牙狼ライブ! 〜9人の女神と光の騎士〜   作:ナック・G

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お待たせしました!第17話になります!

先日、FF14にて牙狼装備を手に入れたと報告しましたが、ようやく轟天をゲットしました!

轟天までの道のりは長かった……。

これからは銀牙や雷剛も狙っていこうと思っています。

さて、FFの話はここまでにしておいて、今回は前後編の話になっております。

奏夜はにこが何故μ'sを認めないのか、その本音を引き出すことが出来るのか?

それでは、第17話をどうぞ!




第17話 「本音 前編」

……ここは、東京某所にある噴水の見える広場。

 

現在は夜遅い時間であり、ここに大学生と思われる集団が集まっていた。

 

どうやら彼らは先ほどまで飲み会をしていたようであり、全員がへべれけになっていた。

 

そんな集団の先頭を歩いていたのは、2人の女性であり、この2人は仲の良い親友であった。

 

しかし、心の中にとあることを隠しているのだが……。

 

お互いそんなこととは知らなかったのだが、広場を歩いていると、突然赤い鼻をつけたピエロ風の男が現れた。

 

こんな夜中にピエロ風の男が現れることに、2人の女性は首を傾げる。

 

すると……。

 

『ねぇねぇ!2人共、2人はお互いのことをどれだけ知っているの?』

 

ピエロ風の男の左手についているパペットが急に喋り出していた。

 

『親友って言っても知らないことはいっぱいだよね』

 

今度は右手のパペットが喋り出し、2人の女性は唖然としていた。

 

『そうだ!このピエロ!すごい力があるんだって!』

 

『どんな力なの?』

 

『人間の心の声、本当の声が聞けるんだよ!』

 

『おいおい、本当かよ?』

 

『嘘だと思うなら、この赤い鼻に注目!!』

 

左手のパペットがこう話すと、ピエロ風の男の鼻が赤く光り、2人の女性はその光に見入っていた。

 

それから間もなくすると……。

 

「……アハハハハ!!」

 

女性Aがまるで気が狂ったかのように高笑いをすると、隣にいた女性を殴り飛ばし、胸ぐらを掴んだ。

 

「ちょっとアンタ!!何あたしの彼氏と浮気してるのよ!!」

 

「アハハハハ!!何でって、金のために決まってんじゃない!!じゃなかったら何であんなボンクラ男なんかと!」

 

「なんですって!」

 

「まぁ、あんたにはそんなボンクラ男がお似合いかもしれないわね。あんな男、金目当てじゃなかったら絶対に寝れないしね」

 

「ふざけるんじゃないわよ!!」

 

女性Aの彼氏と浮気をしたことを認めた女性Bはこのように本音を明かしていた。

 

そんな女性Bの本音に腹を立てた女性Aは、再び女性Bの顔を殴り、それをまともに受けた女Bも、負けじと殴り返していた。

 

彼氏を寝取られた女性Aは、再び女性Bを殴り飛ばすと、そのまま馬乗りになり、渾身の力を込めて女性Bの首を締めていた。

 

しかし、やられっぱなしでは済まされなかったのか、首を締められている女性も、反撃と言わんばかりに女性の首を締めていた。

 

そんな2人の只ならぬ雰囲気に他のメンバーが慌てて止めに入るのだが、その前にピエロ風の男が現れて、全員が男に注目していた。

 

『君たちも、赤い鼻に注目!!』

 

ピエロ風の男のつけている左手のパペットがこう宣言すると、再び男の赤い鼻が怪しく光りだした。

 

それを全員が注目してしまい……。

 

「アハハハハ!!」

 

今度は眼鏡をかけた細身の男性が高笑いをすると、隣にいた小太りの男の胸ぐらを掴んでいた。

 

「てめぇ!!俺の女に手を出しやがったな!このくそデブが!!」

 

「はぁ!?誘ってきたのはあっちからだっつうの!じゃなかったら、誰があんなブサイク女と!アハハハハ!!」

 

「言いやがったな、この野郎!!デブのくせにチャラチャラしやがって!!」

 

「お前が色々と貧相なんだよ!このもやし男!!」

 

「てめぇ!この野郎!!」

 

互いに罵り合っている2人の男性は、やがて殴り合いを始めていた。

 

