牙狼ライブ! 〜9人の女神と光の騎士〜   作:ナック・G

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こんにちは!ナック・Gです!

投稿予定だった牙狼とラブライブ!のクロスオーバー小説を今日から投稿していこうと思います。

今作も駄文になることが予想されますが、楽しんでいただけると嬉しいです。

新たな主人公がどのような物語を紡いでいくのか、ぜひご期待ください!

それでは、第1話をどうぞ!




μ`s結成編
第1話 「高校」


……ここは東京都千代田区にある、国立音ノ木坂学院。

 

秋葉原と神田と神保町という3つの街のはざまにある伝統ある学校である。

 

ここは昔は女子高であったのだが、少子化の煽りを受けて数年前に共学となった。

 

それでも入学希望者は思うように減らず、廃校になるのでは?という噂が流れていた。

 

しかし、その噂はこの学校に通う誰もが信じようとはしなかった。

 

現在は早朝であるのだが、茶色のコートを着た少年が秋葉原の街を歩いていた。

 

その少年……如月奏夜(きさらぎそうや)は、音ノ木坂学院に通う高校2年生であるが、それは表向きの顔である。

 

奏夜は16歳であるが、古より来たる魔獣、ホラーを狩る魔戒騎士の1人である。

 

というものの、奏夜は魔戒騎士になってからまだ日は浅く、ホラーを狩りながら一人前の魔戒騎士になるために精進していた。

 

そんな奏夜であるが、とある魔戒騎士を尊敬していた。

 

その魔戒騎士とは、現在桜ヶ丘に住んでおり、「紅の番犬所」所属の魔戒騎士である月影統夜(つきかげとうや)である。

 

統夜は桜ヶ丘高校に通いながら魔戒騎士としての務めを果たし、若輩ながら数々の強大なホラーを討滅してきた魔戒騎士であった。

 

その実力は、魔戒騎士最高位の称号を持ち、最強の魔戒騎士である、黄金騎士牙狼こと冴島鋼牙(さえじまこうが)も認める程であった。

 

そんな統夜も、もうじき20歳であり、今でも現役でホラーを狩り続けている。

 

奏夜は今の自分と似た状況ながらも騎士の務めも果たし、実力をつけた統夜を尊敬していた。

 

『……おい、奏夜。次で最後だぞ』

 

奏夜の右手に嵌めてある銀色でドクロのような形をした指輪が唐突に口を開いた。

 

この指輪は「魔導輪キルバ」。魔戒騎士である奏夜をサポートする彼のパートナーである。

 

キルバのような魔導輪や魔導具はホラーを探知する能力があり、奏夜はキルバのナビゲーションを頼りにホラーを捜索して、殲滅する。

 

奏夜は高校に通いながら魔戒騎士としての務めを果たしているが、彼が魔戒騎士であることは、同業者以外は誰も知らない。

 

奏夜は現在、魔戒騎士の務めの1つであるエレメントの浄化を行っていた。

 

魔戒騎士の仕事は、昼間はゲートと呼ばれる陰我が集中する場所の浄化を行い、夜は出現したホラーを討滅する。

 

奏夜は昼間は学校があるため、朝のうちにエレメントの浄化を出来る範囲で済ませ、不足分は同じ番犬所に所属している先輩騎士に任せている。

 

この日も可能な範囲でエレメントの浄化を行い、それを終えた奏夜は学校へと向かった。

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

奏夜の通う音ノ木坂学院は伝統ある高校で、校舎の佇まいも歴史を感じさせるものであった。

 

奏夜が玄関に入ろうとしたその時だった。

 

「あっ、そーくんだ!!」

 

オレンジのように明るい髪で、サイドポニーの少女が、玄関に入ろうとしている統夜を指差した。

 

その側には青の入った黒い長髪の少女と、グレーっぽい色の長髪の少女もいた。

 

奏夜を指差した少女は高坂穂乃果(こうさかほのか)。この、音ノ木坂学院に通う高校2年生である。

 

そして、黒髪の少女、園田海未(そのだうみ)と、グレーっぽい髪の少女、南ことりも同じく高校2年生である。

 

