ゼロの使い魔は芸術家   作:パッショーネ
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今回の話、できあがって「さぁ投稿するぞー」と思ってたら間違えて全文ほかの文章と置き換えてしまってました。

ただの削除よりタチが悪かったです……




14,爆発コンビの初陣







森の中で、重く短い地響きが断続的に続く。
三十メートルにも達する巨大なゴーレムは、歩を進めるだけで地鳴りのような轟音を響かせる。

フーケは、巨大ゴーレムの破壊された頭部を素早く再生させながら、正面に滞空しているルイズとデイダラに向かってゴーレムを進ませる。


(…やつら、すぐには突っ込んで来ないか。さっさと返り討ちにして、破壊の杖を回収しときたいんだがねぇ……)

鉄のドームの中で、フーケは思い通りにうまく事が運ばない現状に対して、少しずつだが苛立ちを募らせる。
わざわざこの場所に誘き寄せた学院の生徒達が破壊の杖を使う素振りすら見せてくれないというのも、苛立ちの原因でもあった。

(破壊の杖……。あれの使い方を知る為に、逃げずに学院長秘書として舞い戻ってきたってのに、これじゃあ無駄骨じゃないかい)

昨夜の盗みを終え、破壊の杖を目のあたりにした時、今までに見たこともない形状の杖に驚き、使い方がまったく分からないという事実に愕然とした。
売り捌くにせよ、今後の泥棒稼業に利用するにせよ、使い方が分からねば話にならない。

だからその使い方を知る為に、わざわざ学院から生徒達を連れてきたのだ。
だが、その作戦も失敗だ。このままでは盗んだ破壊の杖を取り返されてしまう危険性もあり、フーケは気が気ではなかった。

(…それもこれも、全部あのヴァリエールの使い魔のせいだね)

妙な爆発物を使う、戦い慣れた様子の人間の使い魔。
あの男のせいで、フーケの計画は頓挫したのだ。おまけになかなか倒されてくれない厄介な能力者だ。苛立ちが募るばかりである。


そうしてフーケが思案していると、ゴーレムは何かの接近に感づき、そちらに視線を向ける。
フーケは静かに、ゴーレムの視覚情報を読み取った。青い風竜が、右側上方から接近していた。確か、破壊の杖を持っているのはこっちの二人組みだったはずだ。

「…ふん。あたしにもまだ運が巡ってきているようだね…!」
フーケは喜び勇んだ様子で、そう声を上げた。





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「タバサ、あれ何やってるんだと思う…?」
「……作戦会議?」
キュルケとタバサは、ゴーレムの正面に滞空しながら何も動きを見せずに話し込んでいるルイズとデイダラを見る。
普段と変わらない様子のデイダラと、驚いたり怒ったりといった表情を見せるルイズの姿を眺めて、疑問符を浮かべる。


「まぁなんであれ、あの娘がやる気になったって言うなら!あたしも負けていられないわね…!」
タバサ、もう一度フーケに攻撃よ!と、声高々に提案するキュルケ。
タバサは頷くことで了承すると、シルフィードに再びフーケに接近させ、呪文を唱える。二人の連携攻撃だ。先程はゴーレムの拳に防がれたが、現在のフーケは鉄のドームに隠れているのだ。視覚情報のない今なら、確実に当てられる。

「エア・ストーム」
「フレイム・ボール…!!」

強力な炎の渦という連携魔法が、鉄のドームに隠れているフーケを襲う。
攻撃の見えないフーケでは、防ぎようがない。加えて、鉄のドームに当てれば蒸し焼き必至の一手であった。
しかしーーー


ギロリ。巨大ゴーレムの瞳が、二人の魔法を捉える。

「……ウソッ」
「…手強い」
巨大ゴーレムは魔法を確認すると、先程と同様に鋼鉄に錬金された腕を振るい、炎を振り払ってしまった。

「何よあれ!こっちの攻撃が見えてるっていうの!?」
「視覚共有…」
キュルケは文句を叫び、タバサは冷静に分析する。
おそらく、フーケはゴーレムの視覚を通じて自分達の接近を感知したのだとタバサは判断した。

「何よそれ…。ならどうやってあいつを倒せばいいのよ…!」
「………」
少なくとも、自分達の魔法ではゴーレム相手に相性が悪いのは確かだ。
純粋に火力が不足しているのだ。タバサの風の魔法では言わずもがな。キュルケの火の魔法は、狙い次第では有効だが、そう易々とフーケの操るゴーレムには近づけない。

さて、どうしたものかと、タバサが考えあぐねていると、作戦会議は終わったのか、ルイズとデイダラが動き出した。





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一直線に、フーケの元へと向かうデイダラ達。
だが、素直に近寄らせるフーケではない。自分の元へ向かってきたと分かるや、フーケはゴーレムに、足元の木々をまるで雑草でも抜くかのようにむしり取らせる。