「誰がブサイク女よ!!このクソ豚野郎!!」

 

それだけではなく、小太りの男性にブサイクと言われた女性Cは、その言葉に激昂し、2人の男性の殴り合いに介入していた。

 

「てめぇら、結局俺の金目当てじゃねぇのか、この薄汚い豚共が!」

 

続いて、女性Aと付き合っている背の高い男性が、2人の本音に激昂すると、2人の殴り合いに介入し、2人を一方的に攻撃していた。

 

ただ殴るだけでは飽き足らず、腹に蹴りを叩き込んだり頭突きをお見舞いしたりとやりたい放題であった。

 

「アハハハハ!!」

 

そんな中、女性Dが、チャラそうな男性の態度に腹を立て、一方的に攻撃をしていた。

 

こちらも殴るだけではなく、蹴りを放ったり、首を絞めたりと殺す気満々な感じであった。

 

女性の首を絞める力はかなりのものであり、男性は口から泡を吹いていた。

 

こうして、ここにいる全員が同じように本音をさらけ出すと、見るに耐えない凄惨な乱闘が行われていた。

 

ピエロ風の男は、そんな若者たちを煽るかのように、楽しみながらその周囲を跳ねて回っていた。

 

しばらくの間、凄惨な乱闘が続き、広場に静寂が戻るのだが、そんな広場には、先ほどまで凄惨な乱闘を行っていた若者たちの死体が転がっていた。

 

どうやら今回の乱闘によって全員が命を落としてしまうという結果になってしまった。

 

『おいおい……。みんな死んじゃったよ』

 

ピエロ風の男は、死体の山の中央に立つと、右手のパペットが口を開いた。

 

すると、男は両手のパペットを一度しまうと、2本の棒を取り出し、それをそれぞれの手に持っていた。

 

すると、男は死体を太鼓のように叩くと、死体の体が変化し、大きな玉と変わってしまった。

 

男は全ての死体を玉へと変えてしまい、その玉を使って遊んでいた。

 

そして、しばらく遊んで満足したのか、玉を1箇所に集めると、1つずつその玉を口へ運び、一部だけ変化した巨大な口で丸呑みしていた。

 

そこにいた全ての死体を喰らって満足したのか、ピエロ風の男は、その場に寝転んでいた。

 

『それにしても、馬鹿だね、人間って』

 

『本当に馬鹿だよな』

 

人間を喰らう時に使った棒をしまったピエロ風の男は、再び両手にパペットをつけると、パペットたちはこう語り出し、高笑いをしていた。

 

食事を大量に取り、満足したピエロ風の男は、その場から姿を消し、この広場には凄惨な乱闘があったとは思えない程の静寂がその場を支配していた。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

音ノ木坂学院に誕生したスクールアイドルグループ「μ's」が6人になって、2週間が経過した。

 

奏夜たちの活動は未だに部活動として認められていなかったのだが、奏夜たちは7人で活動しているため、部活動設立に必要な数は満たしていた。

 

そのため、改めて部活動設立の申請を出そうとしたのだが、この音ノ木坂学院にはすでにアイドル研究部という部が存在している。

 

だから同じような部活を作ることは認められないと言われてしまったのであった。

 

奏夜たちは既に存在するアイドル研究部の部室へと赴き、話をつけようとしたのだが、アイドル研究部唯一の部員は、何かとμ'sを目の敵にしていた矢澤にこであった。

 

にこは奏夜たちを中には入れたくないようであり、中に閉じこもっていたのだが、奏夜と凛が回り込み窓からの侵入を試みた。

 

しかし、それを察したにこに逃げられてしまうのだが、すぐににこを捕まえ、どうにかアイドル研究部の部室へと入ることが許される。

 

渋々奏夜たちを中に入れることを許したにこであったが、この状況が気に入らなかったのか、ぷぅっと頬を膨らませていた。

 

このアイドル研究部の部室には、A-RISEはもちろんのこと福岡のスクールアイドルのポスターが貼ってあった。

 

そこは、流石はアイドル研究部と感心させる程である。

 

「凄いですね、校内にこんなところがあるなんて」

 

「勝手に見ないでよね」

 

にこが膨れっ面なままこう言っていたのだが、部室を見回していた花陽が何かを発見したようだ。

 