奏夜は魔戒騎士になったばかりの中3の夏にひょんなことから知り合い、それ以来友人として仲良くしている。

 

しかし、この3人は奏夜が人知れずホラーを狩る魔戒騎士であることは知らなかった。

 

奏夜たちは高校2年生になってまだそんなに日が経っておらず、この前入学式を終えたばかりだった。

 

「……お、穂乃果か。おはよう」

 

「うん!おはよう、そーくん!」

 

奏夜の挨拶を、穂乃果は元気いっぱいな感じで返していた。

 

ちなみに穂乃果は奏夜のことを「そーくん」と呼んでいるのだが、それは知り合って間もない頃に穂乃果が奏夜につけたあだ名であった。

 

始めは違和感を感じていた奏夜であったが、徐々にそのあだ名にも慣れてきたのである。

 

「おはようございます、奏夜」

 

「あぁ、おはよう。海未」

 

海未は丁寧な口調で挨拶をすると、奏夜はそれを返した。

 

海未は同い年である奏夜に敬語を使うのだが、それは奏夜に気を遣っている訳ではなく、この喋り方が海未の素なのである。

 

「そーくん、おはよぉ♪」

 

「おう、ことり。おはよう」

 

脳が溶けてしまいそうな甘い声でことりは奏夜に挨拶し、奏夜は挨拶を返した。

 

ことりはこの3人の中で一番おっとりしており、時々天然な部分が顔を出す。

 

そんなことりではあるが、彼女はこの音ノ木坂学院理事長の娘でもある。

 

ことりはそんなことなど気にする様子はなく、普通に過ごしていた。

 

「それにしても奏夜。今日は少し早いですね。いつも遅刻ギリギリじゃないですか」

 

「まぁね。今日はいつもより早く起きたからこれくらいの時間に着いたって訳さ」

 

本当はエレメントの浄化が予定より早く終わったからなのだが、正直に話す訳にはいかないので、このような嘘で誤魔化していた。

 

「そうなんだ。そーくんももっと時間に余裕を持って起きれば遅刻しないんじゃないかなぁ?」

 

「おいおい……。いつも遅刻ギリギリの穂乃果がそれを言うか」

 

「アハハ……」

 

奏夜は穂乃果が朝に弱いことを知っており、そのことについてツッコミを入れると、穂乃果は苦笑いをしていた。

 

「確かにそうですね。穂乃果も毎日早起きしてくれれば私やことりも助かるのですが」

 

「あぅぅ……。海未ちゃあん……」

 

「アハハ……」

 

海未から指摘を受けた穂乃果は涙目になり、それを見ていたことりは苦笑いをしていた。

 

「ま、とりあえず行こうぜ。じゃないと遅刻するぞ」

 

「そうですね。行きましょう」

 

奏夜たちは玄関に入り、靴を上履きに履き替えると、自分たちの教室へと移動した。

 

ちなみに、奏夜、穂乃果、海未、ことりは全員同じクラスであり、休み時間はこの4人でつるむことが多い。

 

この日も何の変哲のない授業が行われていった。

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

そして気が付くと、放課後になっていた。

 

「さてと……」

 

奏夜は帰り支度を整え、そのまま教室を後にしようとした。

 

すると……。

 

「……あっ、奏夜。今帰りですか?」

 

教室を後にしようとする奏夜を海未が呼び止めた。

 

「あぁ、そうだよ」

 

「この後って何か予定はありますか?」

 

「……まぁ、あるっちゃあるけど、急ぎの用事じゃないからちょっとくらいなら大丈夫だよ」

 

奏夜の都合を聞いた海未の表情がぱぁっと明るくなっていた。

 

「それでしたら、私の家の道場に来てくれませんか?また組手の相手をして欲しいのですが……」

 

海未の家は、園田流という日舞や武術等の名誉ある家元であり、海未は将来その後取りになりたいと考えている。

 

そのためか海未は武術に心得があり、奏夜も武術に心得があると知ると、時々練習相手になるよう頼むことがあった。

 

