牙狼ライブ! 〜9人の女神と光の騎士〜   作:ナック・G

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お待たせしました!第3話になります!

この小説を投稿してまだ1週間も経っていませんが、お気に入りが10件を越えました!

これは僕も予想外でびっくりしていますが、お気に入り登録をしてくれた皆さん、本当にありがとうございます!

これからも牙狼ライブ!をよろしくお願いします!

前置きが長くなりましたが、今回の話はラブライブ!の話がメインになっています。

廃校阻止のアイデアを奏夜たちは見つけることが出来るのか?

それでは、第3話をどうぞ!





第3話 「提案」

音ノ木坂学院の廃校が理事長から告げられた日、穂乃果はなんとか廃校を阻止するべく幼馴染である海未やことりとアイディアを出し合うのだが、これといった解決策は見いだせなかった。

 

その日の夜、穂乃果は用事があると言っていた奏夜を探していたのだが、その時にホラー、ラビットールに襲われてしまいそうになっていた。

 

奏夜はそんな穂乃果を助け、ラビットールを討滅した。

 

その翌日、いつもより早く起きた奏夜は、早めにエレメントの浄化を終わらせ、穂乃果との待ち合わせ場所であるUTX学院へと向かっていた。

 

《……おい、奏夜》

 

間もなくUTXに着こうとしているタイミングで、キルバがテレパシーを使って奏夜に話しかけていた。

 

(?何だよ、キルバ)

 

奏夜は立ち止まったりせず、移動をしながらキルバに応じていた。

 

《昨日のことなんだが、何故あのお嬢ちゃんの記憶を消さなかったんだ?》

 

魔戒騎士がホラーと戦う時、助けた人間のホラーや魔戒騎士に関する記憶を消さなければいけない。

 

これは、ホラーや魔戒騎士の存在を世間に広めることを避けるためである。

 

ホラーの存在が世間に広まってしまっては、隣人がホラーなのかもしれないと疑心暗鬼に陥り、大混乱になってしまうからである。

 

しかし、奏夜は昨日助けた穂乃果の記憶を消そうとはしなかったのである。

 

(もちろんそうしなきゃいけないのは知ってたさ。だけど、ホラーに関することだけとはいえ、穂乃果の記憶を消すなんて俺には出来なかったんだよ)

 

このように答える奏夜は、神妙な面持ちをしていた。

 

《……相変わらず甘いな、奏夜》

 

(言われなくてもわかってるっての)

 

キルバからの痛い指摘に、奏夜は唇を尖らせていた。

 

(……!!待てよ……。統夜さんも確か梓さんたちに魔戒騎士の秘密を話したって言ってたけど、その時は、こんな気持ちだったのか?)

 

奏夜にとっては尊敬する先輩騎士である月影統夜も、かつては軽音部の仲間たちをホラーから救ったのだが、記憶を消すことは行わず、騎士の秘密を話していた。

 

本来それは許されないことであるのだが、そうすることによって救われたことも多々あったのであった。

 

奏夜が、かつての統夜の心境を察していたその時であった。

 

「……あっ、そーくん!こっちこっち!!」

 

気が付けばUTXに到着しており、近くにいた穂乃果がブンブンと手を振っていた。

 

「……おう!今行く!」

 

穂乃果の存在を捉えた奏夜は、そのまま穂乃果の方へと駆け出していった。

 

(……ま、そういうことで、この話は終わりな)

 

《やれやれ……。仕方ないな……》

 

キルバとしても、奏夜に言いたいことはまだあったのだが、穂乃果がいることもあり、これ以上の追求はやめることにした。

 

「ねぇねぇ、そーくん!この学校凄いよ!学校の中にエスカレーターがあるんだよ!エスカレーター!」

 

どうやら穂乃果は少しだけこの学校の様子を見ていたようであり、興奮冷めやらぬといった感じであった。

 

「はいはい。それにしても、他校の生徒が何でこんなに……」

 

奏夜は周囲を見回すのだが、何故かUTXの生徒以外にも、音ノ木坂の生徒や、他の学校の生徒の姿もあった。

 

それが何故かわからず、首を傾げていたのだが、突然黄色い歓声が上がったため、奏夜は穂乃果を連れてその歓声のした場所へと移動した。

 

すると、大型モニターの前に男女問わず若者が集まっていた。

 

「……何だこりゃ?」

 

奏夜にしてみたら何が何やら理解出来なかったのだが、若者たちは、大型モニターに映る3人の少女に夢中になっていた。

 

