現在、牙狼とコラボしているFF14をプレイしていましたが、先日、ようやく牙狼装備をゲットしました!
マイキャラの名前を前作主人公の統夜にしていたため、統夜が牙狼の鎧を装備という展開に。
ゲットした瞬間はニヤニヤが止まりませんでした。
現在は、轟天ゲットを目指して頑張っています。
FFの話はここまでにして、今回は医者にまつわる話となります。
医者にまつわるホラーとは、いったいどのようなホラーなのか?
それでは、第14話をどうぞ!
……ここは、東京ではなく、某県にある最近廃業してしまったとある病院。
この病院の書斎に1人の青年がおり、青年は書斎の本の整理を行っていた。
青年の父親は医者としてこの病院を経営しており、青年はこの病院を継ぐのが嫌で、東京の医大に入り、医者となったのだが、父親の訃報と病院廃業を聞いて、戻ってきたのである。
「……それにしても、親父のやつ、何でこんな古臭い医術書ばかり揃えていたんだよ……」
病院の書斎にあったのは、最近の医術書ではなく、何百年前も昔の医術書ばかりだった。
青年の父親は、生前から今の医療よりも、先人たちの受け継いできた医療の方が優れていると豪語しており、周囲の偏見を買っていたのである。
この病院も取り壊しが決まっているため、青年が病院の中にある父親の遺品整理を行っているのである。
そんな中……。
「……ん?何だ、これ?」
青年は医術書の中でも、特に異彩を放ち、古めかしい医術書を発見した。
その内容が気になったため、青年はこの医術書を少し読んでみることにした。
この医術書は全て英語で書かれているのだが、青年は英語をマスターしているため、この医術書を読むのは苦ではなかった。
この医術書には、その時代に活躍したとある名医についての説明が書かれていた。
「……ん?伝説の名医「ファビアン」?彼に治せぬ病はなく、どんな病もあっという間に治したのである。……って、そんな馬鹿なことがあるかよ」
青年はファビアンという医者の偉業を鼻で笑っていた。
青年は、最先端の医療技術こそ、多くの患者を救うと信じて疑っていないため、当時の医療が現代の医療より優っているなどあり得ないと思っていたからである。
そんな風にファビアンのことを馬鹿にしながらも青年はこの医術書を読み続けていた。
そこにはファビアンが残した様々な功績や、治療法が記されていた。
「……ば、馬鹿な……!!当時の時代でここまでの病院を治せるもんかよ!」
ファビアンの功績が信じられず、青年は絶句していた。
このファビアンと呼ばれる医者は、当時の流行病や当時は不治の病と呼ばれた病を治しただけではなく、現代の医療技術でさえ治すのが困難な病を治したりもしていたようである。