「別に構わないけど、弓道部の練習はどうしたんだ?」

 

「今日は休みなのです。ですから、お願いします」

 

海未は家では日舞や武術に励んでいるのだが、弓道部に所属している。

 

そのため、海未は家の稽古や部活と忙しい日々を過ごしているのだが、彼女はこの日々に充実している。

 

「あぁ、わかった。俺で良ければ付き合うよ」

 

こうして奏夜は海未の稽古に付き合うことになった。

 

「ねぇねぇ、海未ちゃん。私たちも見学に行っても良い?」

 

「もちろんです。ぜひ来て下さい」

 

「「やったあ♪」」

 

奏夜と海未の稽古が見れるのが嬉しかったのか、穂乃果とことりはハイタッチしていた。

 

《おい、奏夜。これは毎度言ってるが出来るだけ手加減してやれよ》

 

(わかってるって。でも手を抜きすぎると海未にバレて怒られるし、上手くやるさ)

 

奏夜は海未が武術の心得があることを知っているため、手を抜きすぎるとそれを見透かされて怒られてしまうだろうと予想していた。

 

なので、バレない程度に手加減をするつもりだった。

 

ちなみに奏夜とキルバはテレパシーで会話をしており、2人は人前で必要な会話をする時には周囲にバレないようテレパシーで会話をしているのである。

 

「……?奏夜、どうしました?」

 

海未はキルバをチラチラ見ている奏夜を訝しげに見ていた。

 

「へ?い、いや!何でもないよ!」

 

「それに、その指輪、またしてるんですね」

 

海未は奏夜の指にはめられているキルバを指差していた。

 

「まぁ、これは俺にとって大事な指輪だからな」

 

キルバは奏夜の両親が亡くなってから行動を共にしている家族のようなものであった。

 

魔戒騎士となりキルバと契約する前から一緒なので、付き合いは長い。

 

「……ちょっと怖いけど、可愛いね!」

 

「うん!ことりもそう思うよ!」

 

穂乃果とことりはキルバを見て可愛いという評価をしていた。

 

《なっ!?俺様が可愛いだと!?どちらかというと格好いいだろうが!》

 

キルバは穂乃果とことりの可愛いという評価が気に入らないようだった。

 

(アハハ……。まぁ、落ち着けって)

 

奏夜は苦笑いをしながらキルバをなだめていた。

 

こうして、奏夜たちは海未の家にある道場へと向かった。

 

 

 

 

 

道場へ到着すると、海未は胴着に着替えてから道場に戻ってきた。

 

「お待たせしました。それでは始めましょうか」

 

海未の準備が整ったところで、奏夜と海未は稽古を始めようとするのだが……。

 

「……奏夜、今日も防具は着けないのですか?」

 

「あぁ。俺はこのコートを着てりゃそれで十分だ」

 

奏夜は魔戒騎士であるため、体の丈夫さは常人以上であるため、竹刀で殴られても平気なのである。

 

それに、防具を着けるより、普段から着ている魔法衣のままの方が奏夜としても動きやすいのである。

 

海未は防具を着けようとしない奏夜を訝しげな目で見ていた。

 

「……わかりました。怪我だけはしないようにして下さいね」

 

奏夜と海未の稽古はこれが初めてではなく、その度に奏夜は防具を着けようとはしなかった。

 

そのため、海未は奏夜が防具を着けろと言っても聞かないことは知っているので、このように警告するに留めていた。

 

そして、2人は竹刀を構えるのだが……。

 

「……やっぱり奏夜はその構えなのですね……」

 

海未は奏夜の独特な構えを見てため息をついていた。

 

魔戒騎士である奏夜はホラーと戦う時と同じ構えをしたのだが、武術でよくある正眼の構えではなかった。

 

「……本当にそーくんの構え方って独特だよねぇ」

 

「うん、私もそう思ったよ」

 

ことりと穂乃果も2人の稽古を何度も見ているのだが、奏夜の構えが独特だということは前から思っていた。

 

「……それでは、行きます!」

 

海未は奏夜目掛けて突撃し、面を放って奏夜から一本を取ろうとした。

 

しかし、奏夜はそんな海未の一本を軽々とかわしていた。

 

そして、奏夜は連続で竹刀を振るい、それを受けた海未の表情は歪んでいた。

 

(……っ!あんな型破りな動きなのに、なんで、ここまで激しい攻撃が……?)