「やはり破壊の杖回収より、先にお前らを蹴散らさなきゃいけないようね…!」

自身の焦燥感を抑え、フーケはゴーレムに握らせた木々を粘土製の梟目がけて投げさせる。

「チィッ…!」
舌打ちをしつつ、デイダラはそれを旋回するようにして回避する。

(ここが森の中で助かったよ。あの厄介な鳥を叩き落とす弾に困らないからね…)

鉄のドームの中でほくそ笑みながら、フーケは次々とゴーレムに森の木を投げさせる。その投擲スピードは、先程ゴーレムに打ち上げさせたものとは比べ物にならない速さだった。

「これだけ弾数があれば、どんな幻獣だろうと撃ち落としてみせるよ…!」
自信満々に声を上げるフーケ。
ゴーレムから放たれる木の弾丸の数々は、デイダラ達を撃ち落とすべく、弾幕状に展開されていた。


「…!!」
「……ちょっと、流石にあんなの無茶苦茶じゃ…」
ルイズ達よりもさらに上空へと避難していたタバサとキュルケは、その光景に思わず息をのむ。
もし、あれを目の前に展開されたら、避けきる自信がなかった。


「……ふん。ちょっと回避に専念するぜ、ルイズ。今度は落っこちるんじゃないぜ…うん!」
「当然よ…!私を舐めてると痛い目合わせてやるんだから…!」
デイダラは身を屈めて膝立ちの体勢となり、ルイズはそんなデイダラの背に掴まる。

「いい度胸じゃねーか……そらよォ!」
正面に展開された木の弾幕の一箇所に、デイダラは起爆粘土を投擲する。それは、すぐに煙に包まれ、大型の鳥となる。

「喝ッ!」

デイダラの発声と共に、大型の鳥は盛大に爆発し、弾幕の中に風穴という突破口を開く。


「っ!!やるわね…!」
一瞬焦った様な表情となるが、すぐに気を取り直して、フーケは次の弾丸を放つ為に杖を振るう。
次から次へと、ゴーレムに木の弾幕を張らせるフーケ。

しかし、デイダラが操る起爆粘土製の梟は、器用にも飛来してくる木々の隙間を縫うように回避する。

「くそッ!いやにすばしっこいね…!」
ゴーレムの視界には、今だに撃ち落とされない梟の姿が見える。フーケは木を投擲し続けるが、デイダラはそれをものともしない。
自分の元へと近づいてくるデイダラに、フーケは段々焦燥感が蘇ってくる。

瞬く間に、ゴーレムの眼前へと接近するデイダラ。

「だが、近づいたんならゴーレムの腕の射程範囲だよ…!」
鉄のドームにより、身の安全が確保されている為か、フーケはゴーレムの操作を攻撃に専念できるのだ。
腕を振り回し、デイダラ達の迎撃を図る。


意外と素早い腕の攻撃を前に、デイダラの操る梟は、一旦だがわずかに距離をとる。

「やるねぇ、うん。……だが」
デイダラは両の手のひらを開き、二体の鳥型人形を見せる。

「今度のは速いぜ!…うん!」
新たな鳥型起爆粘土を放つデイダラ。その鳥は普通の鳥ではなく、二対の翼をもった特異な姿をしていた。


「なんだい、ありゃ?ただの鳥じゃないのか…⁉︎」
二対の翼をもつ鳥は、ゴーレムの腕を掻い潜り、あっという間にその眼前へと迫る。


「喝!」
デイダラの声が聞こえたと思ったら、途端に何も見えなくなる。
フーケは、すぐに状況を悟った。

「あいつ…!ゴーレムの目を、やりやがったね…!」
視界を奪われ、フーケは焦る。今のままでは、恰好の的にされてしまう。
フーケはゴーレムの目を再生させるまでの間、接近を許さないというように、ゴーレムの腕を無差別に振り回させる。

そして、すぐにゴーレムの目を再生させようとフーケが自身の魔力を高めた時、次の爆発が起きる。

「…っ!なんだい。……こ、これは!?」
わずかに感じた浮遊感で、フーケは気づく。
今度は、ゴーレムの脚をやられた。

「うっ、きゃあぁぁあ!ま、まずい…!」
すぐさまゴーレムの手を伸ばして地面に倒れるのを防ぐ。

(これはまずい…!はやく足も再生させないと…!)
ゴーレムの転倒により、鉄のドームの中でのフーケは、体勢を崩してしまい仰向けの状態で倒れていた。

すぐにゴーレムを再生させなければ…!
フーケがそう思った瞬間に、新たな声が響いてくる。


「イル・アース・デル…!」


聞こえてきたのは凛とした少女の声、ルイズである。それに、唱えているのは錬金の呪文であった。
そう、フーケが理解した時。自分が潜む鉄のドームで爆発が起こり、『光が見えた』のだ。