『UTXへようこそ!』

 

3人の少女がこう挨拶をしたと思ったら、PVらしきものが映し出されていた。

 

「あっ、この人たちって……」

 

何かを思い出した穂乃果は、手にしていたUTXのパンフレットを開いて確認をしていた。

 

「そのパンフレット。いつの間に手に入れたんだよ……」

 

まさか穂乃果がパンフレットを持っているとは思っておらず、奏夜は苦笑いをしていた。

 

何枚かページをめくっていると穂乃果は、大型モニターに映っている3人の姿を見つけた。

 

そこには「A-RISE(アライズ)」というキーワードと、「スクールアイドル」というキーワードが載っていた。

 

「ふーん……。こんなこともやってるんだなぁ……」

 

奏夜は、穂乃果の開いているパンフレットと大型モニターを交互に見比べて感心していた。

 

穂乃果も同様にパンフレットと大型モニターを見比べていると、2人の隣に1人の少女がやって来て、奏夜はふとその少女の方を見たのだが……。

 

「……うっ!」

 

小柄で黒いツインテールの少女はサングラスにマスクと怪しさ全開の格好であり、その姿を見た奏夜は思わずたじろいでしまった。

 

「……何?何か用なの?」

 

「い、いや……。何でも……」

 

「ふん!」

 

少女は奏夜がたじろぐのを見て不機嫌そうに奏夜の方を向いたのだが、すぐに大型モニターの方へ視線を移そうとしていた。

 

「……あ、あの!」

 

「何?今忙しいんだけど」

 

続けて、穂乃果が少女に声をかけており、少女は再び不機嫌そうにしていた。

 

「あの人たちって芸能人か何かですか?」

 

「はぁ!?そのパンフレットにも書いてるでしょ!?何を見てるの?」

 

「す、すびばぜん……」

 

穂乃果があまりにも無知なのが許せないのか、少女は怒っており、穂乃果はたじろいでいた。

 

「……A-RISEよ。スクールアイドル。学校で結成したアイドル」

 

「ふーん……。そんなものがあるんだなぁ……」

 

確かにパンフレットには書いてあったが、スクールアイドルという単語自体は初めて聞いたため、奏夜は感嘆の声をあげていた。

 

「最近流行っているのよ。聞いたことないの?」

 

「悪いな。俺は流行に疎いもんで」

 

奏夜は学校に通ってる手前、世間のことはそれなりに知ってるつもりだったが、流行についてはよくわかっていなかった。

 

「……ふーん……」

 

そして、穂乃果もスクールアイドルという言葉は初めて聞いたようであり、パンフレットをジッと眺めていた。

 

その時だった。

 

「……かよちん!遅刻しちゃうよぉ!!」

 

「凛ちゃん!ちょっとだけ待ってて!」

 

穂乃果と似た髪の色をした眼鏡をかけた少女と、ショートヘアの少女が、こちらに駆け出してきた。

 

どうやら、眼鏡の少女のお目当は、この「A-RISE」のパフォーマンスのようであった。

 

この場にいる人たちは、「A-RISE」の「Private wars」を聴いて、盛り上がっていた。

 

ショートヘアの少女だけはポカンとしており、眼鏡の少女はスクールアイドルが好きなのか、目をキラキラと輝かせていた。

 

そして、ツインテールの少女は、「A-RISE」のパフォーマンスを見て、何故か「ぐぬぬ……!」と悔しそうにしていた。

 

「へぇ、スクールアイドルって思ったより凄いんだな。なぁ、穂乃果」

 

「……」

 

奏夜は自分の感想の同意を求めたのだが、穂乃果は頬を赤らめてA-RISEのパフォーマンスに見惚れており、奏夜の言葉は届いていなかった。

 

「……穂乃果?」

 

スクールアイドルのパフォーマンスがよほど衝撃だったのか、手にしていたパンフレットを落としてしまっていた。

 

さらに、まだ興奮しているのか、何故かフラフラになって近くの手すりに手をついていた。

 

「……おいおい、穂乃果。大丈夫か?」

 

「……ね、ねぇ、そーくん……」

 

「ん?何だ?」

 

「……これだよ……」

 

「え?これって何のことだ?」

 

「見つけたよ!」

 

穂乃果は廃校阻止のアイディアが見つかったようであり、目をキラキラと輝かせていた。

 

「見つけたって、お前まさか……!」

 

穂乃果が何をしようとしているのかを察した奏夜は、引きつった表情で苦笑いをしていた。

 

