ゼロの使い魔は芸術家   作:パッショーネ
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2,使い魔とこれから







石造りの建物、トリステイン魔法学院へ到着したルイズは、使い魔召喚から続く疲れを溜息に乗せ吐き出す様に「ハァー」と息を吐いた。

「ここがトリステイン魔法学院ってとこか。近くで見ると中々芸術的な造形じゃねぇか、うん」
「いいから、こっちよ」

隣で自分の学び舎への感想を言う使い魔、デイダラへぞんざいな返答をし、ルイズは学院の広場の方へ案内をした。
ここまでの道中、何かと絡んでくるデイダラに根負けして、ここはどこなのか、自分達は何者なのか、先程生徒達が見せた魔法『フライ』について等の説明は済ませてあった。


「もう一度聞くが、お前らは本当に魔法使いとやらだってのか、うん?」
「まだそれ聞くの?だからそうだって言ってるじゃない。あと『魔法使い』じゃなくて『メイジ』と呼びなさい」
「………『忍』や『チャクラ』という存在、『忍五大国』という言葉すら聞いたことがないんだったな」
「だからそんなの聞いたことないわ。どこの田舎から来たっていうのよあんた」


デイダラの再度の問いかけに眉をひそめながら答えるルイズ。まったくこの使い魔は、どこの田舎から呼び出されたのか、ここがハルケギニアのトリステイン王国だということを教えてもピンときていない様子だったから驚きを通り越して呆れたものだ。

ここトリステイン魔法学院やメイジについての説明はある程度済ませたが、やはりこの使い魔には平民と貴族の違い、メイジや使い魔について等の常識も叩き込んでやらないといけないみたいである。
そう考えをまとめ、ルイズは今の使い魔との交流の為の時間を有効活用しようと、広場への歩を進めた。





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トリステイン魔法学院は、本塔を中点としてその周りを囲む様に火の塔・風の塔・水の塔・寮塔・土の塔と五つの塔が五角形の外壁の頂点となっている。
今、ルイズ達が向かっているのは本塔と水の塔、寮塔、土の塔が囲むアウストリの広場である。
とりあえず、座って一息つきたいと考えていたルイズは、しかし、広場手前に差し掛かったあたりで、先程『フライ』で飛んでいった生徒達のほとんどがアウストリの広場で自分達の使い魔と一緒に集まっているのを見て、嫌そうな顔をしてUターンするのだった。


「おい、こっちじゃねぇのか?」
「いいから、こっち行くわよ」
もう少し歩くことになるが仕方ない、自分の寮部屋へ行った方が座りながらゆっくり話もできるだろうと考え、ルイズは再び歩を進めた。





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「はぁー、もうホント疲れたぁー」
自分の部屋へ戻ったルイズはこれまでの疲れがついに限界を迎えたのか、自分のベットへうつ伏せに倒れこむ様にダイブした。

「やっと一息つけるのか、呼び出されたばっかで少し身体が鈍ってるかもな、うん」
ルイズがベットへ飛び込んだのを見て、デイダラも一息つけると判断して、右、左と自身の肩を回しほぐし始めた。

ルイズの部屋は、十二畳ほどの広さで置いてある家具の数々は、素人目から見てもどれも中々の高級品に見えた。


「あぁ、そうだわ。アンタに使い魔としての心構えというものをちゃんと教えてやんないとね。えぇと、デイダラ、でよかったかしら?」
ルイズはベットから上半身を起こしながら、デイダラの方へ体を向ける。

「ああ、合ってる。それよりその使い魔ってのはなんなんだ?言葉の響き的になんか嫌な予感はするが、うん」
「嫌なもんですか。この高貴なメイジであるルイズ様に仕えることになるのよ。寧ろ感謝してほしいくらいね」
言いながら、ルイズは右手を自身の胸にあて、誇らしげに宣った。

「つまり家来になれってことか」
「家来っていうと語弊があるわね、使い魔とは主人の目となり耳となる為の能力が与えられるんだから」
「じゃあ今オイラが見ている景色がそのままお前も見れるってことか?」
すげーじゃねーか、と部屋の中をキョロキョロ見回すデイダラ。

「ご主人様、もしくはルイズ様と呼びなさい。そうね、でもアンタじゃダメみたいね。私、何も見えないもん」
ルイズのその一言で、デイダラはピタッとフリーズした。その顔には影がかかっていて表情がよく読み取れない。心なしか、薄っすら青筋が立っているようにも見える。

「それと、使い魔は主人の為に秘薬とかを取ってきたりするんだけど、それもアンタじゃあ無理そうね〜」
と続けてのルイズの物言いに、「なんだこの女…」とデイダラが小さく最もな感想を零した。

「それと一番大事なのが、使い魔は主人を護る存在なのよ。その能力で主人を敵から護るのが役目なの」
そう言い、デイダラを視界に入れるルイズ。

「でもそれも無理そうだから、アンタにできそうなことをやらせるわね。掃除、洗濯、その他雑用!」
「ちょっと待て、そりゃ聞き捨てならねぇぞ、うん。ていうか、お前はオイラの実力を知ってて呼び出したとかじゃねぇのか?」
「知ってるわけないじゃない。」
食ってかかるデイダラをルイズはバッサリと切り捨てた。誰が好き好んでアンタなんかを、と。