「こっ、こここ……これは……!!」

 

「花陽?どうしたんだ?」

 

「で、伝説のアイドルDVD!全巻ボックス!持ってる人に初めて会いました!」

 

花陽は、思いもよらぬものが見つかったようであり、目をキラキラと輝かせている。

 

「そ、そう?」

 

「すごいです!」

 

「ま、まぁね…」

 

花陽の豹変ぶりに、にこも少しばかり困惑していた。

 

「なぁ、花陽。それってそんなにすごいのか?」

 

「知らないんですか!?」

 

花陽がそう言って奏夜に詰め寄って来たのだが、顔が近かったため、奏夜は頬を赤らめていた。

 

そんなことなど気にせず、花陽はこのDVDの説明を始めた。

 

「伝説のアイドル伝説とは、各プロダクションや事務所、学校などが限定生産を条件に歩み寄り、古今東西の素晴らしいと思われるアイドルを集めたDVDBOXで、その希少性から伝説の伝説の伝説……略して「伝伝伝」と呼ばれる、アイドル好きなら誰でも知ってるDVDBOXです!」

 

花陽はかなりの早口でこの説明を行っており、いつもの大人しい花陽はどこかへ行ってしまったようだった。

 

「は、花陽ちゃん、キャラ変わってる……」

 

花陽は、アイドルのことになると饒舌になるみたいなのだが、そのことに穂乃果は困惑していた。

 

「通販ネットともに瞬殺だったのにそれを2セットも持っているなんて!尊…敬!」

 

「家にもうワンセットあるけどね」

 

「!?」

 

「本当ですか!?」

 

《やれやれ……。金の無駄遣いでしかないだろうに……》

 

奏夜は、希少価値があるとはいえ、同じDVDBOXを3つも所持しているにこに驚き、その価値を理解出来ないキルバは呆れていた。

 

《……なぁ、奏夜。よく見たらあのDVDBOXとやら、番犬所に置いてなかったか?》

 

(……!そういえばそうだ!どっかで見たことあるパッケージだと思ってたんだけど、あれってそんなに貴重品だったんだな……)

 

翡翠の番犬所の神官であるロデルは、スクールアイドルを始め、アイドルにハマっているのだが、どうやらにこの持っている通称「伝伝伝」を持っているようだった。

 

《ロデルのやつ、どうやってあれを入手したんだか……》

 

(アハハ……。確かに)

 

翡翠の番犬所には、どうやって電源をつないでいるかわからないパソコンがあり、それが謎だったのだが、また1つ大きな謎が見つかり、奏夜は苦笑いをしていた。

 

「じゃあみんなで見ようよ!」

 

「ダメよ。それは保存用」

 

「ほ、保存用って……」

 

どうやらこのアイドル研究部に置いてあるのは保存用らしく、そのことに奏夜は苦笑いをしていた。

 

「あうぅ!で、伝伝伝……」

 

花陽はよほどこのDVDを見たいと思っていたのか、本気でガッカリしていた。

 

そんな中、ことりが何かを発見し、それをジッと見つめていた。

 

「ことり、何か気になるものでも見つけたのか?」

 

「へっ?えっと……」

 

「あぁ、気付いた?アキバのカリスマメイド「ミナリンスキー」さんのサインよ」

 

「ミナリンスキー?聞いたことないな」

 

奏夜は、初めて聞く名前だったからか、首を傾げていた。

 

(それにしてもどうしてことりはこのサインをここまで気にしてるんだ?)

 

《さぁな。もしかしたら、ことりがその本人なのかもしれないぞ》

 

(アハハ……。それはないって。まぁ、一応聞いてみるかな?)