こうして、A-RISEのパフォーマンスは終了すると、奏夜は穂乃果と共に学校へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

この日の放課後。穂乃果は、さっそくスクールアイドルについての話をこれから海未とことりにしようとしていた。

 

「ねぇねぇ!見て見て!」

 

穂乃果は昼休みのうちに図書室から仕入れてきたスクールアイドルの雑誌を海未の机の上にドンと置いていた。

 

「アイドルだよ!アイドル!」

 

「やっぱりか……」

 

「アハハ……」

 

穂乃果が何をやろうとしているのか予想した奏夜は、どうやらビンゴだったようであり、頭を抱えており、それを見たことりは苦笑いをしていた。

 

「こっちは大阪の高校で、こっちは福岡のスクールアイドルなんだって!」

 

穂乃果は雑誌のページをペラペラとめくると、大阪と福岡のスクールアイドルの特集ページを奏夜たちに見せていた。

 

「ふーん……。スクールアイドルって全国区なんだな……」

 

奏夜はスクールアイドルの雑誌を見て、率直な感想を述べていた。

 

「私、考えたんだ!……ってあれ?」

 

穂乃果はこれから本題を切りだそうとしたのだが、いつの間にか海未が姿を消していた。

 

海未は嫌な予感を感じてこっそり廊下に逃げようとしていたのだが、それを見透かされてしまい、廊下に飛び出した穂乃果に見つかってしまった。

 

「海未ちゃん!まだ話は終わってないよ!」

 

「わ、私はちょっと用事が……」

 

「いい方法を思いついたんだから聞いてよぉ〜!!」

 

海未は嫌な予感を感じて逃げるつもりだったが、穂乃果がそれを許さず、駄々をこねるように話を聞いてもらおうとしていた。

 

これは逃げられないと判断した海未は、やれやれと言いたげな感じでため息をついていた。

 

「……どうせ、私たちでスクールアイドルをやろうって言うつもりでしょう?」

 

「え!?なんでわかるの?海未ちゃんってエスパー!?」

 

「誰でも想像つきます!」

 

「だったら話は早いねぇ♪今から先生のところに行ってアイドル部を……」

 

「お断りします」

 

穂乃果の提案を、海未はバッサリと切り捨てていた。

 

「何で?だってこんなに可愛いんだよ?こんなにキラキラしてるんだよ?こんな衣装、普通じゃ絶対着れないよ?」

 

「そんなことで本当に生徒が集まると思ってるんですか?」

 

「まっ、それは人気が出ればの話だよな」

 

「奏夜の言う通りです。それに、その雑誌に出てるスクールアイドルはプロと同じくらい努力し、真剣にやって来た人たちです。穂乃果みたいに好奇心だけで始めても上手くいくはずないでしょう?」

 

海未の正論に、穂乃果は何も言い返すことは出来なかった。

 

学校の部活の一環で行われるスクールアイドルといえど、努力の量はプロのアイドルに負けないほどであり、並大抵の覚悟でなければ、成功などは夢のまた夢であると思われた。

 

「……ハッキリ言います。スクールアイドルは無しです!!」

 

「あぅぅ……。そーくぅん……」

 

海未にスクールアイドルの案を否定され、穂乃果は涙目になって奏夜に同意を求めるのだが……。

 

「ま、まぁ……。穂乃果が本気でやるっていうなら俺は協力するけど……」

 

奏夜は海未とは違ってスクールアイドルに対しては否定的ではなく、奏夜の意見を聞いた穂乃果の表情はぱぁっと明るくなっていた。

 

「まったく……。奏夜は穂乃果に甘過ぎます!」

 

「そ、そうか?そんなことはないと思うが……」

 

「いーえ!甘過ぎです!改めて言いますが、スクールアイドルは無しです!」

 

改めてスクールアイドルをハッキリと否定した海未は、そのまま弓道部の部室へと向かっていった。

 

ことりは、肯定的でも否定的でもないどっちつかずのまま、用事があると言ってどこかへと行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

海未とことりの2人と別れた奏夜と穂乃果は現在、屋上に来ていた。

 

「……はぁ……。いいアイディアだと思ったんだけどなぁ……」

 

穂乃果は、海未にハッキリと反対意見を出されてしまい、しょんぼりとしていた。

 

「ま、俺は協力するとは言ったけど、海未の言い分も理解出来るんだよな」

 

「えぇ!?そーくんも海未ちゃん派なの!?」

 

穂乃果は、奏夜が手のひらを返すようにこんなことを言っていると勘違いして、膨れっ面になっていた。

 