「……だけど、これがもし本当だったら、親父がここまでのめり込むのもわかる気がするよ……」
青年の父親は亡くなる前、自身の病院の経営そっちのけでこの書斎に篭っており、日夜先人の残した医術の研究に没頭していた。
そのため、経営は立ち行かなくなり、青年の父親が亡くなったのと同時にこの病院も潰れてしまったのである。
青年は1度ファビアンについて書かれている本を読むのを辞めると、父親が読んでいたと思われる他の本たちも次々に目を通していた。
そして、その本を読んだ青年は、技術だけ発展している今の医療には限界があるということを思い知らされてしまったのだ……。
書斎の本を読めば読むほどその思いは確信へと変わり、外が暗くなるまで本を読み続けていた青年は、愕然としていた。
「……そ、そんな……!俺が今まで学んできたことはいったいなんだったんだよ……」
現代医療の限界を知り、青年は今の医療に対して絶望していた。
それと同時に、ここまで研究にのめり込んだ父親の気持ちが少しだけ理解出来たのであった。
青年が現代医療に絶望し、亡き父に想いを馳せていたその時であった。
__貴様、伝説の名医、ファビアンのようになりたくはないか?
「!?こ、声!?いったいどこから!?」
青年の脳裏に謎の声が聞こえてきたため、青年は怯えながら周囲を見渡していた。
しかし、特に変わった様子はなく、困惑を隠せずにいた。
__そんなに怯えることはない……。我も現代の医療には疑問を持っていたのだ。機械だけ優れていても、人の命は救えない……。
「お、俺もそう思ったが、お前は医療のことがわかるのか!?」
謎の声の言葉は、まさしく青年が思っていたことそのものであった。
なので、考えを見透かされているのかと怯えながらも、謎の声に驚いていた。
__我は伝説の名医、ファビアンの意思を継ぎし者。貴様は、ファビアンのようになりたくはないか?我と共に、この腐った医療を変えていこうではないか!!
「……お、俺だってそうは思うけど、いったいどうすればいいんだ?お前が知識を与えてくれるのか?」
__いかにも……。我と1つになることで、貴様は無限の知識を得ることが出来るのだ!だからこそ、我を受け入れよ!!
謎の声がこう宣言すると、青年が最初に読んだファビアンの本が、怪しいオーラを纏いながら宙を浮いていた。
そして、本の中から素体ホラーが現れると、青年の顔を両手でガッシリと捕まえていた。
「!?な、何するんだ!?放せ!!放せよ!!」
唐突な展開に怯えた青年は、素体ホラーを払いのけようとするが、それは不可能だった。
そして、素体ホラーの体が黒い帯状に変化すると、素体ホラーは青年の中に入っていった。
「グァァァァァァァァァ!!」
青年は、まるで獣のような断末魔をあげながら、ホラーに憑依されてしまった。
「……」
ホラーに憑依された青年の瞳が怪しい輝きを放ち、青年はニヤリと不敵な笑みを浮かべていた。
「……まずは小手調べと行くか……」
青年はこう呟くと、今回のゲートとなったファビアンの本を持ち出し、どこかへと姿を消してしまった。
※※※
音ノ木坂学院のスクールアイドル「μ's」は、3人だったのだが、1年生である小泉花陽、星空凛、西木野真姫が加入し、6人となった。
その数日後、この日は日曜日であり、練習はもちろんあるのだが、学校が休みということもあり、集合時間はいつもより遅めだった。
そのため奏夜は、エレメントの浄化に行く前に、朝食を食べながらテレビを見てのんびりとしていた。
現在奏夜が見ているのはニュース番組なのだが、奏夜はそこから流れてきたとあるニュースが気になっていた。
『……次のニュースです。遥か昔に活躍したと言われる名医、ファビアンが復活したと言われています』
このニュースの詳細は、東京近くの○○県△△村にファビアンと名乗る医者がふらっと現れ、病気に苦しむ老人や子供の病を無償で治したという。
これだけ言ってしまえばただの慈善事業をしている医者なのだが、驚くべきところは別にあった。
ファビアンと名乗る医者が治療した中には、末期ガンで余命僅かの人物もいたという。
なんと、ファビアンはその末期ガンすらも治してしまったという。
これが本当であれば、医療の歴史を根底から覆す大事件なのだが、どうやら世間の人々はこのニュースを疑いの目で見ているようだった。