 

キルバは、冗談半分でこのようなことを言っており、奏夜は苦笑いしつつもことりに聞いてみることにした。

 

「ことり、そのミナリンスキーっていうメイドさんのこと知ってるのか?」

 

「へっ!?べ、別に……」

 

「まぁ、ネットで手に入れたものだから本人の姿は見たことないけどね」

 

(なるほど。正体不明のカリスマメイドってやつか……。それはちょっと興味があるかも……)

 

《やれやれ……》

 

ミナリンスキーと呼ばれるメイドに興味を持つ奏夜に、キルバは呆れていた。

 

そんな中、ミナリンスキーの正体はわからないと聞いた途端、ことりがホッとしており、キルバはそれを見逃さなかった。

 

(……?ことりのやつ、何故ホッとしてるんだ?……まさかな……)

 

キルバは心の中で、ミナリンスキーの正体を察していたのだが、ここはあえて黙っていることにした。

 

「それで、何しに来たの?」

 

ここに来て、ようやくにこは本題を切り出してきた。

 

奏夜たちは本題を切り出すために、全員椅子に腰を下ろし、にこは既に自分の定位置であると思われる窓側の中央の席に座っていた。

 

「アイドル研究部さん」

 

「にこよ」

 

穂乃果は交渉を開始するのだが、奏夜たちはここで初めてにこの名前を知ったのである。

 

にこの名前を聞いた奏夜は、にこが自分のことを名前で呼んでいたことを思い出していた。

 

「にこ先輩。実は私たちスクールアイドルをやっていまして」

 

「知ってる。どうせ希に部にしたいなら話をつけてこいとか言われたんでしょ?」

 

どうやらにこは、奏夜たちの話を察していたようだ。

 

そのため、交渉は早く済むと思われたのだが……。

 

「おぉ、話が早い。だったら……」

 

「お断りよ」

 

「え?」

 

「お断りって言ってるの!」

 

にこは、奏夜たちの提案を聞かずに断っていた。

 

奏夜たちのアイドル部とにこのアイドル研究部を1つにしようと交渉するつもりなのはわかっているが、それをにこは認めたくはなかったのである。

 

(……くそっ、やっぱりダメなのか……!)

 

《……まぁ、アイドル研究部の部長があのお嬢ちゃんだってわかった時点でそんな気はしてたけどな……》

 

奏夜もキルバも、アイドル研究部の部長がにこと知った途端、断られるのではないかと予想はしていたのである。

 

「いや、あの……」

 

「私たちはμ`sとして活動出来る場が必要なだけです。なのでここを廃部にして欲しいとかと言うわけではなく……」

 

「お断りって言ってるでしょ!?」

 

海未も説得に加わるのだが、どうやらにこは聞く耳を持たないようである。

 

「にこ先輩。それって、μ'sがアイドルを冒涜してる。そう思ってるからですか?」

 

「そうよ!あんたたちはアイドルを汚してるの」

 

「先輩、いったい俺たちの何がダメなんです?先輩だってμ'sのこと見てたなら必死に練習してたのは知ってるはずです」

 

奏夜はにこの口から直接、μ'sのダメなところを聞き出そうとしていた。

 

それもわからず一方的に断られるのも面白くないからである。

 

「そういう事じゃないのよ」

 

(……ん?どういう事だ?)

 

どうやらにこが言いたいのは練習量がどうとかという訳ではなさそうだった。

 

「……あんたたち、ちゃんとキャラ作りしてるの?」

 

『キャラ?』

 

にこの思いもよらない唐突な言葉に、全員が同じ声をあげて首を傾げていた。

 

「そう!お客さんがアイドルに求めるものは楽しい夢のような時間でしょ?だったら、それに相応しいキャラってものがあるの」

 

「……なるほど、それは一理あるな」

 

アイドルについて未だにわからないところがある奏夜は、にこの言葉に納得をしていた。

 

誰よりもアイドルらしくキャラを作る。それも大事なことだと思ったからである。

 

「まったく……。しょうがないわね……」

 

にこはどうやらお手本を見せてくれるようだった。

 

奏夜たちは真剣な表情でにこに注目をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にっこにっこに~♪あなたのハートににこにこに~♡笑顔届ける矢澤にこにこ~♪にこにーって覚えてラブにこっ♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…….」

 

奏夜は、思いもよらないにこのキャラクターに唖然として言葉を失っていた。

 

(こ、これは……なんていうか……)

 

《あえて言わせてもらおう。これはナシだと》

 

困惑する奏夜を後目に、キルバは本音でにこのキャラに拒否反応を示していた。

 

奏夜だけではなく、穂乃果はたちもまた、にこのキャラに困惑しているのかポカーンとしていた。

 

「….…どう?これがアイドルらしいキャラってもんよ」

 

「えっと……」

 

「これは……」

 

「キャラと言うか……」

 

奏夜を除く2年生組はリアクションに困っていた。

 

ハッキリとした物言いをしてしまうと、ただでさえ難航している交渉に影響すると思ったからである。

 

そんな中……。

 

「……私無理」

 

「ちょっと寒くないかにゃ?」

 

「ふむふむ……」

 

真姫と凛は、自分の思ったことをハッキリと言っており、花陽は、それを参考にするからか、必死にメモを取っていた。

 

(おいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!真姫と凛!正直過ぎるだろ!俺たちが上手い具合に気を遣ってたのに!)

