はおらず、花火は行われることになった。

 

奏夜たちにとってはμ'sのメンバーと行う初めての花火のため、大いに楽しんでおり、統夜たちもまた、久しぶりの花火を楽しんでいた。

 

そして現在、奏夜たちは線香花火を楽しんでいた。

 

儚げに燃える線香花火に、奏夜たちは集中していたからか、自然と黙り込んでおり、パチパチパチと線香花火の音が響き渡っていた。

 

しかし……。

 

「あっ……」

 

線香花火は儚いものであり、その火種が落ちると、紬は残念そうにしていた。

 

「やっぱり、線香花火が落ちると、なんか悲しい気持ちになっちゃうわよね」

 

紬は苦笑いをしながらこのようなことを言っており、そんな紬の顔を見た奏夜たちは穏やかな表情で微笑んでいた。

 

「あっ!こっちも火が消えそうだよ!りっちゃん!凛ちゃん!!」

 

「おう!」

 

「わかったにゃ!!」

 

そうこうしているうちに唯の手にしていた線香花火の火も消えそうになっており、律と凛は唯の呼びかけで賛同していた。

 

「「「合体!線香花火マン!!」」」

 

唯、律、凛の3人はまったく打ち合わせをしていなかったが、3人の息はピッタリと合っていた。

 

「あぁ!やっぱりずるい!!」

 

3人の線香花火が合わさり、火が大きくなっており、そのことに紬は膨れっ面になっていた。

 

「「「……阿呆……」」」

 

そんな3人に、統夜、澪、晶の3人は呆れてジト目になっていた。

 

「ふふふっ……」

 

そんな統夜たちの様子を見て、穂乃果は笑みを浮かべていた。

 

「?どうした、穂乃果?」

 

「エヘヘ……。やっぱりこの人数で遊ぶのは楽しいなぁって思って♪」

 

「……あぁ、そうだな……」

 

楽しそうに遊びながら無邪気に微笑む穂乃果を見た奏夜は、穏やかな表情で微笑んでいた。

 

「「……!……////」」

 

お互いに微笑む表情を見てドキッとしたからか、2人揃って頬を赤らめており、2人は慌てて視線をそらしていた。

 

「……奏夜の奴にも、春は近いのかもしれないな……」

 

そんな初々しい反応をしていた奏夜と穂乃果を見て穏やかな表情で笑みを浮かべていた。

 

「……統夜先輩は鈍感なんだから、わかった風なことを言わないでくださいよ」

 

統夜の呟きからは色恋に関してわかってます感が出ており、それが気に入らなかった梓はジト目で統夜のことを見ていた。

 

「……なんかひどい言われようだな……」

 

自分の彼女に面と向かって鈍感と言われてしまい、統夜は苦笑いをしていた。

 

「いーや。統夜は鈍感だよ!」

 

「そうだぞ!あんなことが起こるまで梓の気持ちに気付かなかったくせに!」

 

さらに、律と澪が畳み掛けるように統夜に追求をしていた。

 

「……アハハ……」

 

ここまで言われてしまえば統夜はぐうの音も出なかったからか、苦笑いをしていた。

 

「……ま、私たちも統夜の話は聞かせてもらったけど、確かに鈍感だよな……」

 

唯たちが大学で知り合った恩那組のメンバーでさえも、統夜のことは鈍感だと思っていた。

 

ここまでの言われように、統夜だけではなく、統夜の視線の先にいた奏夜ですら苦笑いをしていた。

 

このような感じで、花火は行われ、奏夜たちも統夜たちも花火を楽しんでいたのである。

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

「……肝試しをしよう!」

 

花火が終わり、花火の片付けも終わったところで、律がこのような提案をしていた。

 

「次から次へと……」

 

「でも、面白そうにゃ!」

 

律の提案に、晶は呆れていたのだが、どうやら凛は乗り気のようだった。

 

「私は乗り気じゃないんだけどな……」

 

しかし、澪は肝試しには乗り気ではないようだった。

 

「あれぇ?澪ってもしかしてこういうの苦手だったっけ?」

 

律はニヤニヤしながら澪のことをからかっていた。

 

「ぜっ、全然余裕よ!やってやろうじゃないの!」

 