街頭インタビューのシーンでも、人々はこのニュースを信じようとはしていなかった。
奏夜ももちろん、このニュースを信じてはいない。
「……やれやれ、ずいぶんとキナ臭いニュースが流れてるな……」
『確かにな。これが本当だったら国だって黙ってはいないだろう。それに……』
「それに?」
『このニュースでは良いところしか言っていないところが気になってな。病が治った連中がその後何をしているのかも語られていないしな』
「それは俺も気になっていたけど、キルバはこの事件にホラーが関わってるとでも言いたいのか?」
『まぁ、0ではないだろう。そうでなければ関わる必要もないしな』
奏夜のような魔戒騎士は、人間の引き起こした事件に関わってはいけないという暗黙の了解がある。
自分たちが斬れるのはホラーだけだからだ。
その事件にホラーが関わっていれば話は別なのだが、人間が引き起こした事件ならば、例え人が殺されていようが拐われようが、手を出してはいけないのである。
「……頭ではわかってるが、そこは解せないんだよなぁ……」
『そこに関しては色々言いたいところだが、さっさと出掛ける支度をしろ。今日は練習の前にある程度エレメントの浄化を終わらせなければいけないんだからな』
「わかってるって」
奏夜は残った朝食を完食し、食器を洗ってからテレビを消した。
その後、出掛ける準備を整えた奏夜は、神田明神に向かう前にエレメントの浄化を行うべく街を回ることにした。
そして、練習時間ギリギリに神田明神に到着し、穂乃果たちと合流したのであった。
μ'sのメンバーが6人になり、最初の課題となったのは、新しく加入した3人の体力をつけることであった。
穂乃果たちの時もそうだったのだが、最初から最後まで笑顔を保ったままパフォーマンスをするためには、体力をつけることが必要なのである。
階段ダッシュのトレーニングをして感じたことがある。
それは、新加入した3人の体力および運動能力の差である。
花陽は、あまり運動が得意ではないのか、1度階段ダッシュを行うだけでバテバテであった。
真姫は、花陽ほど運動が出来ない訳ではないが、やはり体力には問題があると思われる。
一方凛は、元々陸上部志望だったらしく、運動能力はかなりのものであり、階段ダッシュも軽々とこなしていた。
凛の運動能力には、魔戒騎士である奏夜も驚くほどであった。
そんな3人の運動能力の差をしっかりと見極めつつ、階段ダッシュのトレーニングは行われ、午前中いっぱいはこのトレーニングだけで終了となった。
「……いやぁ、終わった終わった♪」
「……まだ午後の練習が残ってますよ?」
「エヘヘ……わかってるって♪」
穂乃果は午前の練習が終わり、大きく伸びをしながらこのようなことを言っていると、海未になだめられていた。
「……ま、とりあえず午後の練習まではのんびりしようぜ」
午前の練習が終わったという訳であり、奏夜たちは昼食を取り、午後の練習までのんびりと休憩することにした。
そんな中……。
「……」
真姫の元気がなく、落ち込んでいるというよりは何か思いつめているという感じであった。
「……真姫、どうしたんだ?」
「へ!?な、何でもないわよ!!」
奏夜は思いつめている感じの真姫が心配だったのか、声をかけるのだが、急に声をかけられて、真姫は驚いていた。
「……何かあるなら言えよ。お前もμ'sの一員なんだから、俺たちにとっては大切は仲間なんだからな」
「……!////」
真姫は、奏夜のストレートな言葉が恥ずかしかったのか、頬を赤らめていた。
……それを見ていた穂乃果、海未、ことりの3人は少々面白くなさそうだったのだが……。
しばらくしてから、真姫は今自分が抱えている悩みを語り始めた。
「……ねぇ、伝説の名医って言われたファビアンって知ってる?」
「「ファビアン?」」
どうやら穂乃果と凛はファビアンのことを知らないようであり、首を傾げていた。
「……あぁ、そういえば、今朝のニュースでやっていた気がします」
「そうだね。確か、昔に活躍したお医者さんで……」
「それが現代に蘇ったとか!」
そして、海未、ことり、花陽の3人は今朝のニュースを見たからなのか知っているみたいだった。