 

海未は奏夜が武術の型に則っていない型破りな戦い方であることはすぐにわかったのだが、ここまで攻撃が激しいことに驚きを隠せなかった。

 

そして、武術を嗜む者の勘で、今の自分では奏夜には敵わないと思ってしまった。

 

そんなことを考えているうちに隙が出来てしまい、奏夜はその隙を見逃さなかった。

 

「……面だ!!」

 

奏夜の面は綺麗に決まり、勝負は奏夜の勝ちとなった。

 

「……っ!私の負け……ですか……」

 

「海未、さっき考え事をしてたろ?そういう油断は命取りだぜ」

 

奏夜は海未が何故負けたのかを冷静に分析していた。

 

「確かにそうですね……。奏夜!もう一度です!」

 

海未はこの結果に納得がいかなかったのか、奏夜に再戦を申し込んだ。

 

「……仰せのままに……ってね」

 

奏夜はおどけながら再戦の申し込みを受け、海未は再び奏夜に挑んだ。

 

この日も海未は奏夜から一本も取る事は出来ず、気が付けば夕方になっていた。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

体力には自信のある海未であったが、奏夜に連戦した結果、息を切らしていた。

 

しかし、奏夜は息一つ乱すことなく平然としていた。

 

「海未ちゃん、辛そうだね……」

 

「何でそーくんはあんだけ動いても平気なんだろ?」

 

最初から最後まで2人の稽古を見ていたことりと穂乃果は、奏夜が息を切らしていないことに疑問を感じて首を傾げていた。

 

「……海未、大丈夫か?」

 

奏夜は息が切れてその場にしゃがみ込んでいる海未を気遣い、手を差し伸べた。

 

海未は少しだけ恥ずかしがる仕草を見せるが、奏夜の手を取り、ゆっくりと立ち上がった。

 

「……悔しいです!今日も奏夜から一本も取れないなんて」

 

海未は手を借りた奏夜から離れると、この日の結果に納得出来ずに悔しがっていた。

 

「ま、俺は武道はやってないけど、それなりに鍛えてはいるからな」

 

「そ、奏夜!教えてください!どうすればあなたみたいに強くなれるんですか!?」

 

奏夜の強さの秘訣を知りたいと思っていた海未は、奏夜に詰め寄っていた。

 

「あ……えっと……」

 

奏夜は魔戒騎士として厳しい修行をしたとは話すことが出来ず、どう返答すべきか悩んでいた。

 

そして……。

 

「……ま、まぁ、ひたすら修行……じゃないのか?」

 

返答に困った奏夜は、少々投げやりな答えを海未にぶつけていた。

 

それを聞いた海未は……。

 

「……なるほど……。私もまだまだですから、精進あるのみ!そういうことですね?」

 

投げやりな答えだとは気付かず、奏夜の言葉を真摯に受け止めていた。

 

「そ、そういうことだよ」

 

自分の言葉をストレートに聞く海未のまっすぐさに、奏夜は苦笑いをしていた。

 

「海未、今日はありがとな。こっちとしても良い鍛錬になったよ」

 

「は、はい。私も良い鍛錬になりました。またお願いしますね」

 

「あぁ、その時は付き合うよ」

 

奏夜と海未は互いへの礼儀を忘れることはなく、日を改めての稽古の約束もした。

 

奏夜は海未から借りていた竹刀を、指定の場所へと戻していた。

 

「……奏夜。もう行くのですか?」

 

「あぁ。この後寄るところがあるからさ」

 

「そーくん、そこはどこなの?」

 

「悪い、それは秘密なんだよ」

 

奏夜は、ことりの問いかけに応えることが出来なかった。

 

すると……。

 

「「……」」

 

