さて、今回からラブライブ!の第8話に突入し、μ's加入編はクライマックスに突入します。
期末試験をどうにか乗り越えた奏夜たちですが、そんな彼らを待ち受けるものとは?
それでは、第27話をどうぞ!
奏夜たちはスクールアイドルの祭典であるラブライブにエントリーするため、期末試験での赤点を回避するべく勉強に励んでいた。
2年生組は全員穂乃果の家に泊まり込み、勉強をすることで赤点を回避し、凛とにこも、どうにか赤点を回避することが出来た。
これで、ラブライブへのエントリーが可能になるため、奏夜たちはそのことを理事長に報告するために理事長室へと向かった。
奏夜たちが理事長室の前に到着したその時である。
「そんな!説明して下さい!」
理事長室の扉越しから絵里の声が聞こえて来たのだが、その声からは焦りの感情が伝わってきた。
さらに……。
「……ごめんなさい。これは決定事項なの。……音ノ木坂学院は、来年度の生徒の募集をやめ、廃校とします!」
「!?な、なん……だと?」
ドア越しから聞こえた理事長の言葉は、信じがたいものであった。
もしその事実が本当であれば、ラブライブのエントリーすら危ぶまれるからである。
「今の話、本当ですか!?本当に廃校になっちゃうんですか!?」
奏夜が扉を開ける前に穂乃果がバン!とドアを開けると、穂乃果は理事長に詰め寄っていた。
「えぇ、本当よ」
「そんな……」
理事長から告げられた衝撃の真実に、奏夜たちは開いた口が塞がらず、花陽はショックを受けていた。
「お母さん!そんな話、聞いてないよ!!」
理事長の娘であることりもまた、悲痛な表情で理事長に詰め寄っていた。
「みんな、落ち着いて。廃校と言っても、2週間後に行われるオープンキャンパスの結果が悪かったら……という話よ」
どうやら理事長が言っているのは有無を言わさず廃校という訳ではなく、オープンキャンパスの結果が良くなかったら廃校になるということであった。
「オープンキャンパス……ですか?」
「えぇ。見学に来てもらった中学生にアンケートを取って、その結果が芳しくなかったら、廃校にする。そう絢瀬さんに話していたところよ」
「なんだぁ、良かったぁ……」
今すぐ廃校になる訳ではないということがわかり、穂乃果はホッとしており、奏夜以外のメンバーもまた、ホッとしていた。
しかし……。
「お前ら、ホッとしている場合じゃないぞ」
「彼の言う通りよ。オープンキャンパスは2週間後の日曜日。そこで結果が悪かったら、廃校は本決まりになってしまうということよ」
絵里は奏夜の意見に同意しており、そのことが珍しいと思っていた奏夜は、驚きを隠せなかった。
「……だからこそ、何とかしないといけないんだよな……」
奏夜は、オープンキャンパスを成功させるためにはどうすればいいのか考えていたのだが……。
「理事長!オープンキャンパスのイベントの内容は、生徒会で決めさせてもらいます」
「……止めても、聞きそうにないわね」
本来であれば承認しないつもりであったが、今回に限っては止めても無駄だと判断したからか、理事長は渋々絵里の提案を承認していた。
「ありがとうございます。失礼します……」
絵里は理事長に一礼をすると、理事長室を後にしていた。
「……俺たちも失礼します。ラブライブの件については、オープンキャンパスの件が落ち着いてから話したいと思います」
奏夜は理事長に一礼をすると、理事長室を後にしていた。
穂乃果たちは慌てながらも理事長に一礼をすると、奏夜を追いかけていった。
(……オープンキャンパスか……。ここが正念場だよな……。ラブライブに出場するためにも、俺は穂乃果たちを今以上のクオリティにしてみせる!)