「まぁ、それもそうか…」と、ボソリ呟くデイダラ。
見るからにうんざりしてきた様子のデイダラを尻目に、ルイズはそう言えばと、召喚時にデイダラが発した言葉を思い出した。

「そう言えばアンタ、私のこと恩人とか言ってたけどどういうこと?」
「…ああ、そのことか」
先のやりとりで、すっかりふて腐れてしまったデイダラは、その発言自体忘れていたようだった。

「まぁ高貴な私の使い魔になれての感謝ってことなら分かるけど」
「そんなわけあるか。簡単な話だ。お前はオイラに、また芸術の高みを極めるチャンスをくれたんだからな、うん」
感謝するのは当然だ、と続けて言うデイダラ。

デイダラの発言に最初ムッとはしたが、気になる言葉が出たので気持ちを抑えて再び質問する。
「その、あんたが芸術家ってことは置いておいて、『また』っていうのはどういう意味なのかしら?」
「ん〜、それなんだが……。どう説明したもんかね、うん」
言いよどむデイダラ。どうやら、なんて説明したらいいか考えているようであった。

「なによ。なにかやましいことでもあるっていうの?」
「いや、そういうワケじゃあないが…。オイラ自身、まだ混乱してるかもしれねぇからな。おいおい教えてやるよ、うん」
答えを先延ばしにするデイダラに、ルイズはむすっとした顔になる。

「ちょっと、そんなんでこの私が納得すると思うの?」
「お前の護衛任務ならちゃんとやってやるから、それでいいだろう。うん」
なにやら自信有り気に言うデイダラ。
なんでそんなに自信満々なのよ、平民のクセに…。ジト目で睨みつけながら、内心でそう呟くルイズ。


「ところで、貴方の芸術ってどんなの?私、芸術についてあんまり詳しくないけど、どこかの国の有名人だったりするの?」
自信満々なデイダラを放っておいて、ルイズは、今度は芸術家ということについて問う。

どうやらルイズの頭の中では芸術家イコール有名人という図式ができ上がっているようである。もしそうだとしたら、少しマズい人を召喚したかも、と考えたルイズだったが、


「よくぞ聞いてくれたな!もちろんだ。オイラは若い時から天才粘土造形師と呼ばれていてな、そりゃあ絶賛の嵐だったぜ、うん。さらにはちょっと前までなんかは国単位で追われるS級指名手配犯だったからな、そりゃあもうとびっきりの有名人だぜ、うん」

デイダラの話を聞いて、また再び胡散臭いものを見る目へと変わっていった。

ちょっと心配した自分がバカらしい。何故ただの芸術家が指名手配犯となるのか。ルイズはデイダラの荒唐無稽な話をまるで信じずにいた。





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それからもデイダラは、やけに気分良さげに自身の芸術の造形への拘りについて延々と語っていった。曰く、洗練されたラインに二次元的デフォルメがうんたらかんたら。

このままだとずっと喋っていそうなので、ルイズは話半分といった様子のデイダラにストップをかけた。というより、そこまで自画自賛する程素晴らしいものなら実際に見せた方が早いのに。そう尋ねるとデイダラはバツが悪そうに言う。

「あいにく、今は粘土の持ち合わせがねーんだよ、うん」

とのことだった。もうこの時点で、ルイズのデイダラに対しての評価は、胡散臭い平民のエセ芸術家、というあんまりな評価となっていた。


(やっぱりコイツには雑用くらいの仕事だけにした方が良さそうね)
芸術話を聞く前、何故か主人を護るという仕事に対して、妙に自信満々だったデイダラにちょっと期待してしまったルイズだったが、やはり雑用面の仕事に留めておこうと思いなおすのであった。

(そうだ、あと貴族と平民の違いについてしっかり言い聞かせなきゃ、それとコイツの当面の仕事と、ああそれより先にもう夕食の時間ね)
すっかり話し込んでしまっていた為、辺りはもう夕暮れとなっていた。


芸術話を止められ、熱が冷めたデイダラは、なにがそんなに珍しいのか、窓から空に薄っすら見えてきている二つの月を眺めていた。
それを見て、ルイズは話は一旦置いておき、夕食にしようと決め、デイダラに少しの間部屋で大人しくしてる様に言い聞かせ、自室を後にした。

「はぁ、喋りっぱなしで喉が渇いちゃったわ」
おまけに、召喚からの疲れも相まって、ルイズはとにかく腹ペコであった。

(けど、気を抜いてちゃダメよルイズ!夕食後もしっかり話つけなきゃ!)
そうルイズは自分に言い聞かせると、ふと部屋で待っている自分の使い魔を思い浮かべる。

無事、自分の使い魔を召喚したルイズは、今後の自分へ想いを馳せる。使い魔を召喚したことで、留年する心配もなくなる。これからも自分は歩み続けることができるのだ。

(まぁ、パンと水くらいは、持っていってやってもいいかな)


そう考えるルイズの表情は、心なしか普段よりも晴れやかな顔であった。







読んで下さってありがとうございました。
次回はデイダラパートで書きたいな。