「そうじゃなくて。やるにしたってそう簡単にはいかないってことだよ。生半可な気持ちでやれるものでもないしな」

 

「……だけど……。やっぱりこれしかないって思うんだよね……」

 

奏夜の正論を聞き、先ほどまで膨れっ面だった穂乃果はしょんぼりとしていた。

 

このままじゃまずいと、何かフォローを入れようとしたその時、どこからか歌声が聞こえてきた。

 

「……?歌?いったいどこから?」

 

「とりあえず行ってみるか」

 

奏夜と穂乃果は歌声の在処を探るため、屋上を後にすると、歌声の聞こえる方へと歩いていった。

 

どうやら音楽室からこの歌声は聞こえているようであり、2人はゆっくりと音楽室に近付いていった。

 

そして、音楽室についた2人が、入り口から様子を伺うのだが……。

 

「……♪さぁ、大好きだバンザーイ。負けない勇気〜」

 

赤い髪の少女がピアノで弾き語りをしていた。

 

奏夜はすぐリボンの色を見たのだが、どうやら1年生のようであった。

 

「綺麗……」

 

「そうだな……」

 

少女のピアノと歌声はとても透き通っており、2人はそんな少女の演奏に聴き入っていた。

 

「……ふぅ……」

 

最後まで演奏した少女は一息ついていたのだが、視線を感じたのか、入り口の方を見た。

 

すると、興奮した穂乃果がパチパチパチと拍手をしていた。

 

「ヴェェ!?」

 

少女はまさかギャラリーがいるとは思ってなかった独特な声をあげて驚いていた。

 

「悪いな。驚かせちまったかな?」

 

「べ、別に……」

 

奏夜は音楽室に入って申し訳なさそうに少女に声をかけるのだが、少女は頬を赤らめながら視線を逸らしていた。

 

「凄い凄い!私、感動しちゃったよ!」

 

奏夜と一緒に音楽室に入ってきた穂乃果は、興奮冷めやらぬ感じで少女に迫っていた。

 

「俺も凄く良かったって思うぜ」

 

「そ、そんなことは……」

 

少女は褒められることに慣れてないのか、右手で自分の髪をクルクルと回して照れ隠しを行っていた。

 

「歌上手だね!ピアノも上手だね!それに……。アイドルみたいに可愛い!」

 

「!」

 

穂乃果の言葉が思いがけないものだったのか、少女は顔を真っ赤にしていた。

 

すぐに我に返った少女は、座っていたピアノの椅子から立ち上がると、そのまま音楽室を出ようとしていた。

 

「あっ、待って!」

 

穂乃果は少女に話があるのか、少女を引き止めていた。

 

「……いきなりなんだけど……。あなた、アイドルやってみたいと思わない?」

 

「え?」

 

「おいおい。唐突に言われちゃこの子も困惑するだけだろうが……」

 

穂乃果はこの少女をスクールアイドルに勧誘していたのだが、あまりの唐突さに少女はポカンとしており、奏夜は呆れていた。

 

少女はすぐに険しい表情になると……。

 

「……ナニソレ。イミワカンナイ」

 

こう言い放ち、少女は音楽室を出て行ってしまった。

 

「アハハ……」

 

少女が出ていくのを見送りながら、穂乃果は苦笑いをしていた。

 

「ま、流石にいきなり過ぎたからな……。穂乃果、これからどうする?」

 

「あのね。私はやっぱりスクールアイドルを頑張ってみたいなって思うんだよね。そーくん、練習に付き合ってくれる?」

 

「もちろんだ。協力するって言ったしな」

 

こうして、穂乃果は1人でスクールアイドルとして頑張ることにして、奏夜と共に練習を行うために校庭へと移動した。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

その頃、スクールアイドルの提案を拒否した海未は弓道部の活動に参加していた。

 

現在は精神を集中させ、遠くにある的に向かって矢を放とうとしていたのだが……。

 

 

 

 

 

 

 

〜海未の妄想〜

 

アイドルの格好をした海未がステージに立っており……。

 

『みんなのハート、撃ち抜くぞ〜。バァーン♡」

 

 

 

 

〜妄想終わり〜

 

 

 

 

 

 

 

「……!!」

 

アイドルになった自分をふと妄想してしまい、手元が狂ったことで、狙いを大きく外してしまった。

 

(……な、何を考えているんですか、私は……)

 

自分がアイドルなどとあらぬことを妄想してしまい、海未は顔を真っ赤にしていた。

 

「は、外したの?珍しい」

 