それが納得いかなかったのか、穂乃果とことりがぷぅっと頬を膨らませて奏夜を睨みつけていた。

 

「ま、まぁ!そういう訳だから、俺はもう行くな」

 

奏夜はこの場に留まったら激しい追求が来そうと判断し、逃げるように道場を後にした。

 

道場を出て、しばらく歩いていると、上空から一羽の鳩がこちらに向かって飛んできた。

 

「……!あの鳩……」

 

『あぁ、どうやら指令のようだな』

 

奏夜目掛けて飛んで来ている鳩は、奏夜の所属している翡翠の番犬所の神官であるロデルの使い魔である。

 

ロデルは奏夜のような魔戒騎士にホラー討伐の指令を出すときに使い魔である鳩を飛ばし、魔戒騎士に指令書を届けることがある。

 

しかし、様々な番犬所がある中、使い魔を使って魔戒騎士に指令書を届けるというのは、稀のケースであり、他の番犬所ではあまり行われていないのである。

 

奏夜はロデルの使い魔である鳩から赤い封筒の形をした指令書を受け取ると、鳩は主人の待つ番犬所へ向かって飛んで行った。

 

「……指令か……。一月ぶりくらい……かな?」

 

奏夜は魔戒騎士として古より来たる魔獣、ホラーを討伐しているのだが、ホラーは毎日現れるわけではない。

 

奏夜が朝行っていたエレメントの浄化をしっかりと行えば、ホラーが現れることはほぼなく、数日置きくらいの間隔でホラーが現れる時は何かしら異常事態が起きている可能性がある。

 

そのため、一月ぶりのホラー狩りや、それ以上、ホラー狩りがご無沙汰というのは、魔戒騎士としてはよくある話だった。

 

奏夜は魔法衣の裏地から、魔戒騎士の必需品である魔導ライターを取り出した。

 

このライターからは魔導火と呼ばれる特殊な炎を放ち、奏夜たち魔戒騎士はその魔導火を様々な場面で用いる。

 

奏夜は指令書を魔導ライターから放たれる魔導火で燃やした。

 

一般人が見たら驚く光景ではあるが、指令書はこの方法でしか読むことは出来ない。

 

魔導火によって燃え尽きた指令書から、文字のようなものが飛び出してきた。

 

指令書の指令は魔戒語で書かれており、魔戒騎士はこの魔戒語で書かれた文章を読み取り、指令の内容を確認するのである。

 

「……えっと……小さくはあるが、人を脅かす陰我あり。ただちに殲滅せよ」

 

奏夜が指令を読み取ると、魔戒語で書かれた文章は消滅した。

 

「……さて、久々の仕事だ。気合をいれないとな」

 

『奏夜。相手が誰だろうと油断するなよ』

 

「わかってるって。さぁ、行こうぜ、キルバ」

 

『了解だ、奏夜』

 

こうして奏夜はキルバのナビゲーションを頼りに、ホラーの捜索を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

奏夜がホラー捜索を始めて間もなく、日が落ちて夜になった。

 

奏夜がキルバのナビゲーションでやって来たのは、秋葉原某所にあるビルの屋上だった。

 

「……キルバ、本当にこんなところにホラーが?」

 

『あぁ。ホラーの気配を感じるぞ。奏夜、油断するなよ』

 

「あぁ!」

 

奏夜は魔戒騎士の武器である魔戒剣を取り出すと、いつでも抜刀出来る状態にしておいた。

 

ホラーは通常の武器や兵器では倒すことは出来ず、ソウルメタルと呼ばれた特殊な金属で出来た武器でしかホラーを倒すことは出来ない。

 

魔戒騎士の武器である魔戒剣は、ソウルメタルで作られている。

 

奏夜が周囲を警戒していたその時だった。

 

『……奏夜!来るぞ!』

 

キルバがこのように宣言すると、上空から、この世のものとは思えない怪物が姿を現した。

 

この怪物こそが、古より来たる魔獣ホラーであり、このホラーは、ホラーの中でも数が多い素体ホラーである。

 

素体ホラーの姿を捉えた奏夜は、魔戒剣を抜くと、それを構え、素体ホラーを睨みつけた。

 

