やはり俺がGF文庫編集部で働くのは間違っている。   作:Balun

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待・た・せ・た・な‼
ごめんなさい。調子乗りました。一回言ってみたかっただけなんですごめんなさい。

一月以上投稿してないのにお気に入りが減ってないことに安堵し、皆さんに感謝しながら書いてました。




夜も更け、若手作家たちの宴はまだまだ続いていく。

 

 

 

珍しく締切をきちんと守り、原稿を比企谷のパソコンに送った可児那由多はもう仕事が終わったという大きな解放感に満足しぐぐっと一つ大きく伸びをする。それから大きく深呼吸を数回すると長時間の執筆で固くなった体もほぐされ、

 さて、部屋にある積みゲーでも片付けるかと自分の家に回れ右をすると、携帯からピコンという音と同時に友達のみやこから

『今、不破さんと伊月の部屋に居るけど那由も遊ばない?』との連絡が来るではないか。

『行きます』とだけ短くそして素早く返事をし、自分の部屋へと最低限の荷物だけ取りに行く、両親には友達と遊んでくると伝るとこれだけのことを僅か3分で準備を終えた彼女はタクシーを拾うべく上機嫌でタクシーのよく通る大通りへと歩き出すのであった。

 

 

 

「ふふふ、仕事を気にせず遊べるって最高ですね」

 

 

 

 編集部の誰かが、特に担当である比企谷が聞いていたら「なら、毎回そうできるように締切を気にしてくれ」と、嘆くであろう言葉を残してだが……。

 

 

 

 

 

 ──────────

 

 

 

 

 

「そういえば那由ちゃん、なんで比企谷さんを担当に指名したの?」

 

 

 いい感じに酔いがまわったのかビール片手に聞いてくるのはヤリチン王子こと不破春斗先輩。

 私もビール飲んでみたいです。そしてあわよくば酔った降りをして伊月先輩とあんなことやこんなことを……。

 こほん。話がそれました。正直この人のようなリア充オーラがバリバリとそれはもう息を吐くかのようにリア充感を出すタイプの人は得意ではないんです。大体私とは生きてる次元も時間軸も違いますし。

 しかし愛しの、私の愛しの伊月先輩が「こいつは似非リア充だから大丈夫だ」と言ってくるので良い妻とは夫の言うことは聞くものだと思い、半信半疑に関わってみるとなるほど、確かに残念なイケメンでした。

 自分で組み立てたパソコン通信に名前だけでなくメイドさんの設定まであると聞いたときは正直どん引きしましたし……。

 

 

 

「あぁ、それは俺も少し気になっていた。カニ公が他人に興味を持つなんて珍しいしな」

 

 

「むー、失礼な、私は何時でも伊月先輩には興味津々ですよ。伊月先輩のあんなとこやそんなとこまで何でも知りたいです。教えてください」

 

 

「いやでも、ほら、那由ちゃんはどっちかというと担当さんには作品の口出しとかしてほしくない派でしょ?前に担当してくれてた、山県さんだっけ?その人とは殆ど連絡とってなかったらしいじゃん」

 

 

「はぁ、まぁ、それは今でも変わんないんですけど……。っていうかヤリチン王子どんだけ私の情報持ってんですか⁉キモいです‼」

 

 

 

 確かに私は自分の作品にあれこれ言われたくないタイプですが、担当さんは誤字や脱字をチェックしてくれればそれだけで良いと思っていたんですけど。

 

 

 

「うーん、何でと聞かれればそうですね、なんかヒキさんとは波長があったと言いますか……。

 こう、踏み込みすぎないラインを押さえてくれつつ相談に乗ってくれたりしてくれて……親戚のお兄ちゃんってかんじですかね?感覚的に」

 

 

「あぁー、ちょっとわかる気がするな、比企谷さんとはあんまり話したことないけど後輩の面倒見がいいって編集部でも評判だしね」

 

 