「…あ……な、にぃ…!??」
目の前の、鉄のドームの壁に穴が開いた。


(バカな…!あたしは腐ってもトライアングルクラスのメイジだよ‼︎そのあたしの錬金を、あんな小娘が…)

そこまで考えて、フーケははたと思い出す。
昨夜の、宝物庫の壁にヒビをいれたのが誰であったのかを。スクウェアクラスのメイジが、強力な固定化の魔法をかけたはずの宝物庫の壁を、『誰が』……。


「…ハッ!」
「気づいたか…?だがもう遅い。こういうのを、油断というんだよ……うん」


ドームの穴越しに、デイダラと目が合ったと思ったら、蜘蛛型の人形が目の前に一匹落ちてくる。

「なっ!?こ、これはぁぁああ?!」


「芸術は………」

「爆発よっ!!」


デイダラとルイズの声が聞こえた直後、蜘蛛型の人形は爆発した。


爆音の割りに威力は小さめであったが、生身の人体にとってはそんなもの、関係がなかった。

(まさか…『ゼロ』の落ちこぼれに、してやられるなんて、ね…)
飛びそうな意識の中、最後にそう頭の中で呟くと、今度こそフーケの意識は真っ暗に沈んでいった。





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地面に両手をついて、中途半端に倒れかけていたゴーレムは、術者が気を失ったことでその体を形成する土を、まるで滝のように崩れ落とす。
土くれのフーケもまた、崩れ落ちるゴーレムと共に、真下の森へ自由落下していく。


「まったく、こんなとこでも『殺さないように』なんて難儀なことするとは思わなかったぜ。うん」

落下していくフーケの姿を確認すると、デイダラは彼女の体を梟の尾羽で丸めとるようにして、器用に受け止める。

「し、死んでないでしょうね…?」
「ご要望通り、手加減してやったんだ。ちゃんと生きてるよ…うん」
受け止められたフーケを見て、ルイズは不安そうな声をもらす。
そんな彼女に、デイダラは気怠げに答えると、ルイズは緊張の糸が切れたのか、腰を抜かした様にへなへなと座り込んだ。


「ルイズ!デイダラ!」
二人が声のした方へ目を向けると、シルフィードに乗ったキュルケとタバサが、上方からルイズ達の飛行している位置まで降下してきた。

「お見事」
「ほんとね。二人共、怪我もないようで何よりよ。……あんたもなかなかやるわね、ルイズ。まさかフーケの錬金した壁を貴女が破るとは思わなかったわ」
降下してきた二人は、そろって賛辞の声をかける。

「と、当然よ。私を誰だと思ってるのよ…」
とっても珍しい、というより初めてのキュルケからの賛辞だったが、ルイズは素直に喜べないでいた。


先の作戦会議で、デイダラから説明されたフーケ攻略のキモ。それがルイズによる鉄のドームの破壊であったのだが、その大役をルイズに任せた理由が問題だったのだ。

“宝物庫の外壁を破ったお前の魔法なら大丈夫だろう…うん”

はじめにその言葉を聞いた時、ルイズは自分の耳を疑った。
彼は、宝物庫の外壁を破ったのはフーケのゴーレムではなく、ルイズの魔法だと言うのだ。その時は半信半疑であったルイズだが、今こうして、フーケの錬金を破った後だと、考えを改めざるを得ない。

今回のこの騒動。ルイズは、知らず知らずの内にフーケに協力をしてしまっていたことになる。


「……?ねぇ。なんであんた、そんなに汗かいてるの?」
「べ、別にー?つ、疲れたんだからしょうがないじゃない」
冷や汗をかきながら、ルイズは複雑な表情となる。
タバサが抱える破壊の杖を目に入れて、ようやくルイズはホッと息を吐く。

「なに情けねー顔してんだよ、ルイズ」
「むっ」
そんな様子のルイズに声をかけたのはデイダラだ。
そんなに情けない顔をしていただろうか?


「このオイラが手を貸してやったとはいえ、よくしっかり決めてくれたな。初めての連携にしちゃ上出来だったぜ、うん」
満足気に話すデイダラ。相変わらず、主人と使い魔の垣根を無視する男だ、とルイズは思った。

だが、今はそんなことを矯正させるよりも、言っておく言葉があるだろうと、気持ちを切り替える。


「……当たり前でしょ。私はあんたのご主人様なんだから…!」

胸を張って言うルイズ。そこには、昨夜のような劣等感などはなく、純粋な自負が込められていた。
まだ、どんな魔法を唱えても爆発ばっかりなルイズだが、少なくとも以前よりは、自分の魔法による爆発が、嫌いではなくなっていたのだ。




その後、土くれのフーケを無事捕らえ、破壊の杖を取り返したルイズ一行は、意気揚々として、乗ってきた馬車で学院までの帰路についた。