「まぁ、末期ガンをも治してしまうほどの名医とか言っていたけど、ずいぶんキナ臭い奴だよな」
「そう!まさに奏夜の言う通りなのよ!……だけど、ウチのパパが経営している病院の患者さんの中にもファビアンに診てもらいたいって人がいて、それで、パパは悩んでいるようなの」
「なるほどな。確かに、そのファビアンがマジでどんな病気もタダで治すなら、病院の存在自体脅かされるもんな」
奏夜はここで真姫の悩みを理解し、自分の推測を語っていた。
「……まさにその通りなのよ。だけど、私やパパもそうだけど、ほとんどの人はそんなものはインチキだって言っているわ」
「確かに、何の見返りもなく難病すら治してしまうというのは、怪しいと言われても仕方ないかもしれませんね」
「だけど、そのファビアンって人が来た村の人って、貧しい人が多いみたいで助かってるとも言ってましたよね」
花陽の説明通り、ファビアンが訪れた△△村は、人口が少ないだけではなく、過疎化も進んでおり、お世辞にも裕福とは言い難い村であった。
中には、病院へ通うお金もなくて、通院を諦めている人もいるとの噂であった。
だが、そんな村をファビアンが救ったのは事実なようだが、どこまでが真実なのかはわからなかった。
「それに、これは噂なんだけど、ファビアンが△△村を離れて間もなく、そいつに救われた患者が何人か行方不明になってるみたいなのよ」
「!」
真姫の話したことはニュースでは取り上げられていない噂話なのだが、その話を信じた奏夜は驚きを隠せなかった。
(……なぁ、キルバ。まさかとは思うけど……)
《あぁ、そのファビアンとかいう奴がホラーの可能性は充分にあるな。だとしたら、今の人間が治せない難病を治したことも説明がつくしな》
奏夜とキルバは、ファビアンの正体がホラーではないかと疑っていた。
そうすれば、ニュースで取り上げられていた末期ガンすら治したことにも合点がいくからである。
(……調べてみる価値はありそうだな)
今のところホラー討伐の指令は出ていないが、午後の練習を休んでファビアンについて調査してみようと奏夜は考えていた。
そんな中……。
「……そのファビアンがね、噂ではこの秋葉原に来るみたいなの。だから私、午後の練習を休んで調べてみようと思って……」
どうやら真姫も、ファビアンについて調べてみようと考えていた。
「……なぁ、真姫。俺もそれについて行って良いか?」
「ヴェェ!?な、何なのよ!いきなり!」
奏夜がこのようなことを頼むなど思ってもいなかったのか、真姫は驚きを隠せなかった。
「ちょっと、奏夜!午後からの練習はどうするのです?」
「それは確かに大事だ。だけど俺はそのファビアンが本当に凄いのか興味あるし、同じμ'sの仲間が悩んでるのを放っとけないしな」
奏夜は海未にこう言い訳しながらも海未とアイコンタクトを取り、「ホラーかもしれないんだから察してくれ」とどうにか海未に伝えようとしていた。
海未はそんな奏夜のアイコンタクトの意図を理解したようであり……。
「……仕方ないですね……。それでは、午後の練習は真姫と奏夜は抜きということで……」
「ねぇねぇ!せっかくだから、私たちも一緒に行こうよ!!」
「え!?」
「ちょっと穂乃果!いきなり何を言っているのですか!?」
穂乃果の唐突な提案に真姫はさらに驚いており、海未は少しばかり怒っていた。
「だって、その人が本当に凄いお医者さんなら、会う機会なんてもうないでしょ?それに、そーくんの言う通りだよ!真姫ちゃんの悩みを解決しないと、練習に集中出来ないだろうし!」
「確かに……。そこは一理あるかもね」
どうやらことりは、穂乃果の意見に賛成のようであった。
これ以上自分が何を言っても無駄だと判断した海未は、やれやれと言いたげな感じでため息をついていた。
「……仕方ありませんね。それでしたら、終わり次第練習に戻りますからね」
「「「「はーい!!」」」」
海未は終わり次第練習することを提案することで了承し、真姫と奏夜以外の4人は返事をしていた。
「……みんな、悪いわね。私のワガママに付き合わせちゃって」
「真姫ちゃん、気にすることないにゃ!」
「うん!凛ちゃんの言う通りだよ♪」
「……凛……花陽……」
真姫は、奏夜たちが自分のワガママを嫌な顔1つせずに聞いてくれたことが何よりも嬉しかった。