「なぜ、お前がその比企谷さんとやらの編集部での評判を知っているんだ……。

 しかし、ふむ、親戚のお兄ちゃんか、そのような優れたお兄ちゃんスキルを持っているということはきっとできた妹がいるのだろうなその比企谷さんとやらは……いいなぁ、羨ましいなぁ……妹欲しいなぁ……」

 

 

 さっきまでビールとつまみとボードゲームで大はしゃぎしていたというのにもうずーんとしか表現できないほどの暗さになっちゃいましたね伊月先輩。まぁ、そんな伊月先輩も可愛らしくて好きなんですけど、ふへへへへ。

 

 ……はっ、そういえば確かにヒキさんには妹がいるっていってたましたね。

 伊月先輩の妹センサーも馬鹿にできませんね、むむむ。

 

 

 

「というか、そもそもどうやって知り合ったの?

 那由ちゃんあんまり編集部とかには顔出したりしないから会う機会とかないよね?そこら辺も結構編集部のみんなや他の作家さんたちも結構気になっているみたいなんだよね」

 

 

 

「あぁ、そういえば土岐も少し前にそんなことを言っていたな。カニ公と仲のいい俺ならば知っているかもと踏んだみたいだが俺も知らんしな、追い返してやったわ」

 

 

 確かにそう言われてみると何人かに同じようなことを聞かれたような気もしますね……。その時は眠かったので適当に返事しましたが……。

 

 

 

「そうですね、別に隠すようなことでもないので良いんですがちょっとこういう昔話みたいなのって小説を書くみたいで楽しいですね」

 

 

「いや、那由ちゃん小説家だから、それがお仕事だからね」

 

 

「ふふふふふ、では、お話ししましょう‼それはある日の事でした───

 

 

 

 

 

 ──────────

 

 

 

 

 

 ───そんなに昔のことではありません。

 そもそも私、作家デビューしてからそんなに経ってませんし。

 私のデビュー作の『銀色景色』が書籍化することになってすぐのことです。最初の担当さんはさっきヤリチン王子が言ってたみたいに山県さんでした。その人も悪い人ではなかったんですけど私のお願いは大体聞いてくれましたしちょっと締切の催促がしつこいくらいで。

 

 それから次の作品である『金色景色』の執筆途中に山県さんがヒキさんを連れてきたんです。なんでも私の作品にすごく感動してくれたみたいで、

 

 ……なんか自分で言ってて恥ずかしいですね。えへへ。

 

 でも、その時は私の年齢とかそういうのを全く知らなかったみたいで私のことを可児那由多だって紹介されたときはポカーンって顔してました。

 

 ……ぷすっ、あ、ごめんなさい、ヒキさんのあんな顔が見れることなんて今では超激レアですからつい思い出し笑いを……くふふ。

 

 

 

「ほら、比企谷くんこちらが可児那由多先生。可児先生、こちらが先日お話しした比企谷です」

 

 

 

 どうやら面白かったのは私だけじゃなかったみたいで山県さんがちょっぴり口のはしをぴくぴくさせながら紹介していると、どうやら心の整理がついたのか開けっ放しだった口を閉じ挨拶をしてくれました。

 

 

 

「ひ、比企谷です。その、『銀色景色』を読んでから可児那由多先生のファンです。あ、あの、わざわざお時間取っていただいたみたいですみません」

 

 

 正直あの時はそんなにヒキさん興味をそそられるということはなくて、ただ単純に自分の作品を褒めてもらって嬉しいなぁくらいの感情だったんですよ。

 まぁ、そのあとはテキトーに話をして、ちょうど私の本を持ってたみたいなのでサインまでしてあげて普通に別れたかんじだったと思います。

 

 ヒキさんに興味がわいたのはそのあとですかね、たしかその時は山県さんが風邪かなんかでお休みだったのでヒキさんが顔見知りだという事で代わりに作者宛のお手紙を届けてくれたときですね。

 

 

 