海未が的を外していたのを見ていた弓道部の先輩は驚いていた。

 

海未の狙いは正確であり、百発百中とまではいかないまでもそれに近いくらいの命中率はあるからであった。

 

「たっ、たまたまです!」

 

海未は気を取り直して、再び精神を集中させようとしたのだが……。

 

 

 

 

 

 

〜海未の妄想②〜

 

『ラブアローシュート!♡」

 

 

 

〜妄想終わり〜

 

 

 

 

 

 

再びアイドルになった自分を妄想してしまい、まったく集中出来なくなっていた海未は、10回やって10回全てを外してしまっていた。

 

「……あぁ!いけません!余計なことを考えては!」

 

どうやら、アイドルのことは気になるようであり、海未は練習に全然集中出来ずにいた。

 

その時であった。

 

「海未ちゃ〜ん。ちょっと来て〜」

弓道場の入り口からことりの甘い声が聞こえてくると、海未は1度弓と矢を片付けて、ことりの方へ駆け寄り、2人は校庭を歩いていた。

 

「……穂乃果のせいです。全然練習に身が入りません」

 

「ということは、ちょっとはアイドルに興味があるってこと?」

 

「い、いえ!そんなことは!」

 

先ほどまではアイドルになった自分を妄想していたとは言うことが出来ず、海未は全力でことりの言葉を否定していた。

 

「……やっぱり、アイドルが上手くいくなんて思えません」

 

「でも、こういうことっていつも穂乃果ちゃんから言い出してたよね」

 

穂乃果、海未、ことりの3人は小さい頃からの付き合いなのだが、遊ぶ時も穂乃果が何かを提案することが多かった。

 

「私たちが尻込みしちゃうところをいつも引っ張ってくれて……」

 

「そのせいで散々な目に何度もあったじゃないですか」

 

ある日、大きな木に登ろうと穂乃果が提案した時も、3人で木に登って枝の上に立ったのだが、その枝が折れてしまい、木から落ちそうになったこともあった。

 

「アハハ……。そうだったね」

 

「穂乃果はいつも強引過ぎます」

 

「でも海未ちゃん。……後悔したことはある?」

 

「え?」

 

海未はことりの問いかけにすぐ答えることは出来なかった。

 

木から落ちそうになった時、海未はことりにしがみついてベソをかいていたのだが、夕陽に溶けていく街並という絶景を見ることが出来たのであった。

 

それを思い出したため、海未はことりの問いかけにすぐ答えることが出来なかったのである。

 

「……見て」

 

ことりがとある方向に視線を向けていたので海未もその方向を見ていた。

 

2人が見たものとは……。

 

「……1・2・3・4!1・2・3・4!」

 

「ほっ……はぁっ!」

 

奏夜が手拍子を叩き、穂乃果がそれに合わせてステップを踏んでいた。

 

「穂乃果!バランス感覚が甘い!そんなんじゃすぐ転倒するぞ!!」

 

「そ、そんなこと言ったって……。うわぁ!!」

 

奏夜が穂乃果に助言するも、穂乃果はバランスを崩してすぐに転倒してしまった。

 

「痛たた……」

 

「ったく……。言わんこっちゃない……」

 

奏夜は穂乃果に手を差し伸べると、その手を取った穂乃果はゆっくりと立ち上がっていた。

 

「本当に難しいや……。そーくん!もう1回お手本を見せて!」

 

「やれやれ。仕方ないな……」

 

お手本を見せて欲しいと頼まれ、奏夜は先ほど穂乃果がやろうとしていたステップを踏み始めた。

 

奏夜はダンスが得意であるからか、無駄のない動きで、体幹もしっかりとしており、危なげなく、そして美しいステップを踏んでいた。

 

「やっぱり凄いな……」

 

穂乃果は奏夜のステップを見て、穂乃果はウンウンと頷きながら感心していた。

 

「……感心してる場合じゃないぞ。穂乃果。もう1回だ!」

 

「う、うん!」

 

ステップを終えた奏夜は自分の動きに感心している穂乃果に呆れており、もう1回穂乃果に先ほどのステップをさせていた。

 

そんな2人のやり取りに、海未とことりは見惚れていた。

 

「……ねぇ、海未ちゃん。私、やってみようかな」

 

「え?」

 

2人のやり取りを見たことりはスクールアイドルをやってみようと決意し、そんなことりの判断に海未は驚いていた。

 

「海未ちゃんはどうする?」

 

こう問いかけをしたことりは満面の笑みを浮かべていた。

 