奏夜の表情はまるでホラーと対峙してる時と同じように険しいものになっており、海未は、そんな奏夜を心配そうに見つめていた。
※※※
奏夜たちは2週間後に行われるオープンキャンパスに向けて、練習を行うことにした。
オープンキャンパスのイベントは生徒会が決めるみたいだが、穂乃果たちはそこでライブをやって、少しでも入学希望者を増やしたいと考えていた。
このオープンキャンパスの結果次第では廃校が確定してしまうということもあるからか、穂乃果たちの練習にも、自然と熱が入っていた。
屋上に到着した奏夜たちは練習を行うことになった。
「……1、2、3、4、5、6、7、8!」
いつものように奏夜がダンスコーチを行い、穂乃果たちの振り付けを見ていた。
普段であれば、奏夜は気になることはすぐに注意をしていたのだが、今日の奏夜は珍しく静かであった。
しかし、それは穂乃果たちの振り付けのクオリティが上がっているという訳ではないようであり、奏夜は苛立ちを募らせていた。
そして、奏夜のダメ出しが一度も飛ぶことがなく、一通りの振り付けが終了した。
「……よし、みんな完璧だよ!」
穂乃果はどうやら、先ほどまでの振り付けは完璧だと思っていた。
「……」
その言葉を否定するかのように奏夜は黙っており、さらに苛立ちを募らせていた。
そんな奏夜の苛立ちに海未は気付いていたのだが、他のメンバーはそれを気にすることなく、話を続けていた。
「良かったぁ。これならオープンキャンパスに間に合いそうだね」
「それにしても、本当にライブなんて出来るの?生徒会長に止められるんじゃない?」
オープンキャンパスのイベントは生徒会が決めることは全員の耳に入っているため、真姫の心配はもっともであった。
「そこは大丈夫だよ!部活紹介の時間は必ずあるはすだから。そこで歌を披露すれば!」
真姫の心配を、ことりがポジティブな言葉で払拭しようとしていたのだが……。
「……まだです」
海未が浮かない表情で、先ほどの振り付けのダメ出しをしていた。
「まだタイミングがずれています」
「海未の言う通りだ。俺から言わせてもらえば完璧には程遠い。そんなんでよくそんな前向きなことが言えたもんだな」
海未のダメ出しに奏夜は賛同しており、それだけではなく、鋭い目付きで厳しい言葉を投げかけていた。
「……海未ちゃん……。そーくん……」
「ちょっと!そんな言い方はないんじゃないの?」
奏夜の棘のある言葉が気に入らなかったのか、真姫は奏夜に異議を唱えようとしていた。
「文句があるのなら振り付けで俺を納得させてみろ。そうすれば聞いてやる」
「……わかったわよ。みんな!もう1回やるわよ!」
「……」
奏夜と真姫との間に不穏な空気が流れており、穂乃果は心配そうな表情で奏夜のことを見ていた。
こうして、少しだけ空気がギスギスする中、先ほどと同じ振り付けの練習が行われた。
「1、2、3、4、5、6、7、8!」
「……」
奏夜は先ほどよりも鋭い目付きで穂乃果たちの振り付けを見ていた。
先ほどと何の変化もないことに、苛立ちを募らせているからである。
「……今度こそ、完璧だよ!」
「どう?これなら文句はないんじゃない?」
「やれやれ……。やっとにこのレベルに追いついてきたんじゃない?」
先ほどの振り付けとまったく変わっていないにも関わらず、穂乃果、真姫、にこの3人は先ほどの振り付けを自画自賛していた。
しかし……。
「……まだダメだ。もう1度だ!お前ら、その程度の出来で満足するな!」
奏夜からダメ出しと厳しい言葉が飛び出し、ことりと花陽の2人は、そんな奏夜の言葉に少し怯えていた。
「あぅぅ……。これ以上は上手くなりようがないにゃあ……」
凛はこれ以上どうすれば良いのかわからず、がっくりとうなだれていた。
「そんなことで諦めてるようじゃ、ラブライブなんて夢のまた夢だぞ」
奏夜は追い討ちをかけるように厳しい言葉を投げかけていた。
「ちょっと!さっきからいったい何なのよ!?そんな言い方はないんじゃないの!?」
「にこ先輩の言う通りよ!それに、今の振り付けの何が気に入らないわけ?答えなさいよ!」
先ほどまでの奏夜の厳しい言葉が気に入らないのか、にこと真姫は、奏夜に怒りの視線を向けながら奏夜に詰め寄っていた。
「……気に入らないところならたくさんあるが、言ってもいいのか?」
「うっ、そ、それは……」
奏夜の冷静な口調から、その言葉はハッタリではないとわかると、真姫は一歩引いてしまった。
本当に奏夜が自分たちのダメなところを言い尽くしてしまうと、立ち直れる自信がないからである。
それはにこも同じであり、これ以上の追求は出来なかった。
「……一言で言うならば、お前らのパフォーマンスに感動出来ないんだよ」
「そうです。奏夜の言葉は厳しいかもしれませんが、それは今のままじゃダメだからなんです」
奏夜のあまりに厳しい言葉に海未が賛同するとは思っていなかったからか、穂乃果たちは驚きを隠せず、そんな2人の態度に戸惑っていた。