そんな律の言葉にカチンときた澪は、ムキになって肝試しを行うことを了承していた。

 

見事に澪を焚きつけた律は、見事なまでにしたり顔をしていた。

 

「……まぁ、たまにはこういうのも悪くはないか」

 

「いいじゃん!いいじゃん!面白そうだし」

 

「うん、私もそう思う」

 

どうやら晶、菖、幸の3人もまた、肝試しには乗り気のようだった。

 

「肝試しですか……」

 

「そ、そうね……」

 

肝試しと言葉を聞いた海未と絵里は、少しばかり身構えていた。

 

「?海未と絵里はもしかして肝試しとかは苦手なのか?」

 

「えぇ。私はあまり得意ではありません……。ですが、たまには良いと思います」

 

どうやら海未は肝試しが苦手みたいだが、親交を深めるには良いだろうと覚悟を決めていた。

 

一方、絵里は……。

 

「へ!?な、何言ってるのよ!!ぜんっぜん!怖くないわ!」

 

海未とはうって変わり、怖くないと言っているのだが、それが強がりだというのは誰の目からも明らかであった。

 

こうして肝試しは始まったのだが、紬の別荘の敷地内にある林を一周するというものであった。

 

驚かす役は有志で決めており、残ったメンバーはくじ引きにて、肝試しへ向かうグループを決めていた。

 

くじ引きの結果、このような組み合わせになっていた。

 

 

統夜、穂乃果、澪

 

奏夜、絵里、梓

 

海未、晶、にこ

 

真姫、紬、幸

 

ことり、唯、花陽

 

脅かし役……律、希、菖、凛

 

 

 

 

 

脅かし役は準備のため4人は先に林へと向かっていき、律から連絡を受けた後に肝試しは始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜統夜、穂乃果、澪の場合〜

 

 

 

トップバッターであるこの3人は、ゆっくりと林を歩いていた。

 

澪の提案で、澪を中心に手を繋ぐことになったのだが……。

 

「……だ、大学生にもなって肝試しなんて……なぁ。アハハ……」

 

澪は苦笑いをしながら強がっていたのだが……。

 

「あ、あの……。澪さん、手が痛いです」

 

「あっ、ご、ごめん!つい!」

 

手を握る力がかなり強かったようであり、穂乃果が痛みを訴えると、澪は慌てて穂乃果と手を離していた。

 

しかし……。

 

「いだだだだだだ!!何で俺の手は離さないんだよ!」

 

澪は統夜の手を離そうとはせず、先ほどよりも手を握る力は強くなっていた。

 

『おい、やめろ!俺様も痛いんだよ!いだだだだだだ!!』

 

どうやら統夜だけではなく、相棒であるイルバも痛みを感じており、2人は激痛に苦しんでいた。

 

「アハハ……」

 

そんな様子を見ていた穂乃果は苦笑いをしていた。

 

しばらく林を歩いていると、ガサガサっと物音が聞こえてきた。

 

「ひっ!?な、何だよ!?」

 

突如聞こえてきた物音に、澪は怯えており、さらに手の力は強くなっていた。

 

「『いだだだだだだ!!』」

 

そんな状況でも、統夜とイルバは痛みに苦しんでいた。

 

すると……。

 

「に"ゃ"ーー!!化け猫だにゃあ!!」

 

簡単な小道具で化け猫に扮した凛が、統夜たちを驚かそうとしていた。

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

凛がこのように脅かしたことに対して、澪は過剰に反応しており、顔が真っ青になりながら絶叫していた。

 

「うぉっ!?」

 

「!!?」

 

統夜と穂乃果は、凛の脅かしにびっくりしたのではなく、澪の絶叫に驚いていた。

 

そして澪は逃げるように林の奥へと進んでいき、統夜と穂乃果は慌ててそれを追いかけていった。

 

「……ここまでびっくりしてくれるなんて……。やった甲斐があるってもんにゃ!」

 

凛はどうやら澪のリアクションに満足しており、したり顔をしていた。

 

そして凛は次に来るグループを待ち構えていたのだが、先ほどよりも気合が入っていたのである。

 

その後、林の中に、澪の叫び声だけが響き渡っていた。

 

 

 