海未がどう答えるか、ことりにはわかっていたからである。

 

その時であった。

 

「うわぁっ!」

 

穂乃果は再びバランスを崩し、転倒してしまった。

 

「痛たたた……。くぅぅ……」

 

「やれやれ……」

 

穂乃果が転倒しているところを当然奏夜は見ていたのだが、奏夜は何故か穂乃果に手を差し伸べようとはしなかった。

 

その理由は……。

 

「……?う、海未ちゃん……」

 

「2人で練習していても意味ありませんよ。やるなら4人でやらないと!」

 

海未とことりが見ているのを奏夜は察しており、2人のどちらかが穂乃果に手を差し伸べてくれるだろうと判断したからである。

 

「……海未ちゃん……!」

 

スクールアイドルに反対していた海未が協力してくれると言ってくれたことが嬉しかったのか、目をウルウルとさせていた。

 

そんな穂乃果を見て、海未は満面の笑みを浮かべていた。

 

その後、海未と穂乃果は立ち上がり、ことりを入れた3人は奏夜の顔をジッと見つめていた。

 

「奏夜。あなたの特技がダンスなのはよく知っています。ですが、私たちはダンスの経験はありません……。ですから、私たちのコーチをしてくれませんか?」

 

「あと、私たちのマネージャーをしてくれたら嬉しいな♪」

 

「そーくん!お願い!」

 

海未は奏夜にダンスのコーチをお願いし、ことりは奏夜に穂乃果たち3人のマネージャーをお願いしていた。

 

「……俺はもちろんそのつもりだったぜ。俺だって廃校なんて嫌だしな。俺に出来ることがあれば、何だってするぜ」

 

奏夜は最初からスクールアイドルには肯定的であったため、頼まれなくても3人のコーチやマネージャーはするつもりだった。

 

「「そーくん……」」

 

「奏夜……」

 

「……それに、やるなら“4人”で……だろ?」

 

先ほどの海未の言葉を強調した奏夜は、満面の笑みを浮かべていた。

 

「「……うん!!」」

 

「はいっ!」

 

奏夜の笑顔を見た3人は、同様に満面の笑みを返していた。

 

こうして、穂乃果、海未、ことりの3人はスクールアイドルとして動き始めることになり、奏夜はそんな3人を支えるべくマネージャーやコーチを引き受けたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スクールアイドルを始めることを決めた奏夜たちは、速やかに部活設立の申請書を記入すると、それを提出するために生徒会室へとやって来た。

 

「……これは?」

 

提出された申請書を生徒会長である絢瀬絵里が訝しげに眺めていた。

 

「アイドル部。設立の申請書です!」

 

「それは見ればわかります」

 

「それでは、認めていただけますね?」

 

「いいえ。部活は同好会でも、最低5人は必要なの」

 

絵里がアイドル部設立を拒否したことに、奏夜たちは驚きを隠せなかった。

 

「え!?」

 

「ですが!校内には部員が5名以下のところもたくさんあるって聞いています」

 

「設立した時は、みんな5人以上いたはずよ」

 

こう言い放つ絵里の口調は何故かとても冷たく突き放しているようなものだった。

 

(……なんでこの人は言い方が冷たいんだ?もしかして、スクールアイドルが嫌いなのか?)

 

《その可能性はあり得るな。奏夜、面倒ごとを起こさないためにも余計なことは口走るなよ》

 

(わかってるって)

 

奏夜とキルバがテレパシーでやり取りをしていたその時だった。

 

「……あと1人やね」

 

副会長である東條希がこう呟いており、それを奏夜たちは見逃さなかった。

 

「あと1人……。わかりました。部員が集まったらまた来ます」

 

部活設立に必要な部員をあと1人集めたらまた申請書を提出しようと考えた奏夜たちは今日のところは出直そうと生徒会室を後にしようとしたのだが……。

 

「待ちなさい!」

 

何故か絵里に引き止められてしまい、奏夜たちは驚きながらも足を止めていた。

 

「どうしてこの時期にアイドル部を始めるの?あなたたち2年生でしょう?」

 

「廃校をなんとか阻止したくて!スクールアイドルって、今、すっごく人気があるんですよ!だから……」

 

「だったら……。例え5人集めたとしても、認めるわけにはいかないわね」

 

険しい表情で語る絵里の口調は、相変わらず冷たく突き放しているような感じであった。

 

「……」

 

奏夜はそんな絵里の態度に苛立ちを募らせていた。

 

《おい、奏夜!落ち着け!》

 