「そうだ。俺にはお前たちをもっと高みに連れていかなきゃいけないっていう責任がある。お前たちが俺のことを嫌いになったとしても、μ'sが今以上に輝けるならそれでいい」
奏夜はここで、何故ここまで厳しい態度を取っているのかを明かしていた。
……とは言っても、1番のきっかけである絵里の話は伏せているのだが……。
「……奏夜先輩……」
「そーや先輩……」
「……まぁ、今でも奏夜の言葉は許せないけど、奏夜がμ'sのことを誰よりも思ってることは理解したわ」
奏夜の覚悟を聞いた真姫は、これ以上奏夜に怒ることなど出来ず、先ほどまでの奏夜の態度に納得していた。
……そんな中、穂乃果は……。
「……ダメだよ……」
「……?穂乃果?」
「穂乃果ちゃん?」
「ダメだよ!私たちμ'sは、そーくんが支えてくれるから輝けるんだよ!?私たちに嫌われてもいいだなんて……。そんな悲しいことを言わないで!!」
「穂乃果……」
ここまで穂乃果が声を荒げることはないため、奏夜は驚いていた。
「それに……。そーくんはマネージャーだからって何でもかんでも背負いすぎなんだよ!ただでさえ、魔戒騎士のお仕事も忙しいのに……」
「穂乃果ちゃんの言う通りだよ!たまには私たちのことを頼ってよ……」
「そうにゃそうにゃ!!凛たちだって、そーや先輩の力になれるんだから!」
「奏夜先輩だって、μ'sの一員なんです!困難はみんなで協力してこそじゃないですか!」
「奏夜。あなたは本当に面倒な人よね……」
「そういうことよ。こんなに頼もしい先輩がいるのに頼らないなんて、どうかしてるわよ!」
海未以外の6人は、全てをたった1人で抱え込もうとする奏夜に、異議を唱えていた。
『やれやれ……。奏夜、こいつはお前の負けだな。話してやればいいじゃないか。お前さんがそこまで焦る理由ってやつをな』
「キルバの言う通りです。やはりこの問題は、私と奏夜だけで抱えて良い問題ではありません」
『一応俺も当事者なんだがな……』
キルバもまた、奏夜や海未と同様に絵里の秘密を知っているのだが、奏夜や海未ほどの感情は抱いていなかったため、特にこの問題に介入しようとは考えていた。
しかし、当事者であることは変わりないため、キルバは苦笑いをしていた。
「そーくん……。話してくれる?何があったのかを」
「……わかった。それを踏まえて、みんなに話しておきたいこともあるしな」
1度練習を中断し、奏夜は絵里の秘密やそれによって自分が感じたことを話そうと考えていた。
奏夜たちは1度部室に戻ると、奏夜はゆっくりと語り始めた。
「……μ'sのファーストライブの動画、あれ、誰が撮ったのかずっと疑問だったろ?」
「うん。それは私も気になってたけど、そーくんは撮った人が誰かわかったの?」
穂乃果の問いかけに奏夜は無言で頷いていた。
「……生徒会長だよ」
「え!?そうなの!?」
意外な人物の名前が出てきたことに、穂乃果は驚くのだが、他のメンバーもそれは同様みたいだ。
「俺と海未はたまたまそのことを知って、生徒会長と話したって訳だ」
「……生徒会長は私たちのためにやったのではなく、私たちのパフォーマンスがいかにダメなのかを知らしめるために撮影をしたそうなんです」
「そんな……」
「でも、結果的には人気が出たってことだものね」
「そこは生徒会長も予想外だったみたいだけどな」
「私たちは7人になってそれなりに人気にはなりましたが、生徒会長は私たちのことをまだ認めていないのです」
このように語る海未の表情は少しばかり悲しげだった。
「生徒会長はスクールアイドル全てが素人のようだって言ってたんだ。あのA-RISEでさえもな」
「ちょっと……。A-RISEが素人みたいだなんて、随分とおこがましいんじゃない?」
「そうですよ!スクールアイドルはみんなが血が滲むような努力をしているっていうのに……」
スクールアイドルのことが大好きであるにこと花陽は、A-RISEが素人みたいだという言葉を許すことが出来なかった。
「俺もそう思ったさ。そこで、その言葉の真意を確かめるために東條先輩に話を聞いたんだ」
「希先輩なら、生徒会長のことを知っていると思いましたので」
「それで、東條先輩に話を聞いたら、生徒会長はどうやらバレエをやってたみたいなんだ」
「バレエ?」
「それは意外ね」
絵里がバレエをやっているという事実を穂乃果たちは知り、驚きを隠せなかった。
「その時の映像を見させてもらいましたが、衝撃でした」
「あぁ。そのバレエの映像を見た時、今のμ'sがどれだけ未熟なのかってことを思い知らされたよ。だからこそ、俺はμ'sのみんなをもっと高みに連れていきたいと思ったんだ」
「なるほどね。だから奏夜はさっきあんな態度をとっていたのね」
真姫は、何故奏夜があそこまで厳しい態度をとっていたのかがわかり、納得し、少しだけホッとしていた。