「それで、そのファビアンって奴がどこに来るのかわかるか?」
「私の勘が正しければ……。多分……」
真姫は、ファビアンの診察が行われるであろう場所を話すと、奏夜たちはその話に納得していた。
こうして奏夜たちは昼食を食べ終えると、真姫の指定した場所へと向かうことになった。
※※※
真姫の指定した場所。それは、彼女の父親が経営している「西木野総合病院」であった。
この病院は秋葉原の中でも大きな病院であり、毎日多くの患者が訪れている。
そんな中、真姫の予想が当たったのか、病院の入り口にはテントが建てられており、その入り口から、ファビアンの診察を待っている多くの人の行列が出来ていた。
……その行列は主に高齢者であり、子供は少ないのだが……。
「うわぁ……。凄い行列だねぇ……」
「確かにそうですね……。これはみんな、ファビアンとかいう人の力を信じてる人なんでしょうか?」
「ま、恐らくはそうなるよな」
穂乃果と海未は、ファビアンの診察を待つ行列に驚いており、そのほとんどがその力を信じている者であった。
「ねぇねぇ、かよちん。凛たちも並んだ方がいいかなぁ?」
「えぇ!?でも凛ちゃん、私、どこも悪くないよ!」
「エヘヘ……。凛も健康そのものにゃ!」
どうやら、この中で体調の悪い者はおらず、誰かが代表して診てもらうことは不可能だと思われた。
そんな中、ファビアンに診察してもらうための受付を行っている男性に、真姫は見覚えがあった。
その人物とは……。
「……パパ!!」
どうやら真姫の父親であり、真姫は父親のもとへと駆け寄っていった。
「あ、真姫ちゃん!待って!!」
「仕方ない……。俺たちも行くか」
こうして、奏夜たちは、真姫の父親への挨拶も兼ねて、真姫の父親のもとへ向かうことにした。
真姫の父親は、整った顔に、眼鏡をかけている優しそうな男性だった。
「……おぉ、真姫。来たのか」
「うん。何だかパパのことが心配になっちゃって……」
「……そうだったのか……。おや?真姫、この子たちは?」
真姫の父親は、遅れてやって来た奏夜たちの存在に気付き、奏夜たちを見ていた。
「えっと……」
真姫は奏夜たちのことを紹介しようとしていたのだが……。
「……初めまして。彼女たちは音ノ木坂学院にてスクールアイドルをやってまして、真姫さんは彼女たちの仲間です。……そして僕は、そのスクールアイドル「μ's」のマネージャーをしております如月奏夜と申します。以後、お見知り置きを」
奏夜はまるで本物のアイドルのマネージャーのように丁寧な態度で自己紹介をしていた。
「……おぉ、君たちがμ'sか!娘から話は聞いているよ。娘からアイドルをやると聞いた時は流石に驚いたけどね」
「ちょ、ちょっと、パパ!?」
真姫の父親の言葉に恥ずかしくなってしまったのか、真姫は頬を赤らめていた。
「……それに、こんなに立派なマネージャーがいるなら安心だよ。奏夜君……だったかな?娘を、よろしくお願いします」
「……もちろんです。お任せ下さい」
「ちょっと奏夜!変なこと言わないでよ!!」
真姫の父親と奏夜との会話がまるで結婚を控えた義父と息子の会話みたいであり、真姫は頬を赤らめていた。
「……それにしても、凄い行列ですね、これ……」
真姫の父親に簡単に挨拶を済ませたところで、奏夜はファビアンの診察を待つ行列を指差して驚いていた。
「あぁ……。私の病院の患者の多くがファビアン先生の診察を希望していてね、診察場所を提供して来てもらったんだよ」
「……でも、ここまで患者さんを取られたら商売あがったりですね……」
「……患者の病を治すという点では良かったのだが、まさにその通りなんだよ。だからこそ私は、ファビアン先生の医療を知るためにあえて手伝いをしているという訳なんだ」
「……そうだったんだ……」
どうやらこの話は、娘である真姫も知らない話だったようであり、驚いていた。
「……俺たちも同じ気持ちなんです。だから、何でもいいのでお手伝いできることはないですか?」
「それはありがたい。この行列だからね。正直猫の手でも借りたいと思っていたところなんだ。だけど……本当にいいのかい?」
「もちろんです!俺たちはそのためにここへ来たんですから」
「すまないね……。それじゃあ、頼めるかな?」
『はい!!』