 

《……ま、あれが普通の反応だろうな》

 

奏夜は、2年生組の気遣いをぶち壊すような真姫と凛の本音に心の中で抗議していた。

 

「……そこのあんた、今寒いって?」

 

にこは特に凛の発言が気に入らなかったからか、むすっとしながら凛を睨みつけていた。

 

「いや、すっごく可愛いかったです!最高です!」

 

(それはそれで白々し過ぎるだろ!逆に怒らせそうだけど……)

 

凛は慌ててフォローを入れるのだが、あまりに白々しく、逆効果ではないか?と奏夜は心配していた。

 

他のメンバーも総出で凛のフォローをしていたのだが……。

 

「……出てって」

 

(あっちゃあ….…。やっぱりこの展開になったか……)

 

こう言われることを奏夜は予想していたため、頭を抱えていた。

 

「話は終わりよ!出てってって言ってるの!」

 

(おっと、俺はここで追い出される訳にはいかないな)

 

奏夜はまだにこに聞きたいことがあったため、追い出されないように身を隠していた。

 

にこが奏夜以外の全員を追い出す中、奏夜は身を隠しながら穂乃果たちがが出て行く様を見守っていた。

 

「……ふぅ……」

 

全員を追い出したと思っていたにこは、一息ついていたのだが……。

 

「……にこ先輩」

 

奏夜はタイミングを見計らってにこの前に現れた。

 

「うぇ!?あ、あんた!出て行ったんじゃないの!?」

 

「すいません。俺、先輩に聞きたいことがありまして」

 

「……何?」

 

奏夜にも出て行って欲しいと思っていたにこは不機嫌そうだった。

 

「……今から俺が言うことはあくまでも俺の想像です。なので、今から言うことを肯定も否定もしないでいいです」

 

「わかったからとっとと話しなさい。そして話したらあんたもさっさと出てって」

 

「わかりました。……にこ先輩ってもしかして以前スクールアイドルをやってたんじゃないですか?それも、俺たちよりずっと前に」

 

「……っ!」

 

先輩の表情が変わった。

 

《……どうやらビンゴのようだな》

 

(これで、ようやくにこ先輩が俺たちのことを目の敵にしてたのかわかった気がするよ)

 

奏夜は、今までのにこの態度に疑問を持っていたのだが、その理由がハッキリしたような気がしていた。

 

「俺、疑問に思ってたんです。部の設立には5人必要なのに1人しかいないアイドル研究部。それを考えた時、先輩がスクールアイドルをやってたとなると合点がいくんです。何らかの事情で4人が辞めてしまい、先輩は1人になってしまった。だからこそ、スクールアイドルとして活躍し始めてるμ'sを認めたくないって」

 

「………」

 

奏夜の推理は図星なのか、にこは黙り込んでしまった。

 

「さっきも言いましたけど、言いたくないなら肯定も否定もしなくていいです。……それじゃあ、俺はこれで」

 

奏夜は言いたいことを話したため、このまま部室から出て行こうとしたが……。

 

「……待ちなさい」

 

にこが奏夜を引き止めたため、奏夜は驚きながらも足を止めた。

 

「まったく……。あんたの推理がだいたい当たってるもんだからびっくりしたわ。だから特別に話してあげる。何でこのアイドル研究部の部員がにこだけなのか」

 

「……はい」

 

少しだけの静寂の後、にこは語り始めた。

 

「……にこね、あんたの推理通り、スクールアイドルをやっていたの」

 

(やっぱり……。にこ先輩は過去にスクールアイドルをやってたんだな)

 

「にこが1年生の時、同じ学年の子と結成したのよ」

 