 

 

 

 

〜奏夜、梓、絵里の場合〜

 

 

 

 

「……ひっ!?な、何なのよ!今の叫び声は!」

 

奏夜、梓、絵里の3人がスタートして間もなく、澪の叫び声が聞こえており、その叫び声に、絵里は怯えていた。

 

「……澪先輩……」

 

梓は叫び声をあげているのが澪だとわかっており、梓は頭を抱えていた。

 

「アハハ……。あれって、澪さんなんですね……」

 

奏夜は叫び声の正体を知ると、苦笑いをしていた。

 

それよりも、奏夜は現在、気になることがあった。

 

「……なぁ、絵里。いくらなんでもくっつき過ぎじゃないか?」

 

絵里は怖がっているからか、奏夜にピタッとくっついて離れようとしなかった。

 

「な、何言ってるのよ!き、気のせいでしょ?」

 

こう言いながら絵里は強がっていたのだが、やはり奏夜から離れようとはしなかった。

 

「ま、別にいいんだけどさ……」

 

奏夜としても、そこまで悪い気はしなかったからか、この状態を受け入れていた。

 

しばらく林を歩いていると……。

 

「に"ゃ"ーー!!化け猫だにゃあ!!」

 

先ほど同様に、凛が奏夜たちを驚かしていた。

 

「きゃあっ!」

 

凛の脅かしにびっくりしたからか、絵里はさらに奏夜にくっついていた。

 

「ちょっ!え、絵里!////」

 

さすがにピタッとくっつかれて、恥ずかしくなったからから奏夜は頬を赤らめていた。

 

すると、何故か凛は恨めしそうに奏夜のことを見ていたのだが、とりあえずこの関門は突破することが出来た。

 

絵里は奏夜にくっつきながらもプルプルと震えており、そんな絵里を見ていると、不思議と守ってあげたくなる感情になっていた。

 

奏夜は穏やかな表情で進んでいき、梓は疎外感を感じながらもついて行った。

 

続けては菖と律がお化けに扮して奏夜たちを驚かそうとしていたのだが、その時も絵里は奏夜にくっついていた。

 

折り返し地点も越え、ゴールまではあともう少しのところまで来たのだが……。

 

「……スピリチュアルやぁ!!」

 

ここで真打登場と言わんばかりに希が現れると、希は某ホラー映画に登場する、テレビから出てくる人物のような扮装をして、奏夜たちを驚かしていた。

 

「ひっ!?」

 

これにはさすがの梓も驚いており、絵里に至っては……。

 

「嫌ぁっ!」

 

希の扮装はかなりの破壊力があったからか、絵里は奏夜に抱きついていたのである。

 

「ちょっ!?さ、さすがにそれは……////」

 

絵里に抱きつかれた奏夜は、絵里の豊満なバストを体感しており、顔を真っ赤にしていた。

 

しばらく奏夜に抱きついていた絵里は、涙目になりながら奏夜から離れると、その場でうずくまっていた。

 

すると……。

 

「……ち……る……」

 

絵里は小さな声で何かを呟いていた。

 

「?絵里?」

 

絵里の言葉を聞き取ることが出来なかったからか、奏夜は首を傾げていた。

 

すると……。

 

「……エリチカ!おうち帰る!!」

 

絵里は涙目でこのようなことを言っており、近くにあるゴール目掛けて走っていった。

 

「おい!絵里!ちょっと待てって!」

 

奏夜は慌てて逃げるようにゴールへと向かっていく絵里を追いかけていった。

 

「……やっぱり私、蚊帳の外だよね……」

 

一方梓は、このように呟いて疎外感を感じながらも、絵里と奏夜を追いかけていった。

 

「……あちゃあ……。ちょっと刺激が強過ぎたかなぁ……」

 

脅かし役をしていた希は、絵里の予想以上のリアクションに驚いて、少しだけ申し訳なさそうにしていた。

 

「でもまぁ、面白いものは見れたから、良しとしよか♪あんなエリチ、ウチも見たことないしな♪」

 

先ほどの絵里は希も見たことない一面を出していたようであり、ニヤニヤしながら次に来るグループを待ち構えていた。

 