こうして、奏夜たちは、西木野総合病院にやってきた噂の名医であるファビアンの診察の手伝いをすることになった。
その仕事は主に行列の誘導と受付。
時々診察の手伝いをすることもあったが、基本的にファビアンは、患者ではない奏夜たちや西木野総合病院の人間を、診察室に入れることを良しとはしなかった。
基本的に軽症な患者ならば奏夜たちや西木野総合病院の人間も診察の手伝いをしていたが、少しだけ症状が重い人間の治療の時は、診察室を追い出されたのである。
そんなファビアンに、奏夜と真姫は疑惑を抱きながら手伝いを行っていた。
しかし、奏夜を含めて7人が手伝いに入ったため、先ほどよりも誘導の仕事は順調に進んでいた。
奏夜はその手伝いの最中、診察室で軽症な患者の治療をしているファビアンを見たのだが、全身を覆うローブに仮面をつけており、明らかに怪しい格好だった。
このファビアンという医者は、顔を明かすことを良しとはしていないため、このような格好で正体がバレないようにしているのである。
1時間ほど手伝いをすると、行列もだいぶまばらになっていたのだが、奏夜はある光景が気になっていた。
それは……。
(……うわ、凄い数のマスコミだな……)
《恐らく奴がここにいることを嗅ぎつけたんだろう。奴は良い意味でも悪い意味でも注目されてるみたいだからな》
多くの報道関係者が来ており、ファビアンに取材をするタイミングを今か今かと待っていたのである。
奏夜はマスコミを気にしながらしばらく手伝いを行っていると、診察室からファビアンが出てきた。
(……あれ?ファビアンが出てきたぞ?まさかとは思うけど……)
ファビアンが出てくるのを訝しげに見ていた奏夜は、そのままマスコミに何かを語るのではないかと予想していた。
その予想は当たっているのか、ファビアンを見つけた報道関係者たちは、一斉にファビアンの方へなだれ込んでいき、矢継ぎ早に質問をしていた。
ファビアンはそれを説明するために急遽、会見を行うことにしたのである。
奏夜たちは、手伝いを一時中断すると、ファビアンの記者会見の様子を見ることにしていた。
『ファビアン先生!あなたはどうして無償で患者の治療を行うんですか?』
記者会見が始まるなり、記者の1人がいきなり核心をついた質問をしていた。
『……私は、自分の医術を多くの人に伝えたい。だから患者さんからお金は頂いていないのです。私は、医療をビジネスと考えている今の医療の人間とは違うのです』
ファビアンはマイクを手に、最初の質問に答えたのだが、いきなり穏やかではない答えが返ってきて、記者たちはざわついていた。
(……うわぁ、ファビアンの奴、いきなり喧嘩をふっかけてきてるな……)
《よくもまぁ、こんなことをハッキリ言えたものだな……》
奏夜とキルバは、ファビアンの容赦ない物言いに、少しばかり呆れていた。
『ファビアン先生!その仮面を外していただいて、お顔を拝見したいのですが……』
続いての質問も誰もが気になるであろう質問であった。
『……私は素顔を見せるわけにはいきません。人は、正体のわからないものには畏怖の感情を抱く……。つまり、仮面をつけることで、私の言うことを信じてもらいやすくなるのです』
ファビアンが仮面を外さない理由も明かされ、記者たちは再び絶句していた。
『……そ、それでは、もう1つ質問します!ファビアン先生は△△村にて、末期ガン患者の病気を治したと聞きましたが、それは本当なのでしょうか!?』
記者の1人が、恐らくここにいる全員が聞きたいであろう質問をファビアンにぶつけていた。
ファビアンは仮面をつけているため、表情は見えないが、動揺している素振りはなさそうだった。
『……その話は、私も耳にして、非常に驚いております。確かに私は△△村にて、末期ガン患者の治療を施しました。しかし、いくら私の力を持ってしても治すことは叶わず、患者さんは亡くなってしまいました。恐らくは、私の力を過大評価した誰かがそう言っていたのでしょう』
どうやら、末期ガンを治したと言うのは根も葉もない噂であり、記者たちのざわつきは大きくなっていた。
『……それが噂とはいえ、皆様を困惑させたこともまた事実。謹んでお詫び申し上げます』
ファビアンは記者たちに素直に謝罪をすることで、自分への疑惑をなくそうと企んでいた。
(……あいつ……!)