奏夜の人が変わってしまったのかと心配していたからである。
「それで私は、生徒会長にダンスを教わりたいと思いました」
「でもでも!それじゃそーや先輩が……」
「俺のことは気にするな。確かに今までは俺がみんなにダンスを教えてきた。だけど、これからのμ'sには生徒会長が必要になってくると思うんだよ」
凛は、今までダンスコーチをしてきた奏夜を気遣っていたのだが、奏夜はそこを気にしてはいなかった。
「でも生徒会長は私たちのこと……」
「嫌ってるよね?絶対!」
「というか、嫉妬してるのよ!嫉妬!」
奏夜の思いを聞いたのだが、花陽、凛、にこの3人は絵里に教わることは反対のようだった。
「お前らの言いたいこともわかる。だけど、あれだけ踊れる人がお前たちのパフォーマンスを見て、素人みたいと言ってしまうのも、わかる気がするんだ」
奏夜もまた、ダンスが得意なため、絵里ほどの実力者が、スクールアイドルを素人と言ってしまう気持ちもなんとなくではあるがわかる気がしていた。
「私は反対。潰されかねないわ」
真姫も、今のままじゃダメなことはわかっていたが、それでも絵里にダンスを教わることには反対だった。
「そうね。3年生はにこだけで充分だし」
「それに、生徒会長はちょっと怖いです……」
「凛は楽しい方がいいなぁ」
「……」
にこ、花陽、凛の3人が反対意見を聞き、奏夜は現状に満足しているメンバーたちに苛立ちを募らせていた。
そんな中、穂乃果は……。
「……私はいいと思うけどなぁ」
「「「「「えっ!?」」」」」
「穂乃果……」
穂乃果が賛成意見を出したことに奏夜と海未以外の全員が驚き、奏夜はリーダーである穂乃果がこう言ってくれたことが嬉しかった。
「ちょっとあんた!何言ってるのよ!」
「だって、ダンスの上手い人が近くにいるってことでしょ?それで、もっと上手くなりたいから教わりたいって話だもんね」
「あぁ、その通りだ」
「だったら私は賛成!頼むだけ頼んでみようよ!」
「ちょっと!待ちなさいよ!」
穂乃果は改めて奏夜の意見に賛成していたのだが、にこは異議を唱えていた。
しかし……。
「だけど、絵里先輩のダンスはちょっと見てみたいかも……」
「わ、私も……」
どうやらことりと花陽は、絵里のダンスに興味があるようであった。
「よし!それじゃあ、明日さっそくお願いしてみようよ!」
こうして、翌日に、ダンスのコーチを絵里に頼むことにした。
「……みんな、本当にごめんな。俺、焦ってたのかもしれない。今のままじゃダメだってな……」
「そーくんはそーくんで悩んでいたんだもんね……」
「それがわかったから、私たちは気にしてないよ♪」
「穂乃果……ことり……」
穂乃果とことりもまた、奏夜が何故あれだけ厳しい態度をとったのかを理解し、安堵していたため、先ほどのことは気にしていなかった。
「……まったく……。どうなっても知らないわよ……」
にこも渋々了承したことで、今日の練習はここまでにすることにして、絵里にダンスのコーチを依頼するのは明日行うことにした。
※※※
その日の夜、絵里は妹である亜理沙とその友達2人に、オープンキャンパスで話すスピーチを聞いてもらっていた。
その友達の中には、穂乃果の妹である雪穂もいたのである。
「……このように音ノ木坂学院の歴史は古く、この地域の発展にずっと関わっていました」
絵里の淡々としたスピーチに、亜理沙と、その友人は退屈そうにしており、雪穂に至ってはうたた寝をしていた。
「さらに、当時の学院内は音楽学校の側面を持っており、学院内ではアーティストを目指す生徒に溢れ、非常にクリエイティブな雰囲気に包まれています」
絵里のスピーチが進む中、雪穂は寝息を立てて眠っており、そんな雪穂を亜理沙と友人が心配そうに見つめていた。
しばらく絵里がスピーチを進めていると……。
「……うわぁ!体重増えた!!」
雪穂はこのような寝言を言いながら目を覚ましていた。
「あ、すいません……」
自分の寝言で話を途切らせてしまったことが恥ずかしかったからか、雪穂は頬を赤らめていた。
「……ごめんね。退屈だった?」
「い、いえ!とても面白かったです!後半、とても引き込まれました!」
雪穂が調子の良いことを言っており、友人はジト目で雪穂のことを見ていた。
「オープンキャンパスまでには直すから、遠慮なく言って」
「……亜理沙は全然面白くなかった」
「ちょ、ちょっと!」
亜理沙の遠慮のない発言に、雪穂がなだめようとしていた。
「お姉ちゃんは何でこんな話をしているの?」
「何でって……。学校を廃校にしたくないからよ」
「私だって音ノ木坂は無くなって欲しくないけど……」
学校が廃校になって欲しくないのは絵里も亜理沙も同じ気持ちだった。
すると……。
「それがお姉ちゃんの……やりたいことなの?」
「!」
亜理沙が投げかけたこの疑問に、絵里はハッとしていた。
(私の……やりたいこと?)