「あ、そこの机の上にに置いておいて下さい」

 

 

「はい。どっこいしょっと」

 

 

 

 嬉しいことにヒキさんが持ってきてくれたお手紙は結構な数だったみたいで全部まとめてダンボールに入れられてきたんです。

 ダンボールを置き終わったヒキさんは自分の鞄から何枚かのプリントを出すとちょっと苦い顔で私に『銀色景色』のコミカライズやアニメ化の依頼がいくつか来ていると教えてくれました。

 

 

 

「あ、そういうのはいいです。私忙しくなるの嫌ですし、それに小説って媒体じゃないとなんかしっくりこないといいますか……」

 

 

「ほんとそれな。いや、やっぱりこの登場人物たちの細やかな感情の動きとか小説の雰囲気とかは文字ならではだと俺も思ってた……ん……だ……わ……」

 

 

「いや、別にいいですよね無理して敬語使わなくても、比企谷さん私よりも年上ですし、それよりももう少し感想聞かせてもらってもいいですか?」

 

 

 あの時は次の『金色景色』がなかなか書けないでスランプ状態だったのもありまして、他の人から見た自分の作品の感想それも直接なんてなかなか貴重じゃないですかだからちょっと私と似た感じの印象を持ってるこの人に聞いてみたい‼って感じで話が盛り上がりまして……。

 

 大体一時間くらいですかね?私の作品から他の作品ついには自分の学生時代にまで話が発展してっちゃいまして……、知ってます?

 ヒキさん高校生の頃は「奉仕部」とかいう変な部活に強制入部させられてたみたいで……あっ卑猥な感じのやつじゃないですよ⁉たしかヒキさんは「魚を与えるのではなく魚の捕り方を教え、その人の自立を促す」っていってましたかね?

 その時の話がすごく面白くって、何て言うんですかね……ラノベかよっ‼みたいな話もありまして。そんな感じで「ヒキさん」って呼ぶようになってあとはなんやかんやでヒキさんが担当になった感じですね。

 

 

 

 

 

 ──────────

 

 

 

 

 

「ふむ……なんか俺もその比企谷さんとやらに会ってみたくなったな」

 

 

「俺も俺も‼その「奉仕部」ってのにも興味あるし一回落ち着いて話してみたいな」

 

 

「伊月先輩がそこまで言うんでしたら今度呼びましょうか?ヒキさん」

 

 

「それも良いかもしれんな……土岐も呼んでやればいい感じに知り合い同士だろうしな」

 

 

「では、伊月先輩は土岐さんへ連絡お願いします。私はヒキさんに連絡するので」

 

 

「よし、任された。千尋にもその時はちょっと多目に飯を作ってもらおう」

 

 

「いいね、じゃあ俺はお酒を見繕ってくるよ」

 

 

 

 

 

 ───そうやって今を煌めく若手作家たちの夜の宴は美味しい酒とジュース、そして楽しい話題をつまみにますます盛り上がっていくのだった─────

 

 

 

 

 

 そしてその頃話題の比企谷八幡はというと……

 

 

「……へっくしゅん、風邪ひいたか?……それにしてもいつも通り誤字脱字がひでぇな可児先生」

 

 

 そんな独り言をぶつぶつといいながら会社の自分の机で送られてきた可児那由多の原稿を確認する俺。

 今でも別に仕事は好きではないしなんなら宝くじでも当てて隠居したいまであるが今やっている仕事、「可児那由多の小説を世界で一番に読める」という仕事だけは普段信じてもいない神に感謝したくなる。

 

 

「……くそっ、やっぱり面白れぇな」

 

 

 ───そうやって今話題の若手編集者の夜は誤字と脱字だらけの出来立てホヤホヤである原稿と甘ったるいコーヒーとともに更けていく───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最後までありがとうございました。また読んでもらえると嬉しいです。
あ、今回、誤字や脱字のチェックがあまり出来てないのでもしもあったら教えてもらえると助かります。

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