《真実を語ることで、世間の信用を得ようとしていやがるな……。奏夜、仮にこいつがホラーだとしたら、相当厄介なことになりそうだぞ》
(そうだな……。奴がホラーだと言う確信を得てからじゃないと、警戒されるだけだからな……)
奏夜とキルバは、現在記者会見を行っているファビアンこそが、ホラーだと疑っていたのだが、その確証が得られなければ、迂闊に動くことは出来ないのである。
ファビアンによる記者会見は、魔戒騎士である奏夜への牽制とも思える行為であると思われるが、真意は不明である。
その後もファビアンは、30分ほど記者からの質疑に答え、記者会見は終了となった。
(……こりゃ、明日のニュースで、どう語られるのか……)
《……そうだな……。しばらくは様子を見るしかなさそうだな……》
奏夜は、今現在の状態ではファビアンを問い詰めることは出来ないため、上手い具合に近付くタイミングを見計らうことにしたため、この日は出直すことにした。
こうして西木野総合病院の前のテントでのファビアンの診察の手伝いを行った奏夜たちは、神田明神に戻ると、練習を再開した。
ファビアンの行った記者会見は、恐らくはファビアンという医者の存在感をより大きくさせるものと予想されていた。
しかし、そんなファビアンに疑惑を抱いているのは奏夜だけではなく、真姫も疑惑を抱いていた。
そのため、真姫は独自にファビアンについて調べようと考えていたのであった。
※※※
伝説の名医と呼ばれたファビアンが西木野総合病院の入り口に駐留してから早くも数日が経過した。
奏夜は学校や練習の合間を縫って西木野総合病院を訪れ、ファビアンの様子を伺っていたのだが、多くの患者がファビアンの治療を待っているらしく、近付くことさえ叶わなかった。
あの記者会見の後、正直な気持ちを告白したファビアンに好感を持った者が多かったようで、ファビアンのことを信じる人物が増えたのである。
さらに、西木野総合病院へは1週間ほどお世話になると豪語していたため、時間的余裕はないのであった。
そんな中、この日の診察も終わり、ファビアンの診察室に1人の女性が訪れていた。
この女性はファビアンが西木野総合病院に現れた初日に行列に並んでファビアンの診察を受け、その処置によって病気を治したのである。
「どうですか?体調の方は?」
「はい。先生のおかげですっかり良くなりました」
「いえ。人間は元々、体内に病を治すための物質を精製し、自ら治癒する。医者はそのお手伝いをしているだけなのです」
「は、はぁ……」
「……そして、その体内で精製される物質……。それがまた美味なんですよ!!」
「え?」
ファビアンの意味不明な発言に女性は困惑していたのだが、ファビアンは女性の頭を両手でガシッと捕まえていた。
「!?ファ、ファビアン先生!?」
「つまり!ちょうど今のあなたのような治りかけの頃合い!これがまた美味なんですよ!!」
奏夜やキルバの推察通り、ファビアンがホラーであることは間違いなく、ファビアンは仮面に付けられているクチバシのような口を大きく開いていた。
「せ、先生……!一体何を!?」
「最高の美味……。いただきます!!」
ファビアンの仮面の口が大きく開かれると、女性の体は徐々に黒い粒子となっていき、ファビアンに吸い込まれていった。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ファビアンによって病を治してもらった女性は、そのファビアンの手によって捕食されてしまい、その生涯を終えることになってしまった。
「……ふぅ……。やはり、治りかけの人間の味は格別ですねぇ……」
女性を喰らい、満足したファビアンは、その後、何事もなかったかのように仕事をしていた。
奏夜はどうにかファビアンと接触し、これ以上の被害を食い止めることは出来るのか?
……続く。
__次回予告__
『やれやれ……。やはりあの医者はキナ臭いな……。どうにか上手いこと接触出来れば良いのだがな……。次回、「医術 後編」。奴の陰我、斬り裂いてしまうぞ!奏夜!』
今回登場したのは、「牙狼 炎の刻印」にも登場したファビアンでした。
医者にまつわるホラーはもう一体いますが、ファビアンの方を選んだのは、ファビアンが現代に蘇ったら面白いかなと思ったので選びました。
そして、今回は前後編となっていますが、1話でまとめるとなると、かなり長くなるなと思ったので、前後編とさせていただきました。
もし現代に様々な病を無償で治す医者が現れたら、世間は大騒ぎになりますよね。
今回はまさにそうですが。
このような状態で、奏夜はホラーであるファビアンの尻尾を掴み、討滅することは出来るのか?
それでは、次回をお楽しみに!