(同じ学年か……。ってことは先輩が卒業して1人になったって線は無くなったな……)

 

《そのようだ。それに、深刻な事情がありそうだ》

 

奏夜とキルバはこのように推測する中、にこは再び語り始めた。

 

「それでね……。にこ以外の4人が辞めてしまったの」

 

(……やっぱりそういうことか……)

 

「……私のアイドルとしての目標が高すぎたのかな?ついていけないって1人が辞めて2人が辞めて……。最終的にはにこだけになったって訳よ」

 

(……だからなんだな……。俺たちのことを認めようとしないのは……)

 

にこはたった1人の部員となってしまい、辞めることはせずに1人でこの部を守ってきた。そんなにこの孤独は計り知れないものであった。

 

それだけではなく、仲間に裏切られるのが怖いから俺たちを拒絶したのかも。

 

奏夜はこのように推察をしていた。

 

奏夜はにことの交流は少ないが、アイドルのことに関しては真剣な人だってことは理解していた。

 

そのため……。

 

「……なんだよ、それ……。アイドルをやるってことは、目標が高くあるべきだろ?それは当たり前じゃないか!それでついていけないって、そいつらアイドルをマジで舐めすぎだろ……!」

 

自分もスクールアイドルのマネージャーをしているため、奏夜は辞めていったにこ以外の4人に対して怒りを露わにしていた。

 

「……何であんたが怒ってるのよ」

 

「俺、にこ先輩との交流は少ないですけど、あなただって真剣にスクールアイドルをやってただろうと言うのはわかります。だからこそ、軽い気持ちでアイドルをやろうと思ってたその4人が許せないんですよ!」

 

「あ、あんた……」

 

「とりあえず、俺の聞きたいことは以上です。にこ先輩、話したくないだろうことを無理に話させてすいませんでした……。部活に関してはもう一度みんなともう一度話し合うつもりです。それじゃあ、俺は……」

 

「待ちなさい!」

 

奏夜は再び部室を出ようとするが再びにこに呼び止められた。

 

「….…どうしました?」

 

「あんた、名前は?」

 

「……如月奏夜です」

 

「……ありがとね、奏夜」

 

「え?どうしてお礼を?」

 

「にこがスクールアイドルやってたことを知ってる人は少ないけど、あんたはにこのためを思って怒ってたんでしょ?それが嬉しかっただけよ」

 

「そんな……。俺は一生懸命に取り組んでるのを馬鹿にするような奴が許せないだけですよ」

 

「……それでも…….ありがと」

 

「……はい」

 

俺は穏やかな表情で微笑みながら、部室を後にした。

 

(……あれ?穂乃果たちは先に帰ったのかな?)

 

奏夜はアイドル研究部の部室を出たのだが、そこには穂乃果たちの姿はなかった。

 

《まぁ、俺たちは勝手に残ってたからな。先に帰ってても仕方ないだろ》

 

(そうだな。とりあえず連絡は取ってみるか)

 

奏夜は穂乃果たちと連絡を取るために携帯を取り出そうとしたその時だった。

 

「……如月君。どうやらにこっちから色々聞けたようやな」

 

何故かここで待っていた希が奏夜に声をかけてきた。

 

「……あっ、東條……先輩」

 

希がこんなところで待っているとは思わず、奏夜は驚きを隠せなかった。

 

《……奏夜。このお嬢ちゃんには気を付けろよ。ホラーではないが、色々と厄介みたいだからな》

 

(そういえば、統夜さんも言ってたっけ?生徒会の副会長には気を付けろよって)

 

統夜は、μ'sの初ライブを見るため音ノ木坂学院を訪れた時、希と出会ったのだが、希は統夜が普通の人間ではないのではないか?と推測していたからである。

 

統夜はそんな希相手にどうにか話を誤魔化しはしたものの、あともう少しで自分がただの人間ではないことがバレそうだった。

 

そのため、奏夜には、希に気を付けろと警告したのである。

 

「東條先輩。俺に何か用ですか?」

 

「うん。君に聞きたいことがあってな」

 

「?聞きたいこと?」

 

奏夜はおうむ返しのように言葉を返すのだが、希の問いかけに嫌な予感を感じていた。

 

希は一呼吸を置いてから、ゆっくりと語り始めた。

 

「……如月奏夜君。君は一体……何者なん?」

 

「!?」

 

希のあまりに単刀直入な問いかけに、奏夜は驚きを隠せなかった。

 

「な、何者って……。いったい何が言いたいんです?」

 

しかし、奏夜はすぐに冷静さを取り戻すと、淡々と言葉を返していた。

 

「……君がμ'sのマネージャーとして凄く頑張ってるのは知っているんよ。でも、君は他にも何かをしてるような気がしてなぁ。それも、とても危険なことを」

 

(……!!まさか、東條先輩は、俺が魔戒騎士としてホラーと戦っていることを察しているのか?)