すると、素体ホラーが奏夜目掛けて攻撃を仕掛けてきた。

 

「……っ!」

 

奏夜は素体ホラーの動きをギリギリまで見極めて、素体ホラーの攻撃をかわした。

 

そして、反撃と言わんばかりに魔戒剣を一閃した。

 

背後から魔戒剣による剣撃を受けた素体ホラーは致命傷とはいかなかったものの、よろめいて体勢を立て直すのに時間がかかってしまった。

 

しかし……。

 

『奏夜、踏み込みが甘い!そんな攻撃じゃ倒せる相手も倒せないぞ!』

 

「キルバ、少し黙ってろ!集中出来ない!」

 

戦闘中にダメ出しをするキルバに苛立ったのか、奏夜は声を荒げていた。

 

こんなことをしている間に、素体ホラーは体勢を立て直していた。

 

『とにかく……奏夜、一気にケリをつけろ!』

 

「言われなくても!明日も学校なんだ!一気に決着をつける!」

 

奏夜は素体ホラーを早急に倒すと宣言すると、魔戒剣を力強く握りしめた。

 

すると、先ほどの反撃をするべく、素体ホラーが再び奏夜に牙をむいた。

 

奏夜は素体ホラーを引きつけている間に魔戒剣を高く突き上げ、円を描いた。

 

円を描いた部分だけ空間が変わり、そこから放たれる光に奏夜は包まれ、その状態で魔戒剣を構えた。

 

素体ホラーの爪が奏夜に迫る直前、奏夜は黄金の鎧を身に纏い、その瞬間、魔戒剣を一閃した。

 

その一撃の後、光は収まり、元の奏夜の姿に戻っていた。

 

奏夜の放った一閃により、素体ホラーの体は真っ二つに斬り裂かれた。

 

素体ホラーは苦しげに断末魔をあげ、その体は爆発と共に消滅した。

 

素体ホラーを討滅した奏夜は、魔戒剣を緑の鞘に納めた。

 

「さて……。今日の仕事はこれで終わりだな」

 

『そうだな。だが、奏夜。お前はまだまだ詰めが甘い!そんなんじゃあの男のような騎士になどとてもなれないぞ!』

 

キルバは奏夜がまだまだ魔戒騎士として未熟であると指摘し、今のままではいけないことを厳しい言葉でぶつけていた。

 

「……わかってるさ!俺だって……いつかは統夜さんみたいに……!」

 

奏夜は、自分の先輩であり、尊敬している魔戒騎士、月影統夜のような魔戒騎士になりたいと心の底から願っていた。

 

『あの男を目指すのなら、もっと精進するんだな』

 

「あぁ……!そのつもりだよ!」

 

奏夜はキルバからの厳しい言葉を闘志に変え、これからも魔戒騎士として精進していくことを決意した。

 

ホラー討伐を終えた奏夜はそのまま真っ直ぐ自宅へと帰っていった。

 

こうして、音ノ木坂学院の2年生であり、魔戒騎士でもある如月奏夜の1日が終わっていった。

 

しかし、これから音ノ木坂をめぐる大きな問題や、激しい激闘の日々が待ち受けていることを、奏夜は知る由もなかった……。

 

 

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『奏夜は音ノ木坂とかいう高校に通っているが、その学校がそのようなことになるとはな。次回、「廃校」。そして、姿を現わす、金色の刃!』

 

 




1話からいきなり鎧が登場しました。

素体ホラーをワンパンしてしまったため、一瞬でしたが……(笑)

前作はメインヒロインを誰にするかギリギリまで引っ張りましたが、今回のメインヒロインは穂乃果の予定になっています。

え?何でヒロインが穂乃果だって?皆まで言わせないでよ。恥ずかしい。(ほのキチだから)

ちなみに、奏夜の相棒であるキルバですが、イメージCVは中村悠一さんになっています。

さて、次回からはラブライブの本編がスタートします。

そして、奏夜の鎧もしっかりと登場する予定です。

それでは、次回をお楽しみに!


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