キルバは、奏夜が余計なことを口走って厄介ごとを引き起こさないか心配で気が気ではなかった。

 

「え!?どうしてですか!?」

 

そして、絵里の言葉に穂乃果は異議を唱えていた。

 

「部活は生徒を集めるためにやるものじゃない。思いつきで行動したところで結果は変えられないわ」

 

絵里の言葉は至って正論であり、穂乃果たちは反論をすることが出来なかった。

 

そんな中、奏夜はさらに苛立ちを募らせていた。

 

《おい、奏夜!》

 

キルバは奏夜を落ち着かせるためにテレパシーで語りかけるのだが、どうやら聞く耳を持っていないようであった。

 

「変なこと考えてないで、残り2年自分のために何をするべきか……よく考えるべきよ」

 

こう言い放ち、絵里は申請書を穂乃果に突き返していた。

 

この言葉で、奏夜の中の何かが切れてしまった。

 

「あんた……。今、何て言った?」

 

「「そ、そーくん?」」

 

「奏夜……?」

 

奏夜はまるでホラーと対峙しているかのように険しい表情になっており、ここまで怒る奏夜を初めて見た穂乃果たちは困惑していた。

 

「何って……。スクールアイドルなんて変なことは考えるなって言ったのよ」

 

奏夜の険しい表情に絵里は一瞬たじろぐが、毅然にこう答えていた。

 

一方希は、そんな奏夜を見て怯える様子はなく、笑みを浮かべていた。

 

「確かにあんたの言うことは正論かもしれない……。だけどな、こいつらは本気でスクールアイドルをやろうって考えてるんだ!そんなこいつらの本気を馬鹿にしようって言うなら俺はあんたを許さない!!」

 

奏夜はまるでホラーに向けてのように鋭い目付きで絵里を睨みつけていた。

 

(……な、何なんですか?奏夜のこの殺気は……。並大抵の人でもここまでのものは出せませんよ……)

 

海未は、まるで鬼のような形相の奏夜を見て、奏夜から放たれる殺気に驚きを隠せなかった。

 

(奏夜とは中3からの付き合いですが、まだまだわからないところも多いんですよね……。奏夜、あなたはいったい何者なんですか?)

 

海未は奏夜の正体が魔戒騎士であると見破ることは出来なかったが、普通の人間ではないのかもしれないと疑惑を持つようになっていた。

 

そして、穂乃果とことりはそんな奏夜が少し怖いと思ったのか、互いに身を寄せ合って怯えていた。

 

「……な、何よ。私は別に馬鹿にしてるつもりはないわ。ただ、認められないだけで……」

 

絵里もまた、奏夜の鋭い視線に怯えているからから、発言が少しだけしどろもどろになっていた。

 

「……それならいいんですけどね」

 

奏夜は怒りの表情からいつもの奏夜に戻っていき、それを見た穂乃果たちは安堵の表情を見せていた。

 

「……ついでに言っておきますけど、俺たちの活動を否定するってことは生徒会では何か廃校阻止の良いアイディアはあるんですか?」

 

「……っ!そ、それは……」

 

「だったら、あなたにとやかく言われる筋合いはないと思いますがね」

 

奏夜の言葉には少しだけ棘があるからか、絵里は眉間に皺を寄せていた。

 

「このままじゃどうせ廃校なんだ。生徒を集められる可能性が1%でもあるならそれに賭けるべきだと思いますけどね」

 

「……っ!そうかもしれないけど、生徒会としては、アイドル部を認めるわけにはいかないわ」

 

「……ま、それは仕方ないですね。……わかりました。俺たちは俺たちで動きます。そして、いつか生徒会にも正式に認めさせますよ」

 

言いたいことを全部言い切った奏夜はすっきりしたのか、踵を返して生徒会室を後にしていった。

 

そして、穂乃果たちは慌ててそんな奏夜の後を追いかけていった。

 

《ったく……。奏夜のやつ、言わなくてもいいことまで口走りやがって……》

 

キルバは、頭に血がのぼって言わなくてもいいことまで言ってしまった奏夜に心底呆れていた。

 

そんな中、絵里と希は、奏夜たちが去っていくのをジッと見つめていた。

 

「……おぉ、怖い怖い。あの子は怒ったら怖いんやなぁ♪なぁ、エリチ?」

 

希は怖いと言っていたが、本当に奏夜のことを怖がってるようには見えず、おどけているように見えた。

 

「別に……」

 

絵里はむすっとして視線を逸らしていたため、奏夜のことを本当に怖がっているかどうかはわからなかった。

 