絵里はこの先、この疑問について自問自答するようになっていったのである。
※※※
翌日。奏夜、穂乃果、海未、ことりの4人は、生徒会室を訪れると、絵里にダンスのコーチを依頼していた。
「……私にダンスを?」
奏夜たちがこう言ってくることは思いがけないことだったからか、絵里は少しだけ面食らっていた。
「はい!お願いします!私たち、もっと上手くなりたいんです!」
穂乃果がこのように絵里に頼み込むと、絵里は奏夜と海未のことをジッと見ていた。
そして、絵里は奏夜と海未の言った言葉を思い出していた。
『そこまで言うのなら、あんたはそれだけのものを持ってるんだろうな?そうじゃなかったら、俺はあんたを絶対に許さない!』
『あなたがどれだけのものを持っているのかはわかりません。ですが、私たちのことを……。そんな風に言われたくありません!』
「……」
その時の言葉を思い出しながら、絵里は少しだけ考え事をしていた。
そして……。
「……わかったわ。あなたたちの活動は理解出来ないけれど、人気があるのは間違いないみたいだしね。引き受けるわ」
絵里は今でもμ'sのことを認めてはいないものの、人気があることだけは認めていた。
だからこそ、ダンスの指導を引き受けたのであった。
「本当ですか!?」
本当に引き受けてもらえるとは思っておらず、穂乃果の表情は明るくなっていた。
「でも、やるからには私の許せる水準まで頑張ってもらうわよ!いい?」
「は、はい!ありがとうございます!」
「……絢瀬先輩。あなたがみんなをどのように指導してくれるのか、参考にさせてもらいます」
「えぇ。よく見ておくといいわ。如月君」
ここで奏夜と絵里は、初めて互いのことを名前で呼んでおり、奏夜は穏やかな表情で笑みを浮かべていた。
そんな奏夜の笑顔を見て、絵里は一瞬だけ表情が穏やかになるのだが、すぐに険しい表情に戻っていた。
奏夜と絵里がそんな表情を浮かべる中、希も笑みを浮かべており……。
「……星が動き始めたようやな……」
希はこのように呟いており、そんな希の言葉に奏夜は首を傾げていた。
(……?星が動き始めた?一体何のことだ?)
《さぁな。俺に聞くな》
希の言葉の真意は、奏夜とキルバに理解することは出来なかった。
しかし、奏夜はすぐに希の言葉の真意を知ることになる。
そして、絵里が奏夜たちの指導を引き受けることで、μ'sに大きな変化が訪れることを奏夜は期待をしていた。
その期待が真実へと変わっていくということを、奏夜たちは知る由もなかった……。
……続く。
__次回予告__
『やれやれ。あのお嬢ちゃんの指導を受けることになるとはな。これは、何かが起こりそうな予感がするぞ。次回、「女神」。今こそ集う9人の女神!』
オープンキャンパスの話が決まり、練習を行った奏夜たちでしたが、ちょっとだけギスギスしてしまいましたね。
奏夜の言葉は容赦なかったと思いますが、それは彼が魔戒騎士だからというのもあるかもしれませんね。
ここら辺は原作よりもギスギスだったかな?と思いましたが、そこをちゃんと表情出来たかどうか……。
さて、次回は予告でわかるとは思いますが、いよいよの瞬間が訪れます。
絵里がμ'sの指導を引き受けたことで、μ'sはいったいどうなっていくのか?
それでは、次回をお楽しみに!