 

《その可能性はありそうだ。どうやら、このお嬢ちゃんは魔戒騎士やホラーのことは知らないみたいだがな》

 

「……それに、君の事をカードで占うたびに毎回同じカードが出るんよ」

そう言いながら希は、1枚のタロットカードを取り出すと、それを奏夜に見せた。

 

「このカードは……騎士ですか?」

 

「そうや。このカードはソードの騎士。正位置なら、勇気を振り絞ることで成功に繋がるという意味なんよ。だけど、このカードはそういう意味やないような気がして……」

 

希は何度も奏夜のことを占ってみたのだが、決まってこのカードが出てきていた。

 

そのため、カード自体が奏夜は魔戒騎士だと告げているようにも思えたのである。

 

「この騎士というのは、君自身のことをカードが教えてくれてるような気がしてるんよ。何かから誰かを守る騎士。それが、この音ノ木坂のことなのか、別のことなのかはわからへんけど……」

 

(……なるほどな。そういうことか)

 

《あぁ、やはりお嬢ちゃんの占いで、俺たちの正体を察したって訳だ》

 

「それだけやないで。君と初めて会った時から不思議な雰囲気を感じるなぁと思ってたんよ。それに、君のしてるその指輪からも不思議な気を感じるしなぁ」

 

「!!」

 

どうやら希は、奏夜だけではなく、キルバの存在さえも感じ取ったようであり、奏夜は驚きを隠せずにいた。

 

「……なぁ、改めて聞くけど、君は何者なん?ただの高校生なん?それとも……」

 

希は改めて奏夜の核心を突くための質問をするのだが、奏夜はどう答えるべきかじっくりと考えていた。

 

そして……。

 

「……そこまで知ってしまったのなら、真実を知るのももうすぐかもしれませんね。だけど、それまでは俺は普通の高校生ってことにしておいて下さい」

 

奏夜は下手に隠したり誤魔化したりというのは希には通用しないと思ったからか、このような表現にとどめておいた。

 

「……まぁ、釈然とはしないけど、今日のところはそういうことにしておくわ」

 

「すいませんね。それじゃあ、俺はこれで」

 

希との話を早々に終わらせた奏夜は、逃げるようにその場を後にした。

 

「……」

 

そんな中、希は、奏夜がその場を後にする様子をジッと見つめていた。

 

「……なるほど、やはりそういうことやったんやな」

 

どうやら希は、奏夜の正体を察しているようであり、このように呟いていた。

 

その後、穏やかな表情で笑みを浮かべた希は、その場を後にした。

 

一方、逃げるようにその場を後にした奏夜は、そのまま番犬所へと向かうのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『なるほどな……。あのお嬢ちゃんがここまで思い詰めていたとはな。奏夜、こいつはなんとかしなきゃいけないぞ!次回、「本音 後編」。今明かされる、矢澤にこの本音!!』

 

 




初「にっこにっこにー」いただきました!

そして、にこが何故たった1人の部員になったかも明かされました。

奏夜がその話を聞いて怒ったのは、本気でにこのことを気遣ってのことだと思います。

そして、希が奏夜の正体について核心を突いてきました。

希に正体がバレるのも、時間の問題かもしれませんね。

それにしても、冒頭の乱闘シーンですが、牙狼に登場したあるホラーの回を参考にしました。

本来はもっと生々しい会話にしたかったのですが、あまり生々しいのも良くないと思ったので、あんな感じにさせてもらいました。

さて、次回は今回の続きとなっております。

にこが1人になった経緯を知った奏夜ですが、奏夜はにこの本音を引き出すことは出来るのか?

それでは、次回をお楽しみに!


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