(……何なのよ……彼は……)

 

生徒会長である自分に対して容赦ないことを言っていた奏夜に対して苛立ちを募らせていた。

 

「クスッ……。あの子にしてやられて悔しいんか?エリチ」

 

「べっ、別にそんなことはないわよ!」

 

希に痛いところを突かれたからか、絵里は少しだけムキになっていた。

 

「それに……。誰かさんの言ったことはそっくりそのまま返したいな♪」

 

「もぉ……。一言多いのよ、希は……」

 

再び希に痛いところを突かれてしまった絵里は、面白くなさそうにむくれていた。

 

「……それにしても、廃校を阻止するためにはどうすればいいのかしら……?」

 

絵里も廃校を阻止したいと強く思っていたのだが、どうすれば良いのかわからず、途方に暮れていた。

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

その頃、生徒会室を後にした奏夜たちは、学校の入り口にいたのだが、奏夜は海未から説教を受けていた。

 

いくら自分たちのために怒ってくれたとはいえ、自分たちの先輩である生徒会室にあのような口の利き方をするのは良くないとのことであった。

 

奏夜も思ったことを言い過ぎたと反省しており、それを聞いた海未は渋々ではあるが、奏夜のことを許すことにしていた。

 

「……それにしても、部活として認められないのであれば、講堂は借りられないし、部室もありません。……何もしようがないです!」

 

「そうだよね……」

 

生徒会に部活として認められないことの現実を海未が語っており、ことりはそれに同意すると、浮かない表情をしていた。

 

そして、穂乃果は俯いたまま、何も語ろうとはしなかった。

 

「……だとしても、何とかするしかないだろう。部活として認められないなら、認められないなりにやれることはあるはずだ」

 

「そーくん……」

 

「奏夜……」

 

「……それに……。みんなは本気でスクールアイドルを始めるんだろ?こんなことで挫けてどうするんだよ」

 

奏夜の言葉には厳しさが溢れていたのだが、穂乃果たちの背中を押す、暖かいものであった。

 

「……そうだよね……」

 

「?穂乃果?」

 

「穂乃果ちゃん?」

 

今まで口をつぐんでいた穂乃果がふと口を開いたので、奏夜、海未、ことりの3人は穂乃果の方を見ていた。

 

「さっきそーくんも言ってたけど、廃校阻止の可能性が1%でもあるならそれに賭けるべきなんだよ!」

 

「……ふっ……」

 

穂乃果はどうやら吹っ切れたようであり、そんな穂乃果の気持ちを汲み取った奏夜は笑みを浮かべていた。

 

「私……やっぱりスクールアイドルをやりたい!やるったらやるよ!!」

 

「穂乃果……」

 

「穂乃果ちゃん……」

 

「……決まったな。これから忙しくなるし、色々と大変なことも待ってるぞ。お前らにその覚悟はあるか?」

 

「「「うん(はい)!!」」」

 

3人の覚悟を改めて聞いた奏夜は、穏やかな表情で笑みを浮かべていた。

 

「……俺がマネージャーとコーチをする以上、お前達を一人前のスクールアイドルにしてやるからな。覚悟しとけよ!」

 

「うん!もちろんだよ!」

 

「えぇ!私だって厳しいのは覚悟の上です!」

 

「そーくん、お手柔らかにね♪」

 

こうして、穂乃果、海未、ことりの3人は音ノ木坂学院の廃校の危機を救うためスクールアイドルを始めることにして、奏夜はそんな3人を支えるべく、マネージャーとダンスコーチを引き受けることになった。

 

これこそ、これから起こる大きな奇跡の物語の始まりであり、奏夜にとっては、今までにない戦いの幕開けとなるのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『スクールアイドルとして動き出したのは良いが、あの海未ってお嬢ちゃんが奏夜の正体に気付きつつあるな。次回、「疑惑」。奏夜の正体がバレなければいいんだがな……』

 

 




ようやく、ラブライブ!1話の内容が終わりました。

やはり、最初だからか絵里はツンツンしており、ぶつかる場面もありました。

絵里ファンの皆さん、本当に申し訳ないです。

こうして、スクールアイドルとして動き始めた奏夜たちですが、これからどうなっていくのか……。

今回の話で、奏夜が普通の人間ではないのでは?と海未が疑うようになりました。

次回はそんな疑惑が強まっていくことが予想されますが、奏夜の秘密は次回明らかになってしまうのか?

それでは、次回をお楽しみに!


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