続けて行われた海未、晶、にこチームは、海未が少しだけ怯えながらも、特にこれといって大きな出来事はなく終わっていた。

 

この次の真姫、紬、幸の3人に至っては、誰も驚くことはなく、脅かし役にとってみたら1番やりにくい展開となっていた。

 

最後の唯、花陽、ことりの3人に至っては、1番ほんわかしているため、脅かし役が驚かしても、反応はあるが、雰囲気は独特なものであった。

 

こうして、肝試しが終了すると、奏夜たちは真姫の別荘へと戻っていった。

 

唯たちはこの別荘に泊まることを勧めてきたのだが、帰る準備もしなきゃいけないため、奏夜たちはその提案を断っていた。

 

それは統夜たちも同様なため、この日はここで解散となった。

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

奏夜たちは真姫の別荘に戻ってきた。

 

まずは女性陣が風呂に入ることになり、その間、奏夜はのんびりと体を休めていた。

 

1時間もしないで女性陣が戻ってきたため、奏夜は大浴場に向かい、風呂に入ってのんびりとしていた。

 

奏夜が風呂から戻ってくると、昨日同様に布団が敷いてあり、既に穂乃果たちは自分の場所を確保していた。

 

すると、昨日と同じ場所が空いていたため、奏夜はその布団へと向かっていった。

 

「やれやれ……」

 

自分には布団の場所を選ぶ権利はないみたいであり、苦笑いをしていた。

 

「……奏夜、今日は私が隣だからね」

 

「そーや君。よろしくにゃ!」

 

今回奏夜の両隣は、絵里と凛のようであった。

 

「あぁ、よろしくな」

 

「とりあえず、明日も早いんだし、もう寝ましょう」

 

絵里がこのように提案をすると、奏夜たちは口々に「は〜い!」と返していた。

 

こうして、部屋の電気を消すと、奏夜たちはそれぞれ眠りについていった。

 

この日は昨日のように枕投げが行われることはなかった。

 

そのため、奏夜もこの日はのんびりと眠ることが出来ていた。

 

しかし、そんな奏夜の安眠も長くは続かなかった。

 

「……奏夜。ねぇ、奏夜」

 

「……ん?んぁ……?」

 

誰かに起こされたため、奏夜はうっすらと目を開けるのだが、そんな奏夜の瞳に映っていたのは、絵里の姿であった。

 

「なんだよ、絵里。まだ夜中だろ?」

 

いきなり起こされたため、奏夜は面白くなさそうにのろのろと起き上がっていた。

 

「……ねぇ、ちょっと、夜風に当たりにいかない?」

 

「……出来れば寝たいからパスしたいんだけど……」

 

「ちょっと、そんなことを言わないでよ」

 

「……わかったよ。ちょっとだけだぞ」

 

奏夜は渋々絵里の提案を受け入れると、絵里の表情はぱぁっと明るくなっていた。

 

こうして奏夜と絵里は、こっそりと別荘を抜け出すと、近くの浜辺で夜風に当たっていた。

 

「うーん……!ちょっとひんやりはするけれど、気持ちいいわね♪」

 

絵里は浜辺で夜風に当たりながら、満足そうにしていた。

 

「ったく……。その格好だと風邪ひくぞ」

 

奏夜は羽織っていたカーディガンを脱ぐと、それを絵里にかけてあげていた。

 

「ありがとう♪優しいのね♪」

 

「べっ、別に……。これくらいは普通だろ?」

 

「クスッ、まるで真姫みたいなことを言っているわね」

 

奏夜の照れ隠しの態度を見ていた絵里は、クスリと笑みを浮かべていた。

 

「……ねぇ、奏夜」

 

「ん?どうした、絵里?」

 

「今日の肝試しなんだけど……。私、すっごくおかしかったわよね?」

 

どうやら絵里は肝試しの時の話をするために奏夜を呼び出したようであり、絵里は浮かない表情をしていた。

 

(……なるほど、その話をするために俺を呼んだのか)

 

奏夜もそのことを察しており、ウンウンと頷いていた。

 

「いや、驚いたけど、生徒会長をしている絵里の知られざる一面を見れて得した気分だよ」

 

「もぉ……。意地悪ね、奏夜は……」

 

奏夜がニヤニヤしながらおどけるのを見た絵里は、ぷぅっと頬を膨らませていた。

 

「奏夜、今日のことはみんなには内緒にして欲しいの。お願い!」

 

絵里は肝試しの時に見せた一面を他の人には知られたくないようであり、奏夜に必死に頼み込んでいた。

 

「まぁ、そこまで必死に頼み込まれちゃ、断る理由はないし……」

 

「本当!?ありがとう、奏夜!」

 

奏夜が自分のお願いを聞いてくれるとわかった絵里の表情は、ぱぁっと明るくなっていた。

 

すると絵里は、ゆっくりと奏夜に近付くと……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チュッ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……へ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絵里は奏夜の頬にキスをしており、一瞬何が起こったのかわからなかった奏夜は呆然としていた。

 

「……お願いね♪奏夜♪」

 

絵里は少しだけ頬を赤らめて、恥ずかしそうにしながら、ウインクをしておどけていた。

 

「あっ、あぁ……」

 

未だに状況が飲み込めない奏夜は、唖然としながらもこう答えていた。

 

「……話はそれだけ♪さぁ、戻りましょう、奏夜!」

 

絵里は満面の笑みを浮かべながら、別荘へと戻っていった。

 

奏夜は別荘へと戻ろうとはせず、その場にポツンと立ち尽くしていた。

 

「……え?い、今のって……。あれだよな?いったいどういうこと……なんだ?」

 

奏夜はここでようやく自分が何をされたのかを理解したのだが、絵里の意図が読み取れず、余計に唖然としていた。

 

絵里は自分のことが好きなのか?

 

一瞬そのようなことを考えたのだが、ブンブンと首を横に振り、そんな考えを一蹴していた。

 

それは自分の勘違いだと、思うようにしていた。

 

先ほどの絵里の行動はただの気まぐれだと思っていたからである。

 

絵里の気持ちの真意はわからなかったが、魔戒騎士としてだけではなく、μ'sのマネージャーとしても忙しくしている奏夜は、そんな浮ついた気持ちでいられなかった。

 

こうして自分の気持ちに蓋をした奏夜は、そのまま別荘へと戻っていった。

 

「……これはなかなか面白いものが見られたなぁ♪」

 

実は先ほどの一部始終を希は見ており、ニヤニヤしながら別荘へ戻っていく絵里や奏夜を見送っていた、

 

「これはこれで話しても面白そうやけど、黙ってた方が良いかもしれへんな」

 

希は穂乃果たちにこの話をしようかと思っていたのだが、絵里が奏夜にキスをしたということがバレれば大波乱になりそうだったので、あえて黙っておくことにした。

 

こうしてこの日の夜は更けていき、翌日、朝に少しだけ練習を行ってから帰り支度を行った。

 

こうして奏夜たちは別荘を後にして、秋葉原へと帰っていった。

 

μ'sにとって初めての合宿は、このような形で幕を閉じたのであった。

 

合宿は終わったが、まだ夏休みは終わった訳ではなかった。

 

そして、ラブライブ出場グループが決まるのも、少しずつ迫ってきていた……。

 

 

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『ずいぶんと懐かしい場所を訪れることになったな。まさか、この場所でこのようなことをするとはな……。次回、「魔眼 前編」。嫌な邪気が迫ってくるのを感じるぞ!』

 

 




KKE!KKE!

ここまで絵里を目立たせるつもりはなかったけど、こうなってしまいました(笑)

絵里がμ'sのメンバーになって、絵里のフラグが急速に進んでいる……。

それにしても、奏夜はうらやまけしからん!(笑)

これは統夜にも奏夜にも言えることですが、2人は魔戒騎士であるけど、かなりのリア充ですよね。

あと、菖と幸が登場したことで、「けいおん! college」のメインキャラは全員登場しました!

「けいおん! high school」のメインキャラも出したいけど、出せるだろうか……?

さて、次回は前後編ではありますが、牙狼メインのオリジナル回となっております。

奏夜たちは夏休みであるため、しばらくオリジナル回が続きますが、ご了承ください。

タイトルが魔眼とあるため、魔竜の眼に関して何か大きな動きがあるのか?

それでは、次回をお楽しみに!


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